結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2007−890003(T2007−890003/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4718494号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成14年12月21日に登録出願、第25類「洋服,コート,子供服,運動靴」を指定商品として、同15年10月17日に設定登録されたものである。
請求人の引用する登録商標は、次の(1)ないし(5)である。
(1)登録第226416号商標(以下、「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、昭和6年1月12日に登録出願、第36類「メリヤス製品、其他本類ニ属スル商品一切」を指定商品として、同年7月1日に設定登録されたものである。
その後、5回に亘り商標権存続期間の更新登録がされ、また、指定商品については、平成15年11月26日に、第5類「失禁用おしめ」、第9類「事故防護用手袋,防火被服」、第10類「医療用手袋(ゴム製のものを除く。)」、第14類「カフスボタン,ネクタイピン,宝石ブローチ」、第16類「紙製幼児用おしめ」、第21類「家事用手袋(ゴム製のものを除く。)」、第24類「経かたびら,ハンカチ,タオル,その他の布製身の回り品」、第25類「被服(頭から冠る防虫網・あみ笠・すげ笠・ナイトキャップ・和装用ひもを除く。),運動用特殊衣服,マラソン足袋,地下足袋」及び第26類「帯留,こはぜ,ボタン,衣服用ブローチ」に書換登録がなされたものである。
(2)登録第1684336号商標(以下、「引用商標2」という。)は、「MINNIE MOUSE」の文字を書してなり、昭和56年5月29日に登録出願、第17類「 被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く )寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同59年5月29日に設定登録されたものである。
その後、2回に亘り商標権存続期間の更新登録がされ、また、指定商品については、平成17年12月14日に、第16類「紙製幼児用おしめ」、第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」、第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布 」及び第25類「被服」に書換登録がなされたものである。
(3)登録第1691238号商標(以下、「引用商標3」という。)は、「MICKEY MOUSE」の文字を書してなり、昭和56年5月29日に登録出願、第22類「はき物(運動用特殊靴を除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同59年6月21日に設定登録されたものである。
その後、2回に亘り商標権存続期間の更新登録がされ、また、指定商品については、平成18年1月11日に、第14類「貴金属製靴飾り」、第18類「傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」、第21類「靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー」、第25類「履物」及び第26類「靴飾り(貴金属製のものを除く。),靴はとめ,靴ひも,靴ひも代用金具」に書換登録がなされたものである。
(4)登録第1691242号商標(以下、「引用商標4」という。)は、「MINNIE MOUSE」の文字を書してなり、昭和56年5月29日に登録出願、第22類「はき物(運動用特殊靴を除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同59年6月21日に設定登録されたものである。
その後、2回に亘り商標権存続期間の更新登録がされ、また、指定商品については、平成17年12月14日に、第14類「貴金属製靴飾り」、第18類「傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」及び第25類「履物」に書換登録がなされたものである。
(5)登録第1761424号商標(以下、「引用商標5」という。)は、「MICKEY MOUSE」の文字を書してなり、昭和56年5月29日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く )寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同60年4月23日に設定登録されたものである。
その後、2回に亘り商標権存続期間の更新登録がされ、また、指定商品については、平成18年6月21日に、第10類「医療用手袋」、第16類「紙製幼児用おしめ」、第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」、第21類「家事用手袋」、第22類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿」、第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」に書換登録がなされたものである。
以下、上記1ないし5の引用商標を一括していうときは、「引用商標」という。
請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第45号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、別掲(1)のとおり、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」と認識される図形及び「Ai Yuu」の文字(文字の間にハート形の図形がある。以下同じ)よりなるものである
そして、本件商標構成中には「Ai Yuu」の文字が含まれてはいるものの、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」と認識される図形が大きく描かれているため、本件商標に接する者は、ただちに当該図形部分に着目するというのが自然である。
したがって、当該図形部分は、独立して自他商品識別力を有するというべきである。
そして、本件商標は、当該図形部分から「ミッキーマウス」、「ミニーマウス」又は「ミッキーマウスとミニーマウス」の称呼及び観念を生ずるものである(甲第23号証)。
一方、引用商標1、同3及び同5からは、その構成文字に相応して「ミッキーマウス」の称呼及び観念を生じ、引用商標2及び同4からは、その構成文字に相応して「ミニーマウス」の称呼及び観念を生ずる。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、「ミッキーマウス」又は「ミニーマウス」の称呼及び観念を共通にする類似する商標であるといわざるを得ない。さらに、引用商標1には「ミッキーマウス」の図形も含まれていることから、本件商標と引用商標1とは、「ミッキーマウス」の称呼及び観念を共通にするだけでなく、外観も類似する商標である。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念において類似する商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(ア)「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」の態様について
「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」は、ネズミを擬人化したキャラクターである。
「ミッキーマウス」は、大きな円形の耳、プラム型の丸い鼻先、顔の白黒部分の模様、二つの丸い模様の入った半ズボン、細い手足、大きな足という点に特徴を有してる。
また、「ミニーマウス」は、大きな円形の耳、プラム型の丸い鼻先、顔の白黒部分の模様、細い手足の他に、長いまつげ、時には頭に花やリボンをつけたり、水玉模様のスカートを履いているという点に特徴を有している。
その結果、上記特徴を備えて擬人化された動物からなる絵や図形に接する者は、ただちに、それを「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」であると認識するというべきである。
「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」の態様としては、例えば、態様1(別掲(3))、態様2(別掲(4))、態様3(別掲(5))、態様4(別掲(6))、態様5(別掲(7))、態様6(別掲(8))、態様7(別掲(9))、態様8(別掲(10))がある。
別掲(3)は、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」の基本的な図柄であり、それぞれを正面から描いたものである。
そして、「ミッキーマウス」と「ミニーマウス」は恋人同士であることから、両者が仲むつまじく手をつないだり、ダンスをしたり、楽しく遊んでいる状態を描いた図画が多数存在する(別掲(4)ないし同(8))。
また、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」は、その使用目的に応じて、若干の変更が加えられて描かれることもある(別掲(9)及び同(10))。
その他、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」は、様々な態様で商品等に描かれている(甲第22号証)。
(イ)「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」のキャラクターとしての著名性
一般に「キャラクター」とは、アニメーション映画や出版物としての漫画に登場し、それぞれの作品の中で特定の性格および外面的特徴(多くの場合擬人化された)を付与されて描かれる登場人物をいい、いわゆる商品化権の中核をなすものとして、その名称および外面的形態が取引の対象とされているものをいう(日本工業新聞社刊「工業所有権用語辞典」1208頁)。
しかして、「ミッキーマウス」は、上記のような意味における「キャラクター」としての嚆矢であり、かつ最も代表的なものである。
このことは、特許庁においても顕著な事実であると思料される。
例えば、本件商標に係る登録異議の申立ての異議決定においても、「『ウォルトディズニー』の制作に係る『ミッキーマウス』又は『ミニーマウス』が、取引者・需要者の間に広く認識されているキャラクターであることは顕著な事実である」と判断されている(甲第24号証)。
「ミッキーマウス」は、1928年11月18日、ニューヨーク ブロードウェイの劇場で封切られた漫画映画「スチームボートウイリー(蒸気船ウイリー)」の中でこの世に登場した(甲第13号証ないし甲第15証)。
「ミッキーマウス」は、陽気でおちゃめ、いかにもアメリカ人好みの性格(キャラクター)を備えており、たちまち、世界のアイドルとなった(甲第16号証)。
請求人は、「ミッキーマウス」をはじめとする多くのキャラクターに係る著作権、商標権その他の権利の管理、映画製作、遊園地の経営を業務とする世界的に著名な会社である。
請求人の制作した「ミッキーマウス」を主人公とする映画は、現在までに120本余を数え、そのほとんどが日本において劇場上映、テレビ放映、ビデオ販売されている。
また、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」は、請求人やその運営管理にかかる米国ディズニーランド、東京ディズニーランドに関する報道等の機会にも頻繁に言及されている。
さらに、請求人は、いわゆるディズニーキャラクターを使用した商品化事業を行っている者としても極めて著名であり、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」は、そのようなキャラクターの代表的なものである。
すなわち、現在、世界100カ国で4000社に及ぶ企業が請求人の許諾を受けて、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」等のキャラクターを付した商品を製造販売しており、我が国における商品化事業も甲第22号証に示すとおりである。
「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」のキャラクターは、被服、靴類、玩具、日用雑貨、食品、家具、運動具、時計、文具、書籍等、一般人の日常生活に深い関係を有するあらゆる分野の商品に使用されているが、本件商標の指定商品である「洋服,コート,子供服,運動靴」等の商品は、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」のようなキャラクターにとって最も密接な関係を有する商品である。
以上のとおり、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」は、映画、テレビ、ビデオ、マスコミによる報道、商品化事業等を通じて使用され、極めて著名なものとなっており、このことはすでに特許庁及び裁判所において顕著な事実と思料される(甲第24号証ないし同第43号証)。
上記「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」のキャラクターの別掲(3)ないし同(10)の態様(以下「引用標章」という。)は、種々の表現方法により表されているが、そのいずれについても直ちに「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」であると認識できる。
これは、キャラクターというものは、それが描かれる場面により、様々な服装、姿勢、表情を呈するが、それらには、常にそのキャラクターを認識させる一定の特徴を認めることができるからである。
これがキャラクターのキャラクターたる所以である。
(ウ)本件商標と「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」について
本件商標構成中の左側の図形は、ネズミらしき動物を擬人化したものであり、大きな円形の耳、プラム型の丸い鼻先、顔の白黒部分の模様、2つの丸い模様の入った半ズボン、細い手足、大きな足から構成されており、「ミッキーマウス」の特徴をすべて備えている。
また、本件商標構成中の右側の図形も、ネズミらしき動物を擬人化したものであり、これも大きな円形の耳、プラム型の丸い鼻先、顔の白黒部分の模様、細い手足、長いまつげ、頭に付けているリボン、水玉模様のスカートから構成されており、「ミニーマウス」の特徴をすべて備えている。
しかも、本件商標は、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」と同じように、手をつなぎ、仲の良い恋人同士のように表現されている。
すなわち、本件商標構成中の図形部分は、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」の特徴をすべて備えており、特に、別掲(3)及び同(9)と極めて酷似している。
そうとすれば、本件商標に接する者は、ただちに、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」をやや変形して描いた図形、あるいは、子供が「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」をクレヨンで稚拙に描いた図形であると認識することは明らかである。
(エ)まとめ
以上のとおり、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」は、映画、テレビ、ビデオ、マスコミによる報道、商品化事業等を通じて使用され、本件商標の出願日はもとより、そのはるか以前より請求人に係る表示(キャラクター)として著名なものとなっている。
「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」のキャラクターは、必ずしも
すべてが商標として使用されているとは限らないが、いずれも明確に、商品に関して使用されており、その商品の出所を表示する機能を営んでいることは明らかである。
そうとすれば、本件商標を、キャラクターにとって最も密接な関係を有している「洋服,コート,子供服,運動靴」に使用されれば、当該商品はあたかも請求人又はその関連会社の関与する商品であるこのようにその出所につき誤認、混同を生じさせることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」の著名性が認められることについては、上記(2)(イ)で述べたとおりであるが、このように世界的に著名なキャラクター名ないしは商標と同一または類似する本件商標の使用、登録を容認することは、請求人の著名な商標が有する出所表示機能(指標力)を稀釈化するばかりでなく、請求人の著名商標に化体した業務上の信用、すなわち莫大なグッドウイルに“ただ乗り”することを認めることとなり、国際信義上穏当ではない。
本件商標は「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」と容易に認識される図形をそのまま含んでいるので、本件商標が「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」と無関係に選択されたとは考えられず、その顧客吸引力を利用しようとするものであることは容易に看取されるというべきである。
本件商標が、請求人の商品と無関係の商品に使用されれば、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」のキャラクターに愛情をもって接してきた需要者はこれによって欺かれる結果となり、長年にわたり注意深くそのキャラクター商品の品質維持に努めてきた請求人の信用、イメージが大きく損なわれることは見易い道理である。
したがって、本件商標の使用が、客観的に「他人に損害を加える目的」を持つことは明白であり、本件商標の使用は、商標法第4条第1項第19号にいう「不正の目的」を有するものと解すべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
請求人は、本件商標構成中の図形部分が創造性に溢れた独自のものである旨主張する。
しかしながら、商標法においては、登録要件として商標の創作性は要求されておらず、本件商標が被請求人によって創造された商標であるか否かは、商標の類否判断の対象とはならない。
また、被請求人は、本件商標構成中の図形部分と「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」キャラクターとの差異として、本件商標を構成する図形は、尻尾がない点、丸目である点、まつげが黒目から直接出ている点及び平坦な丸鼻である点を主張する。
しかしながら、尻尾が存在しない「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」も存在する(別掲(4)ないし同(6))。
また、縦長ではなく、丸目に描かれた「ミッキーマウス」も存在する(甲第45号証 「★1930年代のミッキー」)。
さらに、黒目又は目から、まつげが直接出ている「ミニーマウス」も存在する(別掲(4)ないし同(6)及び甲第19号証ないし甲第21号証)。
加えて、本件商標を構成する図形の鼻が平坦であるのも、正面から描かれているからにすぎない。
したがって、被請求人の主張する差異は、本件商標構成中の図形部分と「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」 キャラクターとを区別する上での決定的な差異ではない。
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
本件商標構成中の図形部分は稚拙ではなく、創造性に溢れた独自の図形である。
この図形には尻尾がない。特にネズミを意識して描いたものではない。丸目(縦長ではない。)、黒目から直接出ているまつげ、平坦な丸鼻は、日本独特の漫画の描き方で、「ミッキーマウス」には見受けられない。
アメリカの立体的でリアルすぎる劇画とはまるで違う感覚を与えるものである。生々しい感じがアイユウにはない。
「ミッキーマウス」を稚拙に描いてもこのような可愛さは表現できない。
商標を登録するに足るオリジナリティがあると考え、商標登録を申請した。
手をつなぐのは、ミッキーマウスだけではなく、微笑ましい仲良しの印であって、指をからめるというより、丸と波線だけで、握っている雰囲気を漫画っぽく出している。写実的な指ではなく、独創的な描写と考える。
名前もアイユウと表記して、決して「ミッキーマウス」と混同するような表記はしていない。
本件商標構成中の図形部分と、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」とは、上記1で述べたとおり、明瞭に相違しているので、本件商標から「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」を容易に連想、想起するとはいえない。
そうとすれば、本件商標からは、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」の称呼及び観念は生じない。
したがって、本件商標より、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」の称呼及び観念を生ずるとし、その上で、本件商標と引用商標とが類似するとの請求人の主張は、その前提において誤っている。
また、本件商標と引用商標とが外観において相違していることは、上記1で述べたとおりである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
「ウオルトディズニー」の製作に係る「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」が、取引者、需要者の間に広く認識されているキャラクターであることは顕著な事実である。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、上記2で述べたとおり、外観、称呼及び観念のいずれからしても、十分に区別し得る商標である。
そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、その商品が請求人、又は請求人と関係のある者の業務にかかるものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれのないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
本件商標と引用商標は、上記2で述べたとおり、商標において別異のものであるから、被請求人が本件商標を採択、使用する行為に「不正の目的」があったとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものではない。
「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」のキャラクターとしての特徴は、甲各号証に徴すれば、引用標章をもって表現されるものであると認められる。
すなわち、「ミッキーマウス」は、大きな円形の耳、プラム型の丸い鼻先、顔の白黒部分の模様、二つの丸い模様の入った半ズボン、細い手足、大きな靴を履いた足部という特徴を有しているものである。
また、「ミニーマウス」は、大きな円形の耳、プラム型の丸い鼻先、顔の白黒部分の模様、細い手足、大きな靴を履いた足部の他に、長いまつげ、時には頭に花やリボンをつけたり、水玉模様のスカートを履いているという特徴を有しているものである。
「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」が、本件商標の出願前において、本件商標の指定商品の取引者、需要者の間に広く認識されているキャラクターであることは、請求人の提出に係る証拠(甲第13号証ないし同第43号証)によっても明らかというべきである。
そして、このことは、被請求人の主張に徴すれば、同人も争わないところと認められる。
また、「ミッキーマウス」と「ミニーマウス」は、引用標章のように、一緒に描かれることが多く、恋人同士のように描かれていることもよく知られるところといえる(甲第17号証ないし甲第21号証)。
本件商標は、別掲(1)のとおり、図形と「Ai Yuu」の文字とからなるものであるところ、その図形と文字とが融合して不可分一体にのみ看取されるとすべき格別の理由、証拠はなく、図形部分が独立して看取されることも決して少なくないというべきである。
そして、当該図形部分をみると、図形の左側の部分は、ネズミと思しき動物を擬人化し、大きな円形の耳、プラム型の丸い鼻先、顔の白黒部分の模様、二つの丸い模様の入った半ズボン、細い手足、大きな靴を履いたような足部から構成されており、上記1の「ミッキーマウス」の特徴を備えている。
また、図形の右側の部分も、ネズミと思しき動物を擬人化し、大きな円形の耳、プラム型の丸い鼻先、顔の白黒部分の模様、細い手足、大きな靴を履いたような足部、長いまつげ、頭に付けているリボン、水玉模様のスカートから構成されており、上記1の「ミニーマウス」の特徴を備えている。
しかも、左右の擬人化された動物は、手をつなぎ、仲の良い恋人同士のように表現されている。
すなわち、本件商標を構成する図形は、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」の特徴を備えているということができる。
特に、本件商標を構成する図形部分と別掲(9)及び同(10)とは、共に、向かって左側に正面を向いたネズミと思しき擬人化された動物の雄、向かって右側に正面を向いたネズミと思しき擬人化された動物の雌を描いている点及び当該2匹の擬人化された動物が手をつないでいる構図よりなる点において、両図形は極めて酷似しているというべきである。
してみると、本件商標は、引用標章と特徴的部分において共通する点を多々含むものであり、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」を表現したものの一との印象を優に与えるというのが相当であるから、その外観的特徴から受ける印象の共通性からすれば、本件商標を構成する図形と引用標章との類似性の程度は、決して低いということはできない。
そして、本件商標中に「Ai Yuu」の文字が書されているが、この文字が、上記の共通した印象にも拘わらず、両者を印象の全く異なるものとして看取される機能を果たしているともみれない。
したがって、本件商標と引用標章との類似性の程度は、決して低いものということはできない。
(1)被請求人は、本件商標について、「本件商標構成中の図形部分は稚拙ではなく、創造性に溢れた独自の図形である。この図形には尻尾がない。特にネズミを意識して描いたものではない。丸目(縦長ではない。)、黒目から直接出ているまつげ、平坦な丸鼻は、日本独特の漫画の描き方である。」旨主張する。
確かに、目や鼻など個々の点を見比べたときには、その描写法において被請求人の主張する相違点があるといえる。
しかしながら、同キャラクターには尻尾が描かれたものもあり(甲第16号証ほか)、鼻は正面から描けば平坦なものとなるのが自然であり、また、まつげの描写も決定的に相違するものとはいえない。
そして、本件商標の図形部分は、必ずしも、ネズミをモチーフとしていないと断じ得るものではなく、むしろ、ネズミをモチーフとしたと看取されるものとみて不自然とはいえない。
そうとすれば、被請求人が主張する差異は、「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」を認識させる特徴点の共通性を凌駕する程の差異とはいえないというのが相当である。
したがって、当該主張をもって、共通する印象を受けるとする前記の判断を左右しないといわざるを得ない。
(2)被請求人は、本件商標について、「手をつなぐのは、ミッキーマウスだけではなく、微笑ましい仲良しの印であって、指をからめるというより、丸と波線だけで、握っている雰囲気を漫画っぽく出している。写実的な指ではない。独創的な描写と考える。」旨主張する。
確かに、手をつなぐ構図がミッキーマウスに限られたものでないことは、被請求人主張のとおりである。
しかしながら、手をつないだ構図のみにおいて上記特徴の共通性が認められるものではないことは、前記認定から明らかであるし、また、手や指の描き方によって全く別異の印象を与える程度に独創的であるとまではいえないから、当該主張は採用し難いものである。
(3)被請求人は、本件商標について、「名前もアイユウと表記して、決してミッキーマウスと混同するような表記はしていない。」旨主張する。
確かに、本件商標中には、「Ai Yuu」の文字が書されている。
しかしながら、この文字が、本件商標を構成する図形部分と相俟って、例えば、「ミッキーマウス」等とは別異のキャラクターを認識させるなど、上記の共通した印象にも拘わらずこれに抗して、両者を全く印象の異なるものとする機能を果たしているということはできず、それを認め得る証拠もないから、「Ai Yuu」の表記があるとの理由によって、上記3の判断は左右されないといわざるを得ない。
「ミッキーマウス」と「ミニーマウス」とが一緒に描かれた標章は、子供服や帽子などの被服や履物等に使用許諾されて現に使用されているものである(甲第22号証)。
本件商標の指定商品「洋服,コート,子供服,運動靴」は、これら「ミッキーマウス」と「ミニーマウス」のキャラクターについて使用許諾された商品「被服や履物等」とは同一又は類似の商品、あるいは、共に、ファッション関連商品であり、かつ、いわゆるキャラクター商品を含むものということができ、関連性の程度は相当に高いものである。
そして、その需要者はともに、キヤラクター商品には比較的関心が高いといえる子供を含む一般の消費者であり、需要者を共通にすることが多いものと認められる。
上記認定の引用標章の周知著名性の程度、本件商標と引用標章間の類似性の程度、使用される商品間の関連性、需要者の共通性等を総合勘案(最高裁判所、平成10年(行ヒ)第85号、平成12年7月11日第3小法廷判決・参照)すれば、本件商標の登録時はもとよりその出願時において、本件商標を指定商品に使用した場合、これに接する需要者は引用標章あるいは「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」を連想、想起して、請求人の「ミッキーマウス」及び「ミニーマウス」キャラクター関連商品の一であるかの如く、当該商品を請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品と誤信し、商品の出所について混同するおそれがあったというのが相当である。
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同11号及び同19号に該当するか否かについて言及するまでもなく、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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