結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2007−300063(T2007−300063/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4708508号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成14年7月22日に登録出願され、第43類「飲食物の提供」を指定役務として同15年9月12日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
(1)本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において使用された事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消されるべきである。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁
被請求人は、答弁書において、本件商標は不測の事態による営業活動の一時停止のために使用していないのであって、このことが、商標法第50条第2項にいう正当な理由に該当するため、本件商標は商標法第50条第1項の規定に該当するものではないと主張する。
しかしながら、被請求人の示す書証からは、そもそも過去に本件商標を使用していた事実さえも明らかでなく、被請求人が、営業活動の一時停止状態にあるとは到底いえない。仮に、一時停止状態であることが認められたとしても、「近隣住民の一部から日照権等による建設反対」に基づく当該一時停止状態は、商標法第50条第2項の正当な理由に該当しない。
(ア)被請求人の示す書証について
被請求人の示す乙第1号証ないし乙第10号証は、いずれも本件審判請求の登録前3年以内に発行されたものではない。
他方、乙第11号証ないし乙第13号証は、いずれも本件審判請求の登録前3年以内に発行されたものであるが、その内容は被請求人名称である「ギャゼット」を含む「ギャゼットマーケットプレイス」に関する新聞記事であり、本件商標とは何らの関係もない書証である。このことは、乙第11号証ないし乙第13号証において、本件商標について、何ら言及されていないことからも明らかである。
(イ)本件商標の使用について
被請求人は、答弁書において、「本件商標は、その指定役務『飲食物の提供』について、建設工事を2002年6月着工、2003年3月営業開始し、使用するものである。」とし、あたかも本件商標を用いて営業していた事実があるかのように主張しているが、被請求人の示す書証には、本件商標がその指定役務「飲食物の提供」に使用された事実を示す記載は一切ない。被請求人による当該主張は、乙第3号証に記載される「六月着工、来年三月オープンを目指す。」との新聞記事等から導かれた主張であると推測するが、被請求人の示す書証から容易に読み取れるように、建設工事は延期され、最終的には建設が白紙撤回されている。すなわち、指定役務「飲食物の提供」に該当する役務について、本件商標をどのように使用し、具体的に、どの時期に、どの地域で取引したものか等の点については、客観的に認められる書証は全くなく、それらの状況は不明というほかない。このことから、提出に係る書証のみをもって、本件商標のその指定役務についての使用は証明され得ない。
さらに、請求人は、独自に乙第3号証の地図に示される「出店計画地」の現地調査を行ったところ、未だに「出店計画地」は更地のままで、今後も全く建設工事が行われる見通しも立っていないことが明らかとなっている。
このことは、現地調査の結果として示す甲第1号証の写真右奥に、被請求人が主張する「近隣住民」の住む「サーパスシティー宮崎駅前」が聳え立ち、その手前の「出店計画地」が現在も全くの更地であることから明らかである。
本件商標をその指定役務「飲食物の提供」に使用するための工事さえも行われておらず、白紙撤回され、今後の見通しも立っていないのであれば、たとえ、被請求人の示す書証が、商標の使用の準備に該当することを推認させ得るとしても、明らかに法上の使用を規定する商標法第2条第3項各号に該当するものではないため、本件商標が使用されたという事実があったとの被請求人の主張は失当といわざるを得ない。
以上のことから、過去に被請求人によって、本件商標が使用されたという事実はなく、被請求人は、不測の事態による営業活動の一時停止状態にはないものと思料する。
(ウ)商標法第50条第2項の正当な理由の存否について
仮に、被請求人による活動が営業活動の一時停止状態であると認められるとしても、当該一時停止に基づく本件商標を使用していない状態は、商標法第50条第2項にいう正当な理由には該当しない。
そもそも、商標法第50条第2項ただし書きにいう登録商標の不使用についての「正当な理由」があるといえるためには、登録商標を使用しないことについて、当該商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責に帰することのできない事情がある場合、例えば、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果、その使用ができなかったような場合、時限立法によって一定期間、その商標の使用が禁止されたような場合等をいうものと解するのが相当であるとされている(平14年(行ケ)50 平成14年9月20日判決、特許庁編逐条解説第16版1212頁ないし1213頁)。
これを本件についてみるに、「近隣住民の一部から日照権等による建設反対という不測の事態」との被請求人の主張であるが、21世紀を迎えた昨今において、マンションの真向いに大型店舗を出店しようという当該建設工事が、日本国憲法で保証された国民にとって最も大切な権利の一つである日照権等を侵害する可能性があることは、当業者にとって容易に予測できたことはいうまでもない。
我が国の商標法は、商標権者による商標の現実的使用を重視している(法第3条第1項柱書き、第50条)ことからすると、同法第50条第2項にいう「正当な理由」とは、商標権者において登録商標を使用できなかったことが真にやむをえないと認められる特別の事情がある場合に限られると解すべきところ、被請求人主張の不測の事態というのは、企業たる被請求人の内部事情にすぎず(被請求人が、その経営判断により計画等を変更することによって、本件商標を使用することは十分に可能であった。)、これをもって、上述の特別の事情と認めることはできない。
また、当該不使用を理由に、当該登録商標を取り消すことが社会通念上酷であるとも認め難いものである。
以上のことから、被請求人の主張する不測の事態による営業活動の一時停止状態は、商標法第50条第2項にいう正当な理由に該当しない。
(エ)まとめ
以上のとおり、本件商標が、その指定役務である第43類「飲食物の提供」について、本件審判請求の登録前3年以内に被請求人によって使用されていたとの事実は到底認められるものでなく、被請求人が本件商標を使用していないことについて、正当な理由があるということもできないため、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に該当するものというべきである。
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証を提出した。
(1)本件商標は、その指定役務「飲食物の提供」について、建設工事を2002年6月着工、2003年3月営業開始し、使用するものである。その証拠として、乙第3号証ないし乙第5号証を提示する。
しかし、近隣住民の一部から日照権等による建設反対という不測の事態により営業活動の一時停止となったものである。その証拠として、乙第6号証ないし乙第10号証を提示する。
(2)営業活動再開準備として、建設予定地の駐車場活用に関して、各オーナーへ説明会の案内と地元説明会の公告(宮崎日日新聞に折り込む。)を行った。その証拠として、乙第1号証及び乙第2号証を提示する。
また、近隣住民や周辺商店への更なる信頼の向上のための活動や補助金実績活動を行った。その証拠として、乙第11号証ないし乙第13号証を提示する。
(3)よって、本件商標は、その指定役務「飲食物の提供」について、不測の事態による営業活動の一時停止のために不使用であることを証明し、商標法第50条第2項の正当な理由があることを明らかにするものである。
(1)被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)被請求人会社の代表者と同一人が代表者となっている「株式会社アジェ」が宮崎市錦町のJR宮崎駅西口に共同店舗型ファッションビル「アジェ」を建設する計画を発表した旨の記事が2002年(平成14年)4月5日付け及び同月6日付けの宮崎日日新聞に掲載された(乙第3号証ないし乙第5号証)。該新聞記事には、ファッションビル「アジェ」はファッション、リビング雑貨、飲食の各店舗がテナント出店するほか多目的ホールも併設される予定で、6月着工、翌年3月オープンを目指すことが記載されている。
(イ)ところが、上記ビルの建設工事は、日照権問題で周辺住民に反対され、同年4月24日には6月着工が延期され、周辺住民と交渉を進めたものの合意できず、結局、同年12月26日には建設計画そのものが白紙に戻った旨が新聞報道された(乙第6号証ないし乙第10号証)。
(ウ)その後、2003年(平成15年)4月から5月にかけて宮崎駅西口の活性化のため、県・市駐車場を含め再度アジェ計画が検討され、被請求人による地元説明会が開催された(乙第1号証及び乙第2号証)。
しかし、この地元説明会は、「ギャゼットマーケットプレイス駐車場移転計画」に関するものであり、店舗名称として「ギャゼットマーケットプレイス」が表示されているものの、「アジェ」については具体的に言及しているものはない。
さらに、平成16年10月2日には、宮崎駅前を活気づかせようと、駅前商店街(45店)、JRフレスタ商店会(41店)、ギャゼットマーケットプレイス(40店)の3商店街が連合会を設立した旨、平成17年7月にはギャゼットマーケットプレイスは、そのリニューアル事業が経済産業省の補助金交付先に選定され、同年9月にリニューアルオープンする計画である旨がそれぞれ新聞報道された(乙第11号証ないし乙第13号証)。
(2)以上の認定事実によれば、被請求人は、平成14年4月頃にはJR宮崎駅西口に共同店舗型ファッションビル「アジェ」を建設する計画を有していたものの、該建設計画は近隣住民の反対運動にあい白紙撤回されたため、その後は、上記「アジェ」の新規建設ではなく、宮崎駅前を活気づけるために、駅前商店街等と協力し、既存のギャゼットマーケットプレイスをリニューアルすることに方針転換したものと推認される。
もとより、被請求人による上記計画は、「アジェ」なる名称の共同店舗型ファッションビル自体を建設するというものであり、役務「飲食物の提供」について個別具体的に計画したり、本件商標をその指定役務について使用することを具体的に計画していたことを示す証左は一切ない。
その他、本件審判請求の登録前3年以内に本件商標がその指定役務について使用されていたことを示す証拠はない。
仮に、上記「アジェ」にテナントとして飲食店が入る計画をもって、飲食物の提供を行う計画であるとし、かつ、「アジェ」をビルの名称と同時に店名ないしは商標等として使用する計画であると善解したとしても、計画のみでは、当該商標をその指定役務について実際に使用していたことにはならず、そもそも、本件審判請求の登録日である平成19年2月13日前3年以内には、既に被請求人の出店計画自体が白紙撤回され、被請求人の事業も方針転換されていたのであって、もはや「アジェ」を商標として役務「飲食物の提供」について使用する予定はなかったものといわざるを得ない。
被請求人は、本件商標の不使用については、近隣住民による建設反対という不測の事態により営業活動が一時停止されたのであって、商標法第50条第2項ただし書きにいう正当理由がある旨主張する。
しかしながら、同項ただし書きにいう「正当理由」とは、例えば、当該商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果、その使用ができなかったような場合、あるいは、時限立法によって、一定期間(3年以上)その商標の使用が禁止されたような場合等をいうのであって(特許庁編「工業所有権法逐条解説」)、被請求人の主張する上記営業活動の一時停止は、本件商標を使用していないことの正当理由には当たらないというべきである。
それというのも、既に述べたように、被請求人は、単に共同店舗型ファッションビルの建設計画を有していただけであって、本件商標をその指定役務について使用するための具体的な準備をしていたものとはいい難いうえ、上記建設計画が白紙撤回されるや事業方針を転換していたことが窺われるものであり、営業活動を停止していたわけでもない。
よって、被請求人の主張は採用することができない。
(3)以上のとおり、被請求人の提出に係る証拠をもってしては、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが本件商標をその指定役務について使用していたことを立証しているものとは認められず、また、その使用をしていないことについて、正当な理由があったことを立証したものとも認められない。
したがって、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定役務について使用されていなかったものというべきであるから、商標法第50条の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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