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Trademark Appeal Case

不使用取消と商品性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2005−31299(T2005−31299/J2)
審判種別取消
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4609287号商標(以下「本件商標」という。)は、「東京メトロ」の文字を標準文字で書してなり、平成14年1月18日に登録出願、第16類「新聞、雑誌」を指定商品として、同年10月4日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、本件商標の指定商品についての登録を取り消す、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証(枝番を含む。)を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが、その指定商品について本件商標の使用をしていないものである。

したがって、本件商標は、商標法第50条の規定によりその登録を取り消されるべきである。

2 答弁に対する弁駁

被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第3号証における印刷物は、無償で配布されるチラシの類であって、以下の理由によって、商標法上の商品たる「新聞」とは認められないから、これらの証拠をもってしては、本件商標がその指定商品「新聞、雑誌」について、本件審判請求の登録前3年以内に使用されていたものということはできない。

まず、被請求人が提出した乙第1号証及び乙第2号証における印刷物(以下「本件印刷物」という。)が商標法上の商品としての「新聞」に該当するか否かについてみるに、本件印刷物は、B4版程度の用紙1枚の簡単な体裁をしたものであり、風物詩や各地の名物・催し物などの紹介記事、発行年月日、号数、発行者が記載されているとしても、価格表示はなく、被請求人も自認するように、その印刷物に掲載する広告収入で経済的な収支が成り立つものであって、一般の人(世田谷区民など)に無償で配布されるものである。

ところで、商標法上における「商品」とは、商取引の目的物として流通性のあるもの、即ち、一般市場で流通に供されることを目的として生産され又は取引される有体物であると解される。

そして、上記解釈は、東京高裁判決〔平成16年(行ケ)第337号審決取消請求事件〕において、「商標法50条における商品とは、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならないと解すべきである。」との判示がなされていることや、他にも同様の判断がなされた判決、審決(例えば、昭和60年審判第16198号、同60年審判第20030号)が少なからず存在することからみても妥当なものとして是認できる(甲第2号証、甲第3号証の1及び2)。

そうとすると、前記事情にある本件印刷物は、商取引の目的物として一般市場の流通に向けられたものということができないから、商標法上の「商品」には該当しないものといわなければならない。

したがって、本件印刷物に「とうきょうメトロ」の文字が付されているとしても、本件印刷物が商標法上の「商品」には該当しないものである以上、これをもって本件商標がその指定商品「新聞、雑誌」に使用されているとは到底言い得ないものである。

また、乙第3号証における印刷物は、商標法上の「商品」には該当しない本件印刷物の広告掲載者を募集するためのチラシにすぎないから、これをもって本件商標をその指定商品に使用するといえないことも明らかである。

なお、本件印刷物の創刊号を約8400部、第2号を5000部、世田谷区内で配布したとする被請求人の主張は、その事実を裏付ける証拠が何ら提出されていないから、これを認めることはできない。

以上のとおり、本件商標は、被請求人提出の乙各号証によっては、その指定商品について、本件審判請求の登録前3年以内に使用されていたことが証明されないから、商標法第50条の規定により取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。

1 被請求人は、本件商標を付した無料配布新聞「とうきょうメトロ」(以下「本件新聞」という。)(創刊号)を平成17年4月29日から5月にかけて、世田谷区内で配布した。配布した枚数は、約8400部である。

2 その後、被請求人が本件商標の使用許諾した有限会社メトロニュース(以下「通常使用権者」という。)は、本件商標を付した無料配布新聞「とうきょうメトロ」(第2号)を平成17年11月18日から12月上旬までの間に、世田谷区内で5000部配布した。

3 以上の事実より、本件商標は、審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者である被請求人及び通常使用権者である有限会社メトロニュースが、その指定商品「新聞」及びその広告媒体としての資料に本件商標の使用を行っていることは明らかであり、本件請求は理由がない。

第4 当審の判断

1 被請求人の提出した乙各号証及び平成19年(行ケ)第10008号審決取消請求事件の判決における認定事実によれば、以下の事実を認めることができる。

(1)被請求人は、平成17年4月29日から5月にかけて、世田谷区内において、本件商標と社会通念上同一と認められる「とうきょうメトロ」の文字を表題とし、「2005年4月25日発行〈創刊号〉」と記載された印刷物を約8000部無料で配布したことが認められ、本件新聞は、その後も継続して、創刊号から少なくとも第4号まで同一の商標を付して発行されたことが認められる。

(2)指定商品についての使用について

ア 本件新聞の商標法上の「商品」該当性について

(ア)商標法上の「商品」は、商取引の対象であるから、商品が売買契約の目的物であるなど、対価と引換えに取引されるのが一般的である。しかし、「商取引」は、契約の種類が売買契約である場合に限られるものではなく、営利を目的として行われる様々な契約形態による場合が含まれ、対価と引換えに取引されなければ、商標法上の「商品」ではないということはできない。取引を全体として観察して、「商品」を対象にした取引が商取引といえるものであれば足りるものと解される。

(イ)本件新聞の創刊号は、5段組みの記事部分とその下の2段組み程度のスペースにくらしの友社の広告が掲載されている。記事部分には、世田谷公園のミニSLに関する記事、「せたがやトラスト協会」が実施したフォーラムの報告、世田谷区みどりの基本条例の制定に関する記事などが掲載され、本件新聞の配布地域の話題や環境保全活動の状況が紹介されている。そして、本件新聞の配布形態は、広告依頼主であるくらしの友社に9000部が納品され、その一部は同社社員によって営業活動時に配布されたほか、被請求人らも世田谷区内の住宅などに配布する方法でそのほとんどが配布された。

(ウ)本件新聞のような無料紙は、配布先の読者からは対価を得ていないが、記事とともに掲載される広告については、広告主から広告料を得ており、これにより読者から購読料という対価を得なくても経費を賄い、利益が得られるようにしたビジネスモデルにおいて配布されるものである。したがって、読者との間では対価と引換えでないとしても、無料紙を広告主に納品し、あるいは読者に直接配布することによって広告主との間の契約の履行となるのである。現に、本件新聞の創刊号は広告依頼主に商品として納品されているのであり、このような形態の取引を無料配布部分も含めて全体として観察するならば、商取引に供される商品に該当するということができる。

(エ)無料紙の読者は、掲載された広告のみならず、記事にも注目している、あるいは、広告よりもむしろ記事に注目している場合があり、記事によって読者からの人気を得れば、広告が読者の目に止まる機会が増すことになり、広告主との関係でも広告媒体としての当該無料紙の価値が高まる関係にある。このような関係が成り立つときに、同一又は類似の商標を付した無料紙が現れれば、ある無料紙が築き上げた信用にフリーライドされたり、希釈化されたりする事態も起こり得る。したがって、無料紙においても、付された商標による出所表示機能を保護する必要性があり、「商品」が読者との間で対価と引換えに交換されないことのみをもって、出所表示機能の保護を否定することはできない。

イ 本件新聞の第16類「新聞」該当性について

「新聞」とは、一般的には、「社会の出来事の報道・解説・論評を、すばやく、かつ広く伝えるための定期刊行物」(広辞苑第五版)と解されているところ、商標法の趣旨・目的に照らすと、商標法施行令別表第16類の「新聞」についてもおおむね上記と同様の概念と理解するのが相当である。そして、本件新聞が上記の要件を満たすことは明らかというべきである。

(3)小括

本件新聞のような無料紙であっても、商取引の対象である商品であって、出所表示機能を保護する必要のあるものということができるから、商標法上の「商品」に該当するということができる。したがって、記事とともに広告を掲載した無料紙に商標を付し、広告料収入によって経費を賄い、読者には無料で配布する行為は、「新聞」という指定商品についての商標の使用であるということができる。

2 以上の事実認定によれば、被請求人又は通常使用権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、「新聞」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用しているものと認めることができる。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、請求に係る指定役務について取り消すことはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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