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Trademark Appeal Case

不使用取消と使用態様

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2006−31391(T2006−31391/J2)
審判種別取消
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4596333号商標(以下「本件商標」という。)は、「DECISION」の文字を標準文字で表してなり、平成11年10月5日に登録出願、第9類「理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),救命用具,電気通信機械器具,レコード,メトロノーム,電子応用機械器具及びその部品,オゾン発生器,電解槽,ロケット,遊園地用機械器具,スロットマシン,運動技能訓練用シミュレーター,乗物運転技能訓練用シミュレーター,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,鉄道用信号機,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,事故防護用手袋,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,消防艇,消防車,自動車用シガーライター,保安用ヘルメット,磁心,抵抗線,電極,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,ガソリンステーション用装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,電気計算機,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,計算尺,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,潜水用機械器具,アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,家庭用テレビゲームおもちゃ,検卵器,電動式扉自動開閉装置」を指定商品として、平成14年8月16日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、本件商標の指定商品中「電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具及びそれらに類似する商品」ついて登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第9号証を提出した。

1 請求の理由

請求人の調査によると、本件商標は、商標権者であるキャノン販売株式会社によって、指定商品の商品「電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具及びそれらに類似する商品」について日本国内で継続して3年以上使用されていない。

また、本件商標の商標権には、専用使用権は設定されていない。加えて、通常使用権も登録されていないことから、本件商標権には通常使用権者も存在しないことが推認し得る。したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取消を免れない。

2 弁駁

(1)商標法第50条の規定による商標権の取消審判の請求があった場合、被請求人である商標権者は、同条第2項の規定により以下の要件事実の存在を証明しなければ、その登録の取消は免れないとされている。

ア 商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれかが使用していること

イ 登録商標の使用であること

ウ 取消審判の請求に係る商品のいずれか1つについて使用していること

エ 取消審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用していること

そこで、以下において、上記要件を被請求人の提出に係る乙各号証が十分に満たしているか否かについて検討してみることにする。

(2)請求人は、上記要件中ア、ウ及びエの要件については、その是非を争わない。しかしながら、上記要件中イの要件については争う。すなわち、本件商標は、平成14年9月17日付発行の商標公報より明らかなごとく、ローマ字で「DECISION」と横書きしてなる構成である。一方、被請求人の提出に係る乙各号証に表示されてなる使用に係る商標は、ローマ字で「DECISION SUITE」又は片仮名文字で「ディシジョン・スイート」と一体に横書きしてなる構成からなるものである。してみると、本件商標の構成と使用に係る商標「DECISION SUITE」又は「ディシジョン・スイート」の構成は明らかに相違している。

この点、被請求人自身も、その答弁書の中で、使用に係る態様は、本件商標自体ではないことを認めている。にもかかわらず、「英語の『Suite』は、ひとそろい、一式、一組なども意味を有する用語であって、特に、IT業界、コンピュータ関連業界においては、『複数の関連プログラムを一つにまとめたパッケージソフトウエア』を意味するものとして広く知られ、一般的に使用されている用語であることから、本件商標は、商品の種類、内容を表すにすぎないこの一般名称『Suite』を捨象し、『DECISION』としてその登録を取得し、被請求人は、本件商標を基礎に上記乙第3号証ないし同第16号証に示す『Decision Suite』、『DECISION SUITE』、『ディシジョン・スイート』及び『キャノン ディシジョン・スイート』を使用しているものである。したがって、これら名称の構成の中で商品名といえるのは、『DECISION』のみである。」としている。

なるほど、IT業界、コンピュータ関連業界において、「SUITE」の文字が「複数の関連プログラムを一つにまとめたパッケージソフトウエア」又は「特定用途のソフトウエアを詰め合わせたソフトウエアパッケージ」を意味する専門用語であることは、否定するものではない。しかし、かかる意味合いは、一般に使用されている英和辞典には掲載されておらず、コンピュータ関連用語についても詳しいウェブ辞書やIT用語辞典を紐解いて初めて記載されているものであり、一般に知れ渡った用語とは言い得ない。したがって、商品「電子計算機用プログラム」を、実際に購入する一般の需要者が、かかる意味合いを知っている可能性は、極めて低いものであると言わなければならない。

また、被請求人は、「SUITE」の文字が「複数の関連プログラムを一つにまとめたパッケージソフトウエア」又は「特定用途のソフトウエアを詰め合わせたソフトウエアパッケージ」を意味するものとして実際に使用されているとする例をいくつか挙げている。しかし、被請求人がその使用例として挙げている「GUARDIANSUITE」は、被請求人の関連会社の商標登録(登録第4631011号、甲第1号証)である。同様に、「Adobe Creative Suite」も、アドビ・システムズ社の商標登録(登録第4895250号、甲第2号証) である。なお、「Adobe」が同社の著名な登録商標(登録第2258896号外)であることは多言を要しないであろう。他社の登録商標をして、末尾に付された「SUITE」の部分は、商品の種類、内容を表示するにすぎない、との被請求人の主張は、事実を捻じ曲げたものであり、到底採用できない。さらに、被請求人が使用例として挙げている他の例は、「SUITE」の文字の前後に付された文字「Localization」、「Developer’s」、「Production」、「2.0」及び「Pack」等によって、品質表示的な使用であることが容易に理解し得るものである。かかる使用例をもってして、「SUITE」が、商品の品質等を表示する一般に知れ渡った用語とは到底言い得ない。そもそも、パッケージソフトウエアは、「パッケージソフト」又は「パッケージ」と略されて表示されることが一般的な例である(甲第3号証)。また、パッケージソフトウエアとして我が国を含めて全世界において最も販売されているマイクロソフト社のオフィス・シリーズのソフトウエア等、パッケージソフトウエアであっても、当該商品がパッケージソフトウエアであることを示すものとして「SUITE」の文字を使用していない例が多数存在している。むしろ、「SUITE」の文字がパッケージソフトウエアを意味するものとして使用している例は、一部の限られたものであり、その使用例も、上記のごとく、その前後に付した文字や数字によって品質表示的な使用となっている。

したがって、当該意味合いで使用されている例がいくつかあるとしても、それだけで「SUITE」の文字が、商品の品質等を表示する一般に知れ渡った用語とは言い得ないのである。

してみると、使用に係る商標「DECISION SUITE」が付された当該商品「電子計算機用プログラム」を、実際に購入する一般の需要者が、「SUITE」の文字部分をして、かかる意味合いで使用されているものと認識し、使用に係る商標は、その前段部「DECISION」の部分のみであると認識するとは到底思えない。むしろ、一般の需要者は、使用に係る商標「DECISION SUITE」をして、一体不可分の商標であると認識するのが通常であろう。

ある文字が、商品の品質等を表示する語であったとしても、別の文字と結合することによって、全体として全く別の商標となることは、我々の経験則上、よく知られていることである。本件の場合も、仮に百歩を譲って、「SUITE」の文字が、商品の品質等を表示する一般に知れ渡った用語であったとしても、「DECISION」の文字と結合して、本件商標とは、全く別の商標と認識され得るのである。

ところで、被請求人は、「SUITE」の文字部分は、パッケージソフトウエアを意味し、商品の品質等を表示する語であると主張しているが、請求人の親会社であるキャノン株式会社は、平成11年5月20日付で、「電子計算機用プログラム」を含む第9類の商品につき、商標「SUITE」を商標登録出願(商願平11−44217号、甲第4号証)している。同出願は、商標登録第2098291号の商標「SUITE」(甲第5号証)の存在によって商標法第4条第1項第11号で拒絶されている。被請求人の親会社が商標登録の取得を試みながら、拒絶されたら、識別力のない部分である、との主張は、首尾一貫しない矛盾した行為であると言わざるを得ない。上記事実は、被請求人の主張が不当であることの証左であろう。

また、請求人の調査によると、商品「電子計算機用プログラム」を含む第9類の商品を指定した商標で、「SUITE」の文字を含む商標がいくつか登録又は出願されている。特許庁データベースでの検索結果では、商品「電子計算機用プログラム」(類似群コード:11C01)に関して、「○○SUITE」からなる商標は、112件存在している(甲第6号証)。同様に、「○○スイート」からなる商標も13件存在している(甲第7号証)。かかる事実は、当該業界においても「SUITE」の文字が、商品の品質等を表示する語であると、必ずしも認識されていないこと、「SUITE」又は「スイート」の文字が付されたことによって別の商標となり得ることを示す証左であろう。

なお、被請求人自身も、商標「Decision Suite」を、本件審判の請求後に、第9類の商品を指定商品として、慌てて出願している(商願2006−118537号、甲第8号証)。被請求人の答弁書における論理では、上記出願の必要性は全くないはずである。また、被請求人は、商標「DECISIONSUITE」を第42類の役務「電子計算機用プログラムの提供」を含む役務につき商標登録(登録第4913298号、甲第9号証)している。被請求人の答弁書における論理によれば、上記役務についても、「DECISION」の商標登録をすれば十二分であることになる。しかるに、「DECISIONSUITE」の態様で商標登録を行っているのである。このように、被請求人の論理と行動は、首尾一貫しない矛盾したものであって、到底採用できないものであると言わざるを得ない。

さらに、被請求人の提出に係る乙第28号証の平成18年(行ケ)第10043号審決取消請求事件における知的財産高等裁判所判決の事案は、登録商標「速脳速聴」に対して、一般の需要者でも容易に理解している一般的用語である「基本プログラム」の文字を付して使用した場合の事案であって、本件とは全く異なるものであって、到底採用し得ないものであることは多言を要しないであろう。本件も「DECISIONパッケージソフト」又は「DECISIONパッケージ」と表示されていれば、同様に解することができようが、本件の場合、使用に係る商標は「DECISION SUITE」と一体不可分のものであって、登録商標「DECISION」に一般的用語を付したものではないのである。

以上述べたごとく、乙各号証に表示されてなる使用に係る商標では、本件商標の使用とは到底認められない。

したがって、被請求人の提出に係る乙各号証によっては、上記要件中イの要件については、いまだ証明されていないと言わなければならない。

第3 被請求人の主張

被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第29号証を提出した。

1 本件商標の使用の概要

(1)平成17年以来、被請求人は、電子計算機用プログラムに、本件商標と同一性を有する商標「DECISION SUITE」を使用している(乙第3号証ないし同第16号証)。

(2)「DECISION SUITE」は、従業員数500名以下、売り上げ300億円以下の中堅・中小企業向けのERP導入に必要となるソフトウエア、ハード、サービスなどをパッケージ化して提供するもので、会計・販売管理パッケージを手始めに、広範な業務を可能とするソフトウエアを中心とする一式のパッケージである。「DECISION SUITE」は、平成17年5月発表し、同年6月にその発売を開始して現在に至っている。

(3)「Decision Suite」 は、英語の“De”velopment、”C”orporation、”I”ntelligent、“S”olut“ion”の各単語に由来し、これを合成して案出した、「意志決定システム」 という意味合いを込めた「Decision」(デシジョン)に、商品の種類、内容を示すために、「複数の関連プログラムを一つにまとめたパッケージソフトウエア」を意味する一般的用語「Suite」を付加した標章である(乙第29号証)。

(4)本件商標の使用態様について、本件商標権者が製造、販売する商品「Decision Suite」の個装箱の表面及び横面に「Decision Suite」の標章を付けている。本件商品は、複数のDVDディスクにより提供されるものであるが、各DVDディスクのラベル、ライセンス証書に「Decision Suite」の標章を付している(乙第6号証)。

2 本件商標の使用

(1)本件商標の所有者である東京都港区港南2丁目16番6号所在、旧名称キヤノン販売株式会社、現名称キヤノンマーケティングジャパン株式会社は、日本オラクル株式会社と基幹系ソリューション分野で提携し、中堅・中小企業向けERPパッケージソフトウエア「DECISION SUITE」を開発した。

「DECISION SUITE」は、商品の販売、会計を中心とする企業経営のスピード化と「見える化」を実現するための経営管理システムで、従来は大企業向けに開発、提供されてきたシステムをパッケージ化して、中堅・中小企業向けに提供する商品であって、パッケージ化されたコンピュータソフトウエアの販売を中心に、導入支援、運営保守及び教育サービスなどを総合的に提供する。

平成17年5月10日付で各社マスコミを通じいっせいに発表し、同年6月販売を開始、現在に至っている。被請求人が提供する「DECISION SUITE」の商品の構成、包装及びDVDディスクにより提供する商品であるパッケージソフトウエアの外観、標章「DECISION SUITE」の使用態様、その使用の事実は乙第6号証に示されている。

(2)本件商標の使用について、その広告に本件商標を付して電磁的方法により提供している一例を提示すると、平成17年5月10日、被請求人である本件商標権者は同社のホームページにおいて、「DECISION SUITE」(ディシジョン スイート)を6月より国内で発売することを発表した(乙第3号証)。乙第3号証は、平成18年12月11日付で印刷されたものであるが、同記事には、「ERP(統合基幹業務)パッケージソフト“キャノンDECISION SUITE(ディシジョン・スイート)”を、6月より販売していきます」との記事が記載されている。この記事の冒頭、右肩部に表された 2005年5月10日の日付、掲載記事の内容よりして、これが同日付で発表されたことは明白である。

(3)本件商標の使用について、他の一例として、広告に本件商標を付して頒布している行為を提示すると、商標権者は、平成17年の発売開始以来、パンフレットを作成し頒布している。

乙第4号証のパンフレットは「Canon Decision Suite」と題され、第1ページ中央上部に大きく「Decision Suite」、第2ページの冒頭、第3ページの冒頭及び中央部に「DECISION SUITE」が表わされ、同第4ページの最下部には、「2005年5月現在」と明記されており、これが、上記発表時に頒布されたものであることが示されている。

乙第5号証のパンフレットには、中堅企業向けERPパッケージ「DECISION SUITE」と題され、大きく「DECISION SUITE」及びそれに相応する片仮名文字「ディシジョン スイート」 が、その第1ページ上部、「DECISION SUITE導入のメリット」なる標題がその中央部、「Decision Suite」の文字がその下部図表の左上部に表わされている。第2ページ上部にも「Decision Suite」が表され、第3ページの末尾にも「Decision Suite」と記載されている。第4ページの最下部には、「2006年10月現在」と明記されており、少なくとも2006年10月以前より頒布されていたものであることが示されている。

(4)雑誌広告について、商標権者は、2005年10月24日付発行、「日経情報ストラテジー」の巻頭の広告ページに、「キヤノンとオラクルが共同開発した先端のERP誕生」と題する広告を掲載し、中堅・中小企業向けERPソリューション誕生として、商標「Decision Suite」を表示した広告を掲載している(乙第7号証)。

(5)さらに、商標権者は、2006年(平成18年)1月25日付発行の「日経BPムック/中堅・中小企業のためのERP導入実践ガイド2006年版」の巻頭広告ページ(第6ページ)に、上記と同様、「キヤノンとオラクルが共同開発した先端のERP誕生」と題する広告を掲載し、中堅・中小企業向けERPソリューション誕生として、商標「Decision Suite」の標章を表示した広告を掲載している(乙第8号証)。

同書には、第142ページ以下で、被請求人の「DECISION SUITE」に関する詳細な記事が掲載されている(乙第7号証)。

(6)商標権者は、日経BP社2006年2月24日付発行「ソリューションプロバイダ2006」の広告ページに、上記と同様、「キヤノンとオラクルが共同開発した先端のERP誕生」と題する広告を掲載し、中堅・中小企業向けERPソリューンョン誕生として、商標「Decision Suite」を表示した広告を掲載している(乙第9号証)。

(7)展示及び広告の一例として、商標権者は、2006年11月10日、港区台場のホテル日航東京で開催された「MCFrame Forum 2006」に同商品を展示し、そこで頒布された「MCFrame ソリューションブック」の広告ページに、上記の文章を一部修正した「キヤノンとオラクルが共同開発したERP。『経営の見える化 』を実現。」と題する広告を掲載し、中堅・中小企業向けERPソリューション、「Decision Suite」の標章を表示した広告を掲載している(乙第10号証)。

(8)さらに、日本オラクル株式会社が2005年12月1日発行した「オラクル通信」には、「キヤノンとオラクルが共同開発した先端のERP誕生、と題する広告を掲載し、中堅・中小企業向けERPソリューション誕生として、「Decision Suite」の標章を表示した広告が掲載され、同書には「DECISION SUITE」に関する詳細な記事が掲載されている(乙第11号証)。

3 本件商標の使用に関する報道記事

(1)被請求人の「Decision Suite」の使用については、 EnterpriseWatch、CIO Online、japan.internet.com、OracleJapanなどの各社インターネット上の記事において報道されており、前項記載の事実が第3者の記事によって、客観的に証明されている(乙第12号証ないし同第15号証)。

(2)2005年5月11日付発行の電波新聞、同日付発行の日刊工業新聞、同日付発行の日経産業新聞、同5月13日付発行のフジサンケイビジネスアイ、同5月16日付発行の日経流通新聞などの各誌において、「ディシジョン・スイート」「キヤノン ディシジョン・スイート」の販売開始が報道されており、上記事実が第3者の多数の記事により客観的に示されている(乙第16号証)。

4 商標の同一性

(1)被請求人が使用する 「Decision Suite」、「DECISION SUITE」、「ディシジョン・スイート」及び「キヤノン ディシジョン・スイート」などの各標章は、本件商標と同一性を有する商標であって、上記乙第3号証ないし同第16号証により、本件商標が使用されている事実が立証されている。

(2)被請求人の使用にかかる「Decision Suite」、「DECISION SUITE」、「ディシジョン・スイート」及び「キヤノン ディシジョン・スイート」などの各使用態様は、「Suite」、「SUITE」及び「スイート」の文字を含んだ構成からなり、本件商標及びその発音で文字の表示を変更する「ディシジョン」自体ではないことはこれを認めるところである。

ここにおいて、英語の「Suite」は、ひとそろい、一式、一組などの意味を有する用語であって、特に、IT業界、コンピュータ関連業界においては、「複数の関連プログラムを一つにまとめたパッケージソフトウエア 」を意味するものとして広く知られ、一般的に使用されている用語であることから、本件商標は、商品の種類、内容を表わすにすぎないこの一般名称「Suite」を捨象し、「DECISION」としてその登録を取得し、被請求人は、本件商標を基礎に上記乙第3号証ないし同第16号証に示す「Decision Suite」、「DECISION SUITE」、「ディシジョン・スイート」及び「キヤノン ディシジョョン・スイート」を使用しているものである。したがって、これら名称の構成の中で商品名といえるのは、「DECISION」のみである。

(3)「英辞郎」、「e−Words」、「gooビジネスEX」 、「goo辞書」などの各種ウエブ辞書には、「Suite」、「SUITE」、「スイート」の意味が必ず掲載されている(乙第17号証ないし同第20号証)。

IT業界、コンピュータ関連業界において、「Suite」、「SUITE」、「スイート」は、単に、「複数の関連プログラムを一つにまとめたパッケージソフトウエア」 (または、「特定用途のソフトウエアを詰め合わせたソフトウエアパッケージ」 「一そろい、一組のソフトウエア 」 ) を意味する一般名称として、認識されている用語であるにすぎない。

(4)被請求人の提供にかかるソフトウエアは、中堅・中小企業における販売から製造及び会計処理の一連の処理を効率的に行い経営の意思決定を迅速かつ明瞭に行わしめるパッケージであって、被請求人の使用にかかる「Decision Suite」、「DECISION SUITE」、「ディシジョン・スイート」及び「キヤノン ディシジョン・スイート」の標章は、「Decision」、 「DECISION」、「ディシジョン」及び「キヤノン ディシジョン」という商品名のパッケージソフトウエアであって、「Suite」、「SUITE」、「スイート」の部分は、単なる商品の一般名称、内容、種類などの一般的な名前の部分として認識される。

(5)「Suite」「スイート」 は、本来、ひとそろい、一式、一組などの意味を有する平易な用語であって、特に、IT業界、コンピュータ関連業界においては、本件商標と同様に、「複数の関連プログラムを一つにまとめたパッケージソフトウエア」を意味する一般名称として広く使用されている。

その一例を示すと、乙第21号証ないし同第27号証に示すとおり、例えば、「PocketLingo Suite」「SDL Localization Suite」 「Biz−Collections Developer’s Suite」「Production Suite」「GUARDIANSUITE」「Mail Magic 2.0 Suite Pack」「Adobe Creative Suite」のパッケージソフトウエアにおいては、「複数の関連プログラムを一つにまとめたパッケージソフトウエア」を意味する一般名称「Suite」 「SUITE」が付加され、用いられている。これらの各標章において、「Suite」「スイート」の部分は、いずれも、単なる商品の種類、内容を表示するにすぎない。すなわち、この種業界において、末尾に付された「Suite」「SUITE」 の有無によって、別の商標となるものではなく、その有無にかかわらず実質的に同一商標として理解され、認識されていることが明らかである。

(6)上記のとおり、自他商品・役務識別力を有する標章に、一般名を付加しても、同一性を害するものではないとする判断は、不使用取消審判における商標の同一性に関する裁判所においても確立された判断法則となっている。

平成18年(行ケ)第10043号審決取消請求事件における知的財産高等裁判所判決は、登録商標「速脳速聴」について、「速脳速聴基本プログラム」「速脳速聴術」なる標章の使用が立証された事案において、自他商品識別力を有する「速脳速聴」に、一般的用語にすぎない「基本プログラム」「術」を付して一連、一体に表示したとしても同一商標の使用と判断すべきであると詳細な検討を行って認定している(乙第28号証)。

本件においても、自他商品識別力を有する商標として登録適格を認められた「DECISION」に、単に、ひとまとめ、ひとそろい、一式、一組などの意味を有する平易な用語で、特に、IT業界、コンピュータ関連業界においては、乙第17号証ないし同第20号証に示すとおり、「複数の関連プログラムを一つにまとめたパッケージソフトウエア 」を意味する一般的用語として認識されている。また、本件以外においても、乙第21号証ないし同第27号証の各標章の例に示されるように、IT業界、コンピュータ関連業界において、商品名に「Suite」「スイート」 を付加した例が多数認められる。

したがって、本件において、「Decision Suite」、「DECISION SUITE」、「ディシジョン・スイート」及び「キヤノン ディシジョン・スイート」の使用は、本件商標の使用と解されるべきものである。

5 むすび

以上、被請求人、本件商標権者は、本件商標を平成17年5月以来使用し、少なくとも、本件審判請求の予告登録日以前、過去3年以内に、本件取消審判の対象とされた指定商品中に含まれる「電子計算機用プログラム」について使用しており、乙第3号証ないし同第16号証により、本件商標が使用されている事実が証明されている。

第4 当審の判断

1 被請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。

(1)被請求人のホームページ(乙第3号証)には、2005年5月10日付けで、「・・・ERP(統合基幹業務)パッケージソフト“キャノンDECISION SUITE(ディシジョン・スイート)”を6月より国内で販売していきます。」との記述が掲載されている。

そして、上記同商品の販売等に関する記事は、同日以降の電波新聞、日刊工業新聞等の新聞各紙において掲載されたことが認められ(乙第16号証)、同様に、インターネットの記事からも上記同商品の販売等の事実を窺い知ることができる(乙第12号証ないし同第15号証)。

(2)2005年5月現在とする被請求人の商品リーフレット(乙第4号証)には、表紙上段に「DECISION SUITE」(各語頭の「D」と「S」は大きく表されている。)との表示があり、「最先端ビジネスソリューションのコアシステム・・・『DECISION SUITE』」として、その製品概要が記されている。また、2006年10月現在とする被請求人の商品リーフレット(乙第5号証)には、表紙上段に「DECISION SUITE」の表示があり、「企業経営の『見える化』と『スピード化』を促進し、企業価値を高める革新的なERPシステム」とし、当該商品による業務プロセスのサンプル、全体構成図や製品概要等が記されている。

(3)乙第6号証は、商品の写真と認められるところ、その包装箱の上部に「DECISION SUITE」(各語頭の「D」と「S」は大きく表されている。)の表示があり、本体であるDVDの表面及びスターターキットライセンス証書の上段に同表示が認められる。また、本体であるDVDは複数枚のものと推認される。

(4)2005年10月24日発行の雑誌「日経情報ストラテジー11月号」(乙第7号証)には、「キヤノンとオラクルが共同開発した先端のERP誕生」と題し、中堅・中小企業向けERPソリューション誕生として、「DECISION SUITE」(各語頭の「D」と「S」は大きく表されている。)の標章を表示した広告が掲載されている。

2006年1月25日発行の「日経BPムック ERP導入実践ガイド2006年版」(乙第8号証)にも同様の広告が掲載され、同誌には、被請求人の商品「DECISION SUITE」に関する紹介記事も掲載されている。

2006年2月24日発行の「ソリューションプロバイダ総覧2006」(乙第9号証)及び2005年12月1日発行の「オラクル通信」(乙第11号証)にも、上記と同様の広告が掲載された。

2006年11月10日に東京都港区で開催されたフォーラムで頒布されたと推認できる「MCFrame ソリューションブック」(乙第10号証)には、「キヤノンとオラクルが共同開発したERP。『経営の見える化 』を実現。」と表題し、中堅・中小企業向けERPソリューションとして、「DECISION SUITE」(各語頭の「D」と「S」は大きく表されている。)の標章を表示した広告が掲載されている。

(5)以上を総合すれば、本件審判請求の登録前3年以内にあたる前記年月日に、「DECISION SUITE」あるいは「Decision Suite」と表示する商標(以下「使用に係る商標」という。)が、商標権者によって、「電子計算機用プログラム」の一と認められる商品について、使用されたということができる。

2 上記1において、使用に係る商標が「電子計算機用プログラム」についての使用であること、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内で使用されたこと、その使用者が商標権者であることについては、これを認めることができ、かつ、これらの点については、当事者間に争いはない。

しかし、上記1の使用に係る商標が本件商標の使用と認め得るものであるか否かについては争いのあるところである。

3 そこで、上記1の使用に係る商標が本件商標の使用に該当するものであるか否かについて判断する。

(1)「SUITE」「Suite」の語について

被請求人提出の証拠(乙第17号証ないし同第20号証)によれば、「英辞郎」(乙第17号証)には、「suite」について、「(複数の関連プログラムを一つにまとめた)パッケージソフト」と記載され、「IT用語辞典 e−Words」(乙第18号証)には、「スイート【suite】」として、「特定用途のソフトウエアを詰め合わせたソフトウエアパッケージ。」「スイートとして最も著名なのは『オフィススイート』で、ワープロソフト・表計算ソフトなど、オフィス事務で使用されるソフトウエアがセットになっている。」との記載がある。また、「gooビジネス EX」(乙第19号証)にも、前記乙第18号証と同様の記載がある。さらに、「goo辞書」(乙第20号証)には、英語「suite」が「一そろい,一組(家具・ソフトウエアなど)」の意を有するとの記載がある。

そして、証拠(乙第21号証ないし同第27号証)によれば、パッケージ化したソフトウエア(商品)に関して、例えば、乙第22号証には、「SDL Localization Suite」と表示するとともに、「SDLのフルパッケージ」「Word文書や・・・に必要なすべてのSDL製品が含まれています。」として、その商品の構成等について説明を記載し、乙第24号証には、「Production Suite」と表示するとともに、「グラフィックス、・・向けの業務用アプリケーションを1つにまとめた、・・ソフトウエアパッケージです。」のように、その商品の構成等について説明を記載している。これらの例のように、商品の構成が複数のパッケージ化したしたソフトウエアであることを示すものとして、商品名の末尾等に「SUITE」「suite」の文字を表示しているのが認められる。

してみると、「SUITE」「suite」の文字(語)は、元来「一そろい、一組」の意を有する英語と認められるところ、「複数の関連プログラムを一つにまとめたパッケージソフトウエア」を意味する一般的用語として、「電子計算機用プログラム」を取り扱う業界において普通に使用されているとみるのが相当である。

したがって、前記文字は、商品「電子計算機用プログラム」との関係においてみれば、商品の用途、用法、品質を表す語として理解されるというのが相当であり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。

(2)本件商標と使用に係る商標

本件商標は、「DECISION」を標準文字で表してなるものであるところ、「DECISION」は「決定」等の意を有する親しまれた英語の一であり、一方、使用に係る商標は、「DECISION SUITE」あるいは「Decision Suite」と表されているものである。

しかして、上記使用に係る商標において、「DECISION」と「SUITE」あるいは「Decision」と「Suite」の間には間隔があり、それぞれの両語が視覚上分離して看取されるものであるうえ、両語を結合したことによって、特定の観念を生じさせる一連の既成語又は熟語を形成したとも認められないものである。

そうとすれば、使用に係る商標は、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得る「DECISION」あるいは「Decision」に、その識別性に変更を与えない範囲で上記(1)の「SUITE」あるいは「Suite」の文字を付加した形態での使用とみるのが相当であり、要部「DECISION」あるいは「Decision」において、本件商標とその構成文字を同じくし、「ディシジョン」の称呼を共通にするものであり、観念上異なるものでもないから、使用に係る商標は、本件商標と社会通念上同一と認め得る商標と判断して差し支えがないというべきである。

(3)請求人の主張等について

請求人は、IT業界、コンピュータ関連業界において、「SUITE」の文字が「複数の関連プログラムを一つにまとめたパッケージソフトウエア」又は「特定用途のソフトウエアを詰め合わせたソフトウエアパッケージ」を意味する専門用語であることは、否定するものではないが、一般に使用されている英和辞典には掲載されておらず、コンピュータ関連用語についても詳しいウェブ辞書やIT用語辞典を紐解いて初めて記載されているものであり、一般に知れ渡った用語とは言い得ない。パッケージソフトウエアは、「パッケージソフト」又は「パッケージ」と略されて表示されることが一般的な例であり、商品「電子計算機用プログラム」を、実際に購入する一般の需要者が、「SUITE」のかかる意味合いを知っている可能性は、極めて低いものである旨主張している。

しかしながら、本件において、使用に係る商標が使用されている商品は、「中堅・中小企業における販売から製造及び会計処理の一連の処理を効率的に行い経営の意思決定を迅速かつ明瞭に行わしめる」ためのERP(統合基幹業務)ソフトウエアと認められるものであり、また、例えば、乙第14号証の中段に「価格も2,000万円を切るもの。」とあるように、廉価な部類に属する商品ではないと容易に推認し得るものであることから、当該商品の性格に鑑みれば、その取引者・需要者(取引担当者を含む。)も、一般の消費者ではなく、法人等においてその業務の運営に関わりをもつこの種の商品に関連して、少なくとも一定程度の専門的な知識を有する者とみるのが相当である。なお、一般的に、商品「電子計算機用プログラム」の購入をする者は、コンピュータ関連用語やIT用語について比較的関心が高いというべきである。

また、一般に使用されている英和辞典に掲載されていないことや、パッケージソフトウエアを「パッケージソフト」又は「パッケージ」と表示することが行われていることをもって、上記のとおり「複数の関連プログラムを一つにまとめたパッケージソフトウエア」を表すと認め得る「SUITE」の機能が減殺されるということもできない。

したがって、請求人の主張は、上記(1)及び(2)の判断を左右しないというべきである。

(4)小括

以上のとおり、使用に係る商標は、本件商標と社会通念上同一と認め得る商標であり、被請求人提出の証拠に徴すれば、これが商品「電子計算機用プログラム」に使用されたと認め得るものである。

4 結語

以上によれば、商標権者は、本件審判請求の登録前3年以内である上記1の年月日に、取消請求に係る指定商品中「電子計算機用プログラム」について、本件商標の使用をしたと認められるものである。

したがって、本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが指定商品について使用をしていないものには該当しないから、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべき限りでない。

よって、結論のとおり審決する。

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