結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2007−890035(T2007−890035/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4884606号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおり「AMORE」の欧文字を横書きし、その末尾にハート型の図形を配した構成よりなり、平成16年5月26日に登録出願、第14類「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製宝石箱,貴金属製の花瓶及び水盤,記念カップ,記念たて,身飾品,貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,貴金属製コンパクト,時計,貴金属製喫煙用具」及び第26類「漁網製作用杼,メリヤス機械用編針,テープ,リボン,編みレース生地,刺しゅうレース生地,房類,組みひも,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン類,造花,つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」を指定商品として、同17年8月5日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるとして引用する登録商標は、以下の(1)及び(2)のとおりである。
請求人は、「本件商標の指定商品中、『身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品』についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
(1)称呼類似
ア 本件商標と引用商標1について
本件商標は、アルファベット文字の「AMORE」により「アモーレ」の称呼を生じ、引用商標1は、「アマーレ」の称呼が生じる。
そこで、本件商標と引用商標1の称呼を対比すると、両者は共に同数の音から構成され、第2音以外の各音を同じくし、異なる第2音の「モ」と「マも共にマ行音に属する。しかも、「モ」と「マ」の両音は、両唇を密閉気味にし、有声の気息を鼻腔に通じて発音する通鼻音であり、発音上近接するところにある。これらを一連に称呼する場合、両者は、第2音以下がいずれも長音を伴う共通音であることと併せて、全体の語韻語調が極めて近似するものとなる。
したがって、本件商標と引用商標1とは、称呼上類似の商標となる。
イ 本件商標と引用商標2について
本件商標は、アルファベット文字の「AMORE」により「アモーレ」の称呼を生じる。また、引用商標2は、通常フランス語では「アムール」の称呼が生じるものの、ローマ字読みで呼ぶ場合「アモール」の称呼が生じる。
そこで、これらの称呼を対比するに、両者は共に同数の音から構成され、語尾以外の各音を同じくし、異なる音の「レ」と「ル」も共にマ行音に属する。しかも、マ行は、有声の気息を鼻腔に通じて発音する通鼻音に近く、発音上近接するところにある。これらを一連に称呼する場合、全体の語韻語調が極めて近似するものとなる。
したがって、本件商標と引用商標2は称呼上類似の商標となる。
(2)観念類似
本件商標は、その指定商品「身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品」については、本件商標の登録出願前に登録となっている引用商標1及び引用商標2の観念が類似しているため、上記指定商品においては、登録を無効すべきである。
本件商標の「AMORE」はイタリア語で男女間で使われる「愛」という意味を持ち、引用商標1の「AMARE」は同じくイタリア語で家族間で使われる「愛」という意味を持つ。さらに、引用商標2の「AMOUR」はフランス語で「愛」という意味になる。
このように、本件商標、引用商標1及び引用商標2は、共に「愛」という観念が生じる。
そして、この本件商標、引用商標1及び引用商標2が「愛」を意味する言葉であることは、イタリア語・フランス語を特別に学んでいない日本人であっても、容易に生じ得る範疇である。そのため、観念から生じるイメージで商標を捉えた場合、日本人にとっては、識別し難い商標となる。
よって、本件商標、引用商標1及び引用商標2は、「愛」という観念において類似する。
(1)称呼について
先ず、引用商標2の商標「AMOUR」が「アモール」と称呼される商標登録第2697903号(甲第4号証)がある。
この登録商標は、「AMOUR」筆記体と「アモール」のカタカナを2段書きで書したものである。この甲第4号証は、「AMOUR」を「アモール」と呼ぶ一例である。このように、引用商標2の商標「AMOUR」には「アモール」の称呼が生じる。
次に、本件商標と引用商標1とは、同じ3音で真ん中の音が「マ」と「モ」との相違である。
そこで、類似した審判を調べた結果、三音中の真ん中の一音のみが「モ」と「マ」で相違する例として、 昭和51年審判第5153号(甲第5号証)(「トモス」と「トマス」の称呼を類似とする)審決がある。
その審決には、「本件商標より生じる「トモス」の称呼と上記引用商標より生じる「トマス」の称呼とは、同数の音数より構成され、第2番目の音において「モ」と「マ」の音の差異を有するにすぎないものであり、しかも誤差異音とても、音質を同じくするものであるから、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときには、その語調、語感が近似したものとなり、互に聞きあやまるおそれのあるものといわなければならない。」としている。
さらに、本件商標と引用商標2とは、同じ3音で最後の音が「レ」と「ル」との相違となる。
そこで、類似した審判を調べた結果、三音中の最後の音が「レ」と「ル」で相違する例として、昭和51年審判第2149号(甲第6号証)(「アモーレ」と「アモール」の称呼を類似とする)審決がある。
その審決には、「引用登録第607248号商標の商標権は、昭和48年3月20日期間満了により消滅したものであることを確信し得た。してみれば、上記の登録商標を引用して、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定の拒絶の理由は解消に帰した。」としている。つまり、この審決は、特許庁では、「アモーレ」と「アモール」とは称呼類似とみている証拠となる。
このように、過去の事例からも明らかのように、引用商標2の「AMOUR」は「アモール」の称呼が生じるものであり、さらに特許庁においては、例え音数の少ない3音であっても、語韻語調が極めて近似する場合には、称呼類似としている。
したがって、本件商標「アモーレ」と引用商標1「アマーレ」、本件商標「アモーレ」と引用商標2 「アモール」についても、称呼類似である。
(2)してみれば、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、その外観、観念の異同について論じるまでもなく、称呼において類似する商標であり、かつ、指定商品が引用商標の指定商品中に包含されているものであることが明らかである。
以上のとおり、本件商標の指定商品中「身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品」についての登録は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1項に該当し、その登録を無効とすべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
(1)本件商標と引用商標1との称呼について
請求人は、本件商標と引用商標1の称呼を対比し、「両者はともに同数の音から構成され、第2音以外の各音を同じくし、異なる第2音の「モ」と「マ」も共にマ行音に属するとして、さらに、「モ」・「マ」の両音の発音について種々主張している。
しかるに、本件商標と引用商標1とは、3音節の極めて短い商標であり、この3音中の1音のみの相違は、需要者に両商標を識別できる相違である。
また、引用商標1の称呼「アマーレ」では、全体のアクセントとしては「マ」の部位が強く発音されるものであり、本件商標の称呼「アモーレ」が全体として平坦なアクセントで発音されるものであり、両者は全体のアクセントとしても相違し、かかる相違は需要者に両商標を識別できる相違である。
よって、本件商標と引用商標1とは、称呼上類似するものではなく、本件商標は引用商標1と類似しない。
(2)本件商標と引用商標2との称呼について
請求人は、引用商標2について、「アムール」の称呼以外に、ローマ字読みで読む場合「アモール」の称呼が生じる旨主張している。
しかしながら、一般の需要者が引用商標2に接した際に、この引用商標2の称呼が「アムール」であると容易に認識するものである。なお、この点については、請求人も観念類似の主張に際して「イタリア語・フランス語を特別に学んていない日本人であっても、容易に生じ得る範疇である。」と主張していることからも明らかである。したがって、本来生じない称呼をもとに両商標の称呼類否の判断を行っている請求人の主張には理由がない。
また、仮に需要者がローマ字読みしたとしても、引用商標2の「AMOU」の部位から「アモウ」もしくは「アモー」の称呼が生じたとしても、「R」の部分をそのまま「ル」とローマ字読みされるとはいえない。つまり、仮に引用商標2をローマ字読みにしたとしても、「アモウー」や「アモー」と称呼されるにすぎない。
さらに、百歩譲って、仮に引用商標2が、請求人主張のように「アモール」と称呼されると仮定してみても、既述のように本件商標は3音節の極めて短い商標であるため、末尾の一音の相違は、需要者に両商標を識別できる相違である。
よって、本件商標と引用商標2とは、称呼上類似するものではなく、本件商標は引用商標2と類似しない。
請求人は、本件商標と引用商標1及び引用商標2とが観念において類似するため、登録を無効とすべきであると主張している。
しかしながら、商標の類否判断は、称呼・観念・外観の各要素を総合的に判断して、両商標が需要者をして混同を生じせしめるかを判断すべきものであり、一要素が類似するからといって、即座に商標同士が類似すると判断できるものではないことは明らかである。よって、請求人の主張は、単に商標が生じうる観念を対比したのみの主張であり、採用できるものではない。
仮に、請求人主張のように、本件商標が「イタリア語での男女間で使われる愛の用語」として、引用商標1が「イタリア語での家族間における愛の用語」として、引用商標2 が「フランス語での愛の用語」として、需要者に認識させるものと仮定しても、これらは言語の相違(イタリア語とフランス語との相違)や対象の相違によって需要者に異なるものと認識されるものである。そして、かかる相違は、この三つの各商標を需要者が識別し得る相違である。
以上のように、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、観念上類似するものではなく、本件商標は引用商標1及び引用商標2と類似しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
当事者間に利害関係について争いがないので、本案に入って検討する。
本件商標は、別掲(1)のとおり欧文字とハートの図形の組み合わせよりなるところ、構成中の「AMORE」の文字は、「愛、恋愛」の意味を有するイタリア語として我が国において親しまれている語であるから、これよりは、「アモーレ」の称呼を生じ、「愛、恋愛」の観念を有するとみるのが相当である。
一方、引用商標1は、別掲(2)のとおり、「Amare」の欧文字と「アマーレ」の片仮名文字を上下二段に横書きしてなるところ、構成中下段の「アマーレ」の片仮名文字が上段の欧文字「Amare」の自然の称呼を表したものとみられることから、片仮名文字に相応して「アマーレ」の称呼が生じるものとみるのが相当である。また、「Amare」の文字は、イタリア語で「愛する」の意味を有する語であるとしても、我が国おいて格別親しまれた語とはいい難いものであるから、特定の意味を有しない一種の造語として認識されるとみるのが相当である。
さらに、引用商標2は、上記第2のとおり、「AMOUR」の欧文字よりなるところ、該文字は、仏語で「愛、恋愛」の意味を有する語であり、その発音方法に倣い「アムール」の称呼を生じるとみるのが相当であるとしても、我が国において格別親しまれた語とはいい難いものであるから、直ちに特定の観念を生じない造語よりなるものとして認識されるとみるのが相当である。
そこで、先ず、本件商標より生ずる「アモーレ」の称呼と引用商標1より生ずる「アマーレ」の称呼を比較すると、両者は、長音を含めて4音という短い音構成よりなる上に、相違する「モ」と「マ」の音のいずれもが長音を伴うためにアクセントがついて強くはっきりと発音されるから、両者をそれぞれ一連に称呼するときには、該差異音が称呼全体に及ぼす影響は大きいものとなり、音感、音調が異なり相紛れるおそれはないものというべきである。
次に、本件商標より生ずる「アモーレ」の称呼と引用商標2より生ずる「アムール」の称呼を比較すると、両者は、引用商標1の場合と同様に長音を含めて4音という短い音構成よりなる上に、4音中の2音の「モ」「レ」と「ム」「ル」の音を異にするものであるから、両者をそれぞれ一連に称呼するときには、該差異音が称呼全体に及ぼす影響は大きいものとなり、音感、音調が異なり相紛れるおそれはないというべきである。
そして、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、それぞれの構成に照らし外観上も相紛れるおそれのないものである。
さらに、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、引用商標1及び引用商標2が特定の観念を有しないから、観念上比較できないものである。
してみれば、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、その外観、観念及び称呼のいずれの点からみても区別し得る非類似の商標というべきである。
請求人は、過去の登録例(甲第4号証)を挙げて、引用商標2の「AMOUR」から「アモール」の称呼をも生ずる旨主張するが、該登録例の構成中「アモール」の文字の左下から右下にかけて描かれた曲線状の図形を、これに接する取引者、需要者が、直ちに「アモール」の読みに相当する文字を表したものと理解し、認識するとは認め難いものであるから、この登録例のみの証拠から、「AMOUR」の欧文字が「アモール」と称呼されるということはできないものである。
また、請求人は、引用商標2から「アモール」の称呼をも生ずるとした上で、過去の審決例(甲第6号証)を挙げて、本件商標から生ずる「アモーレ」の称呼と引用商標2から生ずる「アモール」の称呼とが類似する旨主張しているところ、該審決例は、引用された登録商標が商標権の存続期間満了により消滅したために、拒絶の理由が解消した案件であって、称呼についての類否判断のないものであるから、証拠になり得ないものである。
さらに、請求人は、過去の審決例(甲第5号証)を挙げて、第2番目の音において「モ」と「マ」の音の差異を有するにすぎない本件商標から生ずる「アモーレ」の称呼と引用商標1から生ずる「アマーレ」の称呼とが類似する旨主張しているが、該審決例は、本件商標とは全体の構成音の並びを異にするものであるから、これと同様に判断することはできないものである。
以上のとおり、請求人の主張は、いずれも採用することができないものである。
したがって、本件商標は、その指定商品中「身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号によって、その登録を
無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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