Trademark Appeal Case
周知流派名の誤認混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2007−900063(T2007−900063/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5000171号商標(以下「本件商標」という。)は、「無外流」の文字を標準文字で表してなり、第25類「洋服,ティーシャツ,スノーボードジャケット,スノーボードズボン,スキージャケット,スキーズボン,つなぎ服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,和服,帯,腰ひも,腰巻,じゅばん,長着,半着,筒袖半着,羽織,はかま,半えり,作務衣,靴下,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,マフラー,帽子,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、平成18年2月24日に出願、同年11月2日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人小西御佐一(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により取り消されるべきである旨主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第30号証を提出した。
第3 取消理由の通知の概要
当審は、平成19年7月18日付けで、商標権者に対し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与え、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものと認める旨通知した。その取消理由の要旨は次のとおりである。
1 登録異議申立人小西御佐一(以下「申立人」という。)の提出に係る証拠及び主張によれば、以下の事実及び事情が認められる。
(1)「無外流」は、江戸時代中期に辻月丹資茂により開かれた剣術の流儀であって、現在に至るまで続いている(初代から第16代)居合いの流儀の名称である(甲第3号証ないし甲第5号証)。
(2)そして「無外流」のつながりをより強くし、広く世に知らしめるため様々な活動が全国各地で行われている(甲第9号証ないし甲第16号証)。
(3)更に、その活動をより体系的に行うことを目的として、平成14年にはNPO法人として東京都の認証を受け届出を行っている(甲第18号証ないし甲第20号証)。なお、当該NPO法人については、「無外流」の活動が東京都に留まらず、広く全国に跨っていること等により、広く活動を行うためには、東京都認定をはずした方がよいのではという考えに基づき、NPO法人自体については発展的解消をしている。
(4)「無外流」とは、武道に携わる者の間においては広く知られているところであるが、この他にも、大衆小説家として著名な故池波正太郎氏による人気時代小説「剣客商売」においても主人公とその息子が無外流の達人として描かれている。この小説は現在に至るまで1800万部も出版されている。加えて、この時代小説は1973年4月〜9月(連続ドラマ)、1982年12月3日(単発ドラマ)、1983年3月(単発ドラマ)、1998年10月〜12月(連続ドラマ)、1999年12月〜3月(連続ドラマ)、2001年6月〜7月(連続ドラマ)、2003年1月〜5月(連続ドラマ)、2004年2月〜3月(連続ドラマ)、2004年12月(単発ドラマ)、2005年1月(単発ドラマ)、2005年9月(単発ドラマ)、2006年6月中(連続ドラマ)と、何度もドラマ化され高視聴率を得ている。このため、武道関係者ならずとも、「無外流」の名を目にし、耳にしたことのある者は多数にのぼるものと思われる(甲第21号証)。
(5)いわゆる武道の世界においては、「流派」「流儀」といったものが非常に大切にされていることは、万人の知るところである。つまるところ、「無外流」を関係者以外のものが無闇に使用することは、関係者においては到底認められないことである。特に本件商標「無外流」については、武道関係者のみならず、(池波正太郎の小説、ドラマの普及により)一般大衆も広く知るところであるから、これを無外流と何ら関係のないものが、みだりに権利化することを認めることは到底できない。
(6)本件商標の指定商品は前記のとおり「洋服,和服,運動用特殊衣服」等である。そもそも、「無外流」の各流派においては、袴や胴着等に「無外流」の文字を刺繍したものを使用している(甲第28号証)。この「無外流」の文字を入れることができる者は、「無外流」の各流派に所属する会員のみである。また、この「無外流」の文字については各流派毎、段位毎にそれぞれ細かい規定に基づき刺繍を行っている(甲第29号証)。そうすると、今まで述べてきた無外流の歴史、武道のあり方、使用の事実を踏まえれば、本件商標の商標権者が本件商標を使用した場合、無外流関係者による使用であると信じてしまう可能性は否めない。
(7)本件商標の指定商品中「和服,帯,腰ひも,腰巻,じゅばん,長着,半着,筒袖半着,羽織,はかま,半えり,作務衣,運動用特殊衣服」といった居合を行う際に使用する可能性のある商品についてはもちろんのこと、関連グッズ商品等が多々発売される現代の商取引においては、他の指定商品についても、無外流関係者による企画商品であると信じてしまうおそれが生じてくる。
(8)そうとすれば、本件商標を商標権者が指定商品に使用した場合、無外流関係者による使用であると信じた取引者及び需要者の期待を裏切り、商品の出所の混同を欺瞞することになり、商品の出所の誤認を生じ、取引の混乱を生じさせるおそれがあるものである。
2 以上のとおり、「無外流」は、居合いの流儀の名称であって、ある程度広く知られていることが認められる。そして、武道の世界においては、「流派」「流儀」といったものが非常に大切にされ「無外流」を関係者以外のものが無闇に使用することは、認められないことである。また、本件商標の指定商品中例えば「袴、胴着」等、居合を行う際に使用する可能性のある商品についてはもちろんのこと、他の指定商品について「無外流」の文字を使用した場合は、取引者及び需要者はその商品が無外流関係者による商品であると信じてしまうおそれが生じるものである。
してみれば、本件商標「無外流」は各流派の共通の財産であり、本件商標を一私人である商標権者がその指定商品について独占して採択、使用することは、公正な取引秩序を阻害するおそれがあるものと認められる。
3 したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものである。
第4 商標権者の意見の概要
商標権者は、前記第3取り消し理由について、次のように意見を述べている。
本件指定商品中の「スノーボードジャケット,スノーボードズボン,スキージャケット,スキーズボン,つなぎ服」は、居合や武道の流派、時代劇とは全くかけ離れた無関係の商品である。また、これらの商品のうち「スノーボードジャケット,スノーボードズボン,スキージャケット,スキーズボン」は、スキーやスノーボードを行う際に特化して着用されるものであり、「つなぎ服」は自動車やオートバイ、その他の機械の整備や組立て作業、更には塗装や大工仕事、清掃作業などの作業着として着用されるものであり、これも特殊用途に用いられるものである。
したがって、これらの商品については、「ティーシャツ,セーター類、ワイシャツ類」などの商品とは異なり、居合や武道の流派の関連グッズとして製造,販売されるようなことは通常は有り得ないことであり、一般の需要者もその点は同様の認識である。そして、たとえ「無外流」が居合,剣術,武道の一流派として周知であっても、逆にテレビ放映や小説などで「無外流」が居合,剣術などの武道の一流派であることが著名であるが故に、武道とは全く関係のない特殊用途に特化して用いられるこれら商品について、需要者が無外流関係者の関連グッズとて認識することは通常は考えられない。
したがって、少なくとも「スノーボードジャケット,スノーボードズボン,スキージャケット,スキーズボン,つなぎ服」については、商品の出所の誤認を生じるようなことなく、公正な取引秩序を阻害するおそれもない。
以上のとおり、本件商標は、指定商品中の少なくとも「スノーボードジャケット,スノーボードズボン,スキージャケット,スキーズボン,つなぎ服」については、公正な取引秩序を阻害するおそれはなく、商標法第4条第1項第7号に違反するものではない。
よって、少なくともこれら商品については、本件商標の登録は維持されるべきである。
第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号でいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」とは、(1)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(3)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合などが含まれるというべきである。当該商標が商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に当たるかどうかは、上記(1)〜(5)の具体的な事情を総合的に考慮して決することになる。「平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決言渡」
2 前記1によれば、指定商品又は指定役務について使用することが社会の一般的道徳観念に反する場合や、それが、商取引の秩序を乱す場合も、当該商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものとして、登録を受けられないものと解される。
3 これを、本件についてみると、前記第3取消理由の通知において認定のとおり、「無外流」は、江戸時代中期より開かれた剣術の流儀であって、現在に至るまで続いている居合いの流儀の名称である(甲第3号証ないし甲第5号証)。
4 「無外流」のつながりをより強くし、広く世に知らしめるため様々な活動が全国各地で行われている(甲第9号証ないし甲第16号証)。
5 その活動をより体系的に行うことを目的として、平成14年にはNPO法人として東京都の認証を受け届出を行っている(甲第18号証ないし甲第20号証)。なお、NPO法人自体については発展的解消をしている。
6 「無外流」とは、武道に携わる者の間においては広く知られているところであるが、この他にも、大衆小説家として著名な故池波正太郎氏による人気時代小説「剣客商売」においても主人公とその息子が無外流の達人として描かれている。この小説は現在に至るまで1800万部も出版されている。加えて、この時代小説は、何度もドラマ化され高視聴率を得ている。このため、武道関係者ならずとも、「無外流」の名を目にし、耳にしたことのある者は多数にのぼるものと思われる(甲第21号証)。
7 武道の世界においては、「流派」「流儀」といったものが非常に大切にされているところである。つまるところ、「無外流」を関係者以外のものが無闇に使用することは、関係者においては到底認められないことである。
8 本件商標の指定商品は、前記第1のとおり「洋服,和服,運動用特殊衣服」等である。そもそも、「無外流」の各流派においては、袴や胴着等に「無外流」の文字を刺繍したものを使用している(甲第28号証)。この「無外流」の文字を入れることができる者は、「無外流」の各流派に所属する会員のみである。また、この「無外流」の文字については各流派毎、段位毎にそれぞれ細かい規定に基づき刺繍を行っている(甲第29号証)。そうすると、本件商標の商標権者が本件商標を使用した場合、無外流関係者による使用であると信じてしまう可能性がある。
9 本件商標の指定商品中「和服,帯,腰ひも,腰巻,じゅばん,長着,半着,筒袖半着,羽織,はかま,半えり,作務衣,運動用特殊衣服」といった居合を行う際に使用する可能性のある商品についてはもちろんのこと、商標権者が意見書で主張している「スノーボードジャケット,スノーボードズボン,スキージャケット,スキーズボン,つなぎ服」についても、無外流関係者による企画商品であると信じてしまうおそれが生じるものである。
10 そうとすれば、本件商標を商標権者が指定商品に使用した場合、無外流関係者による使用であると信じた取引者及び需要者の期待を裏切り、商品の出所の混同を欺瞞することになり、商品の出所の誤認を生じ、商取引の混乱を生じさせるおそれがあるものである。
11 以上のとおり、本件商標「無外流」は各流派の共通の財産であり、本件商標を一私人である商標権者がその指定商品について独占して採択、使用することは、社会の一般的道徳観念に反し、商取引の秩序を乱すおそれがある商標といわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号の規定に違反してされたと認められるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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