Trademark Appeal Case
地域名と地理的名称の結合の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2007−4844(T2007−4844/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「信州アルプス牛」の文字を標準文字で書してなり、第29類「牛肉,牛肉を使用した肉製品」を指定商品として、平成18年3月14日に登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『信州アルプス牛』の文字を書してなるところ、近時、『長野(信州)県で育った牛』を『信州アルプス牛』と指称している実情があることからすると、本願商標に接する取引者・需要者をして、前記意味合いを認識するに止まり、これをその指定商品に使用するときは、単にその商品の品質・産地を表示するにすぎないものであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 本願商標は、上記第1のとおり、「信州アルプス牛」の文字を標準文字で書してなるところ、その構成中「信州」の文字が、「信濃国の別称」(株式会社岩波書店「広辞苑第5版」)、「信濃国(現長野県)の別称」(株式会社三省堂「コンサイス日本地名事典第3版」)であって、また、「信濃」の文字が「旧国名。いまの長野県」(株式会社岩波書店「広辞苑第5版」)、「旧国名の一。長野県全域にあたる」(株式会社三省堂「大辞林第2版」)を意味するものであることから、「信州」の文字が現在の長野県を認識させる語として広く知られているものと言うことができる。
2 ところで、「長野県」は、一般に「中央高地の大部分を占め、西部は飛騨・木曾・赤石山脈が雁行して連なり、東部は関東山地・三国山地となる」(株式会社三省堂「大辞林第2版」の「長野」の項目より。)ことが知られているとともに、これら飛騨山脈・木曾山脈・赤石山脈の各山脈を、それぞれ「北アルプス」「中央アルプス」「南アルプス」と呼んでいること、及び、これらの3山脈を総称して「日本アルプス」と称されていることは、別掲1(1)ないし(14)の辞書並びにインターネットのウェブページの記載から認められる。
3 次に、本願商標の構成中「アルプス」の文字は、別掲2(1)及び(2)のインターネットのウェブページの記載によると、上記2の長野県内における「日本アルプス」を指称している事実が認められる。
4 さらに、本願商標の構成中「信州アルプス」の文字については、別掲3(1)ないし(11)の新聞記事情報やインターネット上のウェブページの記載のとおり、本願指定商品を取り扱う食品業界において、商品の品質等を表示するのに普通に採択、使用されているものであり、別掲3(12)の「JA全農長野 JA長野県・信州肉牛生産販売協議会」のウェブページ(http://www.nn.zennoh.or.jp/gyuniku/shinshyubeef/shinshyubeef.html)では、「信州アルプス牛」の文字が使用されていること、並びに、その生産団体であるJA長野県・信州牛肉生産販売協議会にかかる「信州アルプス牛」の飼育頭数が「7,000頭」であることの記載が、それぞれ認められる。
5 してみると、本願商標は、「信州」、「アルプス」及び「牛」の文字を一連に書した「信州アルプス牛」の文字からなるものであり、上記1ないし4の事実を合わせてみれば、「信州」の文字と「アルプス」の文字とがあいまって、全体として「長野県で生産された牛」の意味合いを、容易に理解、認識させるものと言うことができる。
してみれば、本願商標は、これをその指定商品「牛肉」及び「牛肉を使用した肉製品」に使用しても、これに接する需要者をして、「長野県で生産された牛の肉。長野県で生産された牛の肉を使用した肉製品」であると理解させるに止まり、単に商品の品質、産地を表示したものと認識させるにすぎないと判断するのが相当である。
6 なお、請求人は、「『信州アルプス』の地名が存在しない以上、直接的に商品の品質・産地を表示しているとは言い難い」旨述べているが、本願商標構成中の「信州」の文字が長野県を指称するとともに、該文字とあいまって「アルプス」の文字からは、長野県内の日本アルプスを容易に理解、認識させるものであること、上記のとおりであるから、この点につき請求人の主張は採用し得ない。
7 加えて、請求人は、「本願商標は、食品業界において、商品の品質・産地販売地を表示する語として一般的に採択使用されている事実はないから、自他商品識別力を有する」旨主張しているが、「商標法3条1項3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべき」(平成12年(行ケ)第76号 東京高等裁判所 平成12年9月4日判決言渡し)ものであるから、たとえ、「信州アルプス牛」の語が、インターネット上で使用されているという一事実、掲載内容の出所は一箇所のみであるとしても、本願商標が登録されるべきであるかどうかは、本願指定商品の需要者等において、これがどのような意味を有するものとして認識され用いられていたかによって判断されなければならないものである。
そうすると、本願商標は、その指定商品を取り扱う需要者等において、指定商品の品質・産地を示すものとして認識されることは、前記認定のとおりであることからしても、かかる請求人の主張は採用することができない。
8 さらに、請求人は、「アルプス」、「ALPS」の文字を有する登録商標を引用して本願商標が登録要件を具有するものであると主張しているが、そもそも、商標の識別性の判断は、各商標につき、それぞれの構成態様や取引の実情等をも勘案し、個別具体的に判断されるべき性質のものであるばかりでなく、請求人の主張している登録例をもって本件の判断が拘束されるものでもないから、この点についても、請求人の主張は、採用することができない。
9 したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、本願を拒絶した原査定は、取り消すべき理由がない。
よって、結論のとおり審決する。
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