結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2006−30965(T2006−30965/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第2188046号商標(以下「本件商標」という。)は、楕円形の輪郭内に「U−BOAT」の文字を配してなり、昭和62年5月18日に登録出願、第23類「時計、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成元年11月28日に設定登録、その後、同11年11月16日に商標権存続期間の更新登録がなされているものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において、その指定商品について商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、使用された事実がなく、本件商標を使用しないことについて正当な理由が存するものとも認められない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消されるべきである。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁
(ア)乙第1号証及び乙第2号証について
被請求人は、乙第1号証及び乙第2号証を提出して、本件商標が取消請求に係る指定商品中、「時計」について使用されていた旨主張する。
しかしながら、それらは「共同開発モデル案」(乙第1号証:和文版、乙第2号証:ドイツ語版)であって、2006年に通常使用権者「ピーエックス株式会社」(以下「ピーエックス」という。)とドイツ国の「Sinn社」との間で時計につき共同開発のモデルが提案され、その時計に本件商標を使用する予定であったことを示しているのみであり、本件商標を使用した商品を現実に製造又は販売したことを示しているわけではなく、本件商標が付された商品「時計」についての現実の使用を示す証拠とみることはできないし、本件商標を使用した(現実に製造された)商品に関する取引書類とみることもできない。
(イ)乙第3号証について
乙第3号証(請求書)は、デザイン会社からピーエックスに宛てた請求書である。
当該請求書は、本件審判請求の登録前の2006年8月17日及び同18日に、本件商標を使用した「時計」のデザインが(デザイン会社によって)作成され、通常使用権者に納品されたことを示すのみであって、本件商標が「時計」について現実に使用されたことに関する証拠とはいえず、また、そのデザインに基づき、本件商標を付した商品が現実に製造されたことすら示すものではない。
したがって、乙第3号証によっては、被請求人又は通常使用権者による商標法上の商標の使用があったとはいえない。
(ウ)乙第4号証について
乙第4号証(本件商標の登録原簿(写))に示されているように、本件審判請求の登録日が平成18年8月25日であることについては、争わない。
(エ)乙第5号証及び乙第6号証について
乙第5号証及び乙第6号証(被請求人とピーエックスの履歴事項全部証明書)に示されているように、ピーエックスが被請求人と代表取締役を同じくし、ほとんどの取締役を共通にしており、同社が被請求人の関連会社ということができ、登録されていない通常使用権者であることについては、争わない。
(オ)以上のとおり、被請求人提出の乙第1号証ないし乙第6号証によっては、本件審判請求の登録前3年以内に、本件商標が取消請求に係る指定商品中、「時計」について使用されていたとはいえない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
(1)本件商標の使用の事実
本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、その指定商品中、「時計」について、登録されていない通常使用権者(ピーエックス)によって使用されている。
本件商標は、1986年にドイツ国のSinn社と日本国における同社の代理店であるピーエックスとの共同開発で製作されたダイバーズ・ウォッチに使用されたものであり、当該商品は、発売開始から日本では大人気のモデルとなり、1986年から1996年までの10年間、ロングセラーのモデルとして販売されていたものである。
その後、一旦は、製造及び販売を中止したものの、ここ数年、当該商品に対する関心の高まりや、特約店やユーザーからの強い希望もあって、2006年(平成18年)、Sinn社とピーエックスとで第2弾の共同開発モデル「U−BOAT II」を提案するに至ったものである。
(ア)乙第1号証及び乙第2号証(商品開発提案書〔日本語及びドイツ語版〕)は、両社間で提案するに至ったものであり、本件商標は、その指定商品中、「時計」に使用されている。
(イ)共同開発の提案は、2006年の初めになされた。以後、両社の間で商品の具体的な内容に関する打ち合わせがあり、そのやりとりに基づいて、ピーエックスが東京都渋谷区所在のデザイン会社「株式会社雷伝舎」に対して提案書に掲載する時計のデザインを依頼し、同年8月18日に、同社から本件商標を付した当該時計のデザインの納品を受けたものである(乙第3号証)。
(ウ)本件取消審判の請求日は、平成18年8月8日であるが、当該審判請求の予告登録日は、同年8月25日となっている(乙第4号証)。
前述のとおり、乙第1号証及び乙第2号証に示されている「時計」のデザインは、乙第3号証に示されているように、遅くとも平成18年8月18日にはピーエックスに納品されていることから、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に使用されていたことがわかる。
上記乙第1号証及び乙第2号証は、ともにピーエックスが企画立案し、作成したものであるが、ピーエックスは、被請求人の関連会社であり、本件商標をその指定商品に使用することにつき、通常使用権の設定登録はしていないが、被請求人から黙示の使用許諾を受けており、したがって、ピーエックスは、通常使用権者といえる(乙第5号証及び乙第6号証)。
(エ)被請求人の代表取締役とピーエックスの代表取締役とは同一であり、また、両社の取締役の構成もほとんど同じであることから、ピーエックスが被請求人の関連会社であることは明らかである。
(オ)乙第1号証ないし乙第6号証から明らかなように、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、その指定商品中、「時計」について、通常使用権者であるピーエックスによって使用されているものである。
したがって、本件商標の登録が商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきであるとする請求人の主張は、全く理由がないものである。
(2)請求人の弁駁に対する再答弁
請求人は、乙第1号証及び乙第2号証が、本件商標を付した商品を現実に製造又は販売したことを示しているわけではなく、本件商標の現実の使用を示す証拠とはいえず、また、本件商標を使用した(現実に製造された)商品に関する取引書類とみることもできない旨弁駁するとともに、乙第3号証についても、本件商標を使用した「時計」のデザインが作成され、通常使用権者に納品されたことを示すのみであって、本件商標が「時計」について現実に使用されたことを示す証拠とはいえないし、当該デザインに基づき本件商標を付した商品が現実に製造されたことすら示すものではない旨述べているが、この請求人の弁駁は不当である。
それというのも、商標法第50条に規定する「登録商標の使用」においては、登録商標を使用した商品が審判請求の登録の日前に「現実に」製造されていることや販売されていることまでをも要求しているものではない(乙第7号証)。
すなわち、乙第7号証(「特許庁編工業所有権法逐条解説〔第16版〕」)における商標法第50条第3項の解説には、「・・・この場合の『正当な理由』としては、例えば、審判請求がされることを知る前から当該登録商標について具体的な使用計画や準備(例えば、当該商標を商品に付する契約を第三者と締結しているような場合、当該商標を付した商品の広告を作成していたり、その作成を第三者に依頼していたような場合、当該商標を商品に付して使用することの意思決定(例えば取締役会の決議等)が明確になされているような場合等)があり、これに基づいて使用をしたものである場合や、・・・(省略)・・・が考えられる。」と記載されている(乙第7号証)。
本件商標の場合は、まさしく、これに該当するものであって、審判請求がされることを知る前から(平成18年の初めから)、本件商標について、具体的な使用計画や準備があった(Sinn社と通常使用権者であるピーエックスとの間で、商品の具体的な内容に関する打ち合わせが行われ、そのやりとりに基づいて、ピーエックスが第三者である印刷会社「株式会社雷伝舎」に提案書の印刷を依頼し、本年(2006年)8月18日に当該印刷会社から提案書の納品を受けた)ものであり、それに基づいて、現在使用しているものである。
したがって、被請求人には、この「正当な理由」があるから、上記請求人の主張は不当である。
(3)よって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきであるとの請求人の主張は、全く理由がない。
(1)商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、取消請求に係る指定商品について当該登録商標を使用していることを証明し、又は、使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その指定商品に係る商標登録の取消しを免れないところ、被請求人は、通常使用権者であるピーエックスがダイバーズ・ウォッチすなわち「時計」について、本件商標を使用している旨主張し、乙第1号証ないし乙第6号証を提出している。
加えて、被請求人は、本件審判請求がされることを知る前から、本件商標について具体的な使用計画を有し、準備をしていたものであり、商標法第50条に規定する「登録商標の使用」においては、登録商標を付した商品が審判請求の日前に現実に製造又は販売されていることまでも要求しているものではない旨主張し、乙第7号証を提出している。
そこで、これらの被請求人の主張及び提出証拠を検討するに、以下の事実が認められる。
(ア)乙第1号証及び乙第2号証は、商品開発提案書と称される日本語版及びドイツ語版のモデル案を掲載した書面であって、ピーエックスとSinn社との間で共同開発提案につき、やりとりした商品ダイバーズ・ウォッチのモデル「U−BOAT II」の開発企画のための印刷物であり、そこに示された時計のイメージ図には、「U−BOAT II」又は「U−BOAT」の文字が表示されている。
そして、その作成年月日は記載されていないが、乙第1号証には、「2006年 SINNとPXとの共同開発モデル案」及び「1986年にSINNとPXとの共同開発で製作し、一世を風靡したモデル『U−BOAT』から20年の時を超えて、第2弾の共同開発モデル『U−BOAT II』を提案いたします。」との記載がされている。
(イ)乙第3号証は、平成18年9月4日にデザイン会社「株式会社雷伝舎」がピーエックスに宛てた請求書であって、本件審判請求の登録前である2006年8月17日及び同18日に、「SINN U−BOAT 腕時計デザイン」及び「SINN U−BOAT 腕時計デザイン追加」の品名と数量「14」及び「3」、単価「3000」、金額「42000」及び「9000」が記載されている。
(ウ)乙第4号証は、本件商標の登録原簿であって、それに示されているとおり、本件審判請求の予告登録日は、平成18年8月25日である。
(エ)乙第5号証及び乙第6号証は、被請求人とピーエックスの履歴事項全部証明書であって、ピーエックスと被請求人とは、その代表取締役を同じくし、かつ、ほとんどの取締役を共通にしていることが認められる。
(オ)乙第7号証は、「特許庁編工業所有権法逐条解説〔第16版〕」の第1212頁〜第1215頁の写しであって、商標法第50条第3項の解説の部分である。
(2)以上の事実を総合すると、通常使用権者である(当事者に争いはない。)ピーエックスは、正確な日付は定かでないが、上記(ア)の記述にもあるとおり、「1986年・・・から20年の時を超えて・・・」との乙第1号証の記載よりすると、2006年(平成18年)に、本件商標と社会通念上同一の商標を表示した商品の開発を提案したこと、その商品開発提案書のデザインについては、本件審判請求の登録前3年以内である平成18年8月17日及び同年8月18日に株式会社雷伝舎からピーエックスに対して納品されたことが乙第3号証から推認し得る。
しかしながら、これらは、単に商品の開発を提案したことを示すにとどまるものであって、本件商標を使用した商品ダイバーズ・ウォッチ、すなわち取消請求に係る指定商品中、「時計」を、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、現実に製造又は取引者・需要者に対して販売したこと、あるいは、販売のために展示したことを客観的に裏付けるに足る証拠とは認められないものであり、かつ、将来使用するための使用計画や準備があったことをもって、当該登録商標が使用されたということはできないから、被請求人ないしピーエックスは、本件商標を取消請求に係る指定商品について、現実に使用したものと認めることはできない。
してみれば、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても取消請求に係る指定商品について、現実に使用された事実が証明されていないものといわざるを得ない。
また、被請求人は、本件商標を取消請求に係る指定商品について使用していなかったことについて、商標法第50条第2項ただし書きに規定される、不使用についての正当な理由(例えば、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果その使用ができなかった場合)があることを何ら説明していない。
(3)ところで、被請求人は、商標法第50条第3項を根拠として、同条に規定する「登録商標の使用」とは、登録商標を使用した商品が審判請求の登録の日前に現実に製造されていることや販売されていることまでをも要求しているものではなく、本件商標については、使用計画や準備をしていたことが、同条第3項規定の「正当な理由」に該当する旨述べている。
しかしながら、同条第3項は、登録商標の不使用による商標登録の取消しを免れることを目的とした名目的使用、いわゆる「駆け込み使用」の排除規定であり、ここでいう「正当な理由」とは、審判請求前3月からその審判の請求登録までの間に登録商標の使用をした場合であって、その登録商標の使用が審判請求がされることを知った後であるときにおいて、当該使用が「駆け込み使用」でなく、登録商標の使用とされる正当な理由(例えば、審判請求がされることを知る前から登録商標について具体的な使用計画や準備があり、これに基づいて使用をしたものである場合)を指すものである。
本件商標に関しては、上記(2)で認定したとおり、被請求人ないしピーエックスは、所定の期間内に、実際に本件商標を取消請求に係る指定商品に使用していなかったものであるから、そうである以上、被請求人の主張は、前提において失当であり、採用することができない。
(4)以上のとおりであるから、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、取消請求に係る指定商品について、使用されていなかったものであり、また、登録商標の使用をしていないことについての正当な理由があったものと認めることもできない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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