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Trademark Appeal Case

鷲シルエット図形の類似判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2006−90665(T2006−90665/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第4989959号商標の指定商品中、第3類「防臭せっけん,ジェル状浴用せっけん,シャンプー,手・顔・身体用液状せっけん,皮膚用せっけん,化粧せっけん,ハンドクリーナー,便器洗浄剤,水せっけん,薬用せっけん,スクラブ剤を配合してなる洗顔料,バスジェル,ひげそりあと用ローション,リップクリーム(医療用のものを除く。),バスオイル,バスパウダー,バスソルト(医療用のものを除く。),バブルバス,パック用化粧料,ボディクリーム,ボディオイル,ボディパウダー,コロン,香水類,化粧水,ペンシル状の化粧品,ハンドクリーム,アイクリーム,ナイトクリーム,ひげそり用クリーム,スキンクレンジングクリーム,スキンクリーム,身体防臭用化粧品,制汗用化粧品,防臭制汗用化粧品,アイメイク用化粧品,アイメイクリムーバー,アイライナーペンシル,アイシャドウ,アイブローペンシル,アイライナー,おしろい,メークアップファウンデーション,ひげそり用ジェル,リップグロス,口紅,ヘアーコンディショナー,整髪用ジェル状化粧品,ヘアーリンス,ヘアースプレー,スキンローション,顔用ローション,ボディローション,メーキャップ化粧品,顔のメーキャップ化粧品,マスカラ,マッサージオイル,スキンモイスチャライザー,ネイルエナメル,マニキュア,ほお紅,ひげそり用バルサム状化粧品,ひげそり用ローション,スキンクレンジングローション,肌の色の調整に使用するスキンローション,携帯用化粧道具入れ用の化粧品(「化粧品」に属するものに限る。),その他の化粧品,歯磨き」についての商標登録を取り消す。
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4989959号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成18年1月20日に登録出願、第3類、第9類、第14類、第18類、第25類及び第35類に属する別掲(1)のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年8月30日に登録査定され、同年9月22日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由

1 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、以下(a)ないし(h)の登録商標を引用している。

(a)登録第4223014号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成9年9月1日に登録出願、第3類「せっけん類,歯みがき,化粧品」を指定商品として、同10年12月8日に設定登録されたものである。

(b)登録第1656382号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、昭和55年1月10日に登録出願、第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同59年2月23日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録が2回にわたりなされ、その後、商標権の存続期間の更新登録が2回にわたりなされ、さらに、指定商品について、平成16年11月4日に、第1類、第2類、第3類、第4類、第5類、第8類、第9類、第10類、第19類、第21類及び第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。

(c)登録第1656382号商標の防護標章登録第2号(以下「引用商標3」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、平成8年3月28日に登録出願、第3類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同9年10月31日に設定登録されたものである。

(d)登録第4579872号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、平成13年8月17日に登録出願、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年6月21日に設定登録されたものである。

(e)登録第4151035号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(4)のとおりの構成よりなり、平成8年12月2日に登録出願、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同10年5月29日に設定登録されたものである。

(f)登録第4423261号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲(5)のとおりの構成よりなり、平成11年8月25日に登録出願、第3類、第5類、第16類、第29類、第30類及び第32類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同12年10月6日に設定登録されたものである。

(g)登録第1372263号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲(6)のとおりの構成よりなり、昭和50年7月9日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同54年2月22日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録が2回にわたりなされものである。

(h)登録第1443050号商標(以下「引用商標8」という。)は、別掲(7)のとおりの構成よりなり、昭和51年9月28日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同55年11月28日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録が2回にわたりなされ、さらに、指定商品について、平成13年1月24日に、第3類及び第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされているものである。

以下、上記(a)ないし(h)の引用各商標を一括していう場合は、単に「引用商標」と総称する。

2 理由の要点

(1)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、頭部を左にした横向きであって、今にも止まり木等に着地しようとしているか、又は、着地して右足を持ち上げた状態を静止状態で捉えた「鷲」をシルエット状に黒塗りしてなる図形のみからなる。

他方、引用商標1は、本件商標と同様に頭部を左にした横向きであって、今にも止まり木等に着地しようとしているか、又は、着地して右足を持ち上げた状態を静止状態で捉えた「鷲」をシルエット状に黒塗りしてなる図形のみからなる。

したがって、両商標は、共に、頭部を左にした横向きであって、今にも止まり木等に着地しようとしているか、又は、着地して右足を持ち上げた状態を静止状態で捉えた「鷲」をシルエット状に黒塗りしてなる図形であって、嘴が鋭く描かれ、頭部がなだらかな曲線で絵が描かれ、また、右に描かれている左足を止まり木に等に止まるよう軸足として、左に描かれている右足を若干持ち上げる等の点において両商標は構成の軌を一にしている。

このように、本件商標と引用商標1は、構成上の基本的な要素において共通性を有し、その外観全体から直ちに受ける視覚的印象は著しく似通ったものである。

本件商標と引用商標1を微細に直接対比観察するとすれば、本件商標の左右の羽の角度が引用商標1より鋭角である点や、引用商標1の「鷲」のシルエットには本件商標にはない目鼻部分が小さな白抜き部分として存在している点等の差異はあるものの、これら微差は、需要者が両商標に離隔的に接した場合には明瞭に把握できない程度の差異であって、それぞれの商標の印象として殆ど残らないものである。

そして、簡易、迅速を重んじる取引の実際においては、「鷲」を含む鳥類に特段の関心を持たない一般消費者が、このような両商標の構成上の徽差を明瞭に意識するとはいい難いものである。

してみれば、本件商標と引用商標1は、互いに類似する商標である。

また、本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品は、いずれも第3類の「せっけん類,歯みがき」等を指定商品する同一または類似するものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第15号について

引用商標2ないし引用商標8の商標権者である申立人は、1912年(大正元年)に、「大正製薬所」を創業し、1948年(昭和23年)に商号を現在の「大正製薬株式会社」に改めた。

そして、1955年(昭和30年)より、「ワシのマーク」をハウスマークとして採用して以来、「ワシのマークに」は、若干の変更を要しつつも、申立人のハウスマーク商標として今日まで、およそ50年以上にわたり、継続して使用し、また世間一般にも、「ワシのマークの大正製薬」として、医薬、医薬部外品、化粧品の分野で取引者及び需要者に親しまれてきている(甲第17号証)。

昭和34年法の商品分類下、昭和54年には、第4類(国際分類第3類)の「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」についても、「ワシのマーク(現在使用しているものの原型となる旧ワシのマーク)」の商標登録を取得しており(引用商標7)、また現在使用中の「ワシのマーク」は、昭和55年に登録出願し、昭和59年に登録されている(引用商標2)。

この「ワシのマーク」は、著名商標であることが認められ、本件商標の異議申立てに係る指定商品と同一・類似の商品について、既に平成9年10月31日防護標章登録が認められている(引用商標3)。

また、申立人は、本件商標の異議申立てに係る指定商品と同一類似の商品を含む第3類の「せっけん類,香料類,化粧品」等についても、平成13年8月17日に商標登録出願し、平成14年6月21日に登録第4579872号として商標登録が認められている(引用商標4)。

申立人は、2006年3月期において、総売上高は、271,407百万円であり、広告宣伝費についても16,189百万円を費やしており、申立人が販売する商品の全てについて、「ワシのマークの大正製薬」を広告宣伝し、著名となった登録商標(引用商標2)をはじめ「ワシのマーク」を使用し続けている。

なお、20003年3月期から 20006年3月期まで及び20007年3月期予想の売上高及び広告宣伝費の詳細は、甲第18号証のとおりである。

また、その売上高と商品の販売価格(主力商品のリポビタンDで、140円ないし350円)とを対比すれば明白であるとおり、申立人の商品の販売数は非常に多く、販売されている製品の全てに「ワシのマーク」を表示していることから、一般の取引者・需要者に「ワシのマーク」を目にする機会は販売数に応じて多く、「ワシのマーク」が申立人のハウスマークであるという認知度は極めて高い。

さらに、申立人の各商品への使用のほか、数多くのCMもTV放映(全国ネット)しており(甲第19号証)、ホームページによる商品の紹介のサイトでも宣伝広告(甲第20号証)され、「ワシのマーク」は各指定商品について取引者又は需要者間で著名の程度を継続しているものである。

特に、テレビCMでは、必ずCM中にハウスマークである「ワシのマーク」を使用しており、「ワシのマークの大正製薬」というナレーションとともに画像にも「ワシのマーク」と「大正製薬」の文字が表示され、CMの度に引用商標は認知されている(甲第19号証)。

この中で、申立人の登録商標であって、「薬剤」において著名商標であると認められている引用商標2との関係において、本件商標権者が自己の業務に係る商品である「化粧品」等に本件商標を使用したときには、出所の混同のおそれ、少なくとも広義の混同を生ずるおそれがあるものである。

すなわち、製薬業者でも、せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類を製造・販売する企業も多く、一部の薬剤や化粧品はコンビニエンスストアや薬局等の販売ルートを共通とすることに加えて、薬剤と化粧品は需要者層も共通する。

そうとすれば、鷲を描いた本件商標を指定商品「化粧品」等に使用するときは、薬剤において著名であり「化粧品」等においても防護標章登録を受けているところの、称呼及び観念が同一である引用商標2の「ワシのマーク」を連想し、想起することも少なくなく、本件商標の指定商品に接する需要者は、たとえ、その商品を申立人の業務に係る商品であると認識しなくても、それら商品が申立人の子会社等の関係にある事業者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(3)まとめ

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に該当するから、その指定商品及び指定役務中、第3類「防臭せっけん,ジェル状浴用せっけん,シャンプー,手・顔・身体用液状せっけん,皮膚用せっけん,化粧せっけん,ハンドクリーナー,便器洗浄剤,水せっけん,薬用せっけん,スクラブ剤を配合してなる洗顔料,バスジェル,ひげそりあと用ローション,リップクリーム(医療用のものを除く。),バスオイル,バスパウダー,バスソルト(医療用のものを除く。),バブルバス,パック用化粧料,ボディクリーム,ボディオイル,ボディパウダー,コロン,香水類,化粧水,ペンシル状の化粧品,ハンドクリーム,アイクリーム,ナイトクリーム,ひげそり用クリーム,スキンクレンジングクリーム,スキンクリーム,身体防臭用化粧品,制汗用化粧品,防臭制汗用化粧品,アイメイク用化粧品,アイメイクリムーバー,アイライナーペンシル,アイシャドウ,アイブローペンシル,アイライナー,おしろい,メークアップファウンデーション,ひげそり用ジェル,リップグロス,口紅,ヘアーコンディショナー,整髪用ジェル状化粧品,ヘアーリンス,ヘアースプレー,スキンローション,顔用ローション,ボディローション,メーキャップ化粧品,顔のメーキャップ化粧品,マスカラ,マッサージオイル,スキンモイスチャライザー,ネイルエナメル,マニキュア,ほお紅,ひげそり用バルサム状化粧品,ひげそり用ローション,スキンクレンジングローション,肌の色の調整に使用するスキンローション,携帯用化粧道具入れ用の化粧品(「化粧品」に属するものに限る。),その他の化粧品,歯磨き,精油,におい袋,その他の香料類,つけづめ,つけまつ毛,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,靴クリーム,靴墨」は取り消されるべきである。

第3 取消理由の通知(要旨)

本件商標と引用商標1を比較すると、両商標は、別掲(1)及び(2)のとおりであり、共に、猛禽類のシルエットと認められる図形よりなるものである。

そして、両者を子細に直接対比観察すれば、羽の角度、目鼻部分の小さな白抜き部分等の差異はあるものの、これらの差異は微差といえ、その構成態様が共に頭部を左にした横向きであって、大きく羽を広げ、今にも止まり木等に着地しようとしているか、又は、着地した状態で右足を持ち上げた状態を静止状態でとらえた猛禽類をシルエット状に黒塗りしたものであって、両翼の先がのこぎりの歯のような刻み目をもって描かれている点、嘴及び爪が鋭く描かれている点、頭部がなだらかな曲線で描かれている点、また、右に描かれている左足を止まり木に等に止まるよう軸足、左に描かれている右足を若干持ち上げる様に描かれている点等において両商標は構成の軌を一にしているものである。

したがって、両商標を時と処を異にして離隔的に観察した場合には、看者に与える印象が同じものとなり、相紛れるおそれのある外観上、類似する商標といわなければならない。

また、本件商標の指定商品、第3類中の「防臭せっけん,ジェル状浴用せっけん,シャンプー,手・顔・身体用液状せっけん,皮膚用せっけん,化粧せっけん,ハンドクリーナー,便器洗浄剤,水せっけん,薬用せっけん,スクラブ剤を配合してなる洗顔料,バスジェル,ひげそりあと用ローション,リップクリーム(医療用のものを除く。),バスオイル,バスパウダー,バスソルト(医療用のものを除く。),バブルバス,パック用化粧料,ボディクリーム,ボディオイル,ボディパウダー,コロン,香水類,化粧水,ペンシル状の化粧品,ハンドクリーム,アイクリーム,ナイトクリーム,ひげそり用クリーム,スキンクレンジングクリーム,スキンクリーム,身体防臭用化粧品,制汗用化粧品,防臭制汗用化粧品,アイメイク用化粧品,アイメイクリムーバー,アイライナーペンシル,アイシャドウ,アイブローペンシル,アイライナー,おしろい,メークアップファウンデーション,ひげそり用ジェル,リップグロス,口紅,ヘアーコンディショナー,整髪用ジェル状化粧品,ヘアーリンス,ヘアースプレー,スキンローション,顔用ローション,ボディローション,メーキャップ化粧品,顔のメーキャップ化粧品,マスカラ,マッサージオイル,スキンモイスチャライザー,ネイルエナメル,マニキュア,ほお紅,ひげそり用バルサム状化粧品,ひげそり用ローション,スキンクレンジングローション,肌の色の調整に使用するスキンローション,携帯用化粧道具入れ用の化粧品(「化粧品」に属するものに限る。),その他の化粧品,歯磨き」については、引用商標1の指定商品と同一又は類似するものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

第4 商標権者の意見

(1)図形の基本的な構成について

本件商標の全体的な構図は、V字型又は逆三角形である。

これに対して、引用商標1の構図は、左に傾いたL字型又は中心角が広いブーメランを左に傾けたような構図である。

かかる構成の相違から、本件商標は、バランスのとれた安定感のある構図となっているが、引用商標1は、本件商標に比べると不安定な印象を受ける。

また、本件商標は、ほぼ曲線で構成されているため軟らかな印象を与えるのに対して、引用商標1は、羽が直線的に描かれているためシャープな印象を与える。

取消理由通知では、「両翼の先がのこぎりの歯のような刻み目をもって描かれている点、嘴及び爪が鋭く描かれている点、頭部がなだらかな曲線で描かれている点」が、両商標の共通点と認識されている。

しかしながら、これらは猛禽類共通の特徴であるため、写実的に図案化すれば誰もがこう描くであろう部分である。

したがって、当該部分は、猛禽類の図形においは要部とならず、商標の類似判断に及ぼす影響はわずかであると考える。

(2)図形のモチーフについて

本件商標の鷲は基本的構成において上記相違が生じている理由を考えると、両者がモチーフとする鳥の状況が異なる点が挙げられる。

本件商標の鷲は、胴体が逆「く」の字に起き上がっており、尻尾も下を向いていることから、少なくとも、高速で空中を飛行中ではないと誰もが認識すると思われる。

本件商標の鷲は、翼を左右均等にV字型に広げている様子からも、飛ぶためというよりは、むしろ着地するためにスピードを落としているのではないかと思われる。なぜなら、このような翼の広げ方は空気抵抗が大きいため、高速飛行中にはとれないポーズだからである。

本件商標の鷲は、状況としては、着地寸前で速度を落とすために、パラシュートのように羽を広げているのではないかと推測される。

そのため、本件商標からは、「スピードを落として着地する瞬間の鷲」という印象を受ける。

なお、本件商標の鷲は、白頭鷲又はアメリカンイーグルと言われる種類の鷲であり、日本の鷲とは体つきが違うことを申し添える。

一方、引用商標1の鷲(又は鷹)は、胴体も尻尾も水平で、羽も上方というよりは横方向に伸びていることから、飛行中の瞬間を捉えているものと思われる。羽を横方向に広げているのは、飛行中の空気抵抗を少なくするためであると思われる。足が前方に伸びているので、単に飛行しているのではなく、何か目的物を目指して降下を始めたところかもしれない。しかし、体が水平であるため急降下とまではいえず、目的物までまだ距離があるものと推測される。

そうすると、引用商標1の鷲(又は鷹)は、まだかなりのスピードが出ているわけで、大空で悠々と羽ばたいているという印象は受けない。

そのため、引用商標1の鷲(又は鷹)からは、低く身構え、「目的物に向かってまっしぐらに飛んでいる鷲」というイメージが生じ、緊張感やスピード感が感じられる。

本件商標の鷲と引用商標1の鷲(又は鷹)は、それぞれのモチーフが、「スピードを落として着地する瞬間の鷲」と「目的物に向かってまっしぐらに飛んでいる鷲」であることが想像できるため、看者は容易に両商標を区別することができるものと考えられる。

以上より、両図形は、異なる状況の鳥をモチーフにしているため、シルエットで表しても全体的な形状が異なっており、観念上も区別することができる非類似の商標である。

(3)指定商品について

本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品が、類似する点は争わない。

しかして、「化粧品」の需要者は、成人女性、「せっけん類,歯磨き」の需要者は、成人であると想定される。

これらの需要者が商品を選択する際に必要なのは、猛禽類に関する特別な知識ではなく、単に図形の違いを見分ける能力があるかどうかである。

この点、成人であれば、商品のパッケージに現れた鷲のシルエット図形を見て、全体的な構図が異なっていれば、直感的に何か違うと気付くのが普通ではないかと思われる。

そして、注意深い需要者であれば、両図形がモチーフにしている「着地する瞬間の鷲」と「飛んでいる鷲」の違いまで十分見分けることができるものと考えられる。

以上より、本件商標の需要者は、成人であることから、市場において両図形の相違を十分に認識できるものである。

第5 当審の判断

1 商標法第4条第1項第11号について

本件商標と引用商標1とが類似する商標であること及び指定商品が抵触していることは、上記第3(取消理由の通知)で認定したとおりである。

商標権者は、意見書において、本件商標と引用商標1は、図形の基本的な構成やモチーフが相違している旨を述べているが、本件商標と引用商標1は、共に、その構成態様が共に頭部を左にした横向きであって、大きく羽を広げ、今にも止まり木等に着地しようとしているか、又は、着地した状態で右足を持ち上げた状態を静止状態でとらえた猛禽類をシルエット状に黒塗りしたものである点において、図形の基本的な構成や図形のモチーフを共通にしているといい得るものである。

したがって、商標権者の意見は採用できない。

2 商標法第4条第1項第15号について

まず、本件商標と引用商標2ないし引用商標7の外観について比較するに、本件商標は、別掲(1)のとおり、猛禽類を写実的にシルエットで描いてなる図形であるのに対して、引用商標2ないし引用商標7は、別掲(2)ないし別掲(6)のとおり、猛禽類を紋章的に抽象化、デフォルメして描いてなる図形である。

そうとすれば、本件商標と引用商標2ないし引用商標7は、共に猛禽類を描いている点においては共通性を有するとしても、描写方法が著しく異なっているためその印象を全く異にするというべきである。

また、引用商標8は、別掲(7)のとおり、「わし」「鷲」「ワシ」の文字を3行に描いてなるものであるから、本件商標と引用商標8が、外観上非類似の商標であることは明らかである。

したがって、本件商標と引用商標2ないし引用商標8は、外観上は十分に区別し得るというべきである。

次に、称呼及び観念について比較するに、本件商標はいずれの猛禽類を描いたものであるか、俄には判別し難いものであるから、本件商標からは、特定の称呼及び特定の観念を生じないというべきである。

したがって、本件商標と引用商標2ないし引用商標8を、称呼及び観念において比較することはできない。

そうとすれば、本件商標と引用商標2ないし引用商標8は、外観については相違し、称呼及び観念については比較することができない別異の商標である。

してみれば、引用商標2が「薬剤」等に使用されて申立人の商標として相当程度の著名性を有していることが認められるとしても、商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合に、これに接する取引者・需要者をして、引用商標2ないし引用商標8を連想又は想起させるとはいえないものであって、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。

3 まとめ

したがって、本件商標の登録は、登録異議の申立てに係る指定商品中、第3類「防臭せっけん,ジェル状浴用せっけん,シャンプー,手・顔・身体用液状せっけん,皮膚用せっけん,化粧せっけん,ハンドクリーナー,便器洗浄剤,水せっけん,薬用せっけん,スクラブ剤を配合してなる洗顔料,バスジェル,ひげそりあと用ローション,リップクリーム(医療用のものを除く。),バスオイル,バスパウダー,バスソルト(医療用のものを除く。),バブルバス,パック用化粧料,ボディクリーム,ボディオイル,ボディパウダー,コロン,香水類,化粧水,ペンシル状の化粧品,ハンドクリーム,アイクリーム,ナイトクリーム,ひげそり用クリーム,スキンクレンジングクリーム,スキンクリーム,身体防臭用化粧品,制汗用化粧品,防臭制汗用化粧品,アイメイク用化粧品,アイメイクリムーバー,アイライナーペンシル,アイシャドウ,アイブローペンシル,アイライナー,おしろい,メークアップファウンデーション,ひげそり用ジェル,リップグロス,口紅,ヘアーコンディショナー,整髪用ジェル状化粧品,ヘアーリンス,ヘアースプレー,スキンローション,顔用ローション,ボディローション,メーキャップ化粧品,顔のメーキャップ化粧品,マスカラ,マッサージオイル,スキンモイスチャライザー,ネイルエナメル,マニキュア,ほお紅,ひげそり用バルサム状化粧品,ひげそり用ローション,スキンクレンジングローション,肌の色の調整に使用するスキンローション,携帯用化粧道具入れ用の化粧品(「化粧品」に属するものに限る。),その他の化粧品,歯磨き」については、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものなので、同法第43条の3第2項の規定により、商標登録を取り消すべきである。

その余の指定商品については、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

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