sokuhyo

Trademark Appeal Case

著名人名商標の公序良俗

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2006−18264(T2006−18264/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、「中原 中也」の文字を書してなり、第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料,飲料用野菜ジュース」を指定商品として、平成17年10月3日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要旨

原査定は、「本願商標は、『中原 中也』の文字を書してなるものであるところ、これはわが国の文学史上に大きな足跡を残した近代詩人「中原中也」を容易に認識させるものであり、このようなものを商取引に使用する商標として、何ら関係のない出願人に商標登録を認めることは妥当でなく、本願商標は、該詩人の著名性に便乗する行為であって、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するおそれがある商標に該当するものといわざるを得ない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断

1.商標法第4条第1項第7号について

(1)同法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、商標の構成自体が、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれると解するのが相当である。

(2)そして、他人が築きあげた著名性を有する標章と同一又は類似の商標であって、その著名性にフリーライドすることや、その著名性や名声を希釈、毀損することなど不正の目的をもって出願したものは、社会公共の利益に反し又は社会の一般的道徳観念に反するというべきである。

つぎに、上記の観点を踏まえて、本件について検討する。

2.中原中也について

本願商標は、「中原中也」の文字を書してなるものであるが、別掲の「新聞記事情報及びウエブ情報」によれば、以下の記載事実が認められる。

(1)「中原中也」(別掲(ア)及び(ク))は、明治40年(1907年)4月29日、山口市湯田温泉に生まれ、30年の短い生涯を詩に捧げた詩人であるが、生誕の地には、現在、遺族の同意の下に、山口市が設立した中原中也記念館がある。該記念館(別掲(キ))では、中也の草稿・日記・書簡等の資料が公開、展示され、設立10周年目の2004年には入館者が40万人に達した(別掲(エ))。また、旅の情報を提供、紹介するサイトである「るるぶ.com」(別掲(キ))には該記念館が湯田温泉(別掲(オ))とともに紹介されている。該記念館では、オリジナルグッズ(別掲(エ))、中原中也に因んだ地ビールが販売されている(別掲(ケ))。2007年には中也生誕百年祭の記念イベントが行われ、記念のTシャツやハンカチ、ストラップ、マグカップ、ペーパーウエイトなどが商品化の対象とされる(別掲(ウ))。

上記の事実よりすれば、「中原中也」は、詩人として生誕の地に設立された中原中也記念館や関連するイベントを通じて、十分知られていることが認められる。そして、該記念館は、山口市により中原中也の遺族の同意を得て設立され、館内等では「中原中也」の標章が付いた記念グッズ、「中原中也」に因んだ詩を刷り込んだラベルを使用した地ビール等が販売され、近隣の湯田温泉とともに観光地として周辺地域の活性化に役立っているこを窺い知ることができる(別掲(エ)、(ケ)ないし(サ))。

3.むすび

そうとすれば、「中原中也」の文字を書してなる本願商標を、同人と何ら関係もない請求人(出願人)が、その指定商品について私的独占使用の目的をもって採択し、これを商標として登録することは、その周辺の土産物店、地ビールメーカーによる「中原中也」の標章の使用を困難又は不可能にするだけでなく、商標権を巡る争いなど無用の混乱を招くおそれがあり、公正な競合秩序を害するおそれがあるから、これは社会公共の利益に反し、また、社会の一般的道徳観念に反するものというのが相当である。

したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すべきでない。

なお、請求人(出願人)は、登録例を挙げて、本願商標も登録されるべき旨主張するが、そもそも具体的事案の判断は、過去の審査例等の判断に拘束されることなく検討されるべきものであって、本願商標については前記認定のとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

「新聞記事情報及びウエブ情報」(なお、下線部は当審判合議体によるもの)

(ア)「中原中也」について

中原中也記念館の「中原中也」(http://www.chuyakan.jp/01chuya/01flame.html)の項には、「

わが国の文学史上に大きな足跡を残した近代詩人中原中也は、明治40年(1907年)4月29日、山口市湯田温泉に生まれました。

中也は30年の短い生涯を詩に捧げましたが、生前は充分な評価を得ることのないまま、志半ばにして異郷の地で没しました。

彼の優れた詩才は少年のころから現れていましたが、昭和9年(1934年)に東京で詩集『山羊の歌』が出版されるに及び、広く詩を愛する人々に認められるに至りました。さらに『ランボオ詩集』を翻訳するなど、フランスの詩人の紹介にもつとめました。

不幸にも病により、昭和12年(1937年)10月22日、鎌倉で亡くなりました。享年30歳。生前郷里に引き揚げようとしてまとめていた詩集『在りし日の歌』は、その翌年、友人小林秀雄によって出版されました。

中也の名声は、死後になって高まり、各社から出版された詩集や全集は数十冊に及びます。また、多くの詩選に収められ、海外にも紹介されています。彼の作品は年とともに評価を高め、今や近代文学を代表する叙情詩人として揺るぎない地位を得ています。」旨記載されている。

(イ)「中也の世界に触れて

山口で生誕百年祭2007

連休中心に多彩な行事=山口」

(2007.04.12 読売新聞 西部朝刊 29頁)

山口市出身の詩人、中原中也(1907〜37年)にちなんだ「中也生誕百年祭2007」が開幕した。

5月6日までの連休期間中を中心に、今年度中、市内で様々な行事が行われる。

中也の人物像や詩の世界、中也をはぐくんだ山口の魅力を広く知ってもらおうと、中原中也生誕百年記念事業実行委員会(西村正伸委員長)が主催。

同市湯田温泉1の

中原中也記念館前庭では、29日までの週末(28日除く)、「空の下の朗読会」を開催

。28日には同市民会館で中原中也賞贈呈式がある。

29日〜5月6日には、中也の詩「サーカス」にちなんで、市中央公園横に設けられる特設テント内で、サーカス団によるオープニングと詩人や音楽家らによる「サーカス小屋でコンサート」が開かれる。5月5日には「詩のボクシング山口大会」(午後1時開演、入場無料)がある。

中原中也記念館前庭で8日、オープニングコンサートが開催され、小室等さんが「サーカス」などの詩に曲を付けた歌を披露した。」旨記載されている。

(ウ)中原中也:来年4月、

生誕100年記念商品デザイン

を募集/山口

(2006.12.08 毎日新聞 地方版/山口 18頁)

山口市出身の叙情詩人、中原中也が来年4月に生誕100年を迎えることから記念事業実行委員会が記念Tシャツやハンカチなどのデザインを募集している。優秀賞以上の作品は商品化される。

Tシャツやハンカチ、ストラップ、自由部門(マグカップ、ペーパーウエイトなど)の4部門で受け付ける。

応募は未発表の作品に限られ、デザイン画(写真可)とその説明のほか、住所、氏名、年齢、電話番号を明記し、〒753―0056 山口市湯田温泉1の11の21、中原中也記念館内「中原中也生誕百年記念グッズデザイン・アイデアコンペ」係(来年1月31日必着)。入賞者の発表は同2月中旬の予定。問い合わせは同記念館内実行委(083・932・6430)。【住田里花】

(エ)

「中原中也記念館」ではオリジナルグッズ(http://www.chuyakan.jp/10shop/10flame.html)として、ハンカチ、ストラップ、カレンダー、ポストカード、レターセット、ブックマーカー、帽子等が販売されている。

(オ)文学の魅力知って 中原中也記念館、入館者数40万人を突破/山口 (2004.09.18 朝日新聞 西部地方版/山口 35頁)

開館10周年を迎えた山口市の中原中也記念館が17日、入館者数40万人を達成した。

40万人目となった滋賀県彦根市の医師、勝馬徳一さん(87)ら=写真=を福田百合子館長らが拍手で歓迎。額入りの詩や企画展パンフレットなどの記念品を手渡した。

勝馬さんは、山口市の湯田温泉を訪れるのは3度目だが、同温泉地区内の記念館に入るのは初めてという。『おめでたい日に参加させてもらい、ありがたい。いい旅行になった』と喜んだ。

2月の改装オープン後、約6千人が入館。福田館長は『中也の世界に共鳴してもらえるよう展示を充実させてきた。(再訪する)リピーターも多く、40万人達成は、その成果だ』と話す。

記念館では10月11日まで特別企画展『宮沢賢治と中原中也』を開催中。」と記載されている。

(カ)「湯田温泉」(http://www.rurubu.com/pref/list.asp?ChikuCD=3520302)では、「るるぶ」の公式サイトで、観光情報、温泉ガイド、宿選びなど旅行・おでかけの際に役立つ情報を提供している「るるぶ.com」では、「600年の歴史があるという名湯。「西の京」とよばれた山口市の中心部からほど近い繁華街に湧く。無色透明のなめらかな湯は72°Cと高温で、湯量も豊富。一帯には大規模旅館やホテルが立ち並び、山陽路随一の名湯ともいわれる。その昔、当地の寺の池で白狐が傷を癒しているのを見た和尚さんが、温泉が湧いているのに気付いたのが始まりと伝承される。幕末には高杉晋作や坂本龍馬ら維新の志士が逗留。漂泊の俳人・種田山頭火も愛し、

詩人の中原中也の故郷としても知られる。

」と記載されている。

(キ)「中原中也記念館」(http://www.rurubu.com/sight/list.asp?ChikuCD=3520302 )

同じく「るるぶ.com」では、「近代を代表する詩人・中原中也の生家跡に立つ記念館。自筆の草稿や日記、詩集『山羊の歌』『在りし日の歌』の初版本などを展示している。

中也の人生や詩のイメージを映像と音声で紹介するコーナーもあり、中也の世界に浸れる。所要30分。

」と記載されている。

(ク)「中原中也」( フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%8E%9F%E4%B8%AD%E4%B9%9F)

の「生涯」の項には、次のように記載されている。

「中原 中也(なかはら ちゅうや、明治40年(1907年)4月29日 - 昭和12年(1937年)10月22日)は、山口県山口市湯田温泉生まれの詩人。旧姓柏村。350篇以上もの詩を残し、それらの一部は、中也自身が編纂した詩集『山羊の歌』『在りし日の歌』に収録されている。また、『ランボオ詩集』を出すなど、フランスの詩人の紹介にもつとめた。

全集はこれまでに4度刊行されている。

最新の全集は、2000〜2004年にかけて出された『新編中原中也全集』(全5巻、別巻1 角川書店)である。

また、『関連書籍』の項には、

「ここでは、中也の親族や知人の手によるものを紹介する。

* 村上護編、中原フク述『私の上に降る雪は わが子中原中也を語る』(講談社文芸文庫)

* 中原思郎『中原中也ノート』(審美社)

* 中原呉郎『海の旅路 中也・山頭火のこと』(昭和出版)

* 大岡昇平『中原中也』(講談社文芸文庫)、『生と歌 中原中也その後』(角川書店)

* 村上護編、長谷川泰子述『ゆきてかへらぬ 中原中也との愛』(講談社)

* 河上徹太郎『わが中原中也』(昭和出版)

* 安原喜弘『中原中也の手紙』(玉川大学出版部)

* 野々上慶一『文圃堂こぼれ話 中原中也のことども』(小沢書店)、『中也ノート 私と中原中也』(かまくら春秋社)

* 野田真吉『中原中也 わが青春の漂泊』(泰流社)」と記載している。

(ケ)「中原中也ビールを販売 ゆかりの水、ラベルに詩」

(2000.04.28 共同通信)

「渓流(たにがわ)で冷やされたビールは、青春のやうに悲しかった−。山口市出身の詩人、中原中也(一九○七−三七年)の最晩年の詩『渓流』をモチーフにしたビールが造られ、中也の誕生日の二十九日から限定発売される。

『渓流(たにがわ)』と名付けられたビールを販売するのは同市下小鯖の山口地ビール(中川弘文社長)。

中也が幼少時代に遊んだという市内の滝の天然水を使い

、ラベルには『渓流』の一節が書かれている。

中也研究者でもある詩人の佐々木幹郎さんがビールを題材にしたこの詩に注目。

『まちおこしに』と中原中也記念館(山口市)を通じ提案したのがきっかけ。

ドイツとチェコの麦芽を使い、ドッシリとした味が特徴といい、黒ビールも含め三種類がある。

同社は『ビールを飲んでひとときの詩人になってもらえば』と話しており、今後も中也の詩をラベルに使ったビールを醸造、『詩集ビール』として販売する。

『渓流』は三百三十ミリリットル瓶で五百円。

今回は三千本を中也記念館や山口宇部空港などで販売。全国発送も受け付ける。

」と記載されている。

(コ)「山口地ビール(山口県)」(http://www.mirai.ne.jp/~shungen/dbjibeer2.html)の項には「[日経産業2000ー4ー28]「渓流(たにがは)」山口市出身の詩人、

中原中也の詩をラベルに刷り込んだ

。商品名は中也が1937年に発表したビールを題材に詠んだ詩『渓流』から名付けた。発売も中也の誕生日の4月29日から。ビール自体はドイツ系のアンバーエール、小麦が原料のバイツェン、英国系黒ビールのスタウトの3種。価格は330mlで500円。製造のきっかけは研究者が『渓流と名付けたビールを売れば山口市のPRになる』と提言したこととか。同社では『欧州の文化にあこがれた中也にちなんで欧州系のビールをつくった』と説明している。」と記載されている。

(サ)−

中也ビール誕生秘話

−(http://www.yamaguchi-jibeer.com/beer.html)の項には、「中也といえば、山口が生んだ全国区の詩人で、知名度はバツグンなんですが、当初は、ビールと中也のイメージがかけ離れているのではないかという戸惑いがあったんです。

でも、中也の詩を読み返すうちに、中也の深みある詩とビールという組み合わせも、意外性があっていいのではないかと思うようになったんです。

中也ビールは、黒ビールの『スタウト』、フルーツ系の『バイツェン』、甘みがある『アンバーエール』の3種類なんですが、おかげさまで、売り上げの方も順調です。

中でも、バナナの香りがする『ヴァイツェン』が、最も評判がよくて現在品切れの状態です。

特に、山口宇部空港での反響が大きくて、1日に何百本も売れるような状態で、

今更ながら中也人気の凄さには驚きました。

地ビールは、地域振興や文化振興の役割を担っていると自負していますが、中也ビールを飲んで、中也に関心を持つ人も居ると思います。

私どもの

中也ビール

が、中也の詩が、より多くの人に愛読されるきっかけになれば、うれしいですね!

現在の世知辛い世の中で、詩は一服の清涼剤になり得るし、心の豊かさにもつながります。

ビールというものを通して心を伝えられるというものは、最高です。」と記載されている。

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