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Trademark Appeal Case

著名商標の混同類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2007−890057(T2007−890057/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4743220号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4743220号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示したとおり構成よりなり、平成15年6月12日に登録出願、第44類「医業」を指定役務として、同年12月11日登録査定、同16年1月23日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第44号証(枝番号を含む。)、資料1及び2を提出した。

1 請求の理由

(1)本件商標は、請求人の著名な商標である別掲(2)に示した商標(以下「引用商標」という。)と混同を生ずるおそれがあるので、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に基づき、無効とされるべきものである。

(2)(イ)請求人の「ELLE」よりなる引用商標は、1945(昭和20)年に、フランスの女性ファッション雑誌「ELLE」のために、エレーヌ ゴードン ラザレフにより創作された文字である。

引用商標の構成は、わずか4文字のローマ字からなるものであるにもかかわらず、その特徴の故に看者に極めて印象深い構成となっている。

(ロ)請求人は、フランスに所在する法人であり、女性向けファッション雑誌「ELLE」の出版を中心として、各種商品のファッションを創作、紹介しているものである。雑誌「ELLE」は、被服、身回品、化粧品、家具、食品等に関する記事を掲載する女性向けファッション週刊誌であり、フランスにおいては、第2次大戦前から発行されていたが、2000年までに約2854号を数えており、発行部数は、フランス語版が毎週351,200冊に達している。雑誌「ELLE」は、現在ライセンス契約をし、あるいは、合弁事業を通して、各国において姉妹誌「ELLE」を発行している。

我が国でも、株式会社マガジンハウス(以下「マガジンハウス」という。)が昭和57年以来、雑誌「ELLE」の日本語版を発行してきたが、現在は、株式会社アシェット婦人画報社がこれを承継し雑誌「ELLE」を発行している。さらに、雑誌「ELLE」には、姉妹雑誌「ELLE DECO」及び「ELLE a table」も発行されている。これらの雑誌に掲載されるファッションは、現代感覚にあふれた「ELLE」誌独自の特徴を有し、「ELLE」ファッション、「ELLE」カラーと呼ばれて全世界の女性間に広く支持者を持っている。

このように、雑誌「ELLE」は、ファッションの世界的中心地たるフランスにおいて発行され世界各国に輸出されており、日本においても「ELLE」誌及び「ELLE」ファッションは、古くから広く知られ、我が国のファッションに多大な影響を与えている(甲第6号証及び甲第7号証)。

(ハ)請求人がマガジンハウスを通じて日本語版「ELLE」を発行する以前から、我が国においては、「ELLE」はよく知られたものであった。昭和57年に日本語版「ELLE」を発行する以前から、請求人は、日本における「ELLE」誌及び「ELLE」ファッションの紹介を積極的にしてきた。すなわち、マガジンハウスは、請求人の許諾の下に昭和45年3月に雑誌「アンアン(an.an)」を日本版「ELLE」誌と位置づけて創刊し、以来、昭和57年に至るまで「アンアン」には、毎号本国版「ELLE」誌の記事を一部そのまま掲載するなど「ELLE」ファッションの紹介、普及を図り、その表紙には、必ず「ELLE JAPON」の商標を附してきた。なお、「アンアン」誌が若い女性間の爆発的な支持を受け、我が国で最も人気のある雑誌の一つであることは、周知のとおりである。また、マガジンハウスは、「アンアン」誌のみにとどまらず、その発行に係る「クロワッサン」誌等他の出版物にも、多数「ELLE」誌の記事を「ELLE」の名の下に記載したが、昭和57年4月に至り、マガジンハウスから雑誌「ELLE」を発刊し、さらに、株式会社タイム アシェット ジャバンがこれを承継し、現在に至るまで、日本における女性向け雑誌の中でも最も人気の高い雑誌となっていることは、周知の事実である。ちなみに、我が国における雑誌「ELLE」は、昭和57年4月から昭和60年4月までは月に1回、以後は、現在に至るまで月2回刊行しているが、毎号の発行部数は、20万冊から24万冊に達している。その内容は、被服、身回品、化粧品その他のファッションの紹介の記事、あるいは、これに関連する広告の掲載であり、いわゆる「ELLE」ブランド、「エル」ブランドの国内における源流となっている。

(3)請求人は、雑誌「ELLE」の刊行を続けるのみではなく、「ELLE」ファッションの普及を図るために、ライセンシーにこれらのファッションを商品化させる活動も行ってきた。このために、請求人は、日本を含め世界各国において各種商品について、商標「ELLE」の登録をなしている。各国において管理をしている引用商標の数は、およそ1700余りあるといわれている。

我が国においては、昭和39年以来、帝人株式会社(大阪市東区南本町1丁目11番地、以下「帝人」という。)に対し、引用商標の独占的使用を許諾するとともに、かかる活動を推進してきた。帝人は、自ら「ELLE」ファッションに係る洋服を製造、販売する一方、その独占的使用権に基づき、婦人服につきイトキン株式会社(大阪市東区北久太郎町2丁目37番地)、スカーフ・ハンカチ類につき川辺株式会社(東京都新宿区新宿1丁目28番14号)、水着につき株式会社岸田(東京都新宿区四谷2丁目11番地)、エプロンにつき中西縫製株式会社(東京都墨田区両国3丁目21番5号)、寝装寝具類につき西川産業株式会社(東京都中央区日本橋富沢町8番8号)、手袋につき株式会社三大(大阪市福島区福島3丁目12番20号)の各社に引用商標の再使用権を許諾した。帝人とこれら各再使用権者は、共同して「ELLE」ファッションの宣伝、販売、普及に努め、その製造、販売に係る商品に引用商標を使用していた。

その後、昭和59年7月に至り、請求人は、帝人との関係を解約し、自ら東洋ファッション開発株式会社を設立し、「ELLEファッション」の市場開発、市場調査、企画、利用を図り、帝人の再使用権者を引き継ぎ、使用権者として、引用商標の普及に努めている。また、その間、新たな再使用者として、サブライセンシーリストに記載の企業がELLEファッションの事業に加わり、その取扱商品は、平成19年4月現在で、次のものに及んでいる。

婦人服,紳士服,子供服,ベビー服,毛皮,肌着,ナイトウェア,ハンカチーフ,タオル,靴下,エプロン,婦人水着,浴衣,スキーウェアー,手袋,帽子,ネクタイ,マフラー,スカーフ,アクセサリー,装身具,バッグ,革小物,ベルト,傘,レイングッズ,履物,寝装具,クッション,バス,トイレ用品,時計,眼鏡,文房具,化粧品,石鹸,喫煙具,陶器,金属製食器,ガラス食器,刃物,ランチボックス,ゴルフ用品,ベビーカー,家具,ガーデニング用品,健康グッズ

これらの商品に付されている商標は、いずれも引用商標の構成からなるものである。請求人の引用商標のライセンスの下に販売されている商品群は、前述のとおりであり、これらの商品は、日常の生活のあらゆる分野に及んでいる。それ故、これらの商品を通しても、引用商標は、我が国においてよく知られるところとなっている(甲第9号証ないし甲第35号証)。

(4)引用商標は、雑誌「ELLE」による著名性、「ELLE」ファッション、「ELLE」ファッションの商品化により、遅くとも本件商標の出願の日には、我が国において「エル」の称呼をもって著名な商標となっていたものである。

(5)本件に係る指定役務は、「医業」である。「医業」にも様々なものがあるが、本件商標権者の行っている医業は、いわゆる「美容整形」である。商標法上の「医業」は、無論、「美容整形」も含むものである。

本件商標権者は、本件商標と類似の音から構成される「青山エルクリニック」を診療所の名称とし、また、本件商標を一部に表示している(甲第43号証の1及び2並びに甲第44号証)。その広告の内容から、同診療所は、主として女性を対象としていることがうかがわれる。最近の女性は、気軽に美容整形を訪れるといわれているから、本件商標権者の診療所の顧客は、特に、美容整形に関心を持つ年代の女性と認められる。

前述のとおり、引用商標は、女性、特にファッションに関心を持つ年代の女性に極めてよく知られているものである。したがって、本件商標が使用される役務の対象層は、引用商標をよく知る対象層と同じであるということができる。

本件商標は、左から右に「Aoyama elle clinic」と書してなる構成のものである。「Aoyama」は、商標権者が所在し、かつ、診療所を経営している地名の青山であることを看者は容易に理解することができる。また、指定役務が医業であり、美容整形を営んでいることから、「clinic」が診療所の意味であることも容易に理解されるものである。それ故、本件商標のうち「Aoyama」及び「clinic」は、特に出所表示の機能を持たないということができるから、本件商標中、「elle」の部分のみが要部であると認められる。

前述のとおり、本件商標により示される診療所は、引用商標の顧客と同一の層であるから、当該要部「elle」を「ELLE」の綴りと同じものと容易に理解し、これを「エル」と読むことは、明らかである。それ故、本件商標からは、「エル」の称呼が生ずる。

引用商標は、「エル」として知られているから、本件商標は、引用商標と称呼上類似するものであるといわなければならない。

また、引用商標を知る多くの人々は、著名な引用商標と同じ称呼を持つ本件商標を引用商標と混同する可能性が高い。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当する。

2 被請求人の答弁に対する弁駁

被請求人は、本件商標に係る指定役務である「医業」と請求人の取扱う商品は、非類似なものであり、関連性がないから、本件商標と引用商標の関係においては、出所の混同を生じるおそれがない旨を主張する。しかし、被請求人の当該主張中の商標法第4条第1項第15号の解釈態度は、同号を狭く解釈するものであり、当該主張は、誤りといわざるを得ない。

「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」であるかの判断には、「他人の商標の周知著名度」、「他人の商標と当該商標の類似性の程度」、「企業における多角経営の可能性」、「需要者の共通性」及び「取引の実情」を考慮し、総合的に判断されるべきである、といわれる。

請求人は、本件商標に係る「医業」について、防護標章(登録第1978527号防護標章登録第3号)を登録している事実がある(参考資料1参照)。この事実及び既に審判請求書において主張し、また、同時に提出した証拠から、商標の著名度は、明らかである。

また、類似性の程度については、商標審査基準が平成11年に改正され、他人の著名な商標を一部に有する商標は、商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取扱うものとする旨の基準が設けられた。同改正は、国際的に著名商標の保護の重要性が指摘されるに至った時代であり、また、その当時、東京地裁で下された本件の引用商標が関係した「ELLECLUB」事件の判決がきっかけである(参考資料2参照)。

したがって、本件商標と引用商標が類似することは、明らかである。被請求人は、「第15号の適用については商標の類否判断は必要のない」(答弁書第2頁第12行及び13行)と主張するが、審査基準にあるとおり、他人の商標と当該商標の類似性の程度は、混同の判断に大きな影響を持つことはいうまでもない。

さらに、審判請求書において明らかにしたとおり、請求人は、関連企業32社(甲第17号証の5)を通して、各種商品を展開しているものであり、多角経営を行っているものである。

また、取引の実情を見ると、被請求人の顧客は、女性が中心であるから、請求人の顧客と需要者を共通にするものである。

したがって、これまで述べたところから明らかなとおり、本件商標は、引用商標と混同を生ずるおそれがある商標といわざるを得ない。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 請求人の主張・立証について

請求人は、本件商標が引用商標に類似し、出所の混同を生じるおそれがあるとし、その根拠条文として、商標法第4条第1項第10号及び同第15号をあげ、甲各号証を提出する。

しかしながら、甲各号証には、引用商標が役務「医業」若しくはこれに類似する役務(以下「医業等」という。)について使用されていることを示すものがない。

医業等についての引用商標の使用を示す資料がないことからして、また、第10号と第15号の重複適用はないこと(第15号括弧書き)からして、さらに、第15号の適用については、商標の類否判断は必要のないこと等からして、請求人の主張は、何とも理解し難いものである。

2 出所の混同について検討すべきこと

(1)医業等についての引用商標の使用が示されない以上、本件審判においてすべきことは、本件商標と引用商標の類否を論じることでなく、本件商標の使用が引用商標との関係で出所の混同を引きおこすおそれがあるか否かの具体的な検討である。該検討は、本件商標の指定役務「医業」と引用商標の使用に係る「商品」との関係、及び「elle」の文字を含む本件商標と引用商標の態様の比較の2つの点からする必要がある。

(2)請求人は、女性向けファッション雑誌「ELLE」の発行部数を誇示し、商標「ELLE」が付された様々な商品(被服,装身具,かばん類等)がライセンス契約により市場に出ていることを謳う。しかし、これら商品中には、本件商標の指定役務「医業」と類似関係にあるものはない。

「医業」は、医師等の公的資格のある者が診療所等所定の届出をした場所において、病気や怪我を治すために診察・治療を行うことをいう。もとより、役務と商品は、異質なものであるが、このような「医業」は、雑誌やファッション関連商品と非類似なものである。これら商品の品質・特性(使用目的や効能、生産者・販売者、流通過程等)をみても、「医業」の質・特性と何の関連性もない。共通点のない「医業」と「雑誌・ファッション関連商品」間では、商標を論じるまでもなく、出所の混同は生じない。

なお、請求人は、被請求人の開設する診療所が美容外科を行っていることをあげ、「本件商標権者の診察所の顧客は、特に、美容整形に関心を持つ年代の女性と認められる。引用商標は、女性、特にファッションに関心を持つ年代の女性に極めてよく知られているものである。したがって、本件商標が使用される役務の対象層は、引用商標をよく知る対象層と同じであるということができる。」と論じるが、「ファッションに関心を持つ年代の女性」を役務や商品の類否の基準とするなら「被服」も「装身具」もすべて類似商品となってしまう。本件商標の指定役務は、「医業」であり「美容外科」でないのであるから、美容外科を前提に話を進めること自体がおかしなことでもある。

3 本件商標及び引用商標について

(1)役務「医業」と商品「雑誌・ファッション関連商品」が互いに非類似であり関連性を有しない以上、本件商標は、引用商標との関係において出所の混同が生じるおそれはないが、念のため、商標相互につき以下述べる。

(2)請求人は、本件商標の文字部分を「Aoyama」「elle」「clinic」に分けて要部を「elle」とするが、かかる観察・把握方法は、社会の実情や審査・登録実務に反するものである。役務商標は、商品商標と比べ、その態様中に、「地名」「業種名」「事業主の姓」などを表わす文字を含むことが多いが、互いに混同することなく使用されている。これは、役務商標において、態様中に含まれる文字がそのまま観察・称呼されるという特性が認められるからである。

登録例を見るに、「渋谷美容外科クリニック」(登録第4834873号)、「湘南美容外科クリニック」(登録第4960547号)、「東京八重洲クリニック」(登録第4732420号)、「参宮橋アイクリニック」 (登録第3176323号)、「吉祥寺形成クリニック」(登録第3292912号)などがあるが、これらは、請求人の主張するごとく、地名を表わす文字と「クリニック」の文字とが出所表示の機能を持たないとすると登録されるはずのなかったものである。

図形と「Aoyama elle clinic」の文字とでなる本件商標の文字部分は、その態様全体をもって観察・称呼される。したがって、本件商標は、引用商標と何ら類似しない。

(3)付言するに、引用商標は、その字体に特徴がある。

すなわち、縦長の欧文字で構成され、大文字であり、各欧文字の横線の右端部分に縦方向に拡大されたひげがあり、また、各欧文字の縦線は、横線に比べて太いという特徴があって初めて請求人の商標と認識されるのである。

「elle」は、フランス語の人称代名詞3人称女性形であり、それ自体は、造語ではない。雑誌における読者、ファッション関連商品における需要者を意味するともいえる「ELLE」が識別標識として認められているのは、その字体の特徴故である。

小文字の筆記体でなり、特徴あるデザインを見いだし難い本件商標中の「elle」は、それのみで比べても引用商標と非類似である。なお、「エル」との称呼は、「elle」のほか、識別力を有しないとされるローマ文字の1文字「L」からも生じる。引用商標の類似範囲(禁止権の及ぶ範囲)は、外観が似ているとのみすべきと思料する。

4 まとめ

上述のとおり、請求人の主張には、理由がない。本件商標は、何ら無効事由を有しない。

第4 当審の判断

本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなるところ、請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号にも該当する旨主張しているので、この点について判断する。

請求人の提出に係る甲各号証及びその主張の全趣旨よりすれば、以下の事実を認めることができる。

1 引用商標の著名性について

(1)請求人は、フランスに所在する法人であり、女性向けファッション雑誌「ELLE」の出版を中心として、各種商品のファッションを創作、紹介しているものである。

雑誌「ELLE」は、ファッションや美容、ライフスタイルの情報を女性に向けて発信するために、被服、身回品、化粧品、家具、食品等に関する記事を掲載する女性向けファッション週刊誌であり、フランスにおいては、第2次大戦前から発行され、2000年までに約2854号を数えており、発行部数は、フランス語版が毎週351,200冊に達している。雑誌「ELLE」は、現在ライセンス契約をし、あるいは、合弁事業を通して、各国において姉妹誌「ELLE」を発行している。

我が国でも、マガジンハウスが昭和57年より「ELLE−JAPON」として、雑誌「ELLE」の日本語版を発行(甲第9号証)してきており、現在は、株式会社アシェット婦人画報社がこれを承継し雑誌「ELLE」を発行(甲第13号証)し、服飾に関する各辞典(甲第6号証ないし甲第8号証)に掲載されているように「ELLE」誌及び「エル・ファッション[Elle fashion]」は、古くから広く知られていることが認められる。

また、「ELLEライセンシーメンバー表」(甲第17号証)のとおり、請求人の引用商標は、日常のあらゆる分野に及んでおり、各種の商品に付されているといえる(甲第9号証ないし甲第42号証)。

(2)以上の認定事実によれば、引用商標は、請求人の発行する雑誌、及びファッション関連商品について使用する商標として、本件商標の登録出願時には、既に我が国において取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は、本件商標の登録時、及び現在においても継続しているというのが相当である。

2 本件商標について

本件商標は、別掲(1)に示したとおり、図形と文字との結合によりなるものであるところ、図形と文字とを常に一体のものとして把握しなければならない格段の理由はないから、文字部分のみにおいても独立して取引に資されるものというを相当とし、その文字部分は、「Aoyama elle clinic」の欧文字を筆記体風に表してなるものであり、第44類「医業」を指定役務とするものである。

また、前記文字部分中、「Aoyama」の文字は、商標権者が所在し、かつ、診療所を経営している地名の青山であること、及び「clinic」の文字が診療所の意味を有し、その指定役務との関係においては、広く一般に使用されているといえるから「elle」の文字に自他役務の識別標識としての機能があると看取される場合も決して少なくないといわざるを得ない。

3 出所の混同のおそれについて

以上の事実を総合すれば、本件商標は、雑誌のみならずファッション関連商品に広く使用され、本件商標の登録出願日前より、需要者間に請求人の業務に係る商品について使用するものとして広く知られている引用商標「ELLE」の文字と綴り字を同じくする「elle」の文字を含むものであるから、引用商標を連想・想起して、その役務が請求人からライセンスを受けた者が提供する役務であるかの如く、あるいは、請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。

4 被請求人の主張について

(1)被請求人は、医業等についての引用商標の使用が示されない以上、本件商標の使用が引用商標との関係で出所の混同を引きおこすおそれがあるか否かの具体的な検討が必要であり、「医業」は、雑誌やファッション関連商品と非類似なものである旨主張する。

しかしながら、請求人が引用商標を使用している雑誌は、ファッションや美容、ライフスタイルの情報を女性に向けて発信するものであり、また、ライセンス契約も多岐にわたるファッション関連商品であるから、その需要者層は、ファッションに興味を持つ女性であるといえる。

他方、本件商標は、「医業」を指定役務とするところ、被請求人は、本件商標の構成文字中「Aoyama elle clinic」と社会通念上同一と認められる「AOYAMA ELLE CLINIC」の欧文字を横書き、あるいは「AOYAMA」、「ELLE」及び「CLINIC」の各文字を二段又は三段に書して「形成外科・皮膚科専門医による美容医療」に使用していることが認められる(甲第43号証及び甲第44号証)。そして、該美容医療の需要者層は、トータルファッションの一つともいえる美容に関して興味を持つ女性といえることから、引用商標の需要者層とは少なからず共通にするものといえる。

そうすると、引用商標が医業について使用されていないとしても、引用商標は、雑誌及びファッション関連商品に使用して広く認識されていること上記1のとおりであり、本件商標は、その構成中に引用商標の文字と綴り字を同じくする「elle」の文字を含むものであり、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるから、被請求人の主張は、採用することができない。

(2)被請求人は、登録例を示し、役務商標においては、態様中に含まれる文字は、そのまま観察・称呼されるという特性が認められる旨主張している。

しかしながら、本件商標は、広く認識されている引用商標の文字と綴り字を同じくする「elle」の文字がその構成中に含まれているものであり、該文字より引用商標を連想、想起すること前記のとおりであるから、被請求人の示す登録例の存在をもって、本件についての判断が左右されるものではない。

5 結論

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、請求人主張のその余の点について論及するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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