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Trademark Appeal Case

魚種名と品質表示の識別性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2006−89161(T2006−89161/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4855020号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4855020号商標(以下「本件商標」という。)は、「KISU SPECIAL」の文字を横書きしてなり、平成16年1月9日に登録出願、第28類「キス釣り用かばん」を指定商品として、同17年4月8日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第22号証を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、これをその指定商品「キス釣り用かばん」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に商品の用途、品質等を表示したものと認識するにとどまるから、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものである。

(1)本件商標中の「KISU」の文字は、その指定商品との関係から、釣りの対象魚である「キス(鱚)」をローマ字綴りしたものと容易に看取し得るものである。

「KISU」の文字が、釣り具業界において、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものであることは、平成11年異議第91168号(甲第3号証)において、「KISU」の文字(標準文字)よりなり、第28類「釣り具」を指定商品として設定登録された商標について、「釣りの対象魚としてポピュラーな『キス(鱚)』をローマ字綴りしたものと容易に看取し得る」と認定し、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものとして、その登録を取り消したことからも、明白である。

(2)釣り具メーカーは、釣りの対象魚毎にその対象魚に適した「かばん」を各種販売している。

(ア)「2000ダイワ釣り用品カタログ」(2000年1月28日ダイワ精工株式会社発行)中、「アルトモア・トラウトバッグM(A)/L(A)」の項(167頁)には、「AMトラウトバッグM(A)カーキ」、「AMトラウトバッグL(A)グリーン」と表示された「トラウト(鱒)釣り用のかばん」が掲載され、また、「ヘラバッグ&ケース」の項(210頁)には、「オールドタイマーヘラバックシリーズ」及び「プロバイザーヘラバックシリーズ」として「OTヘラバッグ38(A)」、「PVヘラバッグ(A)」と表示された「へら(ヘラブナ)釣り用のかばん」が掲載されている(甲第4号証)。

(イ)「2006ダイワ釣用品総合カタログ」(2006年2月1日ダイワ精工株式会社発行)中、「プロバイザー・スペシャルヘラバックシリーズ」及び「プロバイザーヘラバックシリーズ」の項(196頁)には、「PVスペシャルヘラバッグ(B)」、「PVヘラバッグ(C)」と表示された「へら(ヘラブナ)釣り用のかばん」が掲載され、「オールドタイマーヘラバックシリーズ」の項(197頁)には、「OTヘラバッグ(B)」と表示された「へら(ヘラブナ)釣り用のかばん」が掲載されている(甲第5号証)。

(ウ)釣りの対象魚である「トラウト(鱒)」、「ヘラ(ヘラブナ)」等専用の「かばん」が存在することは、インターネットの検索エンジンである「Google」でも検索することができる。

「トラウトバッグ」の文字で検索すると、349,000件ヒットした(甲第6号証及び甲第7号証)。

また、同様に、「ヘラバッグ」の文字で検索すると、95,800件ヒットした(甲第8号証及び甲第9号証)。

さらに、「鮎バッグ」の文字で検索すると、249,000件ヒットした(甲第10号証及び甲第11号証)。

(エ)このように、釣りの対象魚毎に、その対象魚に適した「かばん」が存在することは、釣り具業界において広く知られているとともに、釣り人にも広く使用されている事実が存在する。

したがって、本件商標の指定商品「キス釣り用かばん」は、釣りの対象魚である「キス(鱚)に適したかばん」であることを単に示すにすぎないものである。

(3)本件商標中の「SPECIAL」の文字は、釣り具業界において、商品の品質等を誇称する「特別の、特殊の、専用の」を意味する語として、取引者、需要者に普通に使用されているから、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものであり、このことは、過去の審査・審決例(甲第12号証ないし甲第19号証)からも明白である。上記審査・審決例においては、商標中の後半部に「SPECIAL」又は「スペシャル」の文字を有し、第28類「釣り具」を指定商品中に含むものであるが、商標法第3条第1項各号及び同法第4条第1項第16号の規定に該当するとして拒絶された。

(4)インターネットの検索エンジンである「Google」で、「キススペシャル」の文字を検索すると、被請求人以外の株式会社ゴーセンの「ゴーセン(GOSEN)/ホンテロン キススペシャル」と表示された「釣り糸」への使用が確認できる(甲第20号証)。

また、株式会社がまかつの「キススペシャル5号茶(kisu special 5gou)がまかつ0.37」、「キススペシャル5号赤(kisu special 5gou)がまかつ0.37」、「キススペシャル5号金(kisu special 5gou)がまかつ」、「キススペシャル6号(kisu special 6gou)がまかつ0.39」、「キスSPECIAL7号茶(kisu special 7gou)がまかつ」、「キススペシャル7号(kisu special 7gou)がまかつ0.41」と表示された「釣り針」の使用が確認できる(甲第21号証)。

さらに、株式会社照楽園の「照楽キス スペシャル172D」と表示された「釣り竿」の使用が確認できる(甲第22号証)。

(5)したがって、釣り具業界及び審査・審決例からみれば、「KISU SPECIAL」の文字よりなる本件商標は、その指定商品の用途・品質等を直接的ないし具体的に表示したにすぎないものであるから、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものである。

2 被請求人の答弁に対する弁駁

(1)被請求人は、甲第3号証ないし甲第19号証については、何らの反証も挙げておらず、容認したものである。

(2)被請求人は、「キス釣り用かばん」の業界において、「KISU SPECIAL」の語が商品の用途・品質等を表す語として使用されている事実がない旨主張し、乙第3号証ないし乙第8号証を提出している。

しかし、乙第3号証ないし乙第8号証における商標は、本件商標とは、表示態様、構成文字、指定商品が異なり、本件とは事案を異にするものであるから、これを本件商標の登録の適否に適用することはできない。

(3)被請求人は、商標の自他商品の識別力の有無は、商標全体の構成を考察した上で、該構成に外観上一体性があれば、その商標全体として、その指定商品の品質等を具体的に表すものか否か、また、指定商品を取り扱う業界において、商標全体の文字が商品の品質等を表す語として実際に使用されている事実があるか否かを検討することにより判断されるべきである旨主張する。

しかしながら、商標の自他商品の識別力の有無は、商標法第3条第1項第6号に規定されているように、「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるか否か」によって判断すべきものであり、これが唯一の判断方法である。

そして、この判断方法を登録出願された商標について、個別、具体的に適用すべきものである。

したがって、その商標が当該業界において、品質等を表す語として実際に使用されていなくとも、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができなければ、自他商品識別力のない商標として扱われることは当然である。

(4)被請求人は、乙第1号証及び乙第2号証の書籍中、「キス釣り用語集」と「投げ釣り用語集」の各1頁のみを提出し、「KISU SPECIAL」の語が一般的な用語として紹介されている事実はないと主張するが、多数存在する釣り書籍の中から、たった2頁を引用して「KISU SPECIAL」の語が存在しないから、本件商標が一般的な用語ではないとする主張は、身勝手なものといわざるを得ない。

むしろ、甲第12号証ないし甲第19号証からも明らかなとおり、魚名に「SPECIAL」を結合した商標が、その魚用の特別の用途を示した商品を示すにすぎないことは明白である。

(5)被請求人は、請求人が本件商標に対してした登録異議の申立て事件(異議2005−90345、甲第2号証、以下「本件異議事件」という。)の決定で、「キス釣り用かばん」について「KISU SPECIAL」の語が商品の品質、用途を表示するものとして普通に使用されている事実はないと認定されたのに対し、甲第20号証ないし甲第22号証は、ハリス、釣り針、釣り竿に関する使用例であるから、この使用例は失当なものである旨主張する。

しかしながら、本件商標の指定商品は、ハリス、釣り針、釣竿等と同様に、釣り具の一商品である。

また、「キス釣り用かばん」は、ハリス、釣り針、釣竿と販売部門、需要者、目的を共通にする商品である。

したがって、ハリス、釣り針、釣竿が属する釣り具の取扱い業者、需要者間において、「KISU SPECIAL」の語が、「釣りの対象魚であるキス(鱚)釣りに特別に適した商品」という用途を表す語として一般に使用されている事実があることを前提とすれば、「キス釣り用かばん」に「KISU SPECIAL」の語が用いられた事例を発見できなかったからといって、該語が「キス釣り用かばん」について自他商品の識別標識としての機能を果たし得るとの本件異議事件の決定は違法なものであることは明白である。

(6)被請求人は、甲第20号証について、ローマ字で「KISU SPECIAL」と一体的に表示したものでないと主張し、ローマ字「KISU SPECIAL」と一体的に表示したものは、自他商品の識別力を発揮し得る商標的使用であると主張する。

しかしながら、甲第20号証には、大文字「KISU」に重ねて一体的に「special」と表示し、その下に、「キススペシャル」の称呼を生じることを示す「キススペシャル」の文字が表示され、また、商品見本の右側にも「キススペシャル」の表示がある。

電話取引等のように、称呼のみで行われる取引が極めて一般的であることを考慮すれば、一般的な名称を片仮名で表示したら自他商品識別力がなく、ローマ字で表示したら自他商品識別力があるとする被請求人の主張が理由のないことは明白である。

そして、甲第20号証の商品写真中の「KISU Special」及び「キススペシャル」の文字は、商品名でもあり、商品説明部分でもあるから、釣りの対象魚である「キス(鱚)」に適した商品(ハリス)であることを示す用途・品質等を表示したものである。

(7)被請求人は、甲第21号証に表示されている「キススペシャル」、「kisu special」を商品の品質等の表示と結び付けるには無理がある旨主張する。

そこで、甲第21号証中の「キススペシャル5号茶(kisu special 5gou)がまかつ0.37」で説明すると、「釣り針」の上に、太字で「秋田袖5号」と表示したのが商品名で、「釣り針」の下には、「釣り針」のメーカーが「がまかつ」で、キス(鱚)釣りに特別に適した釣り針であることを示す「キススペシャル(kisu special)」と用途・品質を表示し、「釣り針」のサイズが5号(5gou)で、色が茶色であることを説明している。

したがって、甲第21号証中の「kisu special」、「キススペシャル」及び「キスSPECIAL」の文字は、単に商品(釣り針)の用途・品質を表示したものであるから、該表示が商品の品質表示と結びつかないとする被請求人の主張は理由がない。

(8)被請求人は、甲第22号証に関し、釣竿表面に表示された「照楽キス」、「Special」と「KISU SPECIAL」の語が一致するものでない旨主張する。

しかしながら、本件商標が自他商品識別力を有するか否かの判断は、「KISU SPECIAL」と外観上同一の態様のものが使用されているか否かではなく、「KISU SPECIAL」と同様に、「釣りの対象魚であるキス(鱚)に適した商品」の意を容易に認識させる「KISU special」、「kisu special」、「キススペシャル」、「キスSPECIAL」、「KISUスペシャル」等の文字が、一般的に使用されているか否かが問題となる。

そして、甲第22号証中には「KISU SPECIAL」と同一称呼の「キスSpecial」、「キススペシャル」の文字が商品の用途・品質を表示する語として使用されている。

(9)被請求人は、本件審判において、請求人が提出した証拠は、いずれも「KISU SPECIAL」の語が本件指定商品の品質、用途を表示するものとして普通に使用されていると主張するには不十分なものであるから、本件商標は、本件異議事件の決定と同様に自他商品の識別力を有するものと考えるのが相当である旨主張する。

しかしながら、上記のとおり、本件商標と同一称呼の語が、釣り具業界において、その用途・品質等を直接的ないし具体的に表示するものとして、広く使用されていることは明らかである。

したがって、本件商標をその指定商品に使用しても、釣りの対象魚である「キス(鱚)釣り等に適したかばん」であることを単に表示するにすぎないので、本件商標は、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものである。

(10)被請求人は、本件審判において、本件商標の自他商品の識別力が否定されるならば、本件異議事件の判断と矛盾することになり、審査、審理の統一の見地から失当である旨主張する。

しかし、無効審判の立法趣旨は、過誤による商標登録を存続させておくことは、本来、権利として存続することができないものに排他独占的な権利の行使を認める結果となるので、妥当でないからという点にある。

言い換えれば、本件商標のように、本来的に拒絶されるべきものが、誤って商標登録を受けた場合を想定しており、このような誤りを是正する手段として本件審判事件が存在する。

よって、本件商標について、自他商品の識別力が否定されて無効になるのは、本来のあるべき姿に戻るだけである。

また、商標法は「審査、審理の統一の見地」などは全く想定していないものである。

3 むすび

以上のように、本件商標は、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、商標法第3条第1項第3号又は同第6号に該当し、その登録は、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすべきである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。

1 本件商標が識別力を有することについて

(1)本件商標を構成する「KISU SPECIAL」の文字は、同書、同大、同間隔で一連に表示され、外観上一体性のある構成からなるものである。

そして、本件商標は、その登録後、本件異議事件において、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである旨の登録異議の申立てがされたが、「本件商標の商標登録を維持する。」旨の異議決定がされたものである。

(2)そもそも商標の自他商品の識別力の有無は、商標を構成する各語の意味を結合して商標全体の意味を考察するのではなく、商標全体の構成を考察したうえで、該構成に外観上の一体性があれば、商標全体として、その指定商品の品質等を具体的に表すものか否か、指定商品を取り扱う業界において、商品の品質等を表す語として実際に使用されている事実があるか否かを検討することにより判断されるべきものである。

してみれば、本件商標は、前記のとおり、外観上、ローマ字を一体感ある構成としたものであることにかんがみれば、全体としてのみ自他商品の識別力の有無を考察すべきことは明らかである。

そうすると、本件商標は、その構成中、前半部の「KISU」が釣りの対象魚である「鱚」、後半部の「SPECIAL」が「特別の、特殊の、専用の」を意味するものであるとしても、全体としては、本件指定商品の用途・品質等を具体的に表すものであると理解し難く、また、本件指定商品の業界において、「KISU SPECIAL」の語が商品の用途・品質等を表す語として使用されている事実も一切ない。

さらに、キス釣りを対象とした書籍にも、「KISU SPECIAL」の語が一般的な用語として紹介されている事実はない(乙第1号証及び乙第2号証)。

(3)以上、本件商標の構成上の一体性及びその指定商品の業界における「KISU SPECIAL」の品質表示としての使用例が皆無であることにかんがみれば、本件商標は、その構成の全体をもって、特定の具体的な観念を想起し得ない一種の造語であるというべきであり、自他商品の識別力を有するものと考えるのが相当である。

2 甲第20号証ないし甲第21号証について

(1)本件異議事件において、決定は、「KISU」と「SPECIAL」を結合させた「KISU SPECIAL」の語よりは、特定の商品の品質等を直接的ないし具体的に表示するものとはいえないばかりでなく、登録異議申立人の提出に係る証拠によっても、「KISU SPECIAL」の語がその指定商品の「キス釣り用かばん」について、具体的に商品の品質、用途を表示するものとして普通に使用されていると認めるに足りる証拠はない旨判断し、本件商標は、一種の造語よりなるものと認識、把握されるものであり、その指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ると結論付けたのである。

(2)請求人は、本件審判において、本件商標が釣り具業界において、商品の用途・品質等を直接的ないし具体的に表示するとして、甲第20号ないし甲第22号証を提出している。

しかるに、本件異議事件では、「KISU SPECIAL」の語が「キス釣り用かばん」について、具体的に商品の品質等を表示するものとして普通に使用されているか否かを検討しているのであり、広く「釣り具」としての使用事実の有無を検討したものではない。

そうであれば、甲第20号証ないし甲第22号証における商品「ハリス、釣り針、釣竿」の使用例をもって、「KISU SPECIAL」の語が「キス釣り用かばん」の品質等の表示として普通に使用されていると主張することは、失当といわざるを得ない。

(3)甲第20号証ないし甲第22号証

(ア)甲第20号証の商品写真は、商品の中央にローマ字で大きく「KISU」と表示され、この文字と中央下側で重なり合うように筆記体で「Special」と表示するとともに、ローマ字の語頭文字「K」の下方に小さく片仮名文字で「キススペシャル」と表示されている。

そうであれば、上記表示態様がローマ字「KISU SPECIAL」と一体的に表示したものでないことは明らかであり、同時に、このような態様であれば、商品の品質を表示するというより、自他商品の識別力を発揮し得る商標的使用であると考えるのが自然である。

(イ)甲第21号証の「釣り針」も、キススペシャル5号茶・赤・金を「kisu special 5gou」と、キススペシャル6号を「kisu special 6gou」と、キススペシャル7号を「kisu special 7gou」と英語表示したものであり、このような商品名の英語表示と商品の品質等の表示を結び付けるには無理がある。

(ウ)甲第22号証の商品写真には、釣竿表面に大きく「照楽キス」と表示し、その後に1文字程度間隔をあけてローマ字を筆記体で「Special」と表示しているにすぎず、かかる表示と「KISU SPECIAL」の語が一致するものでないことは一目瞭然である。

(4)以上より、本件審判において、請求人が提出した証拠は、いずれも「KISU SPECIAL」の語が、本件指定商品の品質、用途を表示するものとして普通に使用されていると主張するには不十分なものであるから、本件商標は、本件異議事件の決定と同様に自他商品の識別力を有するものと考えるのが相当である。

本件商標が識別力を有することについて、被請求人の主張が正当であることは、過去の審決例からも明らかである(乙第3号証ないし乙第8号証)。

なお、本件審判において、万一、本件商標の自他商品の識別力が否定されるようなことがあれば、請求人による「KISU SPECIAL」の語の使用例の証拠が極めて不十分なものであるにもかかわらず、本件異議事件の判断と矛盾することになり、審査、審理の統一の見地から失当なものといわざるを得ない。

3 請求人の弁駁に対する再答弁

被請求人は、弁駁書における請求人の主張を踏まえて、本件商標がその指定商品「キス釣り用かばん」につき自他商品の識別力を有するものであることを、以下のとおり詳述する。

(1)商標法第3条第1項適用の判断時

(ア)請求人は、弁駁書において、「従って、被請求人は、甲第3号証ないし甲第19号証の証拠内容、証明内容については争うことなく容認したものである。」旨主張している(弁駁書第2頁第9行〜第10行)。

しかるに、請求人提出の甲第1号証ないし甲第22号証中、甲第5号証ないし甲第11号証、甲第16号証及び甲第17号証、及び甲第20号証ないし甲第22号証は、商標法第3条第1項第3号又は同第6号の規定の判断時にかんがみれば、いずれも本件商標の自他商品の識別力を否定し得る証拠になり得ないことは明らかである。

すなわち、「商標法第3条第1項は、商標の登録に関する積極的な要件ないしは商標の一般的登録要件に関する規定、換言すれば、登録を出願している商標がそれ自体取引上自他の商品を識別する機能を有すべきことを登録の要件とする趣旨の規定であって、同項各号に係る識別的機能を有しないものを列挙し、登録を拒絶すべきことを法定したものであって、このような要件の存否の判断は、行政処分(商標登録の許否が一の行政処分であることはいうまでもない。)の本来的性格にかんがみ、一般の行政処分の場合におけると同じく、特別の規定の存しない限り、行政処分時、すなわち査定時または審決時を基準としてすべきものと解するのが相当である」(昭和45年(行ケ)第5号 東京高等裁判所 昭和46年9月9日判決言渡)とされるところ、本件商標は、平成16年(2004年)1月9日に登録出願され、平成17年(2005年)4月8日に設定登録されたものである(甲第1号証)。

しかして、本件商標が自他商品の識別力を有するか否かの判断にあたっては、その設定登録時である平成17年(2005年)4月8日の時点において、「キス釣り用かばん」の取引者、需要者において、本件商標「KISU SPECIAL」がどのような意味を有するものとして認識され、使用されているかによって、判断されるべきものである。

(イ)そうすると、請求人提出の甲第5号証の「ダイワ釣用品総合カタログ」は、その裏表紙に「2006年2月1日発行」の表示があるとおり、本件商標の登録後に発行されたものである。

また、甲第6号証ないし甲第11号証のインターネットによる検索結果は、甲各号証の右下隅に「2006/09/08」の表示があり、該検索がこの日に行われたことを認めることはできるが、これは本件商標の登録後1年以上も経過した後に行われたものである。

このことは、同じインターネット情報である甲第20号証ないし甲第22号証についても同様のことがいえる。これらの甲号証の右下隅には「2006/11/08」の表示があり、この日付は本件商標の登録後である。

さらに、請求人が例示した審査例(甲第16号証及び甲第17号証)は、それぞれ平成17年9月26日、平成17年6月1日に登録出願されたもので、これらの特許庁での審査も本件商標の登録後になされたものであることは明らかである。

(ウ)してみれば、請求人提出の上記証拠は、全て本件商標の登録後に行われたものであり、少なくとも登録日である平成17年(2005年)4月8日の時点において、本件商標の「KISU SPECIAL」が請求人の主張するような品質等の表示として認識されていたか否かは不明であるといわざるを得ない。

よって、請求人の主張は、商標法第3条第1項の判断時である本件商標の登録後の証拠により自他商品の識別力を否定しようとする全く失当なものであることは疑う余地がない。

(2)本件商標の自他商品の識別力

(ア)そもそも本件商標の構成中、後半の「SPECIAL」の文字が請求人の主張のように「特別の、特殊の、専用の」意味を、前半の「KISU」が魚の「キス」を意味するものであっても、これらを一体的に横書きした本件商標からは「『キス』自体が特別な」ことをいうのか、「キス釣りが特殊な」ことをいうのか、あるいは「特別仕立てのキス」をいうのか等、何が特別、特殊又は専用なのかが不明な漫然とした広範な意味を生ずる。

(イ)そうであれば、本件商標の指定商品「キス釣り用かばん」との関係において、本件商標の「KISU SPECIAL」に接する取引者・需要者が一見して直ちに該商品の一定の品質・用途等を認識するとは到底考えられない。

(ウ)この点、請求人は、本件商標「KISU SPECIAL」をその指定商品「キス釣り用かばん」に使用しても、「釣りの対象魚である『キス(鱚)』釣り等に適した『かばん』であることを単に表示するにすぎない・・・」旨主張するが(弁駁書第8頁第15行〜第18行)、本来的に本件商標の構成文字中に、上記「・・・適した」なる意味の文字はなく、そうであれば、請求人の主張は、そのような意味にも認識でき、かつ、暗示する程度のものにすぎないと考えるのが相当である。

しかも、本件商標から一見して直ちに商品の一定の品質等を認識できるものであれば、審判官の合議体で行われる本件異議事件においても、当然に認識できるはずであるが、本件商標の登録が維持されたことは、複数の審判官によっても、その指定商品「キス釣り用かばん」の具体的な品質を直ちに認識できなかったといえるのである。

そして、このように、品質等をそれとなく暗示する程度であれば、これは指定商品の「品質」、「効能」等を間接的に表示するものであることは明らかであり、かかる間接表示が商標法第3条第1項第3号の品質表示に該当しないものであることは、特許庁商標課編「商標審査基準(改訂4版)」(乙第9号証)において、「3.指定商品の『品質』、『効能』、『用途』等を間接的に表示する商標は、本号の規定に該当しないものとする。」旨の解説から裏付けることができる。

(エ)また、かかる品質等をそれとなく暗示させるものが間接表示にあたることは、工藤莞司著「実例でみる商標審査基準の解説(第三版増補)」において(乙第10号証)、「品質等をそれとなく暗示させるもの、具体的には、商品の普通名称や品質表示等の一部からなるもの、あるいはそれらを結合してなるもの、具体的な商品と関係しない指定商品に係る専門用語ないしはその一部等は品質等の間接的表示に該当するであろう。」との解説からも明らかである。

(オ)さらに、上記商品の品質等を暗示する程度のものにつき、その商品の取引界における一般的な使用例を挙げるべきことは、網野誠編「商標(第4版)」において(乙第11号証)、「もっとも商品の特性を暗示する程度のもので独占使用を必ずしも排除すべきでないような表示は、その商品の取引界において一般にその商品の特性を表示するものとして取引上使用されているという証拠がなければ、その登録を認めるのが最近の判審決例の傾向といえよう。」とあるとおり、自他商品の識別力の有無を判断する手法として正当なものである。

してみれば、被請求人が、「その商標が全体として本件指定商品における品質等を具体的に表すものか」否かを検討することにより、その指定商品との関係で、暗示する程度のもの(間接表示)か否かを見極めたうえ、該指定商品の取引業界において、本件商標「KISU SPECIAL」の一般的な使用例がないことにより、本件商標の自他商品の識別力を認めたことは、上記の特許庁の審査基準、多数の審判例(乙第3号証ないし乙第8号証)等からも裏付けることができる。

(カ)よって、本件商標は、その一体的な外観より一種の造語であることは明らかであり、少なくとも請求人主張のような意味は、あくまで暗示する域にとどまる以上、その指定商品「キス釣り用かばん」の業界で一般的な使用がなく、請求人によるこれを立証する証拠もないことにかんがみれば、本件商標は、その自他商品の識別力を否定されるべきでないと考えるのが相当である。

(キ)なお、請求人は、上記審判例と本件商標とは表示態様などが異なり、共通点が全く存在しないことを理由に、本件の登録適否の判断に適用できない旨を主張するが、これら審判例の対象商標は、いずれも本件商標と同じく同書・同大の文字で外観上一体的に表示された明らかな共通点を認めることができるのである。

(ク)また、被請求人は、上記審判例を挙げることで、商品の別なく、特許庁で一般的に採られている判断手法を明らかにしようとするものであり、そうであれば、商標の構成文字が異なるものであっても、全体として一体的に表示されている限り、本件のみをこれら審判例の手法とは別に独自の手法で自他商品の識別力の有無を判断すべき理由も全くない。

(ケ)さらに、請求人は、「その商標が当該業界において品質等を表す語として実際に使用されていなくとも、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができなければ、・・・」という旨を主張するが(弁駁書第4頁第8行〜第10行)、本件商標のような暗示する程度のもの(間接表示)は、その指定商品「キス釣り用かばん」における一般的な使用例があってこそ自他商品の識別力が否定されるものであり、かかる使用例の有無は、識別力の判断における極めて重要な検討事項であることより、これを否定する請求人の主張は失当なものである。

(3)商標登録異議申立制度の尊重

(ア)本件商標は、本件異議事件における審判官の審理を経た上で「維持決定」がなされ、その登録が認められたものである。

特に、商標登録異議申立制度は、商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために、登録異議の申立があった場合に、特許庁が自ら登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合には、その是正を図るというものであり、かかる公益的な目的により、その審理も3名の合議により極めて慎重な判断を行っている。

また、本件において、請求人が提出した証拠中、甲第1号証、甲第3号証、甲第18号証、甲第19号証は、本件異議事件においても提出した同一の証拠であり、その他の証拠は、上記したとおり、本件商標の登録日との関係で自他商品の識別力を否定し得ないものである。

しかも、本件商標の「KISU SPECIAL」の使用例は、その指定商品「キス釣り用かばん」には全くなく、商品「ハリス」、「釣り針」、「釣竿」のそれぞれにつき商品名としての使用が各1件ずつしかなく、このような例だけでは、「KISU SPECIAL」が一般的に使用されていると結論付けることはできないのである。

(イ)してみれば、本件商標「KISU SPECIAL」の自他商品の識別力を否定する証拠が基本的には本件異議事件と変わりなく、そうであれば、該異議事件の判断を尊重すべきことは当然であり、請求人は、この点から、本件においても審査・審理の統一性を求めたのであり、その主張は正当なものである。

(4)むすび

以上より、本件商標は、その指定商品「キス釣り用かばん」との関係で自他商品の識別力が否定されるべきものでないことは明らかであり、商標法第3条第1項第3号又は同第6号のいずれの規定にも該当しないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものではない。

第4 当審の判断

1 本件商標

本件商標は、前記のとおり、「KISU SPECIAL」の文字を書してなるものであるところ、該文字は、「KISU」と「SPECIAL」の各文字の間に半字程度の間隔があり、外観上、「KISU」と「SPECIAL」の2語を結合したものと理解されるものである。

また、本件商標中、前半部の「KISU」の文字部分は、我が国において親しまれた英単語を表すものではなく、釣り具を取り扱う業界のみならず、釣りの愛好家においては、釣りの対象魚として広く親しまれている「鱚(キス)」をローマ字表記したものと直ちに理解するものと認められる。

さらに、本件商標中、後半部の「SPECIAL」の文字部分は、「特別(の)、特製(の)、専門(の)」などを意味する英単語であって、我が国においても、本件商標の査定前より、釣り具をはじめとする各種商品について、上記意味をもって、商品の品質を表示するためのものとして普通に使用されているところである。

そして、本件商標は、「KISU」の文字と「SPECIAL」の文字を結合することにより、全体として親しまれた熟語的意味合いを生ずるものではなく、釣り具における取引者、需要者からみれば、「KISU」の文字部分は、上記のとおり、あくまでも釣りの対象魚としての「鱚(キス)」を理解させるものであり、また、「SPECIAL」の文字部分は、上記のとおり、商品が通常のものより上級なものの意味合いをもって、商品の品質表示語を理解させるものであって、本件商標がその構成の全体をもって、一体不可分の造語を表したものとしか認識されないような特別な事情は見いだせない。

2 ところで、釣り具を取り扱う業界においては、例えば、釣り竿についていえば、磯竿、投げ竿、船(舟)竿、鮎竿、ヘラ竿、渓流竿、フライ竿等のように、釣りの対象魚や釣り場所・方法等により、それに適した釣竿が市場に出回っている実情にあること、また、釣り針や釣り糸にあっても、クロダイ(ちぬ鯛)、メジナ、メバルなどの海釣りやイワナ、鮎などの渓流釣り、あるいはヘラブナなど、釣りの対象魚ごとに、対象魚に適した商品が販売され、「チヌ」、「メバル専用」、「鮎」などと商品に釣りの対象魚の名前が表示されている実情にあること、さらに、釣りの仕掛けをセットにした商品にあっても、「サヨリセット」、「ワカサギセット」などのように、釣りの対象魚の名前が表示されて販売されている実情があり、このことは、鱚(キス)を釣りの対象魚とした釣り具においても何ら変わりがなく、「キス専用針、キス専用仕掛け」などが市場に出回っている実情にある(例えば、1995年4月27日付け静岡新聞、朝刊9頁「魚影を追って・釣り場ルポ=キスの投げ釣り」、1997年9月19日付けスポーツニッポン新聞「【遠征エリア】徳島・那佐湾 キスはあけぼの」、1998年4月2日付け朝日新聞東京地方版/静岡「足を伸ばせばアコウダイ 伊東南沖 釣りだより/静岡」参照)。

さらに、釣り道具やえさ、あるいは釣り上げた魚を入れるためのかばん(バッグ)にあっても、釣りの対象魚によっては、頻繁に釣り場所を移動するため、携帯する釣りの仕掛けやえさなどの出し入れが簡単にできるように工夫されたバッグや、釣り場所により、防水・砂が付きにくい・汚れにくいなどの機能を高めたバッグ、釣れた魚の傷みが少ないように工夫されたバッグ、あるいは鮎やヘラブナ等の専用バッグなどが販売されている実情にある(例えば、1984年8月25日付け日経産業新聞8頁「クーラーを組み込んだ釣り用バッグ(新製品)」、1989年1月17日付け日経流通新聞17頁「ヘラ釣り用具ラクラク収納、オリムピック(新製品)」、1991年4月6日付け日経流通新聞9頁「最高級素材の釣り用バッグ、オリムピック(新製品)」、1991年4月6日付け静岡新聞、朝刊9頁「魚影を追って・釣り場ルポ=アユ釣りの準備」参照)。

一方、本件商標の審査段階において提出された平成16年7月28日受付に係る意見書によれば、被請求人(出願人)は、「本願に係る指定商品『キス釣り用かばん』の『キス』は魚のキスの意味であり、本願に係る商標登録を受けようとする商標『KISU SPECIAL』の『KISU』から『キス』の称呼及び観念を生ずることから、指定商品を『キス釣り用』に限定したものであります。もっともキス釣り用のかばんは、釣り道具を収納するかばんではありますが、特に、キス釣りに使用する天秤やキス釣り用のリール、その他、糸や針などの小物を安全に収納できるように特化したかばんであります。例えば、リュックサックのような形態を成したかばんに、サイドポケットを設け、キス釣り用の天秤などが収納できるようにしたものであります。その他、軽量で持ち運びやすくしたり、キス釣りを行う砂浜でも砂がかばんにつきにくいように表面がコーティングされていたり、水が生地に入りにくい防水加工が施されていたり、砂浜においても立ったままで倒れない構造となっていたりするのが特徴です。」と述べていたことが認められる。

3 前記1及び2で認定した事実を総合すると、「KISU SPECIAL」の文字よりなる本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する需要者は、「キス釣りに適するように特別に作られたかばん」、あるいは「キス釣りに適した特製かばん」なる意味合いをもって、商品の品質、用途を表したと認識するにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を発揮し得る商標を表示したものとは認識し得ないというべきである。

4 被請求人の主張

(1)被請求人は、本件商標について、同書、同大、同間隔で一連に表示され、外観上一体性のある構成からなるものであり、商標の自他商品の識別力の有無は、商標を構成する各語の意味を結合して商標全体の意味を考察するのではなく、商標全体の構成を考察した上で、該構成に外観上一体性があれば、商標全体として、その指定商品の品質等を具体的に表すものか否か、指定商品を取り扱う業界において、商品の品質等を表す語として実際に使用されている事実があるか否かを検討することにより判断されるべきものである旨主張する。

しかしながら、「商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである」(平成12年(行ケ)第76号、東京高等裁判所判決)との判示も存するところ、本件商標が外観上、「KISU」と「SPECIAL」の2語を結合したものと理解されること、観念上、これらの語を常に一体不可分のものとしてのみ把握しなければならない特段の理由は見いだせないこと、「KISU」が釣りの対象魚「鱚(キス)」を理解させ、「SPECIAL」が商品の品質表示語を理解させるものであることは前記認定のとおりである。

そして、釣りの対象魚ごとに釣り用具が販売されている釣り具の分野における取引の実情を併せ考慮すれば、本件商標は、前記意味合いをもって、商品の品質、用途を表したと認識されるにとどまるものというべきであるから、被請求人の上記主張は理由がない。

(2)被請求人は、商品「ハリス、釣り針、釣竿」の使用例をもって、「KISU SPECIAL」の語が「キス釣り用かばん」の品質等の表示として普通に使用されているとする請求人の主張は失当である旨主張する。

しかし、前記認定のとおり、釣りの対象魚ごとに釣り用具が販売されている釣り具の分野における取引の実情を考慮すれば、本件商標の登録査定時に、たとえ、「KISU SPECIAL」の語が「キス釣り用かばん」の品質等の表示として普通に使用されていないとしても、該語に接する取引者、需要者は、これより直ちに「キス釣りに適するように特別に作られたかばん」、あるいは「キス釣りに適した特製かばん」なる意味合いをもって、商品の品質、用途を表したと認識するにとどまると認め得るから、被請求人の上記主張は理由がない。

(3)被請求人は、本件審判において、万一、本件商標の自他商品の識別力が否定されるようなことがあれば、請求人による「KISU SPECIAL」の語の使用例の証拠が極めて不十分なものであるにもかかわらず、本件異議事件の判断と矛盾することになり、審査、審理の統一の見地から失当なものといわざるを得ない旨主張する。

確かに、請求人の提出に係る証拠が、本件商標の登録査定時において、本件商標がその指定商品について使用された場合に、自他商品の識別力を有しないと認めるには、不十分なものといわざるを得ないところであるが、前記認定のとおり、本件商標の構成態様、釣り具を取り扱う分野の取引の実情等を考慮すれば、本件商標が自他商品の識別標識としての機能を有しないことはいうまでもない。のみならず、登録異議の申立て制度の目的と商標登録の無効審判制度の目的とは一致するものではなく、商標権が、その商標登録後に、登録異議申立てにおいて、提出された証拠のみを検討することにより、その登録が維持される場合があるとしても、登録無効審判の請求により、審理した結果、登録が誤りであるとの結論に達したときは、決定と異なる審決をすべきことは制度自体が予定するところである。

したがって、被請求人の上記主張は失当である。

5 むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものというべきであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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