結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2007−890012(T2007−890012/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
第1.本件商標
本件登録第4926243号商標(以下「本件商標」という。)は、「ひよこちゃん」の文字を標準文字で表してなり、平成16年9月22日に登録出願され、第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」、第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす」、第32類「ビール,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料,飲料用野菜ジュース」及び第33類「日本酒、洋酒、果実酒、中国酒、薬味酒」を指定商品として、同18年2月3日に設定登録されたものである。
第2.請求人の引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第524914号商標(以下「引用商標」という。)は、「ひよ子」の文字を縦書きしてなり、昭和32年6月4日に登録出願、第43類「菓子及び麺ぽうの類」を指定商品として、昭和33年8月1日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権存続期間の更新登録がされたものであるが、指定商品中の「もち」についての商標権は、平成17年10月4日付の審決により取り消され、その確定の登録が平成17年12月9日にされたものである。
第3.請求人の主張
請求人は、「本件商標の指定商品中、第30類『穀物の加工品』についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第131号証(枝番を含む)を提出した。
1.請求の理由
(1)請求の利益について
請求人は、商標登録第4878706号の登録商標を所有(以下「請求人登録商標」という)していたところ、被請求人が請求人登録商標について異議申立を行った(異議2005−90535)。当該異議申立における特許庁での審理の結果、請求人登録商標は商品「穀物の加工品」について商標法第8条第1項の規定に違反するものとして取消理由通知を受けた(甲第3号証)。よって、請求人は本件審判請求をするについて利害関係を有する。
(2)無効理由の概要
引用商標(商標登録第524914号)(甲第1号証の1,2)について
商標の構成 「ひよ子」(甲第1号証)
指定商品 第43類 菓子及び麺ばうの類、但し、もちを除く
出願日 昭和32年6月4日
登録日 昭和33年8月1日
引用商標「ひよ子」(甲第1号証の1,2)と本件商標「ひよこちゃん」(甲第2号証)とは類似している。また、引用商標は「ひよ子」は「名菓ひよ子」のみならず、総合的な菓子製造会社の商号として全国的な周知性を獲得している。また株式会社ひよ子の業務に係る商品「菓子等」と本件商標の指定商品「穀物の加工品」の関連性が強い。さらには引用商標に係る商品「菓子等」と本件商標に係る商品「穀物の加工品」における性質等が共通している。加えて株式会社ひよ子の多角経営の可能性が高い。以上の事実からすると、本件商標「ひよこちゃん」を「穀物の加工品」に使用した場合、需要者・取引者は、当該商品について、株式会社ひよ子と何らかの関連ある企業の製造販売にかかる商品であるとの混同を生じる。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当し、同法第46条第1項第1号の規定より無効とすべきものである。
(3)具体的理由
(3−1)混同を生ずるおそれの判断基準
商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきである(平成12年7月11日最高裁平成10年(行ヒ)第85号判例時報1721号141頁)。
そこで、「他人の表示」である引用商標「ひよ子」(甲1の1,2)について、上記判断基準に該当するか否かについて、以下検討する。
(3−2)本件商標と引用商標との類似性について
本件商標は「ひよこちゃん」の文字からなるものであり、引用商標は「ひよ子」の文字からなるものである。
本件商標は、「ひよこ」の文字と、愛称である「ちゃん」の文字とからなるものである。一般に「○○ちゃん」のように、「ちゃん」を他の語に付して使用した場合は、「ちゃん」の部分は単なる愛称として認識されるから「○○」の部分が取引者又は需要者の注意を引く部分、即ち要部となる。
そうすると、本件商標の「ひよこちゃん」は、「ひよこ」の部分が取引者又は需要者の注意を引く部分であるから、同商標については、普通名称の「ひよこ」、「鳥の子。ひな」(甲第117号証)との観念を生じ、また「ひよこ」部分が要部であることからして「ヒヨコ」との称呼も生ずる。
これに対して引用商標の「ひよ子」は、普通名称である「ひよこ」の「こ」を漢字の「子」にしたものであるから、「ヒョコ」との称呼を生ずるし、「ヒヨコ」との称呼を生ずることからして当然に「鳥の子。ひな」との観念を生ずるものである。
以上からすれば、本件商標と引用商標とは、「ひよこ」の観念、及び「ヒョコ」の称呼を共通にするものであり、互いに類似する商標であると認められる。
(4)引用商標の周知著名性について
(一)使用開始時期
請求人である株式会社ひよ子は、先々代社長の石坂直吉が明治30年に福岡県飯塚市で菓子舗を開業し、大正元年12月に2代目社長の石坂茂が「ひよこ」をかたどった饅頭を考案し、同饅頭を飯塚市菓子舗にて販売を開始した(甲第5号証第190頁−第191頁)。甲5号証における「『ひよ子』はたちまち人気ものになり・・・10個、20個単位で飛ぶように売れた」(甲5第191頁)との記載、さらには、「飯塚周辺の沿線に『飯塚名物ひよ子』の野立て看板を張りめぐらし、電話番号をヒヨコ(七四五)とした」(甲5第191頁)との記載、さらには昭和11年に請求人が「ひよ子」との商標を商標登録出願していることからすると(甲第6号証)、請求人が引用商標を使用開始したのは、大正元年頃からということができる。
(二)請求人法人の展開状況(甲第7号証参照)
その後、請求人は昭和27年12月に飯塚市において吉野堂製菓株式会社を設立した。昭和31年12月「名菓ひよ子」その他の菓子の製造販売を営む株式会社吉野堂を設立し、同34年8月には請求人の販売部門として福岡市に吉野堂商事株式会社を設立し、同年9月には請求人の原料部門として福岡銘菓原料株式会社を設立した。
昭和38年3月には上記吉野堂製菓株式会社を「株式会社ひよ子」に商号変更した。よって、請求人は昭和38年から引用商標「ひよ子」を商号としても使用してきたものである。
(三)請求人の広告宣伝等の状況
請求人の製造販売に係る「名菓ひよ子」は、昭和32年3月20日から開かれた長崎市における第14回全国菓子大博覧会において総裁賞を受賞し、その旨の新聞広告を多数行った(甲第11号証ないし甲第13号証)。昭和41年に請求人は、引用商標「ひよ子」を表示して商品「もなか」の広告を全国紙である「読売新聞」に行った(甲第15号証)。
また、請求人は、昭和34年頃から昭和36年頃において「銘菓ひよ子」のみならず、既に洋菓子として「クリスマスケーキ」を販売しており、新聞等に積極的に宣伝を行った(甲第100号証ないし甲第103号証)
(四)引用商標「ひよ子」の周知性についてのまとめ
以上の事実、即ち、株式会社ひよ子の売上高、広告宣伝の態様、各種新聞における広告や報道記事、並びに販売地域、販売店、店舗数等を勘案するに、本件商標の出願時(平成16年9月22日)には勿論、登録時(平成18年2月3日)には、引用商標「ひよ子」は、請求人の製造販売する饅頭「名菓ひよ子」の名称として全国的な周知性を獲得していたことは勿論、「名菓ひよ子」以外の菓子の名称としても全国的に周知性を獲得していたと言わざるを得ない。
さらには、引用商標「ひよ子」は、遅くとも昭和38年から請求人の商号として大規模に使用されてきたものであるから、当該商標「ひよ子」は、「名菓ひよ子」を含むそれ以外の菓子、即ちクッキー、タルト菓子、フルーツゼリー、どら焼、和菓子、洋菓子等を製造販売する総合的な菓子製造販売会社の名称(商号)としても全国的に周知であったといわざるを得ない。
(5)引用商標の独創性について
引用商標「ひよ子」は、普通名称である「ひよこ」の平仮名の「こ」を漢字の「子」に変更した商標である。よってこの商標「ひよ子」は、普通名称「ひよこ」と称呼を共通にするものであるから、独創的な商標とはいえず、その自他商品識別力も本来的に弱いと判断した事例がある(甲4第22頁)。
しかしながら、普通名称の「ひよこ」は、その普通名称の「雛」を意味する上で普通に使用される場合には、必ず平仮名の「ひよこ」或は片仮名の「ヒョコ」と表記されるのであり、引用商標のように「こ」のみを漢字として「ひよ子」と表記することはない。
逆に、「ひよ子」と表記した場合は、菓子製造会社である請求人法人である株式会社ひよ子を必ず観念するものである。この意味では、引用商標「ひよ子」は、通常はとり得ない表記方法を用いているものであり、引用商標のように、「子」を漢字にすることによって、需要者取引者に「株式会社ひよ子」を強く観念させるものといえる(勿論、「ヒヨコ」なる称呼を生ずる以上は、引用商標からも「鳥の子」との通常の観念も生ずる)。
さらに、「ひよ子」商標は請求人が大正元年以来使用してきており、遅くとも昭和38年以降は、請求人の商号(ハウスマーク)としても使用されてきたものであることを鑑みると、引用商標は、単純に普通名称と類似するから自他商品識別力が本来的に弱いと判断するのは、引用商標の周知性等の取引の実情並びに使用の実態を無視した解釈であると言わざるを得ない。
よって、引用商標の使用実績並びに請求人の菓子製造業者としての周知性を勘案すると、引用商標「ひよ子」はむしろ自他商品識別力の極めて強い商標であると認められる。
(6)本件商標の指定商品と引用商標の業務に係る商品との性質
(一)引用商標の業務に係る商品
引用商標の業務に係る商品は、上述のように「名菓ひよ子」の饅頭のみならず、ケーキ菓子(ひよ子ぱふ、HIYOKOポピー)、クッキー(ひよ子サブレー)、餡入り餅菓子(あっぱれひよ子の博多餅)、タルト菓子(ひよ子ちっこいタルト)、アイスクリーム(ひよ子ピュアデザート)、フルーツゼリー(ひよ子プチデザート、ひよ子デザート)、チョコレート(博多名菓ひよ子ペロティ、ひよ子マカダミアチョコレート)、グミキャンディー(博多名菓ひよ子グミ)、「ひよ子アソート」、「ひよ子ファミリーセット」(セット商品)等である。
加えて引用商標「ひよ子」はハウスマークであることから、同社の取扱い商品である「どら焼」、「カステラ」、「おかき」、「饅頭」、「もなか」、「らくがん」、「ようかん」等の「和菓子」、「ショートケーキ」、「シュークリーム」、「エクレア」、「タルト」等の「洋菓子」、その他、「フルーツゼリー」、「アイスクリーム」、「アイスキャンディー」等にも使用されている。
よって、取引者・需要者は、「ひよ子」商標が株式会社ひよ子のハウスマークであるが故に、「ひよこの形をしたお菓子」以外の上記商品については、「ひよ子のどら焼き」、「ひよ子のカステラ」、「ひよ子のおかき」、「ひよ子のもなか」、「ひよ子のらくがん」、「ひよ子のショートケーキ」、「ひよ子のシュークリーム」、「ひよ子のエクレア」等のように「ひよ子の○○」として認識している。
このように、株式会社ひよ子の取り扱う商品は、菓子を中心とするものではあるが、その種類は多岐に亘っている。
また、株式会社ひよ子は、ひよ子ランド内にて「飲食物の提供」を長年行っており、取引者・需要者は、ひよ子ランド内のレストランについては、「ひよ子のレストラン」として広く知られるに至っている(甲56)。
これらの事実からすると、取引者・需要者が引用商標「ひよ子」から受ける印象は、もはや「名菓ひよ子」のみにとどまらず、レストランや喫茶店をも展開する「総合的な菓子メーカ」としての株式会社ひよ子であるといわざるを得ない。
そうとすると、需要者・取引者が認識している引用商標の業務に係る商品は、主として土産物に利用される「名菓ひよ子」のみならず、ショートケーキ、エクレア等、及びおはぎ、桜餅等の製造後直ぐに店頭にて販売される賞味期限の短い洋菓子及び和菓子、その他どら焼き、カステラ、おかき等の比較的賞味期限の長い和菓子、さらにはクッキー、タルト菓子等の賞味期限の比較的長い洋菓子、さらにはチョコレートやグミキャンディー等のスパーマーケットやコンビニ等の菓子売場で販売されている賞味期限の長い菓子、これらに加えてフルーツゼリー、アイスクリーム等が含まれるといわなければならない。
さらには、引用商標「ひよ子」から需要者、取引者が認識し得る業務としては、請求人の展開する事業に基づいて、レストラン(甲56)、喫茶店(甲56、甲93)、遊戯施設(甲56)等も含まれると考えられる。
(二)本件商標の指定商品
これに対して本件商標の指定商品は「穀物の加工品」である。この「穀物の加工品」に含まれる商品である「即席中華そばのめん」、「中華そばのめん」「もち」「そうめんのめん」等は、主に、スーパーマーケットや、コンビニエンスストア等で販売されるが、「即席中華そばのめん」、「中華そばのめん」等は、駅や空港の売店において、お土産として大量かつ大規模に販売されている(甲第80号証以下の証拠参照)。
(三)販売場所、需用者等の共通性についてのまとめ
このように、株式会社ひよ子の業務に係る商品(菓子類)と、本件商標に係る指定商品「即席中華そばのめん」等の「穀物の加工品」は、その販売場所の共通性及び需要者の共通性からして、極めて関連性の強い商品であるといわざるを得ない。
そうすると、本件商標(ひよこちゃん)と引用商標(ひよ子)との商標の類似性、引用商標の周知著名性、並びに、その他の請求人主張事実に基づいて判断すると、本件商標はその登録時(平成18年2月)において、商標法第4条第1項第15号に該当する商標であることは明らかである。
さらに請求人が博多駅に販売店を展開したのは昭和38年であり(甲第7号証)、昭和48年には福岡市東区のショッピングセンター内に直営店を出店し、昭和51年には福岡市西区のダイエー原店内に直営店を出店し、昭和55年に福岡県筑紫郡大宰府町(当時)のジャスコ太宰府店に直営店を出店し、その後のスーパーマーケット等への出店状況は、甲第7号証に示すとおりである。そうすると、少なくとも昭和48年頃から株式会社ひよ子が直営店を展開しているスーパーマーケット等においては、上記甲97,98と同様の状況、即ち出所の混同が生ずる状況が生じていたものと考えられる。
また、平成10年2月項において、福岡空港内において「即席中華そばのめん」と「名菓ひよ子」が同一店舗内における隣接した場所で販売されていたことを考慮すると(甲113)、本件商標が出願された平成16年9月においても、明らかに出所の混合が生ずる状況が生まれていたものといわざるを得ない。
かくして、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、商標法第46条第1項第1号の規定により無効にされるべきものであると確信する。
(7)まとめ
(ア)引用商標と本件商標とは類似している。
(イ)引用商標が「名菓ひよ子」のみならず、総合的な菓子製造会社の商号としても全国的な周知性を獲得している。
(ウ)株式会社ひよ子の業務に係る商品と本件商標の指定商品の関連性が強いこと、即ち、土産品等を販売する多くの店舗において引用商標に係る商品「菓子類」と本件商標の指定商品である「即席中華そばのめん」をはじめとする「穀物の加工品」が同一の店舗、或は同一フロアの近接した店舗において販売されている事実、及び引用商標に係る商品「菓子類」と本件商標の指定商品である「即席中華そばのめん」その他の「穀物の加工品」が多くの同一のスーパーマーケット、コンビニエンスストア等において販売されている事実があること。
(エ)引用商標に係る商品と本件商標に係る商品における性質等が共通していること、即ち、上記販売場所の同一性から、引用商標に係る商品「菓子」と本件商標に係る商品「即席中華そばのめん」等の「穀物の加工品」は、必然的に、同ー又は共通の需要者が購入するものであること。
(オ)さらには株式会社ひよ子の多角経営の可能性が高いこと。
以上の(ア)〜(オ)の観点から総合的に判断すると、本件商標「ひよこちゃん」を「即席中華そばのめん」等の「穀物の加工品」に使用した場合、需要者・取引者は、当該商品について、株式会社ひよ子の製造販売に係る商品、或は、株式会社ひよ子と何らかの関連ある企業の製造販売にかかる商品であるとの混同を生じると言わざるを得ない。
(カ)その他の無効理由
被請求人は、本件商標の他に、第30類「即席中華そばのめん」を指定商品とし「ひよこちゃん」の標準文字かならなる登録第4957397号商標(以下「被請求人先願登録商標」という。)を所有しているが、本件商標の第30類「穀物の加工品」中の「即席中華そばのめん」と重複している。
かかる事態は商標法制定の趣旨に反するから、被請求人先願登録商標との関係においては、少なくとも本件商標の指定商品中、第30類「穀物の加工品」に含まれる「即席中華そばのめん」については無効にされるべきものである。
以上のように、本件商標の第30類「穀物の加工品」は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであり、商標法第46条第1項第1号の規定により無効にされるべきものである。
2.弁駁の理由
(1)被請求人の主張の「ひよこちゃん」の使用について
(1−1)被請求人の主張
被請求人は、答弁書「第1」において、本件商標「ひよこちゃん」について、『「チキンラーメン」という特定の商品を指称するシンボルキャラクターの城を超え、被請求人の営業表示として現実に機能している』と主張する(答弁書第4頁30行ないし33行)。
被請求人の主張は、その位置づけがわかりにくいが、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かの判断において、本件商標の「営業表示としての周知性」をも考慮すべきという趣旨であるものと解する。
しかしながら、本件商標「ひよこちゃん」は、本件無効審判請求に係る指定商品である「第30類 穀物の加工品」について使用されておらず、当該商品についても、営業表示としても、周知であるとは到底いえない。
(1−2)本件商標の使用の事実について
(ア)使用の態様
被請求人は、被請求人商品である「チキンラーメン」の販売数量、広告宣伝費等を誇示するが、乙第5号証によってもカップラーメンに付されているのは「図形」のみであり(主に登録第2539122号)、本件商標「ひよこちゃん」は全く使用されていない。
さらに、乙第6号証の1から14をみても、「ひよこちゃん」の文字は表示されてはいるものの、これはキャラクターグッズ(無償の景品)である「ぬいぐるみ」(ちきらーず人形(乙第6号証の1)、「入園バージョンぬいぐるみ」(乙第6号証の5)、「ぬいぐるみ」(乙第6号詩の11,12,13)、同じく無償の景品として「やかん」(ひよこちゃんケトル(乙第6号証の2))、「ティーカップセット」(乙第6号話の3)、「ひよこちゃんグッズ」(乙第6号証の4)、「ポット」(ひよこちゃんポット(乙第6号証の14))等に関連して表示されているに過ぎず、何れの態様も本件商標の商品「穀物の加工品」についての商標の使用には該当しない。
また、乙第6号証の8の表示は「ひよこちゃんかまぼこ」であり、これを仮に商標の使用とみたとしても、本件無効審判請求に係る商品「第30類 穀物の加工品」についての使用には該当しない。
さらに、乙第6号証の9には、商品パッケージに「ひよこちゃん」の文字が見受けられるが、広告にあるようにこの商品は、『ひよこちゃんの絵柄入りフタつきミニどんぶりをセットにした「チキンラーメンMini&ひよこちゃんミニどんぶりセット」』であり、「ひよこちゃん」はあくまでもセット商品である「どんぶり」に付されたキャラクターとして表示されているに過ぎず、商品カップラーメン(穀物の加工品)についての商標として使用されているわけではない。
このように、被請求人が提示した証拠(乙第6号証(枝番含む))を参酌しても、本件商標が「第30類 穀物の加工品」について使用されている事実を確認できない。
したがって、本件商標は、本件無効審判の請求に係る商品である「第30類 穀物の加工品」についての商標として周知性、著名性を獲得しているものとは到底いえない。
(イ)商標法上の使用に該当しない点について
上述のように、被請求人が提示したこれらの証拠を見る限り、本件商標はカップラーメン等の「穀物の加工品」には全く使用されておらず、あくまでも無償の景品としてのキャラクター人形の名称、或いはそのキャラクターが付された無償の景品(グッズ)の愛称として使用されているに過ぎない。
そうすると、これらの景品は、被請求人商品「チキンラーメン」の広告・宣伝の手段にすぎず、「商品」ではないから、乙第6号証の1ないし14に示された本件商標は、商標の使用(商標法第2条第3項)に該当しない。
(2)被請求人の主張「第3」について
被請求人は、請求人における引用商標の使用の実態について、甲第38証から甲第53号証の使用事実について、『ひよ子まんじゅうを含むごく一部の「菓子」についてのみ使用されているものを示すものである』として、カタログ等に掲載されている多種多様な菓子については引用商標の使用の事実は認められず、かつ「ひよ子」は生産者表示の域を脱していないと主張する(答弁書第6頁ないし第10頁)。
しかしながら、上記被請求人の主張は、商標法上の使用の概念から逸脱するものであり失当である。
(3)被請求人の主張のまとめ
被請求人は、上述のように請求人提出の使用事実を示す証拠について、極めて恣意的な基準に基づいて判断し、その結果、引用商標「ひよ子」は、ひよ子まんじゅう以外の請求人の取り扱いに係るすべての「菓子」及び「飲食物の提供」並びに「娯楽施設の提供」について使用されていない旨主張するが(答弁書第8頁17行目ないし25行目)、かかる被請求人主張は、商標法の使用の概念から逸脱した独自かつ恣意的な判断に基づくものであるから、到底認容できない。
(4)被請求人が主張する商品の関連性について
被請求人は、請求人が主張する「即席中華そばのめん」は、土産販売店において販売されるいわば特殊な「お土産品としての即席中華そばのめん」である点を指摘し、あたかも本件商標の指定商品に含まれる「即席中華そばのめん」とは異なる商品であるかのような主張を行う(答弁書第12頁8行目ないし16行目)。
しかしながら、本件商標の指定商品に含まれる「即席中華そばのめん」は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで販売されているいわゆるカップラーメンと呼ばれる「即席中華そばのめん」が包含されるのは勿論、いわゆるJR博多駅キヨスクや福岡空港売店で販売されている「お土産品としての即席中華そばのめん」も当然に包含するものであるから、請求人主張の商品が「お土産品としての即席中華そばのめん」であるからといって、そのことを以って、本件商標の商標法第4条第1項第15号の該当性を否定することはできない。
即ち、本件商標について「お土産品としての即席中華そばのめん」について他人の業務にかかる商品と混同を生ずるおそれがある場合は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものと判断しなければならない。
(5)その他の被請求人主張に対する反論
商標法第4条第1項第15号の適用要件について
被請求人は、請求人が提出した引用商標の使用事実を示す証拠(甲第38号証以降の証拠)について、「菓子」についてのみの使用であって、菓子の範囲を超えた広範囲の商品についての使用は明らかでない旨の主張をし(答弁書第6頁二(1))、商標法第4条第1項第15号は、あたかも引用商標がその指定商品である菓子の類似範囲を超えた広範囲の商品について使用していることが規定の適用要件であるかのような主張を行う。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号は、著名商標においてその所有者がその著名商標を本来使用している商品の類似範囲を超えた部分についての出所の混同を未然に防止する規定であるから、著名商標の所有者がその類似範囲を超えた広範囲の商品について著名商標を使用していることを要件とすることは、商標法第4条第1項第15号の規定の趣旨を没却することになる。よって、上記被請求人主張は失当といわざるを得ない。
(6)その他の無効理由についての被請求人主張について
被請求人は、登録第4957397号商標の二重登録について、商標制度上二重登録を禁ずる旨の規定は無いことに基づいて、請求人の主張を失当であると主張する(答弁書第20頁五)。
しかしながら、二重登録防止は、商標法上無効理由には存在しないが、審査時点においては、「商標法制度趣旨に反する」として登録を阻却している。この「商標法制度趣旨に反する」とする理由は、商標制度上の根源的な問題であるがゆえに、無効理由と同等の価値を有するものである。
よって、単に規定に存在しないから、という形式的な議論にとらわれず、二重登録は許されないとする本質的な商標法制度趣旨に基づいて判断されるべきである。
(7)結語
以上のように、本件商標の第30類「穀物の加工品」は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであり、商標法第46条第1項第1号の規定により無効にされるべきものである。
よって、請求人は、請求の趣旨とおりの審決を求めるものである。
第4.被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求める。と答弁し、その理由を要旨次のように述べ証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証(枝番を含む。)を提出している。
〔答弁の理由〕
請求人株式会社ひよ子(以下「請求人」という)が平成19年1月31日付本件無効審判請求書(以下「審判請求書」という)で主張する本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとの無効理由について、被請求人日清食品株式会社(以下「被請求人」という)は、以下のとおり答弁する。
(1)被請求人及び「ひよこちゃん」について
(1−1)被請求人について
被請求人は、「チキンラーメン」や「カップヌードル」の発明者として国内外で知られる故安藤百福氏(乙第1号証の1)が創業した我が国最大手の「即席めん」メーカーである。被請求人商品は日本国内のみならず、米国、中国・香港・インド・タイ・フィリピンのアジア各国又は地域、ドイツ、ブラジルをはじめとする世界各国の製造拠点で製造されており、広く世界各国で販売されている(乙第1号証の2)。
また、そのグループ会社は全世界で44社にのぼり(国内16社、海外28社)、各グループ会社は「即席めん」のみならず、シリアル食品(日清シスコ株式会社)、乳酸飲料(日清ヨーク株式会社)などの製造販売も行っている。
被請求人の平成17年度の売上高は2,440億6,300万円、経常利益は335億8,500万円、純利益は160億2,000万円であり(乙第1号証の3)、昭和23年(1948年)の創業以来、一貫して我が国のみならず世界の即席めん業界を牽引する世界的企業でもある。
被請求人が展開する即席めんの商品のブランドには「チキンラーメン」、「CUP NOODLE」、「カップヌードル」をはじめとして、「出前一丁」、「どん兵衛」、「日清焼そば」、「U.F.O.」、「ラ王」、「ごんぶと」などがある(乙第2号証の1)。なお、これらの各ブランドに対する年間数十億円にも達するテレビCMなどを通じた被請求人の積極的な宣伝広告活動により、「チキンラーメン」(登録第2685160号)、「CUP NOODLE」(登録第1183902号)、「カップヌードル」(登録第1251256号)、「出前一丁」(登録第2668353号)、「どん兵衛」(登録第4595111号)については、AIPPI発行の「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN THIRD EDITION(日本有名商標集 第3版)」において著名商標として掲載されている(乙第2号証の2)。
(1−2)「ひよこちゃん」について
「ひよこちゃん」とは、被請求人創業者の故安藤百福氏が発明した世界初の「即席中華そばのめん」である「チキンラーメン」のシンボルキャラクターとして平成元年頃より使用され始めた下記登録商標のひよこの図形(以下当該図形を「ひよこちゃん図形」という)の愛称である(乙第3号証の1、乙第3号証の2及び同号証の3)。
本件商標の出願前の平成9年から平成15年にかけての「チキンラーメン」の宣伝広告費は以下のとおりである(乙第4号証)。
・平成9年度 約4億8,800万円
・平成10年度 約7億5,900万円
・平成11年度 約9億円
・平成12年度 約9億8,100万円
・平成13年度 約10億3,500万円
・平成14年度 約11億5,900万円
・平成15年度 約13億9,800万円
また、平成16年度以降の宣伝広告費は以下のとおり。
・平成16年度 約14億4,400万円
・平成17年度 約14億1,000万円
・平成18年度 約13億 600万円
(平成18年度は4月〜平成19年2月までの実績)
そして、上記のような膨大な宣伝広告費の投入額に比例し、「チキンラーメン」の販売数量及び売上は順調に伸び、「ひよこちゃん図形」の使用を開始した平成元年度から平成12年度迄の販売数量は累計17億7,800万食に達し、その売上は約1千200億円にのぼる。なお、平成12年度以降の販売数量(食)及び販売金額は以下のとおり。
販売数量(食) 販売金額
・平成12年度 約1億7,700万 約128億円
・平成13年度 約1億5,359万 約113億円
・平成14年度 約1億7,811万 約123億円
・平成15年度 約2億2,688万 約161億円
・平成16年度 約1億9,119万 約134億円
・平成17年度 約1億9,010万 約136億円
・平成18年度 約1億6,692万 約120億円
(平成18年度は4月〜平成19年2月までの実績)
上記の販売数量は,本件商標の出願前の4年間において、日本全国の津々浦の老若男女を問わない需要者が毎年1食以上は「チキンラーメン」を食してる勘定となる程の数量である。
そして被請求人が「ひよこちゃん」をシンボルキャラクターとして採択してからは、「チキンラーメン」の商品パッケージには「ひよこちゃん図形」が必ず掲載されている(乙第5号証)。
また、「ひよこちゃん図形」は被請求人が行う各種キャンペーンのキャラターとしても使用されるものであり、その愛称である「ひよこちゃん」と共に、各種媒体に表示されている(乙第6号証の1ないし同号証の14)。
これにより「ひよこちゃん図形」は、平成16年(2004年)発行の「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN THIRD EDITION(日本有名商標集 第3版)」において、被請求人の商品「Noodle」の著名商標と認定されている(乙第2号証の2,527頁)。
さらに、各種企業や団体などが商品やイベントに使用するイメージキャラクター又はシンボルマークを集めた書籍「キャラクターデザインコレクション」(平成17年11月3日ピエブックス発行)には、「ひよこちゃん図形」が被請求人が使用するキャラクターとして掲載され、その愛称が「ひよこちゃん」であることも明記されている(乙第7号証)。
以上をふまえれば、「ひよこちゃん図形」及びその愛称としての「ひよこちゃん」は、今や「チキンラーメン」という特定の商品を指称するシンボルキャラクターの域を超え、被請求人の営業表示として現実に機能しているものということができる。
(2)本件無効審判請求までの経緯
(2−1)審決取消訴訟
被請求人は本件商標と同一態様の登録第4957397号「ひよこちゃん(標準文字)」(指定商品:第30類「即席中華そばのめん」)を所有しているところ、当該登録商標について、東京高等裁判所は、請求人が本件審判において引用する登録第524914号(甲第1号証の1及び同号証の2、以下「引用商標」という)を含む請求人の所有に係る「ひよ子」関連商標との関係における商標法第4条第1項第15号該当性を否定している。
そしてその判断において東京高等裁判所は、請求人が主としておみやげ品に販売するひよこの形状をした「まんじゅう」(登録第4704439号(乙第8号証)と同様の立体形状の「まんじゅう」。以下「ひよ子まんじゅう」という)のみについての引用商標の周知性を認め、商品「即席中華そばのめん」とひよ子まんじゅうの関連性を総合的に検討した結果、「混同の恐れはない」と判断している(乙第9号証(東京高等裁判所平成16年9月16日(H16(行ケ)18号判決)、以下「ひよこちやん審決取消訴訟」という)。なお、係る東京高等裁判所の判断は既に確定している。
(2−2)登録異議申立
また、当該登録第4957397号商標「ひよこちゃん」は、上記判決を経て設定登録された後に、請求人により、商標法第4条第1項第15号該当性を理由とする登録異議申立がなされたが(異議2006−90420号、以下「ひよこちゃん異議事件」という)、既に特許庁は、引用商標の周知性及び「即席中華そばのめん」とひよ子まんじゅうの関連性を総合的に検討した結果、「混同の恐れはない」と判断している(乙第10号証)。
上記特許庁の判断は、請求人が本件審判において提出する甲第1号証ないし甲第118号証と大部分が重複する証拠及び資料(甲第1号証ないし甲第93号証並びに資料1ないし資料6)に基づくものである(乙第11号証)。
以下、被請求人の認否及び主張において、本件審判で請求人が提出する証拠を引用する際、請求人がひよこちゃん異議事件においても提出していた証拠又は資料と重複する証拠番号の後ろには、ひよこちゃん異議事件における証拠番号(異議甲第○○号証)又は資料番号(異議資料○)を付記する。
(3)請求人株式会社ひよ子の主張の認否及び被請求人の反論
請求人の主張のうち、「第1 本件商標」(審判請求書2頁)、「第3 無効理由の概要」(審判請求書2頁〜3頁)のうちの登録第524914号(甲第1号証及び甲第2号証、以下「引用商標」という)の構成、指定商品、出願日及び登録日、引用商標と本件商標の類似についての主張、「第4具体的理由」のうちの「1 混同を生ずるおそれの判断基準」(審判請求書3頁)の主張おける最高裁判決要旨及び「2 本件商標と引用商標の類似性について」(審判請求書3頁〜4頁)の主張のうちのひよこちゃん審決取消訴訟の判示事項は認める。その余の主張及び事実はすべて不知又は争う。
(3−1)引用商標のひよ子まんじゅうについての周知性
引用商標は、請求人又は請求人関連会社の株式会社東京ひよ子(以下「東京ひよ子」という)が、おみやげ品であるひよ子まんじゅうについて主に使用するものである。
そして引用商標の周知性は請求人及び東京ひよ子(以下両者を併せて「請求人等」という)がひよ子まんじゅうをおみやげ用又は贈答用の商品として首都圏及び北九州地区を中心に販売した結果、ひよ子まんじゅうと密接に結合して一定の周知性が形成されたものであり、引用商標は、いわば、ひよ子まんじゅうを指す商標として、おみやげ品を購入する旅行者、観光客、ビジネスマンを中心とした需要者やおみやげ品の取引者の間で知られるようになったものである。
(4)請求人の主張について
請求人は、「5 本件商標の指定商品と引用商標の業務に係る商品との性質」の「(一)引用商標の業務に係る商品」(審判請求書20頁〜21頁)において、概ね以下の主張をしている。
ア 引用商標をひよ子まんじゅう以外のクリーム入りスポンジケーキ、サブレ、もなか、ゼリー菓子、一部の詰め合わせ菓子などの菓子についても使用している(審判請求書20頁21行〜28行)。
イ 「ひよ子」が請求人のハウスマークであることより、請求人の取り扱いに係る全ての菓子について引用商標を使用している(審判請求書20頁29行〜34行)。
ウ 上記ア及びイより、取引者・需要者は請求人が取り扱うひよ子まんじゅう以外の菓子については「ひよ子の○○」と認識している(審判請求書20頁最終行〜21頁5行)。
エ 請求人の取扱商品は菓子を中心とするものであるが、その種類は多岐にわたる(審判請求書21頁6行〜7行)。
オ 請求人の経営に係るレストランは「ひよ子のレストラン」として広く知られている(請求書21頁8行〜10行)。
カ 上記アないしカより、取引者・需要者が引用商標から受ける印象はひよ子まんじゅうにとどまらず、総合的な菓子メーカーとしての請求人である(審判請求書21頁11行〜14行)。
キ そうすると、「引用商標の業務に係る商品」(かかる表現の意味は必ずしも明らかでないが「引用商標が使用される商品」と解する)は、主として土産物に利用されるひよ子まんじゅうのみならず賞味期限の短い菓子から賞味期限の長い菓子が含まれる(審判請求書21頁15行〜23行)。
ク さらに、引用商標から需要者・取引者が認識し得る業務としてレストラン、喫茶店、遊戯施設等も含まれる(審判請求書21頁24行〜25行)。
請求人がひよ子まんじゅう以外の数種類の菓子を製造販売し、それらの一部について引用商標を使用していることを否定するものではないが、上記で述べたとおり、請求人の提出に係る各証拠をもっては引用商標が請求人の製造販売に係る全ての菓子についてハウスマーク的に使用されていることは確認できないことより、結局「ひよ子」は、生産者表示の城を脱していない。
また、引用商標はひよ子まんじゅうと密接に結合して形成され、ひよ子まんじゅうを連想させる商標としての周知性を獲得したものであるから、需要者・取引者が引用商標より把握する可能性が考えられるのはひよ子まんじゅうといえ、請求人等の取り扱いに係る全ての菓子までは想起されない。
さらに、請求人等の取扱商品はそのほぼ全てが「菓子」であり、一部の例外としてぬいぐるみ(甲第52号証(異議甲第49号証))が存在するに過ぎないので、「多岐にわたる種類の商品」の販売を行っているとは認められない。
「レストラン」、「喫茶店」、「遊戯施設の提供」については、請求人がこれらの事業を行っていることは争わないにしても、請求人が引用する甲第56号証(異議甲第52号証)及び甲第93号証(異議甲第88号証)からは、引用商標又は「ひよ子」が当該各施設について使用されていることは明らかでなく、請求人のレストランが「ひよ子のレストラン」として広く知られていることも全く明らかとならない。
以上より、請求人の主張のうち、上記アに係る主張は提出された証拠の一部から理解し得るにしても、その余のイないしクに係る主張は提出された証拠によっては立証されていない。
(5)小括
以上のとおり、請求人は、請求人等が取り扱う全ての商品について引用商標が使用されているかのように主張するが、かかる主張を裏付けるものとして請求人が提出した証拠(甲第5号証ないし甲第20号証(異議甲第3号証ないし甲第18号証)、甲第21号証、甲第22号証ないし甲第53号証(異議甲第19号証ないし異議甲第50号証)、甲第54号証(異議甲第89号証)、甲第55号証ないし甲第79号証(異議甲第51号証ないし甲第75号証)、甲第104号証ないし甲第106号証)からは、ひよ子まんじゅうの他には一部の菓子についての使用しか明らかとならず、また、引用商標が使用されるひよ子まんじゅう以外の菓子の販売地域、売上高、個別の宣伝広告の実施状況なども明らかとならない。
上記各証拠の大多数はひよこちゃん異議事件において提出されたものであるところ(乙第11号証)、特許庁は、提出済みの証拠に基づく事実認定として『・・・引用商標の周知性は、上記のとおり、主として、贈答用ないし土産物用に利用されるひよ子の形状をした菓子という商品と密接に結合して形成されたものであり、いわば、当該商品を連想させる商標として、周知著名であったものと認められる。』(乙第6号証の異議決定3頁5行〜8行)と判断していることから明らかなとおり、「その他の菓子」についての引用商標の周知性を否定している。
そして、ひよこちゃん異議事件で提出されていない(すなわち、本件審判で新たに提出された)証拠である甲第21号証(請求人会社案内)、甲第104号証(日本商標名鑑97なお、当該証拠により確認できる商標は第431730号であり引用商標ではない)、甲第105号証(日本の名菓)及び甲第106号証(登録第524914号防護第1号のIPDL情報打ち出し)は、本件商標の出願日より前に、引用商標がひよ子まんじゅう以外の菓子において全国的な周知性を現実に獲得していたことを認めるに足る内容の証拠ではない。
従って、請求人が主張するような『引用商標「ひよ子」は・・・(中略)・・・「ひよ子まんじゅう」以外の菓子の名称としても全国的に周知性を獲得していた』(審判請求書19頁14行〜16行)ことは認められない。
(6)まとめ
以上のとおり、本件指定商品「穀物の加工品」と、請求人が引用商標を使用するひよ子まんじゅうは、その購入場所や購入目的が異なり、商品としての性質、用途及び目的における関連性の極めて低い別異の商品であり、需要者も共適するものではない。
そして、「即席中華そばのめん」とひよ子まんじゅうが明瞭に区別される関連性のない商品であることについては、特許庁及び東京高等裁判所においても既に認定している事実であり(乙第9号証及び乙第10号証)、本件審判において請求人が提出した証拠のうちの約8割は前記異議決定に係るひよこちゃん異議事件においても提出されていたものであって(乙第11号証)、本件無効審判における請求人の主張及び新たに提出された証拠(ひよこちゃん異議事件では提出されなかった証拠)には、係る認定を覆す内容のものは見あたらない。
従って、引用商標の周知著名性、独創性の程度、商品「穀物の加工品」と引用商標が使用されるひよ子まんじゅうの性質・用途・目的・販売場所等の取引の実情を鑑みれば、本件商標を商品「穀物の加工品」について使用しても、これに接する需要者が、当該商品を請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であると誤認、混同する恐れはない。
その他、請求人は、被請求人が本件商標以外に登録第4957397号商標を所有していることより、本件商標が無効理由を内包する旨を主張しているが(審判請求書32頁「第5その他の無効理由」の項)、商標法には、被請求人が本件商標と登録第4957397号商標を所有することを禁ずる旨の規定はなく、無効理由として列挙されていないことは明らかである(商標法第46条第1項各号)。
以上に詳述したとおり、本件商標は、その指定商品中「穀物の加工品」について商標法第4条第1項第15号に違反して商標登録されたものには該当しない。
第5.当審の判断
(1)引用商標の周知著名性及び独創性について
甲第5号証ないし甲第9号証、甲第11号証ないし甲第19号証、甲第22号証ないし甲第37号証、甲第40号証ないし甲第53号証、甲第104号証及び甲第105号証によれば、株式会社ひよ子の沿革(概略)は、大正元年に先々代がひよこを形どった菓子を考案したことにさかのぼり、昭和38年に吉野堂製菓株式会社を株式会社ひよ子に社名の変更をし、平成7年には同社の東京支社が株式会社東京ひよ子として独立したことが認められる。
そして、引用商標は、本件商標の出願当時である平成16年頃も、その後においても、すでに請求人の製造販売に係る商品である、主として土産物あるいは贈答品に頻繁に利用される、ひよこの形をした菓子に付された商標として、首都圏及び九州を中心として、取引者、需要者間に知られていたものと認められる。
ただし、引用商標は、上記のとおり、ひよこの形をした菓子について使用されるものであり、その構成文字も「鳥(鶏)の子」を意味する普通名詞の「ひよこ」の「こ」の文字部分を「子」と表したのみであり、使用される商品との関係からみて、独創的な商標ということはできないし、また、自他商品の識別力の面からみても、本来的に弱いものといわざるを得ない。
そうすると、その周知性は、主として、贈答用ないし土産物に頻繁に利用される「ひよこの形をした菓子」という商品と密接に結合して形成されたものであり、いわば、当該商品を連想させる商標として、周知著名性を獲得するに至ったものと認められる。
(2)本件商標と引用商標が使用される商品の関連性について
引用商標が使用される商品「ひよこの形をした菓子」は、一般の消費者が、主として、旅行又は仕事等で訪れる際の土産品あるいは贈答品として、駅や空港の売店、百貨店やスーパーマーケットなどの大規模店舗の専門店、贈答品コーナー、あるいは株式会社ひよ子の直営店等で購入する菓子であって、土産品・贈答品として食することが多い菓子である。
これに対し、本件審判請求における本件商標の登録無効の対象となっている指定商品「穀物の加工品」は、(ア)「乾燥飯」「強化米」「米飯の缶詰」等、穀物を加工したもの、(イ)「うどんのめん」「そばのめん」等、穀粉を更に加工したものが含まれる。と解されるところ、被請求人(本件商標権者)が本件商標を使用している商品は、乙各号証によれば「即席中華そばのめん」と認め得るものであるから、以下「即席中華そばのめん」について検討する。「即席中華そばのめん」は、一般消費者がスーパーマーケットやコンビニ等の小売店で購入し、日常の食事の場で普通に食される商品であり、単価は少額で日常的に購入される商品といえるものである。
そうすると、これら両商品は、いずれも主として、一般の消費者を対象とした商品であるとしても、商品の性質、用途、目的等において異なるばかりでなく、引用商標が使用される商品「ひよこの形をした菓子」は、上記のように、百貨店やスーパーマーケットなどの大規模店舗における専門店、贈答品コーナーで対面販売されることはあっても、スーパーマーケットなどの大規模店舗における日常的な食料品のコーナーにおいて、「即席中華そばのめん」といっしょに陳列され、消費者が棚に陳列された商品を直接手にとってレジカウンターに運び購入する形式で販売されることは一般的ではないから、本件商標の指定商品である「即席中華そばのめん」とは、販売場所においても、明瞭に区別されている商品ということができる。
したがって、両商品は、いずれも食品の範疇に属するものであるとしても、その商品の性質、用途、目的、販売店あるいは販売場所を異にするものであり、その主たる需要者である一般の消費者においても、明瞭に区別され、認識されているというのが相当である。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標を構成する「ひよこちやん」と引用商標を構成する「ひよ子」とは、外観においては区別し得る差異があるとしても、本件商標が普通名詞の「ひよこ」に愛称的な呼び名である「ちゃん」の文字を付加したものであるから、これに接する看者は一体的に把握することが多いと認められるものの、その要部は「鳥(鶏)の子」を意味する「ひよこ」であり、一方、引用商標は、前記のとおり、「鳥(鶏)の子」を意味する普通名詞の「ひよこ」の「こ」の文字部分を「子」と表したのみであるから、両者は、観念上類似する商標と認められるものであり、かつ、「ヒヨコ」の称呼を同じくする場合がある称呼上も類似する商標ということができる。
(4)まとめ
以上、たとえ本件商標「ひよこちゃん」と引用商標「ひよ子」とが称呼及び観念を共通にする類似の商標であるとしても、本件商標が引用商標と混同を生ずるおそれがあるか否かの基準となる、引用商標の周知著名性の範囲は「菓子」に止まるものであり、加工食料品などにまで及ぶとは解せないこと、独創性の程度は弱いこと、さらに、本件商標と引用商標とが使用される商品の関連性については、明瞭に区別し得るものであること等、取引の実情を総合勘案すると、本件商標をその指定商品の「穀物の加工品」に含まれる「即席中華そばのめん」に使用しても、その取引者及び需要者である一般消費者が、同商品を、引用商標「ひよ子」の業務主体又は同社と何らかの関係にある者の業務に係るものと混同するおそれがあるとみることはできない。
(5)むすび
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中の「穀物の加工品」について、商標法第4条1項15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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