Trademark Appeal Case
著名商標と結合商標の類似性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2007−900285(T2007−900285/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5034040号商標(以下「本件商標」という。)は、「環境ニューバランス」の文字を標準文字により表してなり、平成18年8月31日に登録出願され、第16類「紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集袋,プラスチック製ごみ収集用袋,紙製タオル,紙製手ふき,紙製幼児用おしめ,紙製のぼり,紙製旗,印刷物,写真立て,紙製文房具」、第20類「家具,木製・竹製又はプラスチック製の包装用容器,葬祭用具,荷役用パレット(金属製のものを除く。),つい立て,びょうぶ,ベンチ,郵便受け(金属製又は石製のものを除く。),揺りかご,愛玩動物用ベッド,犬小屋,屋内用ブラインド,額縁,美容院用いす,理髪店用いす」及び第28類「遊戯用器具,ビリヤード用具,おもちゃ,人形,愛玩動物用おもちゃ」を指定商品として同19年3月16日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立ての理由の要点
登録異議申立人ニュー・バランス・ライセンシング・エルエルシー(以下「申立人」という。)は、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン在住のシューズメーカーであり、「New Balance」の文字からなる商標(以下「引用商標」という。)の所有者である。「New Balance」の商標は、申立人の業務に係るスニーカーを中心としたシューズの商標として、また、申立人の名称の略称として、我が国を含む世界中で著名になっていることは顕著な事実である(甲第1号証ないし甲第38号証)。
(1)商標法第4条第1項第8号該当について
本件商標は、申立人の属する世界的に著名なニューバランス(New Balance)グループの著名な略称である「ニューバランス」を含む商標であって、その登録につき当該グループの承諾を得ていないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号該当について
本件商標は、申立人の属する世界的に著名なニューバランス(New Balance)グループの業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(3)よって、本件商標の登録は、取り消されるべきである。
3 本件商標に対する取消理由の要点
当審において、商標権者に対し、意見書を提出する期間を指定して、平成20年2月13日付けで「本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。」旨の商標登録の取消理由を通知した。
4 商標権者の意見の要点
上記3の取消理由に対して、商標権者は次のように意見を述べ証拠方法として乙第1号証を提出している。
(1)商標法第4条第1項第8号について
申立人が、「ニューバランス」の商標のもとに販売されている商品はスニーカーを中心としたシューズのみであり、その知名度は、申立人が認めるとおり、世界第5位にすぎない。
このように、申立人等により「ニューバランス」の商標のもとに販売されている商品がシューズのみである以上、「ニューバランス」の語に接して、これを著名な略称と認識できる者は、シューズのブランドに格別の関心がある者に限られる。
そもそも、本件商標においては、「環境」と「ニューバランス」の間には空白がないので、両者の結合による造語であることは容易に認識される。殊更、前後で分断されるのは不自然であり、そのように認識されることはないというべきである。
しかも、漢字表記の「環境」が前に来ていることからそのインパクトは強く、「環境」の用語に重点があることが容易に理解され、全体として、本件商標は、「環境に関する新たなバランス」を志向する用語として認識されるものである。
これらの事情を総合すると、本件商標に接した一般人が、申立人等を想起し、それが申立人等の人格的利益の侵害に該当するようなことは到底考えられない。
したがって、申立人等の承諾がないことを理由として、本件商標を取り消すべきものとすることは、既存の一般的な英語表現の使用という正当な行使を阻害することにほかならない。そのような解釈・運用がなされることは、商標法の本来予定していないところというべきである。
よって、商標法第4条第1項第8号を理由として本件商標の登録は取り消されるべきものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標「環境ニューバランス」と引用商標「ニューバランス」と対比されるべきところ、上記1のとおり「環境」が前に付されていることと相俟って、その外観、称呼、観念のいずれにおいても、引用商標「ニューバランス」とは類似していないと結論されるべきである。
また、引用商標は、既存の一般的な意味を有する2つの英単語を組み合わせたに過ぎないものであり、例えば、「ADIDAS」のような、格別、独創性を有するものではない。
さらに、本件商標の指定商品と引用商標が使用される「スニーカーを中心とするシューズ」は、性質、用途又は目的における共通性は存在しない。
以上の事情から、「本件商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断」すれば、本件商標を使用した商品等が、申立人との間に、「いわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ」は到底認められないというべきである。
したがって、商標法第4条第1項第15号を理由として本件商標の登録を取り消すべきものとする判断も相当ではない。
5 当審の判断
(1)本件商標と引用商標との類似性について
本件商標は、上記1のとおり、「環境ニューバランス」の文字を標準文字で書してなるところ、全体としてまとまりよく一体的に表現されており、これより生ずる「カンキョウニューバランス」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。
しかして、かかる構成よりなる本件商標に接する取引者・需要者は、これを殊更「環境」と「ニューバランス」の文字に分離することなく、特定の語義若しくは意味合いを有しない一種の造語よりなる、一体不可分に表された商標として認識するものとみるのが相当である。
他方、引用商標は、「New Balance」の文字よりなるから、これより「ニューバランス」の称呼を生ずるものと認められる。
してみれば、本件商標より生ずる「カンキョウニューバランス」の称呼と引用商標より生ずる「ニューバランス」の称呼とは、その音構成において明らかな差異を有するものであるから、称呼において類似するものとはいえない。
また、本件商標と引用商標とは、外観においても明らかな差異があり、更に、特定の意味合いを認識させることのない造語と認められるものであるから、外観及び観念の点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標である。
(2)商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、その構成中に「ニューバランス」の文字を有するものではあるが、上記(1)のとおり、本件商標に接する取引者・需要者は、一連一体に構成されたその構成から、「ニューバランス」の文字部分のみを分離して理解・認識することはないものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、他人の名称の著名な略称を含む商標ということはできない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
前記(1)のとおり、本件商標と引用商標とは、十分に区別し得る別異の商標というべきものであり、しかも、本件商標の指定商品である「紙類,紙製包装用容器,家具,木製・竹製又はプラスチック製包装用容器,おもちゃ,人形」等と申立人の業務に係るスポーツシューズ、スニーカー等の靴関連の商品とは、生産者、販売者等の取引系統をも全く異にする別異の商品というべきものである。
そうとすれば、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、多角経営の一般的な可能性を考慮しても、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何等かの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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