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Trademark Appeal Case

不使用取消の正当理由

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2007−300713(T2007−300713/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4758305号商標の商標登録は取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4758305号商標(以下「本件商標」という。)は、「B−APPLE」の文字を横書きしてなり、平成15年8月25日に登録出願され、第41類「娯楽施設の提供」を指定役務として平成16年3月19日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張の要点

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のようにのべている。

(1)請求の理由

被請求人は、本件商標を、その指定役務のいずれについても継続して3年以上日本国内において使用していない。また、本件商標について専用使用権者は存在せず、通常使用権者として本件商標を使用している者も存在しない。

したがって、本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定役務につき使用されていないものであるから、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。

(2)弁駁の理由

(ア)被請求人は、本件商標を3年以上使用していないことを認めた上で、不使用につき商標法第50条第2項ただし書きにいう「正当な理由」があると主張している。

そして、被請求人は、上記主張に係る証拠として、乙第1号証ないし第8号証を提出している。

(イ)商標法第50条第2項は、同条第1項により商標登録の取消審判の請求があったときは、被請求人がその審判請求の登録前3年以内に日本国内において、その請求に係る指定役務の何れかについて、当該商標を使用していることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない旨規定している。

上述のとおり、被請求人は、答弁書において本件商標を3年以上使用していないことを認めているから、同法第50条第2項ただし書きにいう「正当な理由」がない限り、本件商標の登録は取り消されるべきものである。

(ウ)そこで、被請求人の主張している理由が商標法第50条第2項ただし書きにいう「正当な理由」に該当するか否かについて検討する。

同法第50条第2項ただし書きにいう登録商標不使用についての「正当な理由」とは、「例えば、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果その使用ができなかったような場合、時限立法によって一定期間(三年以上)その商標の使用が禁止されたような場合等が考えられる。」(特許庁編 工業所有権法逐条解説〔第16版〕)というように極めて限定的に解釈されており、判決例においても次のとおり、判示されている。

「『正当な理由』とは、地震、水害等の不可抗力、放火、破壊等の第三者の故意又は過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由等商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰することができない事由が発生したために使用することができなかった場合をいう」(東京高裁平7(行ケ)124・平8.11.26判決)

「商標法は本来、登録商標の使用を保護の前提としていること、及び、不使用取消審判制度が設けられている趣旨からすると、登録商標の不使用につき商標法50条2項ただし書にいう『正当な理由』があるといえるためには、登録商標を使用しないことについて当該商標権者の責めに帰すことのできないやむを得ない事情があり、不使用を理由に当該商標登録を取り消すことが、社会通念上商標権者に酷であるような場合をいうものと解するのが相当である」(東京高裁平9(行ケ)53・平9.10.16判決)

「原告は、まず、企業の内部において商標の使用の準備がされている場合には、商標法50条2項ただし書所定の正当理由がある旨主張するが、例えば、商標権者において商標の使用の準備を進めていたにもかかわらず、商標権者の責めに帰することのできない特別の事情により現実の使用に至らなかったなどの事実関係が、具体的に主張立証されるのであれば格別、単に商標の使用の準備が進められていたという事実のみから、上記正当理由を認めることはできない。」(東京高裁平14(行ケ)50・平14.9.20判決)

以上のとおり、商標法第50条第2項ただし書きにいう「正当な理由」があるというためには、当該登録商標の使用をしていないことについて当該商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責に帰することができないやむを得ない事情、例えば、天災地変等の不可抗力事由や法的規制等の存在により、不使用を理由に当該登録商標を取り消すことが社会通念上酷であるような場合をいうものと解すべきである。

(エ)これを本件についてみるに、被請求人は、パチンコホールの新規出店計画を立ち上げたこと、この場所で使用する予定の本件商標を出願したこと、当該パチンコホール出店予定場所の地権者が複数存在したため、地権者との土地の買い取り交渉に時間がかかり、当該パチンコホールの新規開業が大幅に遅れたことを不使用の理由として主張し、証拠としては、出店予定場所の地図(乙第1号証)、不動産業者への取りまとめ依頼書(乙第2号証)、不動産売買契約書(乙第3号証ないし第7号証)、完成予想図(乙第8号証)を提出しているにすぎない。

しかしながら、まず、上記新規のパチンコホールにおいて、本件商標の使用が予定されていたこと自体の証明が全くない。すなわち、本件商標に関する証拠は全くなく、被請求人は単にその予定があったと述べているにとどまり、これを裏付けるものは何もないのである。

さらに、当該パチンコホール出店予定場所の地権者が複数存在したことや、土地の買い取り交渉に時間がかかったことは、上記した「正当な理由」のいずれにも該当するものとはいえない。

地権者との交渉に時間を要したことは、専ら被請求人自身の事情であり、本件商標をその指定役務について使用しなかったことに関し、何らその妨げとなるような不可抗力事由や法的制限等があったものとは認められない。

たとえ土地の地権者との交渉が遅延した結果、当該パチンコホールの新規開業が大幅に遅れ、本件商標を使用するに至らなかったとしても、そのことは結局、地権者が複数存在するような複雑な土地を新規店舗用地に選定した被請求人自身の不明から来る事情に帰結するものであって、自己都合による事情の域を出ないものというべきである。

かかる理由をもって、本件商標を今日に至るまで使用しなかったとする被請求人の主張は、前記のような、商標権者の責めに帰することができないやむを得ないものであり、不使用を理由に取り消すことが社会通念上酷である場合に該当するとは到底いえない。

(オ)したがって、被請求人が主張する理由は、商標法第50条第2項ただし書きにいう「正当な理由」には該当しない。

(カ)以上詳述したとおり、被請求人は、本件商標が請求に係る指定役務について請求登録日前3年以上不使用であることを認めた上で、不使用につき商標法第50条第2項ただし書きにいう「正当な理由」があることも証明していない。

すなわち、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国において、商標権者、使用権者のいずれによっても、その請求に係る指定役務について使用されていなかったものであり、同法第50条第2項ただし書きにいうところの使用をしていないことについての正当な理由があったものとも認められない。

3 被請求人の答弁の要点

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし第8号証を提出している。

(1)不使用についての正当な理由

(ア)本件商標は、3年以上使用されていないが、不使用について正当な理由があるので、商標法第50条第2項ただし書きの規定により、その登録は取り消されないものである。

(イ)本件商標の権利者は、平成14年頃より長崎県佐世保市瀬戸越4丁目(乙第1号証参照)にパチンコホールの新規出店計画を立ち上げ、この新規出店計画に合わせて、この場所で使用する予定の本件商標を平成15年8月に登録出願した。

この間の事前の根回し交渉で、全ての地権者から土地を買い取ることについての了承を得たので、平成16年12月に不動産業者(乙第2号証参照)に土地の買い取りの仲介を依頼し、地権者との間で土地の買い取りについての具体的な条件交渉に入った。

地権者が複数だったため、土地の買い取り交渉に時間がかかり、最初の契約は平成18年7月に結ばれ、その後、逐次契約が締結され、現時点(平成19年8月1日)で5つの地権者との間で契約が完了している(乙第3号証ないし第7号証参照)。

残り1つの地権者とも平成19年9月頃には契約が完了する予定になっている。そして、全ての土地の買い取りが完了した後に、その場所にパチンコホール及びその他の付帯設備(乙第8号証参照)を建設する予定になっている。

現在の計画では、本件商標を附したパチンコホールは平成21年3月頃に開業する予定である。

(ウ)地権者が複数いて互いに他の地権者の条件についての探り合いがあったためか、土地の取得の売買契約に必要以上に時間がかかり、その結果、本件商標を附したパチンコホールの新規開業が大幅に遅れることになり、したがって、本件商標の使用も大幅に遅れることになったのである。

(2)結び

以上述べたように、本件商標は、不使用について正当な理由があるので、商標法第50条第2項ただし書きの規定に該当し、その登録は取り消されるものではない。

よって、本件審判の請求は成り立たない。

4 当審の判断

(1)被請求人は、本件商標が3年以上使用されていないことを認めた上で、その不使用については商標法第50条第2項ただし書にいう「正当な理由」がある旨主張しているので、この点について検討する。

(2)上記「正当な理由」とは、地震、水害等の不可抗力、放火、破壊等の第三者の故意又は過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由等商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰することができない事由が発生したために使用することができなかったような場合をいうものと解される(東京高裁平成7年(行ケ)第124号、平成8.11.26判決及び知財高裁平成19年(行ケ)第10227号、平成19.11.29判決参照)。そして、商標権者等において商標の使用の準備を進めていたにもかかわらず、商標権者等の責めに帰することのできない特別の事情により現実の使用に至らなかったなどの事実関係が、具体的に主張立証されているのであれば格別、単に商標の使用の準備が進められていたという事実のみから、上記正当な理由を認めることはできないというべきである(東京高裁平成14年(行ケ)第50号、平成14.9.20判決参照)。

これを本件についてみるに、被請求人は、平成14年頃よりパチンコホールの新規出店計画を立ち上げ、その計画に合わせて本件商標を登録出願したこと、平成16年12月から該パチンコホールの出店予定場所の地権者との土地の買い取り交渉に入ったが、地権者が複数存在したためにその交渉に時間がかかり、該パチンコホールの新規開業が遅れていること、現在の計画では、該パチンコホールは平成21年3月頃に開業する予定であること、などを本件商標の不使用の理由として主張し、証拠を提出している。

しかしながら、提出された証拠は、出店予定場所の地図(乙第1号証)、不動産業者への取りまとめ依頼書(乙第2号証)、不動産売買契約書(乙第3号証ないし第7号証)、完成予想図(乙第8号証)のみであり、他に、上記パチンコホールの新規出店に係る具体的な事業計画や本件商標の使用態様を初めとする具体的な計画等を示す証左は一切ない。

もっとも、完成予想図と称する一葉の書面(乙第8号証)には、その右下に「AMUSEMENT COMPLEX B−APPLE」の文字が記載されている。仮に、この文字中の「B−APPLE」の文字部分を捉えて、本件商標が表示されていることを主張する趣旨であると善解しても、何ら具体的な主張も説明もないばかりでなく、上記文字の記載をもって、本件商標をその指定役務について使用しているものとは到底認めることができない。

そうすると、被請求人は上記パチンコホールの新規出店のための土地の買い取り交渉を開始していたことは窺えるとしても、具体的な事業計画や商標使用の計画が何ら示されていない以上、その交渉開始の事実のみによって本件商標の使用をするために具体的な準備を進めていたものとはいい難い。百歩譲って、上記土地の買い取り交渉が本件商標の使用の準備に当たるとしても、単なる使用の準備のみでは商標の不使用についての正当な理由に当たるとはいえないし、上記交渉の遅延は、専ら被請求人自身の自己都合というべきであって、天災地変や法令による禁止等の不可抗力に起因するものではなく、被請求人の責めに帰することのできない事由とは認められない。

したがって、被請求人の主張する理由は、商標法第50条第2項ただし書きにいう「正当な理由」に該当するものとは認められない。

(3)以上のとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれによっても、その指定役務について使用されていなかったものであり、かつ、その使用をしていないことについて正当な理由があるものとも認められないから、商標法第50条の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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