Trademark Appeal Case
著名商標の混同判断
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成9年異議第90045号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | other |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第4003858号商標(以下、「本件商標」という。)は、「POLO SPIRIT」の欧文字を横書きしてなり、平成7年7月5日に登録出願、第9類「眼鏡、眼鏡の部品及び附属品」を指定商品として、同9年4月3日登録査定、同9年5月30日に登録されたものである。
第2 登録異議申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第8号及び同第4条第1項第15号に該当し、その登録は商標法第43条の2に該当し、同第43条の3の規定により取り消されるべきものである旨申立て、証拠方法として甲第1号証ないし同第9号証(枝番号を含む)を提出した。
(1)本件商標は、申立人の名称の著名な略称である「POLO」の文字を含んでなるものであり、その使用について承諾を与えていない。
(2)「POLO」及び同綴の「Polo」の欧文字は、申立人の商標として、広く一般に知られているものであり、それを一部に含む本件商標がその指定商品に使用された場合、その商品が申立人あるいは申立て人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
第3 取消理由の通知
当審において、商標権者に対し、平成11年3月9日付けで、「本件商標は、『POLO SPIRIT』の欧文字を横書きしてなるものである。そして、その構成中の『POLO』の文字部分については、米国のデザイナー『ラルフ・ローレン』がデザインした商品を表すものとして著名な標章『POLO』又は『polo』と同一又は酷似し、更に、当審において調査したところ(別紙参照)、該文字は、上記米国のデザイナー『ラルフ・ローレン』のデザインに係る紳士服、婦人服の被服類、眼鏡をはじめ日用品や雑貨等に使用する標章として取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたものとみるのが相当である。
そうすると、『POLO』の文字を含む本件商標をその指定商品に使用するときは、前記米国のデザイナー『ラルフ・ローレン』の商品又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所につき誤認、混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨の取消理由を通知し、相当の期間を指定して意見書の提出する機会を与えた。
第4 商標権者の意見
商標権者は、意見書を提出して、下記のように主張し、証拠方法として、甲第2−R01号証ないし同第3−05号証を提出した。
(1) 「POLO」の商標に対して、「ポロ競技に関する団体名であることを表したもの」、「ポロ競技愛好者の集まりである特定の団体の名称を表したもの」との見解が異議決定で示されている。
(2) 「POLO(ポロ)」は、日本で「ポロシャツ」として「一般用語」の一部であり、普通に用いられる言葉である。国内及び海外の辞書、事典を調査したところ、全て「POLO」は「スポーツ名」としか記載されておらず、アメリカのデザイナー「ラルフ・ローレン」の事は一切記載されていない。 「POLO」はそもそもペルシャで始まりイギリスで発達した「スポーツ」に過ぎず、日本では英国皇太子に関する報道を含めて、多くのマスコミが取り上げ、「スポーツ」として「POLO」を知らない人はいない程である。その為、当然「POLO」は「テニス」「ゴルフ」と同様に「スポーツ名」であり、「一般用語」として認められるべきである。
(3) 「POLO」を以て、「ラルフ・ローレン」と結びつけ、又、百歩譲って「POLO」又は「POLO RALPH LAUREN」が「ラルフ・ローレン」のものであるとしても、「POLO」との合成語の全ての商標が「ラルフ・ローレン」のものと決めつけるべきではない。
(4) 「POLO」は現在、ラルフ・ローレンの独占商標ではない。最近の日本でのファッション(流行)の変化もあり、現在では「ラルフ・ローレン」以外の「POLO」ブランドが総販売量においても「ラルフ・ローレン」1社を凌駕する程になっており、消費者側もその状況を十分に認識している。
第5 当審の判断
1 「POLO」の周知性について検討する。
当審において、調査した証拠関係(取消理由通知書において提示済)によれば、以下の事実が認められる。
(1)「男の一流品大図鑑」((株)講談社 昭和53年7月10日発
行)、「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」(サンケイマーケティング昭和58年9月28日発行)によれば、ラルフ・ローレンは、1967年ネクタイメーカーのボー・ボランメル社にデザイナーとして入社、幅広ネクタイをデザインし、圧倒的に若者に支持され、世界に広まった。翌1968年独立、社名を「ポロ・ファッションズ」(以下、「ポロ社」という。)とし、ネクタイ、スーツ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出、服飾業界の名誉ある賞、「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞するとともに、数々の賞を受賞。1974年の映画「華麗なるギャツビー」の主演ロバート・レッドフォードの衣裳デザインを担当、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。我が国においても、ラルフ・ローレンの名前は服飾業界等において広く知られるようになり、そのデザインに係る商品には「Polo」の文字とともに、「by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の各標章(以下、一括して「引用標章」という。)が用いられ、これらの標章は「ポロ」と略称されている。
(2)「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」((株)洋品界 昭和55年3月発行)の「ポロ/Polo」の項及び「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」(ボイス情報(株) 昭和59年9月25日発行)の「ポロ・バイ・ラルフローレン」の項の記述及び「日経流通新聞」(昭和63年10月29日付)の記事によれば、我が国においては、西武百貨店が昭和51年にポロ社から使用許諾を受け、同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等、同53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始したことが認められる。
(3)ラルフ・ローレンに係る紳士服、紳士用品については、「dansen男子専科」((株)スタイル社 1971年7月10日発行)、前出の「男の一流品大図鑑」、「世界の一流品大図鑑’79年版」((株)講談社 昭和54年5月20日発行)、別冊チャネラー「ファッション・ブランド年鑑’80年版」((株)チャネラー 昭和54年9月20日発行)、「世界の一流品大図鑑’80年版」((株)講談社 昭和55年5月25日発行)、「MEN’S CLUB」(婦人画報社 昭和55年12月発行)、「世界の一流品大図鑑’81年版」((株)講談社 昭和56年5月25日発行)、前出「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」、「流行ブランド図鑑」((株)講談社 昭和60年5月25日発行)に、眼鏡については、前出の「世界の一流品大図鑑’80年版」、「ファッション・ブランド年鑑’80年版」、「男の一流品大図鑑’80年版」、「世界の一流品大図鑑’81年版」に「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフローレン(アメリカ)」等の標章の下に紹介されていることが認められる。
他にこれを覆すに足りる証拠はない。
(4)ラルフ・ローレンの「POLO」、「ポロ」、「Polo」の標章について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定した東京高等裁判所の判決(平成2年(行ケ)183号、平成3年7月11日判決言渡)がある。
以上の事実を総合し、上記判決をも併せ考慮すると、我が国においては、遅くとも昭和55年までには既にラルフ・ローレンのデザインに係る商品被服類等を表示するものとして、引用標章が取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。
2 本件商標は、「POLO SPIRIT」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成中の「SPIRIT」の文字部分は、「精神、活気、魂」を意味するものであり(株式会社小学館 平成1年1月20日発行「プログレッシブ英和中辞典」)、「POLO」の文字部分は、ポロ競技(馬に乗ったプレーヤーによる2チームが互いにマレットで1個のボールを奪いあい、ゴールに打ち込むことを競う球技)を意味するものと認められる。
そうすると、本件商標は、これに接する取引者、需要者をして「SPIRIT」の文字が格別ポロ競技とは関係のない用語であることから、「POLO」の文字部分に着目して、「ポロ」(競技)の観念及び「ポロ」の称呼を生じさせるものである。
3 他方、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして周知となっている引用標章は「ポロ」(競技)の観念、「ポロ」の称呼が生ずることは前記したとおりである。
4 そうすると、前記認定のとおり、我が国において、遅くとも本件商標登録出願(平成7年7月5日)前である昭和55年までには既にラルフ・ローレンのデザインに係る商品被服類等を表示するものとして引用標章が取引者、需要者の間に広く認識されていたという取引の実情を考慮すると、本件商標は、その指定商品、とりわけ眼鏡に使用する場合には、引用標章と構成上相違があるものではあっても、時と処を異にしてこれに接する取引者、需要者においては、前記したとおり「SPIRIT」の文字が格別ポロ競技とは関係のない用語であることから、「POLO」の文字に着目して、「ポロ」(競技)の観念及び「ポロ」の称呼が生じ、引用標章を連想、想起するものと認めるのが相当である。
したがって、本件商標は、ラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
5 商標権者は、「POLO(ポロ)」は、日本で、「ポロシャツ」として「一般用語」の一部で、普通に用いられる言葉であり、また、国内及び外国の辞書、事典には「スポーツ名」としか記載はなく、アメリカのデザイナー「ラルフ・ローレン」とは記載がないから、本件商標は登録すべきである旨主張するが、かかる主張は、前記認定判断に照らし、失当であり、採用することはできない。
なお、商標権者は、当庁における審査例、審判例を挙げて種々主張するところあるも、過去にされた審査例等は具体的、個別的な判断が示されているのであって、必ずしも確立された統一的な基準によっているものとはいえず、仮にその中に矛盾や誤りがあるとしても、具体的事案の判断においては、過去の審査例等の一部の判断に拘束されることなく検討されるべきものであるから、この点に関する商標権者の主張も採用することができない。
第5 結び
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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