sokuhyo

Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2006−90389(T2006−90389/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4953384号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4953384号商標(以下「本件商標」という。)は、「スパンワイド」の文字を標準文字で書してなり、平成17年9月8日に登録出願、第1類「化学品」を指定商品として同18年5月19日に設定登録されたものである。

2 申立人の商標

登録異議申立人「ユニヒェマ ヒェミー ベスローテン フエンノートシャップ」(以下「申立人」という。)が引用する登録第4300487号商標(以下「申立人の商標」という。)は、「SPAN」の文字を横書きしてなり、平成8年8月15日に登録出願、第1類「乳化剤,分散剤,溶解剤,湿潤剤,その他の化学品」を指定商品として、同11年7月30日に設定登録されたものである。

3 登録異議申立の理由の要点

(1)申立人の商標の周知・著名性について

申立人の商標は、「Atlas Powder社」(申立人の現関連会社)により製造された非イオン活性剤の商品名である(甲第3号証)。

申立人の商標は、申立人により世界的に長期間にわたり使用され、業界では、「スパン型の非イオン界面活性剤」と呼ばれるくらい有名である(甲第4号証)。

申立人の商標を付した商品は、どの大学や研究室も必ず所有しているといわれる「化学大辞典」(甲第3号証)をはじめ、数多くの化学品関連書籍で紹介され、論文、特許明細書、大学の授業などでも紹介・使用されている(甲第4号証ないし甲第10号証)。

また、申立人の商標を付した商品は、我が国にも広く輸入・販売されており(甲第11号証ないし甲第17号証)、その販売高は、過去5年間だけを見ても莫大である(甲第14号証)。

そして、申立人ないしその関連会社は、世界中で、「SPAN」商標の登録を取得しており、1941年(昭和16年)8月7日に米国への出願をしたことをはじめとして、現在までに世界約60カ国で商標登録を取得している(甲第19号証)。

申立人の商標には多くのシリーズ商品があり、現在、「SPAN 20」、「SPAN 20 Pharma」、「SPAN 40」、「SPAN 40 Pharma」、「SPAN 60」、「SPAN 60K SPRAY」、「SPAN 60 Pharma」、「SPAN 65 SPRAY」、「SPAN 80」、「SPAN 80V Pharma」、「SPAN 85」、「SPAN 85V Pharma」などの商標を付した商品が製造・販売されている(甲第12号証)。

(2)商標法第4条第1項第11号該当性について

本件商標は、上記1に示すとおりの構成よりなるところ、そのうちの「ワイド」の語は、我が国において親しまれている外来語であり、同文字部分からは、英文字「WIDE」が容易に想起される。

そして、「ワイド(WIDE)」の語は、「広い、多方面の」などの意味を有するから、同文字部分は、識別力を有しないか、その識別力は極めて弱いものであり、申立人の商標が周知・著名であり、多くのシリーズ商品を提供していることに鑑みれば、本件商標「スパンワイド」は、「他方面(他用途/wide)に使えるSPAN」と認識される可能性が高い。

してみれば、本件商標中の「スパン」の文字部分が商標の要部と認識される場合があることは否定できず、本件商標からは、「スパンワイド」の称呼のほかに、「スパン」の称呼が生じる。

一方、申立人の商標は、「SPAN」の文字を書してなり、これからは、「スパン」の称呼が生じる。

してみると、本件商標と申立人の商標とは、いずれも「スパン」の称呼を生ずるから、両者は、称呼上互いに類似する商標であり、また、本件商標の指定商品中「化学品」と申立人の商標の指定商品である「乳化剤,分散剤,溶解剤,湿潤剤,その他の化学品」とは同一であることが明らかである。

したがって、本件商標は、申立人の商標と類似する商標であって、かつ、同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について

申立人の商標は、世界中において、超長期間にわたり、商品「界面活性剤」などに使用されてきた商標である。すなわち、申立人の商標は、需要者の間に広く認識されている商標であり、本件商標「スパンワイド」は、申立人の商標と類似し、その商品と同一の商品を指定するものである。

また、本件商標がその指定商品に使用された場合には、当業者、需要者は、当該商品があたかも申立人あるいはその関連企業によって取扱われている商品であるかの如く、その出所について誤認混同するおそれが高い。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号にも該当する。

(4)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に該当するにもかかわらず、登録されたものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。

4 当審において通知した取消理由の要旨

申立人の提出に係る証拠によれば、申立人の商標を付した申立人の業務に係る商品「界面活性剤」について「化学大辞典」に掲載されているのをはじめ、化学関連書籍、論文、特許明細書、大学の授業などでも紹介されていることが認められる(甲第3号証ないし甲第10号証)。

そして、上記商品は、我が国においても実際に輸入・販売され、かつ、商品パンフレット等が作成されるとともに、その販売高は、2002年ないし2006年で、総計12万2千ポンドに達していることが認められる(甲第11号証ないし甲第18号証)。

そうすると、申立人の商標は、本件商標の登録出願時には、既に申立人の業務に係る商品「界面活性剤」に使用される商標として、取引者、需要者の間に広く認識されており、その状態は、登録査定時においても継続していたというべきである。

一方、本件商標は、上記1のとおりの構成よりなるところ、その構成中の「ワイド」の文字が「広い、広範囲な」の意味を有する外来語として一般に親しまれ、しばしば他の語の前後に付して使用されることからすると、「スパン」と「ワイド」の2語からなるものとして認識し、把握される場合も決して少なくないものである。

また、本件商標の指定商品中には、申立人の商標(引用商標)が使用される商品「界面活性剤」が含まれていることは明らかである。

かかる事情の下に、本件商標をその指定商品に使用するとき、該商品に接する取引者、需要者は、本件商標の構成中の「スパン」の文字部分に着目し、周知・著名な申立人の商標を連想・想起し、該商品があたかも申立人又はそれと経済的あるいは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。

5 当審の判断

本件に関し、審判長は、商標権者に対し、平成19年3月5日付けで上記4の取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、商標権者からは何らの応答もなかった。

上記4の取消理由は、下記の点を考慮しても妥当なものと認められる。

(1)申立人提出の甲各号証についてみるに、甲第3号証及び甲第4号証並びに甲第6号証によれば、「スパン」又は「SPAN」商標は、アメリカの「Atlas Powder Co.」いわゆるアトラス社の商品「非イオン活性剤」等に使用される商標として、本件商標の登録出願(平成17年9月8日)前より我が国の「化学品」等の業界において広く認識されていたことが認められる。

また、甲第4号証によれば、アトラス社は、現在「ICI America Inc.」いわゆるICIアメリカ社となっていることが認められる。

さらに、甲第19号証によれば、「SPAN」商標は、現在、世界の約60カ国で登録されており、その所有者は、ICIアメリカ社と「ICI CHEMICALS & POLYMERS LIMITED.」(以下「ICIケミカルズ社」という。)及び申立人である「UNICHEMA CHEMIE BV」(ユニヒェマ ヒェミー ベスローテン フェンノーシャップ)いわゆる「ユニケマ社」の3社(いずれもICIの企業グループ)とが分掌して国別の登録を取得し、有効な権利としてそれぞれ維持していることが認められる。

そして、甲第16号証の7枚目及び甲第17号証の8枚目には、「SPAN 20」及び「SPAN 60」等がいずれも「企業のICIグループの商標であること」及び「これらの製品のすべての販売は、ICI標準販売条件の対象となること」と記載されていることが認められる。

また、甲第16号証及び甲第17号証によれば、申立人の名称の一部「ユニヒェマ」いわゆる「ユニケマ」の文字を含む名称の会社「ユニケマ・ジャパン」が商品「非イオン性界面活性剤」について、商標「SPAN 20」及び「SPAN 60」を取り扱っていることが認められる。

それに加えて、甲第11号証の1枚目、7枚目及び11枚目には、申立人の欧文字表記である「Unichema chemie BV」のほかに、「SPAN 80V」及び「SORBITANMONOOLEATE」の記載、甲第6号証の600頁及び850頁には、それぞれ「Span−80」及び「Sorbitan−monooleate」の記載、甲第12号証(ユニケマ製品リスト)の「スパンシリーズ」(ソルビタンエステル)中には、「Span 80 ソルビタンモノオレエート」及び「Span 80 V Pharma ソルビタンモノオレエート」の記載、さらに、甲第13号証の5枚目の「水性ポリマー用ユニケマ商品」という表題下の「乳化剤」の欄には、「Span 80 V(ソルビタンモノオレエート、ヨーロッパ)」の記載、同6枚目には、「SPAN 80V」の記載、同7枚目及び8枚目の「水性ポリマー用ユニケマ商品」という表題下の「ユニケマ界面活性剤」という副題下の「乳化剤」欄下にある表中には、「Span 80V ソルビタンモノオレエート」の各記載のあることが認められる。

そのほかに、甲第12号証(ユニケマ製品リスト)の「商品群」欄には、「スパンシリーズ(ソルビタンエステル)」、「製品名」欄には、「Span 80」及び「Span 80V Pharma」、並びに「化学名」欄には、「ソルビタン モノオレエート」の各記載があり、それ以外にも、甲第3号証の169頁右上の表中に「Span 80」、「ソルビタンモノオレイン酸エステル」の記載、甲第4号証の118頁の「第2・5・9表 ICIアメリカ社のスパン及びツイーン」という副題下の表中に「スパン 80」、「ソルビタン オレイン酸モノエステル」の記載、同頁の7行目及び8行目に「だから一般にはソルビットからの非イオンといえば“ああソルビタンエステルか”といわれるくらい普及しているのである。」の記載、同号証の119頁の8行目には「ソルビタンの脂肪酸エステルは乳化剤・・・」の記載、甲第6号証の17頁には、「c.脂肪酸ソルビタン・エステル・・・(Span)」の記載、同号証の610頁の表中の「製品」欄には、「ソルビタンエステル」及び「Span−80モノオレイン酸ソルビタン・エステル」の各記載のあることが認められる。

(2)以上の事実を総合すると、申立人の商標のみならず「スパン」商標は、かつては、アメリカのアトラス社の商品「非イオン活性剤」等のシリーズ商品に使用される商標であったものの、現在では、アトラス社がICIアメリカ社となっており、同社とICIケミカルズ社及び申立人とはいずれもICIグループに属する企業であって、しかも、申立人の商標は、ICIケミカルズ社から正規に譲渡を受けていたものであること、上記3社がそれぞれ切分けして国別に「SPAN」商標等の登録を取得し、維持していることが認められる。

(3)したがって、本件商標は、その指定商品である第1類「化学品」について、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわなければならないから、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。