Trademark Appeal Case
立体商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2006−16414(T2006−16414/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの5方向の写真で表された構成よりなり、第30類「あめ」を指定商品とし、平成17年2月25日に立体商標として登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係からすれば、その指定商品に採用し得る一形状を表したものと認識される立体的形状からなるものであるから、これをその指定商品に使用しても、単にその商品の形状そのものを普通に用いられる方法をもって表示するにすぎないものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者・需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するにとどまり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、その立体商標が指定商品との関係において、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者・需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲のとおり上下3層からなる楕円錐台の立体形状よりなるところ、上層と下層は、光沢で透明感のあるやや黄色味がかっている層であり、中間の層は、透明感のない白色の層からなるものであって、全体として本願指定商品であるあめの形状と認められるものである。
そして、あめについては、加工しやすいことから、様々な形状のものがあるが、特に口中で舐めやすいような球形、直方体、円柱形、楕円球などの単純な形状のものも多くあり、また、果物味、ヨーグルト味、コーヒー味、チョコレート味などの味付けや原材料の有する効果、食感等から、2つ以上の材質のものを組み合わせて一粒のあめとすることが行われ、その場合にその材質の異なるものを2層あるいは3層にすることは、本願商標を使用する請求人の商品を含め一般に行われているところであり、このことは、以下のインターネット情報等からも窺い知れるところである。
(ア)UHA味覚糖のキャンディ「かさね純露 しょうがのせ」は、白色に近いしょうが味の層と紅茶色の紅茶味の層を上下2層にした直方体の形状である。(同社のウェブサイトに上記あめの形状を包装袋に印刷された商品が紹介されている(http://www.sanou.co.jp/catalog/1072.htm)。
(イ)カバヤ食品のキャンディ「ジューCのどあめ」(イチゴソーダ味など3味の商品とサイダー味などの3味の商品がある。)は、清涼菓子(ジューC)とあめを上下2層にした円柱状の形状である(http://www.kabaya.co.jp/okasi_candy.html)。
(ウ)黄金糖のキャンディ「ビタイン」の「梅のど味」「レモン味」「ヨーグルト味」は、上下2層の円柱状の形状である( http://www.sanou.co.jp/catalog/1072.htm)。
(エ)明治製菓のキャンディ「息爽々」は、キシリトール層をのどあめ層で挟んだ上下3層構造である直方体の形状である。
(オ)明治製菓のキャンディ「うるおう苺のどあめ」は、フリーズドライの苺を加えたキシリトールキャンディ層をのどあめ層で挟んだ上下3層構造である直方体の形状である。
(カ)明治製菓のキャンディ「アロエヨーグルトのど飴」について、2006年5月24日付け日本食糧新聞の「『アロエヨーグルトのど飴』発売(明治製菓)」の見出しの記事に、「アロエヨーグルトのおいしさを3層ののどあめにした。キシリトール層にアロエエキスとヨーグルトパウダーを配合。ビタミンCとクエン酸を配合して爽やかなおいしさを実現。キシリトール層をのどあめ層で挟んだ3層構造が特徴。最初はなめ心地滑らかで、徐々にキシリトール層が溶け出し、おいしさと機能成分が口の中に広がる。」の記載がある。
そうとすると、本願商標は、その形状が、透明感のない白色の層からなる中間層を光沢で透明感のあるやや黄色味がかっている層で挟んだ上下3層からなるやや下方に広まった楕円錐台形状であるとしても、本願指定商品である「あめ」の形状として、同種商品が一般に採用し得る程度であり、基本的な機能(効果)、美観を発揮させるために必要な形状の範囲内にすぎないものというべきである。
(3)請求人の主張について
(ア)請求人は、本願商標の形状が「今までに見たことも無い楕円錐台の形状からなる3層構造であって、ありふれた立方体、直方体、球体、楕円体の形状とは異なりオリジナル性を追求した結果、需要者には、このあめの形状のみで分別が付く」「単なる楕円錐台の形状のあめというだけではなく、他の2層と均等に冷涼感を味わえるような工夫を施した中間層を露出させている構造は、今までには全く見られない外観であり、形状的にもこの3層構造の楕円錐台の形状のあめの比率に辿りつくまでには、2年以上の歳月を費やして度重なる実験を繰り返し行った成果でありますし、さらにオリジナル性、ユニーク性も加味しなければならず、その点も苦労して生まれた3層構造の楕円錐台の形状からなるあめであ」るなどと主張している。
しかしながら、たとえ、本願商標の形状に係る請求人の「あめ」(即ち、「キシリクリスタル」のあめの形状)が、その技術開発に2年以上の歳月を費やしたものであるとしても、そのことは、本願商標が商標法第3条第1項第3号の商標に該当するかどうかの判断に影響を及ぼすものではないし、あめについては、上述のように加工しやすいことから様々な形状の商品があることは明らかであって、本願商標の立体形状である楕円錐台形は、立方体や球形ほどではないにしても日常的にありふれた形状というべきである。
加えて、請求人が「3層構造の楕円錐台の形状のあめにすることで中間層の溶解速度が他の2層より大きくても或いは小さくても中間層が他の2層でガードされ、舐め初めと終わりで食感等が大きく変化せず、舐め終わるまで初期の食感等を持続させることができ、美味しいという顕著な食感が味わえる中間層が露出している3層構造の楕円錐台の形状のあめにしたのが研究成果であります。」と自認しているように「3層構造の楕円錐台の形状」は、あめをその形状にすることにより、舐め初めから舐め終わりまで各層により異なる味等を楽しむことができる、食感等に係る機能、効果を発揮するために採択された形状というべきであって、既に述べたとおり、3層構造が、請求人以外の「あめ」の形状としても普通に用いられていることからすると、本願商標の立体形状は、同種商品が一般に採用し得る範囲内のものにすぎないと見るのが相当である。
(イ)また、請求人は、「その形状が男女の別、年齢層を問わず広い層に浸透している」、「平成16年当時でシェア9.6%(30億円強)、現在では年間65億円以上、つまり1品で一億袋以上の売上げを誇る大ヒット商品にまで成長して」いる旨、主張している。
しかしながら、本願商標に係る請求人の商品が相当の販売シェアを占める商品であるとしても、そのことから、前述のとおり、商品「あめ」の形状として普通に用いられる範囲というべき本願商標の立体形状が、直ちに自他商品の識別標識としての機能を有するということはできない。
請求人の商品についての新聞報道や宣伝広告の内容を見ても、例えば、平成16年2月25日付け日本食糧新聞(甲第1号証)の請求人商品の紹介記事では、「三星食品(株)の『テイカロ』ブランドの『キシリクリスタルミントのど飴』は、シュガーレスで低カロリーという商品性が消費者の健康志向に合って発売以来好評に推移、メーカー出荷額で年商三〇億円のヒット商品となった。・・・一粒のキャンデーを多層化する技術を活かして、・・・通常の飴は糖質が冷めて固化したものだが、キシリトールは結晶の形成がポイントとなり、この技術開発に二年以上の歳月を費やして苦労した結果、安定した商品が生産できるキシリクリスタル製法(製法特許出願中)を平成13年3月に確立し、・・・この『キシリクリスタル』は、同社の主要製品に使用している還元麦芽糖水飴(マルチトール)でキシリトールを挟み込んだ、サンドイッチのような形状の三層キャンデー。」と記載され、2006年2月20日付け日経MJ(甲第3号証の2)の請求人商品の紹介記事では、「三星食、独自製法で首位」の見出しのもと、「同商品はシュガーレスキャンデー層の間に、キシリトール層を挟んで三層を作るキシリクリスタル製法を採用している。この製法は二〇〇三年に特許をとったもの。原料を高温で溶かし、型に入れて冷やし固める成型法で、口あたりはなめらかだ。」と記載され、2006年3月8日付け神戸新聞(甲第3号証の3)の請求人商品の紹介記事では、「三層構造で冷涼感持続」の見出しのもと、「厚さ一・三センチのキャンデーは三層構造。真ん中のキシリトール層をミルクミント味のキャンデー層が挟む。口に含めば、ミルクとミントのさわやかな甘みと、キシリトールのひんやりした感触がのどを通り抜け、最後まで味のハーモニーを楽しめる。」と記載されているが、これらは、いずれもキシリクリスタルの3層構造からなる特徴を商品の機能、効果に関わるものとして報道している。
また、請求人商品「キシリクリスタル」のプロモーション(甲第4号証の3及び4)及び請求人の商品カタログ「2006秋冬商品のご案内」(甲第4号証の5)の「キシリクリスタル」の紹介ページでは、「のどに『うるおい』を与えてくれる三層タイプのキャンディ」(甲第4号証の3)、「特許取得 冷たいキシリトール層をシュガーレスキャンディでサンドしました。ひんやりとしたさわやかなキシリトールの味わいが最後まで持続します。」(甲第4号証の4)、「独自の多層化技術によってキシリトールをサンドした3層構造です。ひんやりとして、さわやかなおいしさが最後までバランス良く楽しめます。」(甲第4号証の5)の説明やキシリトールをサンドされたものであることを示す説明図があるなど、商品「キシリクリスタル」が機能を効果的に発揮する3層構造であることを宣伝広告しているのであるから、これに接する需要者は、該商品の3層構造の形状を商品の機能、効果として認識するにとどまり、3層構造の特徴を有する本願商標の立体形状が自他商品の識別標識であるとは認識し得ないというのが相当である。このことは、「キシリクリスタル」の市場調査結果(甲第3号証の1)において、需要者が「三層構造がキシリクリスタルの特徴であるとの認識」との結果があったとしても、上記同様に3層構造について機能、効果として認識しているというべきである。
さらに、請求人商品「キシリクリスタル」が他社の同種商品と比較してトップシェアの商品であり(甲第2号証の1及び2)、認知度が高いとする調査結果がある(甲第4号証の1及び2)としても、これは、商品「キシリクリスタル」についての商品名若しくはブランド認知度に関するものというべきであるから、これによっても商品「あめ」において一般に採用し得る範囲内の形状である本願商標が、単にあめの形状として認識される以上に、自他商品の識別力を有するものとして認識されるものということはできない。
(4)してみれば、本願商標は、これをその指定商品である「あめ」に使用したときは、これに接する取引者、需要者は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標にすぎないものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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