Trademark Appeal Case
周知施設名称の商標性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2006−90433(T2006−90433/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4966237号商標(以下「本件商標」という。)は、「妖怪神社」の文字を標準文字で書してなり、平成17年6月6日に登録出願され、第21類「絵馬の形のお守り,加護用ステッカー,その他のお守り,おみくじ,お札,破魔矢」及び第41類「美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧」を指定商品及び指定役務として、同18年6月30日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由(要旨)
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第10号、同第15号及び同第19号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきである。
3 平成19年6月27日付及び同9月27日付の取消理由(要約)
(1)登録異議申立人「株式会社アイズ」(以下「申立人」という。)より提出された甲第1号証ないし甲第150号証によれば、以下のことが認められる。
(ア)境港市においては、平成5年から平成8年にかけて、郷土が誇る漫画家であり、妖怪学者の水木しげる氏の妖怪の世界を主題とした「水木しげるロード」が同市大正町・松ケ枝町商店街を中心に整備され、新しい形態の商店街活性化事業として話題を呼び、地元住民のみならず行政視察など観光客による賑わいがあった(甲第3号証)。
(イ)この「水木しげるロード」を更に広げることにより、町並みの整備、空き店舗の利用、接客サービスの提供等を前提とした、商産業の活性化計画を策定し、観光客はもちろん、地元住民にとっても憩いと楽しさをもった街づくりを目指すことを目的として、「商店街活性化基本計画」(「水木しげるロード」街並み整備計画)が策定され、平成11年3月31日に「水木しげるロード振興会」及び「株式会社ムラヤマ」により、同計画書が作成されている(甲第3号証)。
同基本計画の事業主等は概ね以下のとおりである。
(a)事業主 「水木しげるロード振興会」(事務局長 黒目友則)
(b)事業主管 「境港商工会議所及び(財)鳥取県中小企業振興公社」
(c)関係機関 「鳥取県商工労働部経営流通課及び境港市産業環境部、 建設部」
(ウ)上記事業計画には、「水木しげる館・PR館」等と共に「妖怪神社」の建設も計画されており(甲第3号証)、また、上記事業計画を進める街づくり会社として、株式会社「アイズ」が平成11年10月1日に市民有志の共同出資により設立され(甲第5号証、甲第8号証及び甲第11号証)、同社の代表取締役には、前記の黒目友則氏が就任している。
そして、2000年(平成12年)1月1日に、同神社は完成し同日に落成入魂式を行った(甲第137号証)。
(エ)上記「妖怪神社」は、毎日新聞(全国版)、日本海新聞(1999年12月29日版)等でも大きく取り上げられ(甲第13号証ないし甲第23号証ほか)、また、同神社には平成12年1月の三が日で約2万人が訪れたとの報道がなされている(甲第20号証)。
(オ)こうして、JR境港駅前から本町まで続く全長約800メートルの「水木しげるロード」には、2001年(平成13年)5月時点で、沿道の左右に並ぶ妖怪ブロンズ像は83体となり、前年(2000年)の年間観光客が初めて60万人を突破した(甲第46号証及び甲第52号証)。
(カ)また、その後も各種のショップ、鬼太郎の塔、妖怪広場等と共に平成15年3月に公的資金により設立された「水木しげる記念館」が完成した。 そして、平成15年4月時点の妖怪ブロンズ像は102体となり、「水木しげるロード」への観光客も2003年は85万人、2004年は約78万人、2005年は85万人を記録するに至っている(甲第89号証、甲第122号証ほか)。
(キ)このようななかで、「妖怪神社」は、その名称の物珍しさもあって、新聞、雑誌等でも大きく取り上げられ、たとえば、境港市が水産都市であることから「海の安全を祈願」(甲第22号証)、「海難者の霊鎮める 猛霊八惨大明神祭」 鬼太郎ら祈願」(甲第76号証及び甲第77号証)、「妖怪神社にカニ奉納」(甲第85号証及び甲第86号証)、「妖怪神社に豊漁祈願」(甲第116号証)等が、また、「小雪くぐって初詣 境港の妖怪神社 人気スポットに」(甲第86号証)、「妖怪神社で(映画の妖怪大戦争)ヒット祈願」(甲第101号証)等が報道され、さらに、テレビ番組でも「おーいニッポン」で「妖怪神社結婚式」が放映されている(甲第142号証)。
(ク)ところで、本件商標の当初の出願人は、黒目友則氏であったところ(甲第1号証)、同氏は、本商標登録出願により生じた権利を平成17年8月19日付け譲渡証により、田中健氏に譲渡し、その後、商標権の設定登録がなされている。
(ケ)さらに、本件商標について登録異議の申立てがなされた後、平成19年7月19日に株式会社水木プロダクションに商標権の移転譲渡がなされている。
したがって、現在の商標権者は株式会社水木プロダクションと認められる。
(2)以上のことから、本件商標「妖怪神社」は、「商店街活性化基本計画」(「水木しげるロード」街並み整備計画)の一環として、建立されたものであり、そして、同計画は、地方自治体の政策目的に基づく公益的性格を有していることは明らかである。
そして、上記計画を推進する目的で、街づくり会社として設立された申立人会社が、「妖怪神社」を管理・運営し、かつ所有者となっていると認め得るものである。
また、「妖怪神社」は、新聞、雑誌、テレビ等でも大きく取り上げられ、同神社を含めた年間の観光客も85万人に達していること等からすれば、本件商標の登録出願時(平成17年6月6日)において、「妖怪神社」は、境港市の観光施設「水木しげるロード」の一として、市民、県民はもとより全国的にも広く周知されていたとみるのが相当である。
他方、前述のとおり、本件商標の当初の出願人は黒目友則氏であり、その後、該商標登録出願は田中健氏に譲渡されている。
そして、商標権の設定登録後、異議申立がなされるや、該商標権は、現商標権者の株式会社水木プロダクションに譲渡されたものである。
ところで、田中健氏は、「妖怪神社」の建立の際に祝詞をあげた神主であることが窺われるものの(甲第32号証)、いずれも、境港市及び鳥取県等の地方自治体はもとより、前記した「水木しげるロード」街並み整備計画や「水木しげるロード振興会」等とも直接的な関連性を有しないものと認められ、かつ、同氏は、「妖怪神社」建立やその後の一連の経緯については、当然知悉していながら、商標登録出願の譲渡を受けたものと推認し得るものである。
また、株式会社水木プロダクションについても、「水木しげるロード」街並み整備計画の協力者であることは認められるものの、いわゆる地域興しの一環として、主として本事業を推進してきた者(事業体)は、境港市、境港商工会議所をはじめ、本件申立人の株式会社アイズと認められ、現商標権者(株式会社水木プロダクション)でないことは明らかである。
してみれば、「水木しげるロード」街並み整備計画と何ら直接的な関係を有しない田中健氏はもとより、株式会社水木プロダクションについても、「水木しげるロード」街並み整備計画の一協力者にすぎないものといわざるを得ないから、これらの者が独占権である商標権を取得・保持することは適当でないものといわなければならない。
加えて、商標登録原簿の記載によれば、平成19年8月31日に、前述のとおり、本件の一連の経緯を知悉しながら商標登録出願の譲渡を受けたと推認される田中健氏を使用権者とする通常使用権の設定登録がなされている(その範囲・地域は「日本全国(鳥取県境港市を除く)」となっている。)。 また、「妖怪神社」の名称自体も、水木しげるの著作物には登場しないものであるから、株式会社水木プロダクションが管理する著作権の範疇にも属しないものと推認される。
してみれば、現商標権者による商標権の取得・保持であっても、街の経済の振興を図るという地方公共団体の政策目的に基づく公益的政策として活動している申立人の著名な施設の名称である「妖怪神社」の名称(商標)を独占排他的に取得・保持する意図が窺われるものである以上、また、本件の一連の経緯を知悉しながら商標登録出願の譲渡を受けた田中健氏に通常使用権を設定するなどのことからすれば、前記した境港市、境港商工会議所、同観光協会などの公益的な活動の遂行を阻害し、公共的利益を損なう結果となり得るものであるから、公正な競業秩序を害するものであって、公序良俗に反するものというべきものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
4 商標権者の意見
商標権者は、上記3の取消理由通知に対して、次のように意見を述べ、
乙第1号証を提出した。
(1)「妖怪神社」は、「おみくじ」等を販売する商業施設であり、「神社」でないのは明らかであり、また、港堺市及び商工会議所とは無関係の存在である。
また、甲第8号証及び甲第11号証には、「申立人が市民有志によって設立された」旨記載されている。
しかしながら、出資した者がどのような人々のか不明であり、また、公共団体の出資によるものでもない。
してみれば、申立人が市民有志の出資によって設立されたからといって、申立人が公共的性格を持つ会社となるものではない。
(2)「妖怪神社」は、「水木しげる」の著作物を離れては成り立たないものである。
そのことは、「妖怪神社」の設立を企画し、「水木しげる」の著作物の使用の許可を原商標権者に黒田友則が求めたこと(乙第1号証)からも明らかである。
(3)したがって、本件商標の登録は維持されるべきである。
5 当審の判断
本件商標についてした上記3の取消理由は、妥当であって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものとする。
商標権者は、意見書において、「妖怪神社」には、公共性が認められない旨主張している。
しかしながら、「妖怪神社」が、鳥取県境港市における「商店街活性化基本計画」(「水木しげるロード」街並み整備計画)の一環として、建立されたものであることよりすれば、公共的性格を有していることは明らかであるから、この点についての商標権者の主張は採用しない。
また、商標権者は、同じく意見書において、「妖怪神社」は、「水木しげる」の著作物を離れては成り立たないものである旨主張している。
しかしながら、「妖怪神社」の名称自体、水木しげるの著作物には登場しないものであり、株式会社水木プロダクションが管理する著作権の範疇にも属しないものと推認されるから、この点についての商標権者の主張も採用しない。
よって、結論のとおり決定する。
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