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Trademark Appeal Case

著名文学題号の商標性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2005−15952(T2005−15952/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、「巌窟王」の文字を標準文字で表してなり、第9類「録音済みの磁気カード・磁気シート及び磁気テープ,録音済みのコンパクトディスク,その他のレコード,映写フィルム,スライドフィルム,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物,ダウンロード可能な画像及び映像,ダウンロード可能な音楽,ダウンロード可能な電子出版物」及び第41類「電子出版物の提供,電子計算機端末による図書・著作物及び記録の供覧,その他の図書及び記録の供覧,書籍・雑誌の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,映写フィルムの貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,レコード原盤の制作,オンラインによる画像・映像の提供,オンラインによる音楽の提供」を指定商品及び指定役務として、平成15年12月10日に登録出願された商願2003−110105号に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、同16年9月27日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、以下のとおり認定、判断して本願を拒絶したものである。

(1)本願商標は、アレクサンドル・デュマ氏の著作に係る小説の題号「モンテ=クリスト伯」の邦訳名であって、その指定商品・役務との関係において、題号と認識されるにとどまる「厳窟王」の文字を標準文字で表してなるものであるから、これを本願指定商品、指定役務に使用するときは、単に商品の品質・内容及び役務の質・内容を表示したにすぎないものであり、また、その内容が本願商標の文字に照応する商品・役務以外の商品・役務について使用するときは、商品の品質及び役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認める。したがって、本願は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品・役務以外の商品・役務に使用するときは、商品の品質及び役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。

(2)本願商標は、フランスの小説家『アレクサンドル・ドュマ(Alexandre Dumas)』の著作にかかる小説『モンテクリスト伯』の黒岩涙香による邦訳名であるタイトルと同一の『厳窟王』の文字を標準文字で表してなるものであるところ、同小説は、世界文学の傑作として翻訳されているだけでなく、各国で映画化され舞台でも上演されるなど世界中で親しまれたものであり、同小説の主人公である『モンテクリスト伯』の舞台となったイフ島が今もなお観光名所となっていることなどからすれば、同小説はフランスの文化資産的性質を有するに至っているものと認められるから、本願商標を何等の関係も有しない出願人に商標として登録することは、国際信義上穏当とは認められない。したがって、本願は、同法第4条第1項第7号に該当する。

第3 当審における職権証拠調べ通知

当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権により証拠調べをした結果、「巌窟王」の文字について、次の事実が認められるとして、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、その結果を請求人に通知(平成19年11月5日付け)し、意見を求めた。

「巌窟王」に関して行った職権による証拠調べによれば、以下の事実が認められる。

1 辞書、書籍類

(1)広辞苑第五版 594頁

「巌窟王」 アレクサンドル=デュマ(大デュマ)作「モンテ=クリスト伯」黒岩涙香による邦訳名。

(2)朝日現代用語「知恵蔵」2007 846頁

「「新聞小説」の見出しのもと,・・・その『モンテ=クリスト伯』の翻訳を、1901年、自らが創刊した新聞「万朝報(よろずちょうほう)」に『巌窟王』の表題で連載したのが黒岩涙香である。」との記載。

(3)日本書籍総目録1111頁

・「巌窟王」〈講談社青い鳥文庫123−2〉デュマ,A.(アレクサンドル)著 矢野徹訳 篠崎三朗絵 1989 新書 358頁 718円〔小学中〕講談社

・「巌窟王」〈少年少女世界名作の森 15〉デュマ,A.(アレクサンドル)原作 榊原晃三訳 天野喜孝絵 1990 A5 240頁 950円〔小学初〕集英社

・「がんくつ王」〈世界の名作文庫W−34〉デュマ,A.(アレクサンドル)作 幸田礼雅文 1986 B6変230頁 600円〔小学中・小学上〕ポプラ社

・「がんくつ王」〈こども世界名作童話 30〉デュマ,A.(アレクサンドル)作 小沢正文 1988 A5 134頁 800円〔小学初・小学中〕ポプラ社

2 新聞記事及びインターネット情報

(1)2007.7.28 毎日新聞東京夕刊 4頁

「BSCSガイド:巌窟王――ミステリチャンネル」の見出しのもと,「ミステリチャンネルは8月3日から毎週金曜日22時などで、仏ドラマ『巌窟王モンテ・クリスト伯』を放送する。」との記載。

(2)2007.7.23 日刊工業新聞 28頁

「書窓/パイオニア電子計算センター社長・入船祐二氏『時代の姿余さず描いた史記』」の見出しのもと,「・・・私には元来の読書好きから派生した趣味がある。それは書籍の舞台となった場所を訪れることだ。アレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯(巌窟王)』を読み、フランス・マルセイユ沖のイフ島に出向いた。乗った船も原作通りの名前であったし、イフ城には地下牢(ろう)が再現されていた。」との記載。

(3)2007.6.18 共同通信記事

「胸を揺り動かされる物語 デュマ『巌窟王』」の見出しのもと,「出会っていながら、読まずに通り過ぎてしまった本が、誰にでもあるだろう。いうならば、すれ違いの本。私には『巌窟王』が、そのひとつだった。・・・デュマについても、子供のころは『巌窟王』の題名で親しんだ『モンテクリスト伯』なる小説のある、あの作家として、ふれられる。・・」との記載。

(4)2007.4.10 読売新聞 東京夕刊 12頁

「〔旬の一冊〕『連城訣(上)(下)』金庸著、岡崎由美監修、阿部敦子訳」の見出しのもと,「◇徳間文庫(発売中) 中華世界に12億人の読者を持つ超人気作家・金庸が描く、真実を糧に生き抜く青年の武侠(ぶきょう)ロマン。金庸版『巌窟王』ともいわれる『連城訣(れんじょうけつ)』上下巻で登場!各762円(税抜き)。」との記載。

(5)2005.9.27 毎日新聞地方版/高知 24頁

「展覧会:明治の新聞王・黒岩涙香展『万朝報』など80点――高知県立文学館/四国」の見出しのもと,「◇『万朝報』『巌窟王』など 明治から大正にかけ、新聞の発行や小説の翻訳で活躍し『明治の新聞王』と呼ばれた黒岩涙香を紹介する展覧会が、高知県丸ノ内1の県立文学館で開かれている。10月16日まで。展示されているのは涙香が発行した新聞『万朝報』の実物や翻訳を手掛けた『巌窟王』、妻すがへの恋文等約80点。」との記載。

(6)2005.7.10 読売新聞 東京朝刊 15頁

「[出版あらかると]時代の香りを再現『世界名作名訳シリーズ』刊行」の見出しのもと,「近代日本が初めて西洋文学に出会ったときの興奮を今に伝える『世界名作名訳シリーズ』の刊行が、はる書房で始まった。第1回配本は、その題名があまりにも有名なユゴー原作、黒岩涙香訳『噫(ああ)無情』(前後篇各2500円)を出版。続刊は『巌窟王』『新譯伊蘇普(新訳イソップ)物語』など。」との記載。

(7)2005.04.17 読売新聞 東京朝刊 17頁

「[ポケットに一冊]『黒岩涙香集 明治探偵冒険小説集1』」の見出しのもと,「黒岩涙香(本名・周六)の名を知らなくても『巌窟王』『噫(ああ)無情』を知っている人は多いのではないか。このデュマの『モンテ・クリスト伯』、ユゴーの『レ・ミゼラブル』の翻訳小説を残した涙香は、明治時代に新聞『萬(よろず)朝報』を創刊、政財界人の私生活を暴き、『蝮(まむし)の周六』とおそれられていた言論人でもある。」との記載。

(8)2004.07.01 中日新聞朝刊 32頁

「日々激動(28)黒岩涙香(上)名作の翻訳で一躍有名に 創刊120年 東京新聞の軌跡 明治後期編」の見出しのもと,「『巌窟王』『ああ無情』『鉄仮面』・・あの名作の数々を翻訳した黒岩涙香(るいこう)が若き日『都新聞』の主筆を務め、社を躍進させたことは案外知られていない。」との記載。

(9)2004.4.24 朝日新聞北海道地方版/北海道 28頁

「『モンテ・クリスト伯』佐々木譲さん(わたしの本棚)/北海道」の見出しのもと,「アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』/札幌生まれの作家(54歳)どん底からの自己回復 『人間の智慧(ちえ)は全ての言葉に尽きる・・。待て、しかして、希望せよ!』 ・・・『巌窟王』の邦題でも知られ、無実の罪、脱獄、復讐(ふくしゅう)というスリリングな展開はいまも読者を魅了する。『どん底まで落ちた人間が自己回復してゆく物語』と読みとった。作家となったいまも、創作にも少なからず影響を受けている。・・」との記載。

(10)2004.4.23 高知新聞夕刊 6頁

「『伝えたい 土佐の100人その言葉』(20)『目に王侯なく、手に斧鉞あり』黒岩涙香 高知新聞100周年企画」の見出しのもと,「黒岩涙香は、明治十六年から『同盟改進新聞』や『絵入自由新聞』などで主筆を務めたり、『法廷美人』などの翻案小説を書き大好評を得ていた。同二十五年には新聞経営者が交代したのを機に退職し、同年十一月一日に『萬朝報(よろずちょうほう)』を創刊する。新聞の編集方針は『簡単・明瞭(めいりょう)・痛快』で、他の新聞が十頁(ページ)余りであったのに対して四頁に圧縮し、庶民が求めやすい価格をつけた。趣味と実益を兼ねた家庭欄や英文欄などを設ける。また、内村鑑三や幸徳秋水らに格調高い論説を書かせている。翻訳連載をした『巌窟王(がんくつおう)』『噫(ああ)無情(レ・ミゼラブル)』『鉄仮面』等は広く愛読されて当時の読書界を圧倒した。」との記載。

(11)2003.11.17 神戸新聞夕刊 3頁

「〈辛口/甘口〉タップ導入の復讐劇」の見出しのもと,「モンテ・クリスト伯(10月17日、新神戸オリエンタル劇場)デュマ作『巌窟王』の舞台化。大胆な省略やタップダンスの導入で、復讐(ふくしゅう)劇を、より劇的に再構成し、成功した。」との記載。

(12)2002.12.20 神戸新聞夕刊 3頁

「〈亀ちゃんのシネマ漫遊〉モンテ・クリスト伯/波瀾万丈の大河ロマン」の見出しのもと,「『モンテ・クリスト伯』の題名にピンとこなくても『巌窟王』といえば分かる人も多いはず。十九世紀のフランスを代表する文豪アレクサンドル・デュマの名作。単行本で複数巻に及ぶ主人公エドモン・ダンテスの波瀾(はらん)万丈の人生を、たった二時間十一分に集約できるのか、と思ったのだが・・・。」との記載。

(13)2001.03.07 読売新聞東京夕刊 13頁

「[演劇]『モンテ・クリスト伯』=文学座 原作に忠実 メリハリ欠く」の見出しのもと,「『巌窟王(がんくつおう)』の題で知られるデュマの歴史小説の舞台化である。原作は文庫本で七冊にもなる大河ロマン。」との記載。

(14)http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=147264X

青い鳥文庫「巌窟王」モンテ・クリスト伯 著者 アレクサンドル・デュマ 講談社

(15)http://books.shueisha.co.jp/CGI/search/syousai_put.cgi?isbn_cd=4-08-285015-5&mode=1

少年少女 世界名作の森(15)巌窟王 原作:アレクサンドル・デュマ 集英社

(16)http://www.harushobo.jp/2006_9_01.html

巌窟王(がんくつおう)(上篇・下篇)はる書房

以上のように、当審で行った辞書、書籍類、新聞記事及びインターネット情報の調査の事実を考慮すれば、本願商標「巌窟王」の文字よりは、アレクサンドル・デュマ原作「モンテ・クリフト伯」の邦題である「巌窟王」であることを理解させるものと認められる。そうとすると、その指定商品、役務に使用した商標に接する需要者、取引者は、「アレクサンドル・デュマ原作の巌窟王」を内容とする商品、役務であることを理解するにとどまり、商品の品質・内容及び役務の質・内容を表示するに過ぎず、本願商標の文字に照応する商品・役務以外の商品・役務について使用するときは、商品の品質及び役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。

第4 職権証拠調べに対する請求人の対応

前記第3の「証拠調べ通知」に対して、請求人からは何らの意見、応答はなかった。

第5 当審の判断

本願商標は、「巌窟王」の漢字を標準文字で表してなるところ、該文字は、フランスの小説家「アレクサンドル・ドュマ(Alexandre Dumas)」の著作にかかる小説「モンテクリスト伯」の黒岩涙香による邦題である「巌窟王」を表す語として、一般に理解、認識され、使用されているものと認められるものである。

このことは、前記第3で示した証拠調べ通知における辞書、書籍類、新聞記事及びインターネット情報等において、「巌窟王」の文字が、上記意味合いで使用されていることからも首肯されるところである。

してみれば、本願商標をその指定商品及び指定役務に使用したときには、これに接する需要者、取引者は、アレクサンドル・デュマ原作「モンテクリスト伯」の邦題である「巌窟王」を内容とする商品、役務であることを理解するにすぎず、商品の品質・内容及び役務の質・内容を表示したものと認識するにとどまり、自他商品役務の識別標識としては認識し得ないというのが相当であって、かつ、本願商標の文字に照応する商品・役務以外の商品・役務について使用するときは、商品の品質及び役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるものというべきである。

以上のとおり、他の拒絶の理由に言及するまでもなく、本願商標は、自他商品役務の識別標識としては認識し得ないものといわざるを得ないから、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことはできない。

なお、請求人(出願人)は、過去に登録されたいくつかの事例を挙げて、本願商標も同様に登録されるべきである旨主張しているが、そもそも、商標の識別性の判断は、各商標につき、それぞれの取引の実情などを勘案して、個別具体的に判断されるべき性質のものであるところ、各登録例に係る商標と本願商標とでは、その文字構成を異にするものであるうえ、前記第3のとおり本願商標が、邦題を表示するものとして多数使用されている実情を勘案すると、本願商標については、前述のとおり判断するのが相当である。また、「登録出願に係る商標が商標法3条1項3号に当たるものであるかどうかの判断は、・・・これら各登録例が存在することのみによって、本願商標が同号に該当することを否定することはできず、また、本願商標についての同号該当性の判断が、これらの各登録例に拘束されるものでもない(平成12年(行ケ)第76号事件 東京高裁平成12年9月4日判決言渡参照)。」と判示されていることからも、請求人の主張は採用することはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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