結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2007−300552(T2007−300552/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第3168432号商標(以下「本件商標」という。)は、「ARI」の欧文字を横書きしてなり、平成4年9月30日に登録出願、第42類「医薬品・化粧品又は食品の試験・又は研究」を指定役務として、同8年6月28日に設定登録されたものである。
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録は、取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求の理由の要旨
本件商標は、その指定役務について、本件審判請求前3年間わが国において被請求人によって使用された事実はない。また、登録原簿上、本件商標について専用使用権者及び通常使用権者は登録されていない。
したがって、本件商標は、上記役務について、商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれによっても本件審判請求前3年間わが国において使用されていないから、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁の理由の要旨
(ア)被請求人が、答弁書と共に提出した乙各号証は、「登録商標の使用をしていることを証明」(商標法第50条第2項)していない。
(イ)役務に係る「商標」とは、「業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用する標章」と法上定義されている(商標法第2条第1項第2号)。
また、商標法は、「役務」の定義を設けていないが、商標法上の「役務」とは、「他人のためにする労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきもの」と解されている(甲第1号証)。
上記「役務」が、上述のように「他人のためにされるもので商取引の目的とされるもの」であることは、ニース協定の国際分類の役務類別アルファベット順一覧表中の第42類中で「研究開発(Research and development)」に関して、「受託による研究開発(Research and development for others)」と記載されている(甲第2号証)ことからも明らかである。
また、上述した「役務」(他人のためにされるもので商取引の目的とされるもの)以外のものに標章が使用されても、その標章は自他サービス識別機能を果たし得ず、それ故、商標の(使用の)本質を欠くということになるから、商標法上、「役務」は上述のように解されるのが妥当である、とも言える(甲第1号証)。
(ウ)翻って、本件を考察するに、答弁書によれば、「被請求人(商標権者)であるピアス株式会社の社内に設置する部門である「ARI」(部署)が、主として化粧品の研究の段階で、その安全性の評価‘業務’を実施している(乙第1号証)。」ということである。しかしながら、上記社内部門(部署)によって提供される上記‘業務’は、被請求人と同一事業(企業)体「ピアスグループ」に属し、しかもその事業体の「生産」部門(事業部)にすぎない(乙第1号証)「エルソルプロダクツ株式会社」(以下「エルソル社」という。)に提供される(乙第2号証)‘業務’であるから、上記「役務」(他人のためにされるもので商取引の目的とされるもの)とは言えない。したがって、この‘業務’での本件標章の使用(乙各号証)は、「(登録)商標の使用」(商標法第50条第2項)とは言えない。
本件に類似する事例として、先例審決において、フランチャイジィーとの取引に関連して、「これらの取引が通常の商品の如く広く不特定多数を対象にした取引ではなく、限られた関係者の特異な取引であることからしても、本件商標が使用されていたものと言うことはできない。」と判断されている(甲第3号証)。
(a)先ず、「上記社内部門(部署)によって提供される上記‘業務’」を検討するに、この部門(部署)(A.R.I.)については、乙第1号証によれば、「−−−。その化粧品がカブレにならないことは不可欠です。研究と開発の段階で、その安全性の評価という役割を担っているのが『ARI』。製品に使われる原料個々の安全評価や配合量の検討、全体的な安全性レベルの向上に努めています。−−−」と説明があるが、ここで説明されている「製品(化粧品)」とは、同号証の記載内容も斟酌しても、ピアスグループの自社製品(ピアス製品)のことである。従って、上記部門(部署)(A.R.I.)によって行われている、製品の安全評価等の‘業務’は、上記「役務」(他人のためにされるもので商取引の目的とされるもの)とは言えない。
従って、乙第3号証の1の外箱の表示された「技術供与 ARI/ARIは、化粧品の安全性の向上のため、皮膚科学研究に基づき、技術指導を行う機関です。」の機関は、ピアスグループ事業体内における自己製品の品質管理部のような存在であると考えられる。
(b)次に、被請求人(商標権者)であるピアス株式会社と、その上記部門(部署)の‘業務’の提供先とされる(乙第2号証)エルソル社の関係について検討するに、両社は、同じ事業(企業)体「ピアスグループ」に属し、前者が、同事業体の事業を「統括」する本部であり(乙第1号証)、また、後者も、同事業体の(ピアスグループ)製品の生産を担う製品供給部門である(乙第1号証)。ちなみに、後者の会社の住所(乙第3号証の1)は、上記事業体ピアスグループの工場の1つである「掛川工場」の住所《静岡県掛川市淡陽8》と同じである(乙第1号証)。また、人的組織にしても、両社の社長(代表取締役)は同一であり、また、両社の役員もほとんどが重複している(甲第4号証の1及び2)。
さらに、ピアスグループのHPによれば、上記後者のエルソル社の位置付けは、「ピアスグループ掛川事業所」(甲第5号証及び乙第1号証)にすぎない。また、同HP中の記載にも、「エルソルプロダクツでは、基礎化粧品からメイクアップまで、ピアスグループの全ブランドの化粧品を製造しています。」とあり(甲第5号証)、これによっても、エルソル社が、上記事業体ピアスグループの生産部門にすぎないことが明らかである。
従って、ピアス株式会社の上記社内部門(部署)によって「エルソル社」に提供される上記(乙第2号証)‘業務’は、上記「役務」(他人のためにされるもので商取引の目的とされるもの)とは言えない。したがって、この‘業務’での本件標章の使用(甲各号証)は、「商標の使用」(商標法第50条第2項)とは言えない。
ちなみに、答弁書及び乙第3号証の3の中で示される「中央物流センター」もピアスグループの施設にすぎない(乙第1号証)。また、同様に、答弁書及び乙第3号証の1及び2で示される「オリリー株式会社」(ピアス株式会社と同住所)も上記ピアスグループ内の事業体(部)(乙第3号証の2)にすぎない(乙第1号証)。
(エ)また、本件標章を上記‘業務’に使用しても、その標章は、自他サービス識別機能を果たすものではなく、商標の(使用の)本質を欠くと言う意味においても、上記‘業務’での本件標章の使用は、「商標の使用」(商標法第50条第2項)とは言えない。
(オ)以上述べた通り、被請求人は、「登録商標の使用をしていることを証明」(商標法第50条第2項)していない。
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第3号証(枝番号を含む。)を提出した。
被請求人であるピアス株式会社は、乙第1号証である会社案内に記載されるとおり、その社内にARI(アレルゲンリサーチ インスティチュート)という部門を設置し、主として化粧品の研究と開発の段階で、その安全性の評価業務を実施している。
乙第2号証は、そのARIが、化粧品の製造会社であるエルソル社開発部に対して平成18年2月7日に提出した「試作品の安全性試験 結果報告書」の写しであり、ARIの上記業務の実施を示す資料の一部である。
乙第3号証−1は、上記エルソル社が製造販売する化粧液「オリリー ミルキィ エッセンスローションEX」の外箱である。その表示に「技術供与 ARI ARIは、化粧品の安全性の向上のため、皮膚科学研究に基づき、技術指導を行う機関です。」との表示がある。
乙第3号証−2は、発売元であるオリリー株式会社が、平成18年12月13日にエルソル社に上記化粧液「オリリー ミルキィ エッセンスローションEX」(製品記号OMELZ)を発注した新製品生産発注書の写しである。
乙第3号証−3は、上記化粧液の中央物流センターへの入庫実績を示す「入庫実績照会」のデータの一部である。
よって、本件審判請求の予告登録3年以内において、被請求人が本件商標を請求に係わる指定役務について使用していることは明白である。
(1)被請求人の提出に係る証拠についてみれば、以下の事実が認められる。
(ア)乙第1号証は、ピアスグループの会社案内と認められるところ、該会社案内によれば、「研究・開発部門」の項には、「新素材や新技術の開発など。ピアスグループをサイエンスの部分から支えています。」と記載されており、該部門の一つとして、A.R.I.(アレルゲンリサーチ インスティテュート)が設置され、該A.R.I.では主として化粧品の研究と開発の段階で、その安全性の評価という役割を担っていると紹介されている。
また、該証拠によれば、「生産・物流」の項には、エルソル社という部門が設置され、ピアスグループ製品の生産を担う製品供給部門と紹介されている。
さらに、該証拠には、ピアスグループ概要として、「統括会社」、「創業」等の項目と共に「従業員合計:1,800名(2005.4.1現在グループ計)」及び「総売上高:387億円(2004年度グループ計)」と記載されていることから、該証拠は、少なくも、本件審判の請求の登録(平成19年5月22日)前3年以内に作成されたものと認められる。
そして、乙第2号証は、「試作品の安全性試験 結果報告書」であって、前記A.R.I.と同視し得る「ARI」がエルソル社に対して平成18年2月7日に提出したものと認められる。
(イ)乙第3号証−1は、前記エルソル社が製造販売する化粧液の外箱、乙第3号証−2は、発売元であるオリリー株式会社が、エルソル社に該化粧液を発注した新製品生産発注書とそれぞれ認められるところ、該外箱には、「技術供与 ARI」及び「ARIは、化粧品の安全性の向上のため、皮膚科学研究に基づき、技術指導を行う機関です。」との表示があり、また、該発注書には、2006年12月13日にエルソル社に前記商品を発注したことが認められる。
(2)被請求人の研究・開発部門であるアレルゲンリサーチ インスティテュートの使用に係る商標及び使用役務について
前記「A.R.I.」及び「ARI」は、被請求人の研究・開発部門の一つであるアレルゲンリサーチ インスティテュートの略称と認められ、該文字部分は、該アレルゲンリサーチ インスティテュートの使用に係る商標といえるものであって、これは本件商標と社会通念上同一と認められる商標ということができる。
そして、前記A.R.I.(アレルゲンリサーチ インスティテュート)によって提供される役務は、前記したとおり、化粧品の研究と開発の段階で、その安全性の評価という役割を担っているといえるものであるから、該役務は、本件商標の指定役務である「医薬品・化粧品又は食品の試験・又は研究」の範疇に属する役務であるといわなければならない。
(3)以上の認定事実を総合すると、被請求人の研究・開発部門であるA.R.I.(アレルゲンリサーチ インスティテュート)による商標の使用は、商標権者の商標の使用といえるものであり、本件審判の請求の登録(平成19年5月22日)前3年以内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件商標の指定役務に含まれる前記役務について使用をしていたことを被請求人が証明したものと認めることができる。
(4)請求人は、社内部門(部署)によって提供される‘業務’は、被請求人と同一事業(企業)体「ピアスグループ」に属し、しかもその事業体の「生産」部門(事業部)にすぎないエルソル社に提供される‘業務’であるから、「役務」(他人のためにされるもので商取引の目的とされるもの)とは言えない旨主張している。
しかしながら、A.R.I.(アレルゲンリサーチ インスティテュート)は、被請求人の研究・開発部門の一つにすぎないのに対し、エルソル社は「ピアスグループ」に属するとしても、ピアスグループ製品の生産を担っている別個の法人として存在し、被請求人と独立して取引にあたっているものとみるのが相当である。
そうとすると、被請求人の研究・開発部門のA.R.I.によって、エルソル社へ提供された役務は、「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきもの」というべきであるから、この点に関する請求人の主張は採用することはできない。
(5)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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