Trademark Appeal Case
癒しの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2004−9936(T2004−9936/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「癒し」の文字を書してなり、願書記載の第3類に属する商品を指定商品として、平成15年4月11日に登録出願されたものである。
その後、願書記載の指定商品については、平成16年2月2日付け手続補正書をもって、第3類「せっけん類,化粧品」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶理由の要点
原査定は、「本願商標は、『癒し』の文字を表してなるところ、『広辞苑第五版』の『癒す』の項によれば、『病気や傷をなおす。飢えや心の悩みなどを解消する。』の意味を有し、近年の癒しブームに乗り、『癒し系コスメ』等、癒し(ヒーリング)効果があることをセールスポイントとする商品が様々な分野の市場において流通し、いわゆる『癒し系』グッズとして現代人の人気を得ているところである。そうすると、本願商標を、その指定商品中、例えば『癒し効果を有する化粧品』について使用するときは、単に商品の品質, 効能を表示したものと理解されるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たさないものと判断する。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審における証拠調べ通知(要旨)
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、以下の事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づく通知を行った。
(1)「癒し」の語が一般的な辞書類に掲載されている事実
(ア)「新明解国語辞典第六版」(三省堂)98頁
「いやし【癒し】」・・・「精神的な不安やいらだちなどをしずめて、平安な気分にさせること。ヒーリング。」との記載
(イ)「学研現代新国語辞典改訂第三版(学習研究社)96頁
「いやし【癒し】」・・・「悩み・苦しみ・緊張などをやわらげ、なおす・こと(もの)。ヒーリング。」との記載
(ウ)「現代国語例解辞典第四版」(小学館)92頁
「いやし【癒やし】」・・・「病気や苦痛、特に心の悩み、不安などをなおしたりやわらげたりすること。『いやしの香り』『いやし系[=心をなごませてくれるような人や物]』」との記載
(エ)「現代用語の基礎知識2002」(自由国民社)414頁
「癒し系市場[healing market]」・・・「人間の精神的安定に役立つことを切り口としてまとめられた市場。書籍、音楽、絵画、映像、マッサージ、飲料、食物、衣類など日常生活の多くの分野において人々の心を和ませることを目的に開発された商品の発売が進んでいる。現代人が日々の生活から感じとるストレスは、不況や社会不安などの増長により継続的に増加している。」との記載
(2)本願指定商品「せっけん類,化粧品」との関係において、「癒し」の語が商品の品質(効果)等を表す語として普通に用いられている事実を示す新聞記事及びインターネット情報
(ア)「日刊工業新聞」(2004.02.20 26頁)
「セブンと資生堂など、女性用『癒し系ボディケア用品』を共同開発」の見出しの下に、「セブン−イレブン・ジャパンと資生堂、生活雑貨用品メーカーのマーナは共同で、ボディケア化粧品のセット『プチスパ』3品目(各780円)を開発、25日から順次全国のセブン−イレブンで発売すると19日発表した。・・・女性向け商品市場でリラックスや癒(いや)しに対するニーズが高まっていることに対応した。」との記事
(イ)「日本工業新聞」(2003.01.23 12頁)
「カネボウが新香料を開発 癒しと美白効果両立」の見出しの下に、「カネボウは・・・また、美白効果に加え不安な気持ちを鎮める香りを持つ天然精油、ゼラニウムなどを配合することで、リラックス効果がありメラニン生成抑制にも優れた『ホワイトアロマコンパウンド』を開発した。」との記事
(ウ)「化学工業日報」(2001.01.23 4頁)
「資生堂、化粧品グローバルブランド戦略を強化、CPBの販路拡大など」の見出しの下に、「資生堂は、・・・昨年、初の海外展開となる米国で成功を収めており、世界規模で根強い癒しニーズに対応して二ケタ成長を維持したい考え。」との記事
(エ)「産経新聞」(2001.01.06 東京朝刊 23頁)
「【とれんど玉手箱】コスメ 癒しの香水」の見出しの下に、「香水の世界にも“いやし”系が登場した。資生堂(0120・81・4710)の『ZEN』は、α波を増加させる緑油伽羅や静寂感のある杉苔、孟宗竹などの香りを練り込んだヒーリング効果の高い香水。」との記事
(オ)「Pharmaweek」(2000.12.18 12頁)
「<特集>『Pharmaweekが選ぶ2000年ビッグニュース』」の見出しの下、「【13位】癒し系商品がヒット」の小見出しの下に、「今年も引き続いて癒しブームが目立った。『癒し』を謳う商品・・・がさまざまな小売店で販売され、生活必需品のように定着した。・・・疲労やストレスの癒し願望や積極的な健康志向の高まりに『癒し市場』の広がりは今後も続きそうだ。」との記事
(カ)「日経流通新聞」(2000/11/14 17頁)
「広がる「癒し市場」――『体に元気を』積極性も(びゅうPOINT)」の見出し下に、「街を歩いていると、『癒(いや)し・リラックス』などをテーマにした商品やサービスが急激に増えている。・・・化粧品や飲料などでも、『癒し・リラックス』効果をうたったものが出てきている。」との記事
(キ)「日経流通新聞」(1997/07/26 1頁)
「スリミング化粧品比較――資生堂、総合力を発揮、鐘紡・コーセー、成分や香りで特色」の見出しの下に、「・・・コーセーは『セルフコンシャス』シリーズを二月に発売。・・・同シリーズは、最近話題の『アロマテラピー(香りで心身の癒しを得る)』に着目し、香りの効果を積極的に取り入れた。」との記事
(ク)「【楽天市場】アライト(癒しのアロマテラピー)」(http://www.rakuten.co.jp/a-light/)の見出しの下、「練り香水 ・ ジャスミン」(http://www.rakuten.co.jp/a-light/617019/742705/#jasmine)の小見出しの下に、「星のような形をした白や黄色のジャスミンの花は、日が暮れるとより濃厚に香るため、インドでは『夜の女王』と呼ばれています。気持ちを暖かく癒してくれる香りです。」との記載
(ケ)「ESS モイスチュアクレンジングミルク」(http://www.papawash.co.jp/product/2835.php3)の詳細欄内の「心まで癒されるアロマ効果」の小見出しの下に、「フローラル調のやさしい香りが心地よく広がり、肌と心を癒します。」との記載
(コ)「延寿石鹸(えんじゅせっけん)」(http://www.tree32.com/forest/spring/spring2.html)の「お肌を守る天然植物成分」の見出しの下に、「『延寿石鹸』にはシコン(紫根)ほか、お肌を守る貴重な天然植物成分が入っています。・・・チンピ 香りがよく、心身を癒してくれます。」との記載
(サ)「株式会社ノーリツ」のサイトの「News Release」(http://www.noritz.co.jp/about/ir/2007file/pdf_070706.pdf)の「・・『ケモタイプエッセンシャルオイル』8種使用の『高品質透明洗顔石けん』新発売〜洗顔するたびに癒しまで感じる極上の洗顔料〜」の見出しの下に、「香りは、『洗顔した後にホッとする』など『洗顔で癒し』を感じるため、花の女王ともいえるローズの重厚かつ濃厚な香りをベースとして、針葉樹やハーブのスイートかつバルサミックな香りが加わっています。癒しの香りを作り出すために使用した8種類のエッセンシャルオイル・・・は、すべて天然成分100%の高品質なオイルで、これらのエッセンシャルオイルは香りだけでなく、健やかな素肌を保つ働きも期待できます。」との記載
4 職権証拠調べに対する意見(要旨)
請求人(出願人)は、上記証拠調べ通知に対して、「過去に、『癒し』をはじめ、『ヒーリング』『リラッス』『アロマ』『〜テラピー』の商標が各類別で多数登録されている。これらの事実に示されていることからすれば、特許庁審査基準に明記してあるように、品質、効能、用途を間接的に表示する商標は、商標法第3条第1項第3号にも、商標法第4条第1項第16号にも該当しないものとされたことを明確に示している。」旨述べている。
5 当審の判断
(1)本願商標は、「癒し」の文字よりなるところ、「癒し(いやし)」の文字は、前記第3の各辞典によれば、「精神的な不安やいらだちなどをしずめて、平安な気分にさせること。ヒーリング。」等の意味合いを表した語と理解されるものである。
そして、本願の指定商品を取り扱う業界において、香りによって気持ちを鎮静化し、リラックスさせる効果があることを謳った化粧品やせっけんが、多数製造・販売されている実情があることからすると、「癒し」の文字が、「不安な気持ちや疲労を鎮め、ストレスを解消する成分や香りを配合したもの」等、商品が有する効能を表す語として一般的に使用されていることは、上記第3の証拠調べ通知のとおりである。
そうすると、本願商標を、その指定商品中、例えば「精神的な不安やいらだちなどを鎮める香りや成分を配合した化粧品」について使用した場合、前記第3で認定した実情よりすれば、これに接する取引者・需要者は、上記意味合いをもって、単に商品の品質、効能を表したものと理解するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を発揮する商標を表したものとは認識し得ないというのが相当である。
(2)請求人は、過去の登録例を挙げ、「これらの事実に示されていることからすれば、特許庁審査基準に明記してあるように、品質、効能、用途を間接的に表示する商標は、商標法第3条第1項第3号にも、商標法第4条第1項第16号にも該当しない」旨主張している。
しかしながら、癒しの効能(香りによって気持ちを鎮静化し、リラックスさせる効果)を謳った商品が、実際に市場に多数出回っている実情よりすれば、本願商標は、前記認定のとおり、単に商品の品質、効能を表示したにすぎないものと判断するのが相当であって、請求人のこの主張は採用することができない。
(3)以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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