結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第35646号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第3368418号商標(以下、「本件商標」という。)は、下記(1)に表示したとおりの構成よりなり、平成6年8月23日登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同10年1月16日に設定登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第45256号商標(以下、「引用A商標」という。)は、下記(2)に表示したとおりの構成よりなり、明治44年2月15日登録出願、第38類「清酒」を指定商品として、同44年3月23日に設定登録され、その後、5回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。同じく、登録第380356号商標(以下、「引用B商標」という。)は、下記(3)に表示したとおりの構成よりなり、昭和23年7月7日登録出願、第38類「清酒」を指定商品として、同24年12月20日に設定登録され、その後、4回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。同じく、登録第1010683号商標(以下、「引用C商標」という。)は、下記(4)に表示したとおりの構成よりなり、昭和45年11月20日登録出願、第28類「清酒」を指定商品として、同48年4月26日に設定登録され、その後、2回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第9号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)商標法第4条第1項第11号について
イ.本件商標と引用A商標及び同B商標の各文字部分並びに同C商標とでは、冒頭に「筑後の国」という言葉が付されているか否かの差異はある。
しかし、この「筑後の国」という言葉は、現在の福岡県南部の地域を示す旧国名(甲第5号証)であるから地名であり、「筑後の国」という言葉は、単に指定商品について産地や販売地を表示するにすぎないもので要部とはならず、自他商品の識別性を持たない部分である。
そうとすると、自ずと取引の実際や経験則に徴するまでもなく、本件商標に接する取引者、需要者は、産地、販売地の観念「筑後の国」と相俟って、「筑後の国」を棄捨して、親しみやすく強く印象づけられる「寒梅」の部分を摘出するという取捨選択により、「寒梅」の文字より生ずる称呼、観念をもって取引に資することは明らかであるから、本件商標と引用A商標、引用B商標及び引用C商標(以下、「引用各商標」という。)とは、称呼及び観念において同一又は類似する商標に該当する。
ロ.本件商標と同じく「『旧国名』プラス『寒梅』」の商標である「尾張の寒梅」の登録無効審判事件についての審決(甲第6号証の1及び同第6号証の2)において、特許庁も「尾張の寒梅」が、引用各商標に類似し、商標法第4条第1項第11号、同法第46条第1項に該当するとしている。
また、現実に取引者、需要者に該当する酒小売店が、本件商標と極めて類似する「筑後の寒梅」という商標を付した紙パック入りの被請求人の清酒を「筑後の寒梅」としてではなく、「筑後の」を省いて「寒梅(パック)」として販売している事実も存在する(甲第7号証及び同第8号証)。
上記の審決先例である「尾張の寒梅」と本件商標とでは「国」の語の有無という差異があるが、「雪中梅(甘露)」と「出雲国雪中梅」とは類似する旨の審決がある(甲第9号証)ことからして、この差異のために異なる結論に至るものとは考えられない。
ハ.よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
イ.請求人の所有に係る商標「寒梅」は、全国的に知られており、本件商標の如く「筑後の国」の文字を「寒梅」の文字の頭に冠して被請求人が酒類「筑後の国寒梅」を販売するとなれば、斯かる商品につき、取引者、需要者間においてその商品の出所について混乱を生じ、他人たる請求人の業務に係る商品である清酒「寒梅」と混同を生ずるおそれのあることは必至である。
ロ.現実にも、被請求人の紙パック入りの「筑後の寒梅」という商品が、「筑後の寒梅」としてではなく、「寒梅(パック)」として販売に供されていて、あたかも請求人の商品であるかの如く取り扱われている事実が存在している(甲第7号証及び同第8号証)。
ハ.よって、仮に本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当しないと仮定したにせよ、本件商標は、同法第4条第1項第15号に該当する。
(3)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁して、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至同第6号証を提出している。
(2)商標法第4条第1項第11号について
イ.本件商標の構成中、「筑後の国」の文字が旧国名を表すことは事実として認められるものの、それが地名として認識されたとしても、直ちに地名が産地、販売地を表示するものとして省略され、地名以外の部分が自他商品識別標識として取引に資されることは、以下の理由によりないものである。
まず、「筑後の国」が指定商品である「酒類」やその原料である「米」の産地、販売地としてよく知られているという事実はなく、請求人も何らそのことについては立証していない。
加えて、清酒が地域性の強い商品といった性質からすると、使用される商標中に地名が含まれている場合、当該地で生産された商品であることをある程度暗示させることはあるとしても、当該地名を直ちに産地等の表示と理解せず、むしろ、地名と結合された他の語とを一体のものとして把握し、全体として自他商品の識別標識として認識する場合が多い。
ロ.次に、請求人は、本件商標が「寒梅」の文字をもって取引される可能性がある証拠として、「『旧国名』プラス『寒梅』」の商標である「尾張の寒梅」の登録無効審判事件についての審決(甲第6号証の2)を挙げているが、この審決理由を精査してみると、本件商標とは構成が類似するものであっても、必ずしも事案を同じくするものとはいい得ず(東京高等裁判所での審決取消訴訟の裁判において、被告が欠席状態で判決されたものであり、また、登録無効審判で被請求人が何ら答弁せずに審理されたものであって、職権探知しても自ずから限界があるためである。)、この証拠は本件商標について採用するに値しない。
また、「雪中梅(甘露)」と「出雲国雪中梅」の審決(甲第9号証)を挙げているが、請求人が主張する「単に商標構成中の地名を除いたことのみで商標を類似と判断した」ものではなく、その対象となった商標の外観、称呼、観念並びに指定商品の種類や性格、商品の産地や取引の実情を総合的に判断しているのであって、請求人の主張の内容と異なるものである。
このことは、指定商品「酒類」において、本件商標と同じく語頭に地名を付した商標とその地名を除いた商標の審決例(乙第1号証)、また、本件と指定商品を異にするにしても、本件と同様に一般需要者を対象とした商品を指定商品とした商標の審決例(乙第2号証乃至同第4号証)等からも明らかなように、「『地名』プラス『ある言葉』」の構成であっても、商標の外観、称呼及び観念から商標全体をもって類否判断がなされ、さらに、商品の産地や取引の実情等は商品との関係において商品毎に総合的に判断されているのであって、「地名」部分があるからといって画一的にその部分が識別力をもたず、棄捨されるとはいえない。
甲第7号証及び同第8号証については、被請求人の清酒「筑後の寒梅」が「寒梅パック」と表示・広告され、販売されていることが事実であっても、それが直ちに本件商標から「筑後の国」を棄捨して、「カンバイ」(寒梅)の称呼、観念をもって取引されていることには当たらず、表示欄が狭いとか、「パック入り」を強調し顧客の眼を引くために表示されたものとみるのが相当で、現にパックには「筑後の寒梅」と商標が大きく表示されている事実からも明らかであり、本件について証拠として採用するに値しない。
また、特に本件指定商品の性質からすれば、一般に原料水や米の産地により味や品質が異なるものと認識されているため、取引者や需要者は、その味や品質等を吟味し、産地を目安とし、商品購入の判断材料としているのが相当であり、その際、商品のラベル(商標)とを合わせて商品を識別し、商品を購入していると見るほうが自然である。加えて、地域性の強い商品といった性質をもつからこそ、清酒の名称に地名が含まれている場合には、取引者、需要者は地名にも充分に着目すると考えられる。そうとすれば、この場合「『地名』プラス『ある言葉』」の構成をとることで、「地名」の部分も自他商品の識別機能を果たしているものと認められ、商標を地名も含めて一体と把握し、一ブランド(商標)として認識されるのが常である。
したがって、このような取引の実情からすれば、本件商標が「筑後の国寒梅」と認識され、商標「寒梅」とは別異の商品として取引されていることは明らかである。
ハ.以上の点をふまえて、本件商標と引用各商標の類否性について判断した場合、両者は、その称呼、観念及び外観のいずれの点においても非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
イ.請求人は、「請求人の所有に係る『寒梅』は、全国的に知られている。」と著名性を主張するが、本件商標の登録出願日である平成6年8月23日以前に著名であることを立証する具体的な証拠、例えば、引用各商標を使用する商品の年間製造量、年間売上高、販売経路、販売地域やテレビコマーシャル等各種媒体を使用した営業努力の資料等を何ら提示していない。
したがって、需要者等が混同を生じる程度のものか不明である。
ロ.また、請求人が挙げる甲第7号証及び同第8号証についても、被請求人の清酒「筑後の寒梅」が「寒梅パック」と表示・広告され、販売されていることが事実であっても、本件商標から「筑後の国」を棄捨して、「カンバイ」(寒梅)の称呼、観念をもって取引され、混同を生じていることを立証するものではない。また、「寒梅パック」が、請求人の業務に係る商品である清酒「寒梅」として、取り扱われている事実も立証されていない。
ハ.そして、引用商標が、商品「清酒」について、需要者等に広く認識されているとしても、本件商標は引用商標と非類似の別異の商標である以上、これをその指定商品に使用しても、引用商標を想起ないし連想させるものとは認めがたく、商品の出所について混同を生ずるおそれはない。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当しないものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
(1)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するか否かについて
本件商標及び引用各商標の構成は、それぞれ別紙(1)乃至同(4)に表すとおりであるから、外観上は明らかに区別し得る差異を有するものである。
次に、これを称呼、観念よりみるに、本件商標は、前記したとおり、「筑後の国寒梅」の文字を書してなるところ、該構成文字は、同書、同大、等間隔にまとまりよく一連に書してなるものである。そして、商品「日本酒」については、一般に原料米の産地により味や品質が異なるため、その名称(商標)の一部に産地名を用い、他の部分を含めた全体で自他商品識別機能を果たしているのが実情であるから、本件商標中の「筑後」の文字部分が、旧国名を表すものであるとしても、かかる構成においては、構成中の「寒梅」の文字部分のみが独立して自他商品の識別機能を果たすものとはいえず、全体をもって一体不可分のものと認識し、把握されるものとみるのが相当である。
してみると、本件商標よりは、その構成文字に相応して「チクゴノクニカンバイ」(筑後の国において寒中に咲く梅)の一連の称呼、観念のみを生じさせるものといわなければならない。
他方、引用各商標は、いずれもその構成中に「寒梅」の文字を顕著に表してなるものであるから、これに接する取引者、需要者は、該文字部分より生ずる「カンバイ」(寒中に咲く梅)の称呼、観念をもって取引に当たるものというのが相当である。
したがって、引用各商標よりは、構成中の「寒梅」の文字より、「カンバイ」(寒中に咲く梅)の称呼、観念を生じさせるものである。
そこで、本件商標より生ずる「チクゴノクニカンバイ」の称呼と、引用各商標より生ずる「カンバイ」の称呼とを比較するに、両称呼は、その構成音数を著しく異にするものであるから、称呼上相紛れるおそれのないものである。
さらに、本件商標よりは、「筑後の国において寒中に咲く梅」の観念を、また、引用各商標よりは、「寒中に咲く梅」の観念を生じさせるものであるから、両者は、観念においても明らかに相違するものである。
してみれば、本件商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標といわざるを得ない。
また、請求人は、「旧国名」と他の文字より構成される商標に関する審決例(甲第6号証の2、甲第9号証)を挙げて、本件商標も引用各商標に類似し、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである旨主張しているが、本件と前記審決例とは事案を異にするものであるから、請求人のこの点に関する主張は認め難い。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて
本件商標は、全体で一体不可分のものとして認識し、把握されるものであって、その構成中の「寒梅」の文字部分のみが独立して認識される商標とは認められず、引用各商標とは別異の商標であること前記したとおりである。
してみれば、被請求人が、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、請求人或いは同人と何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものといえる。
また、請求人は、引用各商標が、本件商標の登録出願の時(平成6年8月23日)に既に取引者、需要者間に広く認識されるに至っていたことを立証すべき具体的な証拠、例えば、引用各商標の使用開始時期、期間及び地域等、並びに、これを使用する商品「清酒」の生産量、売上高及び販売地域等、さらに、広告宣伝の方法、回数及び内容を何ら提示していない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反して登録されたものということができないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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