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Trademark Appeal Case

普通名称の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2007−890187(T2007−890187/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第4963711号の指定商品中「トレーディングカードゲーム」についての登録を無効とする。
その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4963711号商標(以下「本件商標」という。)は、「スターターボックス」及び「STARTER BOX」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成17年12月1日に登録出願され、第28類「遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。),愛玩動物用おもちゃ,おもちゃ,人形,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具,昆虫採集用具」を指定商品として平成18年6月23日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張の要点

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判請求費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第38号証(枝番を含む。)を提出している。

(1)利害関係

請求人が業務を行っているカードゲームの業界では、「スターターボックス」の語は「ゲームをスタートさせるときに必要なものが入っている箱(セット)」を意味する語として多用されている。したがって、業界における取引者・需要者にとっては何人であっても使用する必要のある、識別力のない語であると考えられる。被請求人とは同業である請求人が、本件商標の語をカードゲームに使用する場合に、たとえ形式的であっても被請求人の商標権の侵害に該当することになる、又はその可能性が残ることは、妥当とは考えられない。

この点で、請求人は本件審判を請求することにつき利害関係を有していると考えられる。

(2)請求の根拠

本件商標は、その指定商品「トレーディングカードゲーム」との関係では商標法第3条第1項第1号及び第3号の規定に違反して登録されたものであり、「トレーディングカードゲーム」以外の指定商品については同法第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものと考えられるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべきものである。

(3)本件審判請求の経緯

請求人は、本件商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当することを理由として、平成18年9月25日に商標登録異議申立てを行ったところ、この異議申立てについては、平成19年2月21日付けで「本件商標の商標登録を維持する」旨の異議の決定がなされたが、請求人はこの決定に不服であるため、本件商標登録の無効を求めて、本件審判を請求したものである。

(4)トレーディングカードゲームについて

本件商標は、指定商品の中の特定の商品「トレーディングカードゲーム」についての普通名称、あるいは内容表示用語をそのまま商標として採用し、登録を受けたものと考えられる。ここで、「トレーディングカードゲーム」についての解説を紹介すると、インターネットウェブサイト「ウィキペディア」によれば、指定商品として包含されている商品の中にある「トレーディングカードゲーム」とは、「トレーディングカードとして販売されている専用のカードを用いて行うカードゲーム」のことと定義されている(甲第3号証の1)。

先の商標登録異議申立理由補充書でも同「ウィキペディア」を引用しているが、その中で「トレーディングカードの販売形態には主に『スターターパック』と『拡張パック(ブースターパック)』がある。スターターパックは、『未経験者が一番最初に買うことを想定しているセット』をいう。『ある程度の枚数のカードが含まれており、1または2つ買えばすぐにゲームを遊べるようになっている。たいていの場合、40〜100枚のカードが入っており、初心者のためにルールブックやゲームに必要な小道具が同梱されている。』・・・一方、この追加販売されるカードのセットを『拡張パック(ブースターパック)』といい、『ゲームに慣れ、より面白いプレイを求めるプレイヤーが購入することを想定したセット』をいう。」と詳解されている。

本件商標は、上記の「スターターパック」と呼ばれているトレーディングカードゲームを、その指定商品の一つとして登録されているものである。

(5)本件商標の商標法第3条第1項第1号該当性について

(ア)商標法第3条第1項第1号は、商品等の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、登録を受けることができない旨を規定している。ここで普通名称とは、「その商品等の一般的な名称であると意識されるに至っているもの」と定義されている。「取引界において特定の業務に係る商品又は役務であることが意識されないようになった名称をその商品又は役務について使っても出所表示機能あるいは自他商品又は自他役務の識別力がないことは明らかである」と評価される性質のものである。一般消費者が特定の名称を商品等の一般的な名称であると意識したとしても普通名称と判断されるものではなく、特定の業界内において普通名称と認識されていることが必要であると考えられる(以上の点について:特許庁編「工業所有権法逐条解説第16版」1052頁)。

(イ)本件商標の指定商品の一つである「トレーディングカードゲーム」の属する業界では、「スターターボックス」、「スターターパック」の他、「スターターキット」や「スターターセット」の語が、「初心者のためにルールブックやゲームに必要な小道具が同梱されている」容器又は箱体の名称として、普通に用いられている。これらの語をインターネット検索サイト「Google」で検索すると、本件商標「スターターボックス」の語は約16,100件、そのほか、「スターターパック」の語は約31,100件、「スターターキット」の語は約10,600件、「スターターセット」の語は約39,700件、検索される(甲第3号証の2)。この検索結果から判断すると、いずれの語も、業界内において、本件の指定商品となっている「トレーディングカードゲーム」について、一般的な名称であると認識されているものと考えられる。また、業界内でこれらの語をトレーディングカードゲームの普通名称として、識別力のない態様で使用していることから、本件商標に接した需要者等も「初心者のため」という特定の種類のトレーディングカードゲームの普通名称であると認識するものと考えられる。

(ウ)商品の普通名称は、必ずしも一種類に限られるものではなく、業界内において一般的な名称と認識されている語であれば、いずれの語も普通名称であると考えられる。この点は、「商標〔第4版〕(網野誠著)」の194頁において、「商品の普通名称とは、一地方において、一定の商品について需要者・業者間内に使用されている称呼であればよく、すべての需要者・取引者間において共通のものであることを要しない」とされていることからも明らかである(甲第3号証の3)。すなわち、全国的に統一した一つの名称だけが普通名称となるものではなく、特定の取引業者の中においてその商品の一般的な名称であると認識されている語は、いずれの語も、その商品の普通名称であると考えられる。「緩衝乳酸」、「カンショウ乳酸」に関する裁判例においても「ph調整剤」について、「普通名称が一つに限られるということはない」と明確に判断している(甲第3号証の4:東京高裁平成13年(行ケ)第258号)。

以上の点を総合考慮すると、「トレーディングカード」の属する業界では、「スターターボックス」、「スターターパック」、「スターターキット」、「スターターセット」のいずれの語も、トレーディングカードの「スターター」(カードの入った箱体)の普通名称と認識されていると考えられる。

したがって、本件商標は、普通名称の一つとして世間に通用している用語にすぎず、本件商標は、商標法第3条第1項第1号に該当するものである。

(6)本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性について

ア 親しまれた語であること

(ア)本件商標の構成中の「スターター/STARTER」の文字は「始める人、初心者、開始者、スタート係、スタートさせる機械、スタート用具」等の意味を有する平易な英単語である。また、我国の英語の習熟度を考慮すると、日本語に訳さずにそのまま「スターター」で意味が通用しているとも考えられる。ちなみに、陸上競技の号砲を発射する係りの名称は、日本語でもそのまま「スターター」と表現されて通用している。したがって、「スターター」の意味は老若男女を問わず理解可能な程に親しまれている、もはや完全に日本語化した英語と評価できると考えられる。

(イ)本件商標の構成中の「ボックス/BOX」の文字は、通常「箱」の意味で、極めて親しまれている安易な英単語である。「STARTER」同様、我国では日本語に訳さずに、そのまま日本語として「ボックス」で意味が通用している。

(ウ)これらの平易な語を結合した本件商標は、たとえ熟語としての辞書的な語義がなかったとしても、一連の語として「初心者が一番初めに買うことを想定しているセット」、「初心者が手始めに使うものが入っている箱」又は「開始用品の入れられた箱体」等の意味合いを簡易に看取できる親しまれた語のつながりであると考えられる。

イ 具体的に商品の品質・内容等を特定する語であること

(ア)本件商標「スターターボックス/STARTER BOX」を直訳すれば、「開始/最初の箱」、「入門用の箱」のような意味合いが生じると考えられる。指定商品「トレーディングカードゲーム」が商品であることを考慮すれば、「初心者が初めに買うことを想定している箱・セット」、「初心者が手始めに使うものが入っている箱・セット」等の意味合いを容易に認識することができる。これは指定商品「トレーディングカードゲーム」自体を暗示的に表示するものではなく、「トレーディングカード」に使用する最初の必要品の取り揃えられている用具を表示する単語で、直接的・具体的に商品の内容・品質を表示するものであると考えられる。

(イ)本件商標「スターターボックス/STARTER BOX」が指定商品「トレーディングカードゲーム」について使用されている例は多数に上る。一例を挙げると、以下のとおりとなる。

(a) 「週間少年ジャンプ(1999.3.1号)」に特集として掲載された「『遊☆戯☆王』公式カードゲーム デュエルモンスタースターターボックス」(甲第4号証)

(b) 「Vジャンプ(1999.4月号)」に特集として掲載された「『遊☆戯☆王』デュエルモンスターズ 公式カードゲーム第1弾&スターターボックス」(甲第5号証)

(c) 「週間少年ジャンプ特別編集 公式カードカタログ ザ・ヴァリュアブル・ブック」に掲載された「『遊☆戯☆王』公式カードゲーム デュエルモンスターズ スターターボックス」(甲第6号証)

(d) 請求人が2000年に配布した広告「『遊☆戯☆王』オフィシャルカードゲーム デュエルモンスターズ」に「STARTER BOX」及び「スターターボックス」の語が掲載されている例(甲第7号証及び甲第8号証)

(e) 請求人が2000年〜2002年にかけて配布した広告「PROFESSIONAL BASEBALL CARD GAME FIELD OF NINE」(フィールド・オブ・ナイン)に「STARTER BOX」及び「スターターボックス」の語が掲載されている例(甲第9号証ないし甲第11号証)

(f) 請求人が2003年に配布した広告「エデュケーショナルカード図鑑ゲーム ガタバイト」に「スターターボックス」の語が掲載されている例(甲第12号証)

(g) 請求人が2002年に配布した広告「K−1 GRAND PRIX CARD GAME」に「STARTER BOX」及び「スターターボックス」の語が掲載されている例(甲第13号証)

(h) 請求人が2000年に配布した広告「ときめきメモリアル2 トレーディングトランプ“フラグメントシーズン〜季節のかけらたち〜”スターターボックス」(甲第14号証)

(i) 請求人が2001年に配布した広告「幻想水滸伝 カードストーリーズ」に記載された「STARTER BOX」及び「スターターボックス」の語が掲載されている例(甲第15号証)

(j) 請求人が2001年に配布した広告「ヒカルの碁 TRADING CARD GAME 棋聖降臨」に「スターターボックス」の語が掲載されている例(甲第16号証)

(k) 請求人が2001年に配布した広告「GROOVE ADVENTURE RAVE TRADING CARD GAME 二つの風が重なる時」に「スターターボックス」の語が掲載されている例(甲第17号証)

(l) コナミトイ&ホビー FAX情報網 Vol.に掲載されたカードゲーム「メルヘヴン ザ・アーム・バトル スターターボックス(仮)」及び「スターターボックス商品仕様」(甲第18号証)

(m) 請求人が配布した商談用カタログ「2003 KONAMI TOY&HOBBY」に記載された「ボンバーマンジェッターズ TRADING CARD GAME スターターボックス」(甲第19号証)

(n) 請求人が配布した商談用カタログ「KONAMI TOY&HOBBY All Lineup Catalogue 2003」に掲載された「コロッケ!バンカーカードゲーム スターターボックス」(甲第20号証)

(ウ)請求人及び同業他社がトレーディングカードゲームのパッケージに「スターターボックス」及び「STARTER BOX」の語を使用している例として、以下のものが挙げられる。

(a) 請求人が販売するトレーディングカードゲーム「ネギま!?MAGISTER NEGI MAGI カードゲーム1時間目 スターターボックス」(甲第21号証)

(b) 請求人が販売するトレーディングカードゲーム「パワフルメジャーリーグ カードゲーム スターターボックス」(甲第22号証)

(c) 請求人が販売するトレーディングカードゲーム「パワフルプロ野球 カードゲーム スターターボックス」(甲第23号証)

(d) 請求人が販売する図鑑カードゲーム「ガタバイト スターターボックス」(甲第24号証)

(e) バンダイが販売するトレーディングカードゲーム「DRAGON BALL CARDGAME STARTER BOX」(甲第25号証)

(f) バンダイが販売するトレーディングカードゲーム「NARUTO CARD GAME STARTER BOX」(甲第26号証)

(g) バンダイが販売するトレーディングカードゲーム「ジョジョの奇妙な冒険 Adventure Battle Card スターターボックス」(甲第27号証)

(h) アッパーデックジャパンが販売するトレーディングカードゲーム「牙KIBA スターターボックス」(甲第28号証)

(エ)インターネットウェブサイト上に記載されたトレーディングカードゲームについて「スターターボックス」の語が使用されている例として、以下のものが挙げられる。

(a) 「機動戦士ガンダム カードダスマスターズG ガンダムウォー 第17弾【不敗の流派】スターターボックス」(甲第29号証)

(b) 「ジョジョの奇妙な冒険 アドベンチャーバトルカード第2弾 構築済みスターターボックス」(甲第30号証)

(c) 「DRAGON BALL 超CARD GAME(1) スターター スターターボックス」(甲第31号証)

(オ)特に、インターネットウェブサイト上に記載された以下の証拠からは、少なくとも1997年11月から「スターターボックス」の語が業界において使用されていることが判明する。

(a) 「スーパーロボット大作戦 スクランブルギャザー 第3弾 1997年11月 全183種類 発売形式 スターターボックス&ブースターパック」・・・(甲第32号証)

(b) 「カードダスマスターズG GUNDAM WAR スターターボックス[基本セット] 1998年4月発売」・・・(甲第33号証)

(c) 「1998年10月10日 東京ゲームショウ98秋 ガンガンヴァーサス 第1弾 スターターボックス」(甲第34号証)

(d) 「コナミの人気RPG『幻想水滸伝』がトレーディングカードゲームに! 2001年7月3日・・・商品はカードゲームを行うために必要なカード50枚と、フィールド、ルールブックが封入されたスターターボックス・・・」(甲第35号証)

(カ)以上のとおり、本件商標「スターターボックス/STARTER BOX」の語は特定の指定商品「トレーディングカードゲーム」との関係において、カードが40〜100枚程度入れられて取引される箱を表す用語として、業界内で普通に使用されている。また、その用語の使用方法は、指定商品について識別力を発揮する商標としての使用ではなく、特定の指定商品の内容・品質等を直接的・具体的に表示するにすぎない記述的な方法で使用されているものである。特に甲第32号証ないし甲第35号証については、本件商標の出願日より相当程度以前に使用されていた例であることから、本件商標の査定又は審決の時点では、指定商品の内容・品質等を具体的に表示する用語と認識されていたものと考えることができる。

業界の需要者・取引者に普通に使用されているのであれば、本件商標に需要者等が接した場合、直ちに「トレーディングカードで、初心者が一番初めに買うことを想定している箱・セット」、「トレーディングカードで、初心者が手始めに使うものが入っている箱・セット」等の意味合いを容易に認識するものと考えられる。

また、指定商品「トレーディングカードゲーム」が箱(「ボックス」、「BOX」)に入れられて販売されているという取引実情を考慮すれば、「ボックス/BOX」は商品の包装の形状を表示するものであり、「スターター/STARTER」が「初心者、開始者、スタート係、スターター、始める人」を意味することから、指定商品との関係では商品の「用途」に該当することから、本件商標「スターターボックス/STARTER BOX」の語は、商品の用途と包装の形状を結合させたにすぎないものであり、たとえ普通名称でなかったとしても、少なくとも商標法第3条第1項第3号に該当するものである。

(キ)本件商標の指定商品「トレーディングカードゲーム」の業界において、「初心者が一番初めに買うことを想定しているセット」について、最も一般的に使用されている語が仮に「スターターパック」であったとしても、本件商標の語である「スターターボックス/STATER BOX」が指定商品の内容・品質等を具体的に表示するものであることには変わりがない。上述のように、本件商標はいずれも平易で親しまれた英単語の結合であり、あえて日本語に訳さずともそのままで十分に通用すると考えられる。また、簡易迅速を旨とする取引においては、指定商品との関係で直ちに意味合いを認識しないとすれば、暗示的・間接的にすぎないとして識別力があると判断される場合も考えられるが、指定商品との関係で直ちに具体的な意味合いを認識できる場合は、識別力を有さないものと考えられる。本件商標は、指定商品「トレーディングカードゲーム」との関係では、「トレーディングカードで、初心者が一番初めに買うことを想定している箱・セット」を直接的・具体的に認識するものと考えられる。これは、本件商標の語「スターターボックス/STARTER BOX」に限らず、「スターターパック」はもちろんのこと、他に例えば「スターターキット」、「スターターセット」、「スターターデッキ」等の語についても同様であると考えられる。「初心者」等を意味する「スターター」、「STARTER」の語に続いて、まとまりの単位又は容器を表すような語が結合した場合は、指定商品「トレーディングカードゲーム」については直ちに「初心者が一番初めに買うことを想定している一連のものが入った箱」等の意味合いを認識するものと考えられるため、いずれの語を選択した場合であっても識別力を有さない商標になるものと考えられる。すなわち、「スターターボックス/STARTER BOX」の語そのものが指定商品について最も頻繁に使用されている語ではないことをもって、指定商品の内容・品質を直接的・具体的に表示するものではないと考えることはできない。「スターターパック」等と類義の語であって、かつ需要者等がその語に接した場合に、指定商品との関係で直ちにその語義が認識できるような語であれば、仮に使用例が他と比較して少ない場合であっても、識別力のない語であると考えられる。

この点を判断した判決として、以下のものが挙げられる。

「商標登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号にいう『商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標』に該当するというためには、必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず、需要者又は取引者によって、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもって足りるというべきである」(甲第36号証:最判昭和60年(行ツ)第68号)

かかる判断を本件について当て嵌めると、仮に「スターターボックス/STARTER BOX」が指定商品の品質等を表示する語として、実際の取引において最も頻繁に使用されているものではないとしても、指定商品との関係で「ゲームをスタートさせるときに必要なものが入っている箱(セット)」を認識させるものであり、かつ、上記のような使用例が多数存在していることを考慮すれば、需要者等が本件商標に接した場合には商品の内容、品質等を直接的・具体的に認識するものであると判断されると考えられる。

ウ 普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であること

本件商標は、「スターターボックス」の片仮名を上段に、「STARTER BOX」のアルファベットを下段に書した構成であって、片仮名、アルファベットともに通常の書体で書されており、特殊な点は見当たらない。このような商標の構成態様は、当然ながら「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するものと考えられる。

エ 異議の決定の誤り

(ア)上記先の商標登録異議申立の異議の決定では、「トレーディングカードゲームの販売形態としては、『スターターパック(未経験者が一番最初に買うことを想定しているセット)』と『拡張パック(ブースターパック、ゲームに慣れ、より面白いプレイを求めるプレイヤーが購入することを想定したセット)』と呼ばれる形式で販売(市販)されている事実が認められるので、申立人等の前記広告、宣伝又は販売促進の事実をもってして、ただちに一般需要者に本件商標自体が、商品の品質、用途を表示するものとして行き渡っていることを証明するものとは認め難いところである。そして、他に本件商標そのものが、商品の品質、用途を表示するものとして取引者、需要者間に広く認識されるに至っている事実を認めるに足りる証拠は見出し得ない。」と判断されている(甲第2号証)。

(イ)しかしながら、上記のように、「スターターパック」等と類義の語であって、かつ需要者等がその語に接した場合に、指定商品との関係で直ちにその語義が認識できるような語であれば、仮に使用例が多数存在していない場合であっても、識別力のない語であると判断すべきものと考えられる。異議の決定では、「本件商標そのものが」商品の品質等を表示するものとして広く認識されていないと判断しているが、使用例の多寡に関わらず、指定商品の内容等を具体的に表示する語に識別力はないと考えるのが相当である。この点を明確にしているのが上記最高裁判決である。

(ウ)また、異議の決定では、「スターターパック」の語について商品「(未経験者が一番最初に買うことを想定している)トレーディングカード」を表示する語であると認定している。しかしながら、かかる判断は異議申立人が提出した甲第3号証「フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』」に掲載された「トレーディングカードゲーム」の項目のみに基礎を置いたものであり、これ以外の事実は何ら考慮されていない。他にも「スターターボックス/STARTER BOX」の語が商品「トレーディングカードゲーム」について多数使用されているにも関わらず、単にウィキペディアの記載を重視して「ただちに一般需要者に本件商標自体が、商品の品質、用途を表示するものとして行き渡っていることを証明するものとは認め難い」と、予断を持って判断している。インターネットで「スターターパック」や「スターターボックス」等の語を検索すると、多数の検索結果が表示されるのは上記のとおりであり、これらの使用例を差しおいて、「ウィキペディア(Wikipedia)」に記載された内容のみを考慮して「スターターパック」の語のみが商品の内容を表示する用語として需要者に認識されていると判断することは、あまりにも偏った判断である。

「スターターボックス/STARTER BOX」の語に限らず、「スターターパック」はもちろんのこと、「スターターキット」、「スターターセット」、「スターターデッキ」等の語は、いずれも商品の内容を表示する語と需要者等に認識されており、また、仮に認識されていないとしても平易な英単語の結合であるため、指定商品との関係を考慮すれば直ちに商品「(特定の)トレーディングカードゲーム」の品質・用途等を認識できる語であると考えられる。

この点については、請求人が「トレーディングカードゲーム」、「遊戯用カード」等を指定商品として出願した商標「STARTER DECK/スターターデッキ」が、商品の品質・用途を表示するものと判断されて拒絶理由を受けたことからも窺えるものである(甲第37号証及び甲第38号証:商願2002-48915)。すなわち、「スターターパック」の語のみが指定商品の内容を表示する語として認識されているものではなく、他の語も品質表示用語である可能性は十分にあると考えられる。

「デッキ/DECK」の語は「トランプ52枚の一組」を意味する語であり、「パック/PACK」の語は「箱詰めにする」等を意味する語であり、これらはいずれも指定商品との関係で識別力の弱い、あるいは識別力のない語であると考えられる。「ボックス/BOX」の語は「箱、容器、箱に入れる」等の意味を有する語であり、「デッキ/DECK」や「パック/PACK」と同様に、指定商品との関係で識別力の弱い、あるいは識別力のない語であると考えられる。この点を考慮すると、先の異議の決定における判断は、識別力の有無の判断において「スターターパック」及び「STARTER DECK/スターターデッキ」と、「スターターボックス/STARTER BOX」との間に境界線を引いた特異な判断であり、明確な根拠に欠けた、妥当性を欠く判断であるといわざるを得ない。指定商品について使用されている例の数ではなく、需要者等が指定商品の品質等を具体的に認識できるかどうかを分水嶺にしなければならないと考えられる。

重ねて主張しているとおり、本件商標「スターターボックス/STARTER BOX」の語に接した需要者等は、指定商品の内容等を直接的・具体的に認識するものと考えられる。したがって、本件商標は指定商品との関係で識別力がないものと考えられることから、先の異議の決定は判断を誤ったものである。

オ 独占不適応性

他にも一般名称が存在するため、本件商標に係る登録を無効にせずとも取引上不都合がないようにも考えられるが、特定の私人が一般名称を独占することは周囲の他人に及ぼす影響は大きく、権利侵害を回避するという義務を負わせ、自由な使用を制限することになるうえに、商標権の効力が及ばない範囲(商標法第26条)であることを証明しない限り、自由に使用ができないという不利益を招く結果となる。本件商標「スターターボックス/STARTER BOX」は、何人であっても使用する必要のある、識別力のない語であり、本件商標権者(被請求人)にだけ特権的な独占的使用を認めることに合理的な根拠はないと考えられる。

カ 小括

以上の点を考慮すると、本件商標「スターターボックス/STARTER BOX」の語は、日本語に訳さずとも通用しうるほどに親しまれた語であると考えられる。また、指定商品との関係では「ゲームをスタートさせるときに必要なものが入っている箱(セット)」を認識させるものであり、かつ、上記のような使用例が多数存在していることを考慮すれば、需要者等が本件商標に接した場合には商品の内容、品質等を直接的・具体的に認識するものであると判断されるものである。仮に使用されている例が少ないと判断された場合であっても、識別力の有無は需要者の認識をもって判断されることから、使用例の多寡に影響を受けるものではない。先の異議申立では「スターターパック」の語が指定商品との関係で一般的に使用されていると判断されているが、該語と類義を有する本件商標「スターターボックス/STARTER BOX」の語も、需要者等に商品の内容・品質等を直接的・具体的に認識させる語であると考えられる。

したがって、本件商標は、仮に商標法第3条第1項第1号に該当しないと判断されたとしても、少なくとも同項第3号に該当するものである。

(7)本件商標の商標法第4条第1項第16号該当性について

上記のように本件商標は、指定商品「トレーディングカードゲーム」の内容、品質等を表示するにすぎないものであるため、これ以外の指定商品に本件商標を使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するものである。

(8)結語

以上詳述したとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第1号、同項第3号及び同法第4条第1項第16号に反して登録されたものと考えられる。

したがって、本件商標は、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。

3 被請求人の答弁

被請求人は、何ら答弁していない。

4 当審の判断

(1)利害関係について

請求人が本件審判を請求することについて利害関係を有しているか否かについては、当事者間に争いがなく、当審も、請求人は本件審判の請求人適格を有するものと認めるので、以下、本案に入って審理する。

(2)本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性について

本件商標は、上記1のとおりの構成からなるところ、その構成中の「STARTER」及び「スターター」の文字は、「始める人(物)、第一歩、出発係、始動機」等を意味する英語及び外来語として、また、「BOX」及び「ボックス」の文字は、「箱」を意味する英語及び外来語として、いずれも親しまれているものである。

ところで、請求人の提出に係る証拠(甲第3号証の1及び2、甲第4号証ないし甲第35号証)によれば、以下の事実が認められる。

(ア)トレーディングカードゲームと呼ばれるゲームを扱う業界があり、各社がゲームの内容に応じて種々の名称のゲームを販売していること

(イ)トレーディングカードゲームとは、トレーディングカード(審決注:フリー百科事典「ウィキペディア」によれば、交換(トレード)や収集を意図して、販売もしくは配布されることを前提に作られた鑑賞あるいはゲーム用のカードをいう。)として販売されている専用のカードを用いて行うカードゲームをいうこと

(ウ)トレーディングカードゲームの業界においては、その販売形態として、初心者がゲームを始めるために必要なルールブックや小道具が入ったトレ−ディングカードの基本セットと、より面白いプレーを求めるプレーヤーを対象としたセットの2種類があり、前者は「スターターパック」、「スターターセット」、「スターターボックス」又は「スターターキット」と称され、後者は「拡張パック」又は「ブースターパック」と称されて取引されていること

(エ)そうすると、本件商標は、上記2語からなるものとして容易に認識し把握され、トレーディングカードゲームとの関係においては、全体として、上記「初心者がゲームを始めるために必要なルールブックや小道具が入ったセット」の意味合いを容易に認識し理解し得るものというべきである。

してみれば、本件商標は、その指定商品中「初心者がゲームを始めるために必要なルールブックや小道具が入ったトレ−ディングカードの基本セットからなるトレーディングカードゲーム」について使用するときは、単に商品の品質、内容等を表示したものとして認識し理解されに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。

(3)本件商標の商標法第4条第1項第16号該当性について

本件商標は、上記のとおり、指定商品中「初心者がゲームを始めるために必要なルールブックや小道具が入ったトレ−ディングカードの基本セットからなるトレーディングカードゲーム」についての品質、用途等を表示するにすぎないものであるから、上記以外の「トレーディングカードゲーム」に使用するときは、商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるものといえる。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するものである。

(4)まとめ

以上のとおり、本件商標は、その指定商品中「トレーディングカードゲーム」については、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、指定商品中の上記商品についての登録を無効にすべきものである。

なお、請求人は、本件商標の指定商品全てについての登録を無効にすべき旨主張しているが、請求人の主張及び提出に係る証拠を徴するも、指定商品中の「トレーディングカードゲーム」以外の商品については、その登録を無効にすべき理由を見出し難いものであるから、本件については上記のとおりに判断するのが相当である。

よって、結論のとおり審決する。

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類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

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商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。