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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2007−890122(T2007−890122/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4902286号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成16年8月16日に登録出願、第1類「植物生育用人工土壌」を指定商品として、同17年8月22日に登録査定、同年10月21日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用する商標

請求人が本件商標の登録の無効の理由に引用する登録第4816625号商標(以下「引用商標」という。)は、「AEROSIL」の欧文字を標準文字で表してなり、平成15年11月17日に登録出願、第1類「化学品,植物成長調整剤類,写真材料」、第35類「珪酸・二酸化珪素及びその他の化学品の販売に関する情報の提供」及び第42類「医薬品・化粧品・食品・タイヤ・ゴム製品工業及びその他の工業における珪酸塩・二酸化珪素・その他の化学品の用途に関する試験・検査・研究」を指定商品及び指定役務として、同16年11月12日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第17号証を提出した。

1 請求の理由

(1)商標法第4条第1項第11号について

(ア)外観の類否について

本件商標は、「エアロソイル」の片仮名文字及び「AEROSOIL」の欧文字を上下二段に左横書きしたものであるのに対し、引用商標は、「AEROSIL」の欧文字を左横書きしたものであるから、その限りにおいては、識別可能であるとしても、対比的観察は、現実の商取引社会との関係においては甚だ遊離した側面のある観察方法であり、実際の商取引においては、欧文字部分と片仮名文字部分とが切り離され、各々の文字が独立して使用されていることも多数見受けられるところである。

上記の点を勘案して、本件商標の欧文字部分「AEROSOIL」と引用商標の「AEROSIL」の欧文字とを比較した場合、前者はアルファベット8文字を、後者はアルファベット7文字を各々左横書きした構成であり、そのうち前半部「A」「E」「R」「O」及び後半部「S」「I」「L」の7文字を共通にするものであり、僅かに後半部における前者の比較的注意力が散漫になりがちな中間(第6文字目)における「O」の有無の差異を有するにすぎないものである。

それ故、迅速繁忙な取引の実際において、世人通常の印象回想力により、離隔的に観察した場合、両商標は全体として互いを錯覚しやすい視覚的な紛らわしさがあり、両者は、外観上類似する商標ということができる。

因みに、本件と同種構成であり、商標全体として相互に外観類似と判断された異議決定及び審判決例を参酌すれば容易に明らかである(甲第5号証ないし甲第7号証)。

(イ)称呼の類否について

(a)本件商標は、その構成中の「ソイル/SOIL」の文字部分が指定商品との関係では商品名「土壌」を意味することから、その要部は前半の「エアロ/AERO」にあるものといえる。

したがって、本件商標からは、英語読みに従った「エアロソイル」及びローマ字読みに従った「アエロソイル」の一連の称呼を生ずるとともに、単に「エアロ」又は「アエロ」の略称をも生ずるものである(甲第8号証、甲第9号証)。

一方、引用商標は、その構成中の「〜SIL」は「ケイ素(Silicon:シリコン)を含んだ、ケイ素から誘導された」等の意を有する接頭辞「SIL−」に準ずるものであるから、自他商品の識別力の弱い語と認められる(甲第10号証)。したがって、引用商標の要部は、「AERO」に存在するものといえる。

したがって、引用商標からは、ローマ字読みに従った「アエロシル」又は「アエロジル」及び英語読みに従った「エアロシル」の一連の称呼を生ずるとともに、単に「アエロ」又は「エアロ」の略称をも生ずるとするのが自然である。

(b)そこで、両者から生ずる称呼中、特に近似する称呼を比較する。本件商標より生ずる「エアロ」(英語読み)又は「アエロ」(ローマ字読み)の略称と引用商標から生じる「エアロ」(英語読み)又は「アエロ」(ローマ字読み)の略称は、「エアロ」又は「アエロ」の称呼を共通にする互いに類似の商標である。

また、本件商標より生ずる「エアロソイル」(英語読み)と引用商標より生ずる「エアロシル」(英語読み)の両称呼を比較するに、両者は称呼を識別する上で最も重要な要素を占める語頭部において「エ」「ア」「ロ」の3音及び語尾音「ル」を共通にし、異なるところは、中間音における「ソ(so)」と「シ(si)」及び母音「イ(i)」の有無に過ぎない。

しかも、該差異音「ソ(so)」と「シ(si)」にしても、音質を同じくする同行に属する音であり、また母音「イ(i)」自体も小開き母音で曖昧になりがちな音であり、かつ強勢の位置を有する前音「ソ(so)」に吸収される如く、尚更に弱く発音・聴取されるものといえる。

したがって、両称呼は、時と所を異にしてそれぞれを一連に称呼した場合、語調・語感が近似したものとなり、相互に彼此聴き誤られるおそれが充分である。

更に、本件商標より生ずる「アエロソイル」(ローマ字読み)と引用商標より生ずる「アエロシル」(ローマ字読み)の両称呼の対比においても、縷説を要するまでもなく、同様の理由により類似するものである。

因みに、上記請求人の主張の正当性は、本件と同種の事件で商標全体として相互に称呼類似と判断された審決例を参酌すれば容易に明らかになるものである(甲第11号及び甲第12号証)。

(ウ)指定商品の類否について

引用商標は、その農薬の一つである「植物成長調整剤類」を指定商品に含むのに対して、本件商標の指定商品は、肥料に属する「植物生育用人工土壌」である。これらの一部は、製造業者(化学メーカー)を同じくし、また、農業或いは園芸従事者や一般の農業又は園芸愛好家等の消費者を共通にするものであり、かつ、ホームセンター、農協等を通じて農業或いは園芸従事者や一般の農業又は園芸愛好家等の消費者に販売されるルートは共通である。

しかして、両商品は、審査基準では、実務上、非類似の商品とされているが、実際の取引場裡において同一又は類似の商標を付して使用する場合は、引用商標が農薬を含む工業全般に広く使用されていることとも相俟って(甲第13号証)、出所について誤認・混同を生ぜしめるおそれが充分あるから、両商品は類似の関係にある商品というべきである(甲第14号証)。

以上により、本件商標は、引用商標と外観及び称呼上相紛らわしい類似の商標であり、かつ、指定商品も互いに類似すること明らかであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第15号について

請求人「デグサ・アクチエンゲゼルシヤフト(Degussa AG.)」は、1843年の古くに創設され、1873(明治6)年、株式会社に改組した。爾来、化学工業薬品、医薬品、歯科用合金、顔料(ピグメント)、精製貴金属、工業用炉、歯科用機材等の開発製造販売を主業務として発展し、2006年12月現在、ドイツ国内と海外に関連会社が300余り、約3万6千名の従業員を擁する世界企業として国際間に揺るぎない地位を築いている。なお、請求人は、「Degussa」の略称をもって通用し、1980(昭和55)年4月、「Degussa AG.」に改称、2007(平成19)年1月、現商号「Degussa GmbH.」と改称している。

そして、殊に、商品「シリカ」の分野では、その製品名の一つである引用商標に係る「AEROSIL」は、その優れた特徴及び性質により、農薬を含む広く工業全般に原料として使用されるものであり、その品質の優秀さとも相候って、国際的に当該取引者・需要者間に広く知られ、本件商標の査定時はもとより出願時においても既に、請求人製「シリカ」の商標として周知著名に至っていたものということができる(甲第13号証、甲第15号証ないし甲第17号証)。

したがって、仮に、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当しない場合でも、前項に述べた如く、著名な引用商標と視覚及び聴覚上近似するものであり、本件商標をその指定商品「植物生育用人工土壌」に使用するときは、その商品があたかも引用商標の権利者(請求人)が取り扱う商品の姉妹品か、またはこれと出所を同じくする何らかの関連ある商品であるかのように誤られ、その出所について混同を生ぜしめるおそれを免れ得ないものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(3)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号あるいは同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効にされるべきものである。

2 答弁に対する弁駁

(1)商標法第4条第1項第11号について

称呼の類否の点について、被請求人は、乙第3号証及び乙第4号証を挙げ、引用商標は「アエロジル」のブランド名で紹介されていると主張しているが、引用商標「AEROSIL」は、アルファベット7文字を左横書きした構成であり、一般的に日本人がアルファベット文字に接する場合、ローマ字読み、次に英語読み、最後にドイツ語読みの順になるのが通常であると思料される。

すなわち、引用商標に接する一般取引者・需要者は、老若男女から構成され、そしてドイツ語は、普通、大学・専門学校等で習得されることを勘案すれば、引用商標からは、常に「アエロジル」のドイツ語読みの称呼のみが生じるとすることは不自然であり、より一般的なローマ字読み、英語読みの称呼も当然予測されるものである。

また、指定商品の類否の点について、仮に、被請求人の主張の通り、商品の置かれる店舗内の棚は異なっていたとしても、店内には関連商品ごとに案内表示があり、かつ商品棚も各々の分野別の商品ごとにグループ化されていることは一般的な常識である。

しかして、両商品は、審査基準では、実務上、非類似の商品とされているが、実際の取引場裡において同一又は類似の商標を付して使用する場合は、出所について誤認、混同を生ぜしめるおそれが充分あるから、両商品は、類似の関係にある商品というべきである(甲第14号証)。

因みに、乙第7号証の特許庁類似商品・役務審査基準は、あくまでも便宜上の審査基準であり、これは、商標法第6条第3項「前項の商品及び役務の区分は、商品又は役務の類似の範囲を定めるものではない。」の規定からも明らかな如く、法律的効果を定めたものではない。

以上により、本件商標は、引用商標と外観及び称呼上相紛らわしい類似の商標であり、かつ、指定商品も互いに類似すること明らかであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第15号について

この点については、被請求人は、何ら答弁理由を述べていない。

(3)以上のとおり、本件商標は、引用商標と外観及び称呼上相紛らわしい類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号、同第15号に該当するものである。

第4 被請求人の答弁の要旨

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第7号証を提出した。

(1)商標法第4条第1項第11号について

(ア)外観の類否について

本件商標は、「エアロソイル」の片仮名文字及び「AEROSOIL」の欧文字を上下二段に左横書にしたものであり、外観上まとまりもよく、これに対し、引用商標は「AEROSIL」の欧文字を左横書きにしたものであり、両者は、外観上大きく異なり、互いを錯覚しやすい視覚的な紛らわしさはなく、類似する商標とはいえない。

(イ)称呼の類否について

請求人は、本件商標の要部は前半の「エアロ/AERO」にある旨述べているが、本件商標「AEROSOIL/エアロソイル」の称呼は、よどみなく一連に称呼し得るものであり、決して、「AERO」と「SOIL」に分離され、「AERO」のみ考察されるべきものではなく、あくまで、「AEROSOIL」全体で一連不可分の造語であり、固有の観念を有する語と考察されるべきものである。即ち、本件商標「AEROSOIL/エアロソイル」は、指定商品である「植物生育用人工培養土」であり、指定商品の特徴として、「空気のように軽い土」から由来している。よって、「AEROSOIL」の意味を考慮した場合、「AERO(空気)」と「SOIL(土壌)」を分離させては、指定商品の内容を無意味にしてしまうおそれがあり、その指定商品の特徴をかき消してしまうものである。

そして、本件商標「エアロソイル」を特許庁電子図書館で称呼検索すると、「エアロソイル」と「エアロシル」は称呼類否の観点において1音又は2音が相違していると判断されており、類似する称呼とはいえないものである(乙第1号証、乙第2号証)。

また、請求人であるデグサゲーエムベーハ−のグループ会社である日本アエロジル株式会社のホームページの記載を見ると、請求人は、日本のグループ会社名を「日本アエロジル株式会社」としており(乙第3号証)、その製品を「アエロジル」として紹介している(乙第4号証)。このことからみれば、引用商標は、一般的認識からすると、「アエロジル」というブランド名で認知されていると考えられる。

一方、本件商標は、片仮名文字「エアロソイル」の読み方で認識されており、引用商標と比較した際に互いは明らかに異なった商標であるということができる。

(ウ)指定商品の類否について

本件商標の商標出願・登録情報検索を行うと、本件商標は、国際分類第1類「肥料 4植物生育人工土壌」(類似群02A01)に分類されている(乙第5号証)。これに対して、引用商標は、国際分類第1類「植物成長調整剤類」(類似群01B01)に分類されており(乙第6号証)、本件商標と引用商標は、混同され識別を誤ることはないものというべきである(乙第7号証)。また、引用商標には肥料類を含まず、これに対し、本件商標の指定商品は、肥料に属する「植物生育用人工土壌」であり、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは原材料と品質、使用目的が大きく異なっている。更に、ホームセンターや農協等を通じて販売されるルートは異なり、販売される棚は大きく違うことから、両商品は、互いに非類似の商品であるといわなければならない。

(2)以上述べたことから明らかなように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当せず、登録適格性を具備した商標であるというべきものである。

第5 当審の判断

1 商標法第4条第1項第11号について

(1)両商標の称呼の類否について

(ア)本件商標の称呼について

本件商標は、別掲に示したとおり、輪郭線を有する太字で表された「エアロソイル」の片仮名文字と該文字よりやゝ小さく表された「AEROSOIL」の欧文字とを二段に横書きしてなるところ、上段及び下段に書された各文字は、外観上まとまりよく一体的に表現されているものである。そして、構成中の「ソイル/SOIL」の語は「土壌」等の意味を表す語ではあるが、本件商標の如き構成においては、特定の商品又は商品の品質等を具体的に表示するものとして直ちに理解し得るものともいい難いものであるから、本件商標は、その構成全体をもって不可分一体の造語を表したものと認識し把握されるとみるのが自然である。

そして、その称呼については、一般に、欧文字と仮名文字を併記した構成の商標において、その仮名文字部分が欧文字部分の称呼を特定すべき役割を果たすものと無理なく認識し得るときは、仮名文字部分より生ずる称呼がその商標より生ずる自然の称呼とみるのが相当であり、本件商標においても、「AERO」の語は「空気、空中、航空(機)」の意を表す連結形であって「エアロ」と発音される英語であるから、仮名文字部分より生ずる称呼をもって自然の称呼というべきである。

そうとすれば、本件商標は、その片仮名文字に相応して、「エアロソイル」なる一連の称呼のみを生ずるものとみるのが自然であり、この称呼も格別冗長に亘るものではない。そして、他に、構成中の「エアロ/AERO」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見いだせない。

してみれば、本件商標からは「エアロソイル」の称呼のみを生ずるものといわなければならない。

(イ)引用商標の称呼について

他方、引用商標は、前記したとおり、「AEROSIL」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成全体をもって親しまれた成語とは認められないことから、直ちに、一定の称呼をもって認識されるものとはいえないが、構成中、前半の「AERO」の文字については、上記したとおり、「空気、空中、航空(機)」の意を表す連結形であって「エアロ」と発音される英語であり、また、後半の「SIL」の文字部分については、請求人の提出に係る研究社発行の「新英和大辞典」(甲第10号証)によれば、「ケイ素(Silicon:シリコン)を含んだ、ケイ素から誘導された」等の意の連結形であって「シル」と発音される英語であるから、本件商標は、全体として、英語読みに「エアロシル」の称呼を生ずるものということができる。

また、商標は使用することによってこそ、その商標に業務上の信用が蓄積されるものであるから、現に使用されている商標についての使用の実情を離れて、その称呼を判断するのは適切なこととはいえない。

請求人の提出に係る甲第13号証(請求人の日本法人作成のパンフレット)によれば、「AEROSIL」の語には括弧書きで「アエロジル」なる読みが表示されており、このことからみれば、引用商標は「アエロジル」の称呼をもって取引に供されているものということができる。そうとすれば、引用商標は、ドイツ語風の読みに従って、「アエロジル」の称呼をも生ずるものと認められる。

そして、引用商標は、構成各文字が同書・同大・同間隔に外観上まとまりよく一体的に表現されており、たとえ、構成中の「SIL」の語が「ケイ素(Silicon:シリコン)を含んだ」等の意味を表す語であるとしても、引用商標の如き構成においては、特定の商品又は商品の品質等を具体的に表示するものとして直ちに理解し得るものともいい難いものであるから、引用商標は、その構成全体をもって不可分一体の造語を表したものと認識し把握されるとみるのが自然であり、該構成文字全体に相応して「エアロシル」及び「アエロジル」なる一連一体の称呼のみを生ずるものといわなければならない。

(ウ)本件商標と引用商標の称呼の類否について

そこでまず、本件商標から生ずる「エアロソイル」の称呼と引用商標から生ずる「エアロシル」の称呼とを比較するに、この両称呼は、6音対5音という音数からなるところ、後半部分において「ソイ」と「シ」の音の差異を有するものである。

しかして、「ソイ」の音は、無声摩擦子音(s)と母音(o)との結合した音と短母音の(i)の音から構成される音であるのに対して、「シ」の音は、無声摩擦子音(∫)と母音(i)との結合した音であるから、「ソイ」と「シ」の音は、その音構成及び音質において明らかな差異を有するものということができる。

そうとすれば、この「ソイ」と「シ」の音の差異は、後半部分における差異とはいえ、さほど長い称呼ともいえない両称呼に与える影響は決して小さいものとはいえず、しかも、この「ソイ」、「シ」に続く「ル」の音は語尾に位置することから必ずしも明瞭に響く音とはいえないこととも相俟って、この両音の差異は、より一層明瞭なものとして聴取されるから、両者は、これをそれぞれ一連に称呼するも、全体の語調・語感をも異にし、互いに聞き誤るおそれはないものというべきである。

次に、本件商標から生ずる「エアロソイル」の称呼と引用商標から生ずる「アエロジル」の称呼とを比較するに、この両称呼は、称呼における識別上重要な要素を占める語頭部分において、「エア」と「アエ」の音の差異を有するばかりでなく、後半部分においても、明らかに音質を異にする「ソイ」と「ジ」の音の差異を有するものである。

そうとすれば、これら音構成の差及び音質の差異が両称呼に与える影響は決して小さいものとはいえず、両者は、これをそれぞれ一連に称呼するも、全体の語調・語感をも異にし、互いに聞き誤るおそれはないものといわなければならない。

(2)両商標の外観の類否について

上記したとおり、本件商標は、輪郭線を有する太字で表された「エアロソイル」の片仮名文字を大きく表し、その下に、やゝ小さく表された「AEROSOIL」の欧文字を配した構成からなるものであるから、本件商標に接する取引者・需要者は、「AEROSOIL」の欧文字よりも、大書された親しみのある「エアロソイル」の片仮名文字に強い印象を受け、記憶するものということができる。これに対して、引用商標は、「AEROSIL」の欧文字のみからなるものである。

そうとすれば、本件商標と引用商標とは、その構成全体から受ける視覚的印象を明らかに異にするものであるから、これらを時と処を異にして離隔的に観察するも、外観において紛れるおそれはないものといわなければならない。

また、本件商標から欧文字部分のみを抽出して、これを引用商標の欧文字部分と比較したとしても、「AEROSOIL」の欧文字と「AEROSIL」の欧文字とは、中間部分における「O」の文字の有無の差異ではあるが、外観の把握とはいえ、欧文字構成からなる商標に接する取引者・需要者は、必ずしも、アルファベットの単なる羅列として把握しているとばかりはいえず、むしろ、単語として把握し得る語があれば、一つの単語として把握・認識するものというべきである。「AEROSOIL」の語にあっても、「SOIL」の文字部分は、中学校において学習する程度の平易な英単語であるから(例えば、三省堂発行の「コンサイス英和辞典」参照)、本件商標に接する取引者・需要者は、「AERO」に続く文字部分については、英単語の「SOIL」として把握・認識する場合も決して少なくないものというべきである。

そうとすれば、「SOIL」の語と「SIL」の語との間には「O」の文字の有無という明らかな差異を有するものであるから、これを誤認することは考え難く、本件商標と引用商標とは、その欧文字部分のみを比較しても、互いを見誤ることはないものというべきである。

してみれば、本件商標と引用商標とは、いずれの観点からみても、外観において十分区別し得る差異を有するものであるから、これを離隔的に観察した場合においても、互いに紛れるおそれのない外観上非類似の商標といわなければならない。

(3)両商標の観念の類否について

本件商標と引用商標は、いずれも、全体として特定の親しまれた意味合いを有しない造語よりなるものと認められるから、観念においては比較することができない。

(4)請求人の主な主張について

請求人は、審判決例を挙げて主張しているが、それらの審判決例で争われているのは、いずれも、本件とは文字構成を異にするものであるから、直ちに、本件商標と引用商標との類否の判断の参考とすることはできない。

また、請求人は、本件商標の指定商品である「植物生育用人工土壌」と引用商標の指定商品中の「植物成長調整剤類」とは類似する商品である旨主張している。

確かに、両商品は、いずれも園芸農家や園芸愛好家等の消費者を共通にし、ホームセンターや農協等を通じて販売されるものであるとはいえる。しかしながら、「植物生育用人工土壌」は「鉱物製の植物生育用人工土壌、プラスチック製の植物生育用人工土壌」等の商品をいうものであって、広義における「肥料」の概念に属する商品として捉えられている商品であるのに対して、「植物成長調整剤類」は「植物育成剤、植物ホルモン剤、土壌改良剤、発芽抑制剤」等の商品をいうものであって、「薬剤」の概念に属する商品である。

そうとすれば、この両商品は、原材料や用途において明らかな差異を有するものであるから、非類似の商品というべきである。

(5)以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものということはできない。

2 商標法第4条第1項第15号について

(1)引用商標の著名性について

請求人は、引用商標が請求人の業務に係る「シリカ」の商標として周知・著名になっていた旨主張して、甲第13号証、甲第15号証ないし甲第17号証を提出している。

しかしながら、甲第13号証は、請求人の日本法人である日本アエロジル株式会社の作成に係るパンフレットであり、「AEROSIL(アエロジル)」なる商標に係る「シリカ」についての商品説明が記載されているにとどまるものである。

また、甲第15号証は、商標研究会が昭和47年9月5日に発行した「新版 日本有名商標録」であり、ここには、請求人の商標と認められる「DEGUSSAと図形」からなる商標及び「Degussit」からなる商標が掲載されており、記事中には、「この社は世界的に『DEGUSSA』の略号をもって知られており・・・今日の世界的名声を有する化学工業に発展したのである。」等と記載されているが、「AEROSIL」に関しては、記事の中に、請求人が所有する商標の一つとして他の商標とともに記載されているにすぎない。このことは、商標調査会が平成3年9月21日に発行した「日本商標名鑑 ’91」(甲第16号証)においても同様である。

更に、甲第17号証は、Yahoo検索エンジンによる「AEROSIL」のウェブ検索結果であり、相当多数の「AEROSIL」に関する記事が検索されていることは認められるが、この種情報には重複した記事も多数あるのが実情であり、しかも、甲第17号証を見る限りにおいては、外国の文献も多く、引用商標に係る商品の具体的な使用状況が示されているものでもない。

そうとすれば、請求人の提出に係る上記甲各号証をもってしては、引用商標に係る商品についての使用開始時期、使用期間、使用地域、売上高等、引用商標の著名性を判断するための具体的な事実が何ら明らかにされていないから、引用商標が請求人の業務に係る商品「シリカ」の商標として、我が国においても使用されていた事実は認められるとしても、本件商標の登録出願時において、我が国の取引者・需要者間において広く認識されていたものとは認められない。

(2)出所の混同の有無について

上記したとおり、引用商標「AEROSIL」は、日本語では「アエロジル」と表記され、「アエロジル」の称呼をもって取引に供されていると認められるものであるから、「エアロソイル」と称呼される本件商標とは、十分に区別し得る別異の商標というべきものであるばかりでなく、引用商標は、本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る商品「シリカ」の商標として、我が国の取引者・需要者間において広く認識されていたとは認められないものである。

そうとすれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして、引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものということはできない。

3 むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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