結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2007−300631(T2007−300631/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4412636号商標(以下「本件商標」という。)は、「萌」の文字を標準文字により表してなり、平成11年11月12日に登録出願され、第14類「身飾品,宝玉及びその模造品」を指定商品として平成12年8月25日に設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べている。
請求人の調査したところによれば、本件商標は、その指定商品のいずれについても、継続して3年以上、日本国内において、被請求人によって使用されていた事実がなかったばかりでなく、本件商標の商標登録原簿謄本の記載に徴するも、本件商標には、専用使用権者又は通常使用権者の設定登録の事実もないので、本件商標は、これらの使用権者による、指定商品について使用されているものとも認め得ないところである。
してみると、本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが、その指定商品について、使用していないものであるから、商標法第50条第1項の規定に基づいて、その登録は取り消されるべきものである。
(1) 先ず、被請求人は、本件商標が請求に係る商品について通常使用権者によって使用されていると答弁しているが、請求人の主張しているとおり、本件商標には、専用使用権者又は通常使用権者の設定登録がされている事実もないばかりでなく、使用者が、通常使用権を有する者であることが不明であって、これは、商標法第31条第4項において準用する特許法第99条第3項の規定により、第三者に対する対抗要件を具備しないことになる。
(2) 請求人の提出に係る乙各号証について、以下のとおり弁駁する。
(ア)乙第1号証は被請求人の履歴事項全部証明書であり(本店所在地が、商標登録原簿と相違している。)、乙第4号証はラ・パール・ドリエント株式会社(以下「ラパール社」という。)の履歴事項全部証明書であって、いずれも、目的として、真珠の加工並びに販売等が記載されているにすぎないものである。
(イ)乙第2号証は、被請求人及び有限会社ラパールドリエント(以下「(有)ラパールドリエント」という。)の会社案内であって、それぞれ真珠加工及び輸出入卸、小売等を営む企業であることは、窺い知ることができるとしても、(有)ラパールドリエントとなっており、乙第4号証のラパール社が平成16年12月31日組織変更し設立されたものと不一致であることからも、この会社案内は、相当古くに作成されたものであると思われ、しかも、本件商標に関する記載もない。
(ウ)乙第3号証は、日本真珠輸出組合の組合員名簿であって、その中に、被請求人の記載はあるが、仮に、現に営業活動をしているとしても、商品の輸出は、商標の使用に該当しないものであるばかりでなく、本件商標に関する記載もないものである。
(エ)乙第5号証は、ラパール社のインターネット・ホームページ打ち出しにすぎず、本件商標の記載はないものである。
(オ)乙第6号証は、ラパール社の商品カタログであり、その5頁目の右下に、「萌」の角印を朱肉で押印したものであるが、その朱肉が、上質用紙に馴染まず、こすれて滲んでいるばかりでなく、4頁目の左下へ転写される如く汚れているのは、この乙第6号証提出時に、「萌」の角印を朱肉で押印したことが明らかであるばかりでなく、このカタログの作成者及び作成年月日も全く不明である。
(カ)乙第7号証は、「類似商品・役務審査基準[国際分類第8版対応]」第14類指定商品の抜粋であり、これは、成立を認めるものである。
(キ)乙第8号証は、ラパール社のショールーム写真及び本件商品写真であり、4葉目に商品を羅列した右横に、「萌」の字を書した札を置いて撮影したものであるが、極めて不自然な構図であるものといわざるを得ないものであって、商取引の実際を表しているものとは到底認め難いものである。
(ク)乙第9号証は、ジュピターショップチャンネル株式会社(以下「ジュピター社」という。)のインターネット・ホームページの打ち出しにすぎず、本件商標の記載はないものである。
(ケ)乙第10号証は、本件商品の包装状態を表す写真であるとしても、不自然に置かれたカード上の右下部分に、乙第6号証と同じ「萌」の角印が朱肉で押印されていて、極めて不自然なものであるといわなければならない。(コ)乙第11号証は、ジュピター社作成の本件商品に関するJewelry商品カードであるが、商品取引の実際を証するものは何もない。
(サ)乙第12、第17及び第18号証は、2006年1月26日付け、2007年5月18日付け又は同年7月2日付けの委託伝票であるが、いずれも本件商品であることが不明であるばかりでなく、乙第6又は第13号証と同様に、「萌」の角印を朱肉で押印していること等、極めて不自然なものであって、商取引の実際を立証するに足るものとはいえない。
(シ)乙第13号証は、2007年10月9日付けジュピター社のFAX書信であるが、5葉目は、乙第12号証のコピーであり、その外も乙第12号証と同じ理由で、証拠方法能力を欠くものである。
(ス)乙第14ないし第16号証は、2006年2月28日付けのINVOICE(納品書兼請求書)、2007年4月26日付けのMEMO(委託伝票)及び2007年5月31日付けのINVOICE(納品書兼請求書)であって、乙第12号証と同様に、「萌」の角印の朱肉押印が極めて不自然である。
(セ)以上、乙第1ないし第18号証は、いずれも本件商品の取引の実態とは掛け離れていて、極めて不自然であること等を総合的に勘案すると、本件商標は、通常使用権者によって、本件商品について使用されていたことが証明されていない。
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び弁駁に対する答弁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、証拠方法として乙第1ないし第25号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)被請求人について
被請求人オリエントパール株式会社は、現在、兵庫県神戸市中央区生田町1丁目4番1号を主たる事務所(本社)の所在地として(乙第1号証)、淡水真珠をはじめとする真珠全アイテムの加工及び輸出入卸を行う営業主体である(乙第2号証)。
昭和23年に創業し、平成5年11月に社名を有限会社オリエントパール商会からオリエントパール株式会社に改称し組織変更する以前より、我が国の真珠の主要な加工地・流通地である神戸において、淡水真珠をはじめとする真珠全種類の加工業や輸出入卸業に長年に亘り従事しており、我が国の主要な真珠業者が加入する「日本真珠輸出組合」の組合員でもある(乙第3号証)。
(2)本件商標の使用主体
本件商標の使用主体は、商標権者である被請求人に限られず、被請求人より許諾を受けた者(通常使用権者)によるものであっても、その主体的要件を満たす(商標法第50条第1ないし第3項)。
請求人は、「本件商標の商標登録原簿謄本の記載に徴するも、本件商標には、専用使用権者又は通常使用権者の設定登録の事実もないので、本件商標は、これらの使用権者による、指定商品について使用されているものとも認め得ない」と述べているが、商標権についての通常使用権の設定は、登録をその効力要件とするものではない(商標法第31条第4項において準用する特許法第99条第1項)から、本件商標の商標登録原簿に通常使用権の設定の登録がされていないことをもって、本件商標の通常使用権者が存在しないということはできない。
このため、被請求人は、被請求人から許諾を受けた者(通常使用権者)が、本件審判請求の予告登録日(平成19年6月1日)より3月以前で且つ3年以内における本件商標に係る指定商品のいずれかについての本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標の使用の事実を証明すれば足りる。(3)本件商標の通常使用権者
日本国内における真珠全種類の卸業務(素材及び完成品)を営む(有)ラパールドリエントが平成3年に設立されて以降、被請求人は、海外エリアにおける真珠加工及び輸出入卸業務を被請求人が行い、日本国内エリアは、(有)ラパールドリエントが真珠加工及び輸出入卸業務を統括する営業展開を行っている(乙第2号証)。
平成12年に作成・印刷された被請求人及び(有)ラパールドリエントの会社案内(乙第2号証)には、当時の被請求人の代表者チョウドリービダン氏が(有)ラパールドリエントの代表者であること、また、同氏の「ごあいさつ」において、被請求人が海外取引エリアを担当し、(有)ラパールドリエントが国内取引エリアを担当すること、さらに、当時の(有)ラパールドリエントの本店所在地(神戸市中央区中山手通5丁目2番2号)が当時の被請求人の本店所在地と同一であることが明確に記されている。
(有)ラパールドリエントは、平成16年12月31日にラパール社に組織変更し、平成18年5月1日には、その主たる事務所(本社)の所在地を現在の被請求人と同一の「神戸市中央区生田町1丁目4番1号」に移転した(乙第4号証)。
また、ラパール社(LA PERLE D’ORIENT)のインターネット・ホームページ(http://www.laperledorient.com)には、被請求人(ORIENT PEARL CO.LTD.) がラパール社の関連会社(ASSOCIATE COMPANIES)であること、ラパール社が被請求人の長年に亘る営業活動を受けて設立されたこと等、が記載されている(乙第5号証)。
ラパール社と被請求人との緊密な関係が現在も継続していることは、ラパール社の現在の代表者が、被請求人の代表取締役を兼ねていることからも明らかといえる(乙第1及び第4号証)。
上記のとおり、被請求人とラパール社とは、設立当初から現在に至るまで密接な関係を継続しており、ラパール社は被請求人の我が国における営業活動の実質主体といえる。
両社の上記関係により、当然の帰結として、被請求人は、ラパール社に対し、真珠に関する全アイテムについて、本件商標を初めとする被請求人所有に係る商標権その他の知的財産権を我が国において独占的に使用(実施)することを許諾している。
(4)指定商品についての本件商標の使用
ラパール社は、本件商標の出願後の平成12年3月頃より、日本国内において、ツインパールデザインを施したアコヤ真珠・黒蝶真珠・タヒチ真珠等を用いたネックレスやイヤリング、ピンブローチ、ペンダントトップ、チェーンネックレス、タイピン等(以下「本件商品」という )の加工・販売をしている(乙第6、第8ないし第18号証)。
本件商品が、本件指定商品「身飾品,宝玉及びその模造品」に含まれる同一の商品であることは、特許庁商標課編「類似商品・役務審査基準[国際分類第8版対応]」の第14類指定商品の記載(乙第7号証)より明らかといえる。
(ア)商品カタログにおける本件商標の使用
平成12年9月に作成し、現在も頒布している本件商品を掲載したラパール社の商品カタログ(乙第6号証)には、「ラ・パールのオリジナルブランドに新しく『モエ』が誕生しました。ツインパルの様なとてもキュートなデザインは年代を問わず、おしゃれを楽しんでいただけます。」の商品説明とともに、やや特徴のある書体により朱色に刻印された「萌」の一文字が、極めて目立つ大きさ・態様により、欧文字「Moe」とともに表示されている。
(イ)本件商標を付した本件商品の展示
ラパール社は、本社を現在の所在地に移転した平成18年5月1日より、同地ショダリ21ビルの1階の事務所内に設置された同社ショールームにおいて、本件商品を展示している(乙第8号証)。
本件商品の展示写真からも明らかなとおり、本件商品を陳列したショーケース内には、展示広告として、本件商品の出所表示と看取される位置、大きさ、態様により書された「萌」の一文字が表示されている。
(ウ)本件商品に関する取引書類における本件商標の使用
ラパール社が取り組む本件商品の主たる販売チャネルは、前記ショールーム等における一般需要者向け直接販売と、CATV放送等においてショップチャンネル(http://www.shopch.jp/JscTop.do、乙第9号証)を運営し、通信販売事業を展開するジュピター社への委託販売である。
ラパール社のショールーム等において本件商品を直接購入した一般需要者には、ラパール社の英文名称「LA PERLE D’ORIENT」及びロゴが表示された専用ケース、手提げ袋、及び保証書(CERTIFICATE OF INTERNATIONAL OF GUARANTEE)が本件商品とともに手渡される(乙第10号証)。この保証書の裏面には、やや特徴のある書体により朱色に刻印された「萌」の一文字が、極めて目立つ大きさ・態様で表示されている(乙第10号証)。
また、ジュピ夕一社への委託販売に際して、委託対象商品を特定するためにラパール社が事前にジュピター社と取り交わす本件商品に関する「Jewelry商品カード」(商品基本コード:4000295430、メーカー品番:SC2−7ー036)には、本件商品のブランド(brand)が「萌」であることが追加商品情報欄に明確に記載されている(乙第11号証)。
乙第11号証に掲載された商品「ロープネックレス(ROPENECKLACE)」に関して、2006年1月26日に該商品225個をジュピ夕一社に預け販売を委託したことを裏付けるラパール社発行に係る委託伝票には、該商品の品番(LOTO No.)「4000295430/SC2−7ー036」、品名(DESCRIPTION)「K18 Moe ROPE NEC.」の記載の横に、やや特徴のある書体により朱色に刻印された「萌」の一文字が、極めて目立つ大きさ・態様で表示されている(乙第12号証)。
なお、乙第12号証がジュピター社に送付され、同社が2006年1月28日にこれを受領したことは、ジュピター社より入手した2007年10月9日付けFAX書信及びこれに添付された前記委託伝票に同社担当者のサイン及び受領日が記入されていることより、明らかといえる(乙第13号証)。そして、乙第12号証においてジュピター社に預けた上記商品225個に対してショップチャンネルを観た需要者から注文が入り、これにより、2006年2月28日にジュピター社への当該商品の納品及び同社による当該商品の買取りが行われたことを裏付けるラパール社発行に係るINVOICE(納品書兼請求書)には、上記と同様に、本件商品の品番(LOTO No.)「4000295430/SC2−7ー036」、品名(DESCRIPTION)「K18 Moe ROPE NEC.」の記載の横に、やや特徴のある書体により朱色に刻印された「萌」の一文字が、極めて目立つ大きさ・態様で表示されている(乙第14号証)。
ジュピ夕一社との本件商品の取引に関する委託伝票及びINVOICE(納品書兼請求書)の本件商品の品番及び品名表記のすぐ横に、「萌」の一文字が本件審判請求の予告登録日前より現在に至るまで継続して表示されていることは、2007年4月以降に発行された委託伝票及びINVOICE(納品書兼請求書)の記載により明らかである(乙第13及び第15ないし第18号証)。
上記販売チャネルを通じた本件商品(ネックレス)の過去2年間の販売数量は約525本、販売金額は約3,600万円に達する。
(エ)本件商標の使用事実のまとめ
上記の使用事実及び証拠資料(乙第1ないし第18号証)から明らかなとおり、被請求人から本件商標の使用について許諾を受けたラパール社は、本件指定商品と同一の商品に関するカタログ、展示広告、保証書、商品カード、委託伝票、納品書及び請求書に、本件商標と同一の構成からなる「萌」の一文字(さらには、本件商標の読み方「モエ」を欧文字表示した「Moe」)を出所表示として認識される態様により付して、遅くとも2006年1月26日以前から使用している。
上記のカタログ、展示広告、保証書、商品カード、委託伝票、納品書及び請求書が、本件商品に関する取引書類及び広告に該当することは明らかであり、取引書類及び広告における本件商標の表示が「商標の使用」に該当することは、商標法第2条第3項第8号より明白といえる。
また、上記の使用時期(2006年1月26日及び同年2月28日)は、いずれも本件審判請求の予告登録日(平成19年6月1日)より3月以前で且つ3年以内に該当することは明白である。
これにより、被請求人から許諾を受けた者(通常使用権者)が、本件審判請求の予告登録日より3月以前で且つ3年以内に、本件商標に係る指定商品のいずれかについて、本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標を使用した事実は、十分証明されたものと判断されて然るべきである。
(1)本件商標の通常使用権
通常使用権の許諾は口答ないし黙示の意思表示でも足りるものと解されており(取消2007−300195号審決、乙第19号証)、商標登録原簿に、通常使用権の登録がなされていないとしても、その商標使用権許諾の契約の存在が否定されるものではない(取消2006−31227号審決、乙第20号証)。被請求人とラパールドリエントの間には、明示的にせよ黙示的にせよ商標使用許諾契約が締結されていることが容易に推認される(乙第1、第2、第4、第5及び第21号証)。
請求人は、ラパールドリエントの通常使用権が第三者に対抗し得ないと述べているが、根拠として挙げた特許法第99条第3項は通常使用権が変動等した場合の規定であり、通常使用権の発生に関わる規定ではなく、このため、商標権者である被請求人から許諾を受けて発生したラパールドリエントの通常使用権に関わるものではない。
商標法第50条第1項の「通常使用権者」とは、『登録されていない通常使用権者でも使用している事実が立証されれば、不使用取消しは免れることができると解すべきであり、実務上もそのように判断されている。』(網野誠著「商標/第6版」887頁、乙第22号証)。(2)被請求人の本店所在地
請求人は、被請求人の提出に係る乙第1号証(被請求人の履歴事項全部証明書)に記載の本店所在地「神戸市中央区生田町一丁目4番1号」が、商標登録原簿(甲第1号証)の住所と相違している点を指摘しているが、答弁書提出前に、本件商標の登録名義人の住所を乙第1号証に示す登記簿上の上記住所と一致させるための表示変更登録申請書を提出しており(乙第23号証)、平成19年12月12日に商標登録原簿上の住所も変更されている(乙第24号証)。
(3)被請求人及びラパールドリエントの会社案内
請求人は、乙第2号証(被請求人及びラパールドリエントの会社案内)のラパールドリエントの表示「有限会社ラパールドリエント」が組織変更前の社名「有限会社ラ・パール・ドリエント」(乙第4号証)と不一致であること、このため、乙第2号証が相当古くに作成されたものであることを指摘しているが、両表示の差異は僅かに「・(中点)」の有無にすぎず、乙第2号証の「会社概要」の「沿革」に「2000年オリエントパール株式会社はパールベトナムからベトナムで養殖されたアコヤ真珠、南洋真珠に関して最初に買付ける権利を取得」したことが紹介されていることからも明らかなように、乙第2号証は2000年以降に印刷されたものであるから、乙第2号証が相当古くに作成されたものとは到底言い得ない。
なお、被請求人は、この度、被請求人及びラパールドリエントの会社案内を更新したので、乙第21号証として提出する。
(4)商品の輸出と商標の使用
請求人は、弁駁の理由2(2)(ウ)において、「商品の輸出は、商標の使用に該当しないものである」と主張しているが、商標法第2条第3項第2号に規定された標章についての「使用」には、「商品又は商品の包装に標章を付したものを輸出する行為」が挙げられている。このため、商品の輸出が我が国における商標の使用に該当することは明らかであり、請求人の上記主張は商標法の解釈を誤ったものと言わざるを得ない。
(5)本件商品の商品カタログにおける本件商標の使用
請求人は、本件商品が本件審理に係る指定商品「身飾品,宝玉及びその模造品」に含まれること、及び乙第6及び第8ないし第18号証における「萌」の表示が本件商標と同一又は社会通念上同一であることは争っていないものの、弁駁の理由2(2)(オ)において、乙第6号証(ラパールドリエントの商品カタログ)の5頁目右下の“萌”の表示は、「提出時に朱肉で押印したことが明らかである」と主張し、その根拠として、朱肉が上質用紙に馴染まず、こすれて滲んでおり、4頁目左下へ転写される如く汚れている点を挙げている。
しかしながら、朱肉で押印した直後に押印面に紙を重ねた場合、朱肉がこすれて滲んだり、紙に朱肉が転写されることは経験則上明らかであり、乙第6号証のように朱肉が浸み込みにくい上質用紙であればその現象はより顕著に現れる。
乙第6号証の“萌”の表示がこすれて惨んだり、転写されているのは、押印後に商品カタログを閉じたためであり、同様の上質用紙に朱肉押印した乙第10号証においても同様のこすれ・滲みが生じていることから、請求人が主張するような上記事実をもって、乙第6号証のみが提出時に朱肉押印されたものとは判断されるものではない。
(6)ラパールドリエントのショールーム写真及び本件商品写真
請求人は、弁駁の理由2(2)(キ)において、乙第8号証(ラパールドリエントのショールーム写真及び本件商品写真)の本件商品の展示写真について、「商品を陳列した右横に、“萌”の字を書した札を置いて撮影したものであるが、極めて不自然な構図である」と主張しているが、真珠をはじめとする宝飾品をショーケースに陳列し、そのすぐ横にブランドを付した札やプレートを配置することは、全国の百貨店やデパートのジュエリー・コーナー(フロア)、宝飾品店等において極めて一般に採用されている。
(7)朱色に刻印された「萌」の一文字による本件商標の使用
請求人は、弁駁の理由2(2)(ケ)において、乙第10号証(本件商品の包装状態を現す写真)の保証書(CERTIFICATE OF INTERNATIONALGUARANTEE)の右下部分に朱肉押印された“萌”の角印は、「極めて不自然なものである」と主張し、また同様に、弁駁の理由2(2)(サ)及び(ス)において、乙第6及び第12号ないし第18号証の証拠資料に表示された朱肉で押印された“萌”の角印は「極めて不自然」であると主張している。
商号や出所標識等の商標を朱肉で刻印することが、我が国の商慣習上、古来より行われていることは顕著な事実であり、昨今、商標を印字により頻繁に表示する実情が認められるとしても、朱肉により刻印した商標の表示が「極めて不自然」などと解されることはない。
ラパールドリエントが朱肉刻印という敢えて手間隙のかかる表示手法を採用したのは、他の商品にない本件商品の高級感やデザイン性、洗練さを需要者に伝え、本件商標のブランドをアピールする手段として、個々の取引書類や商品カタログ等に“萌”の字を朱肉刻印が望ましいと判断したからである。
(8)乙第12号証(2006年1月26日付け委託伝票)
請求人は弁駁の理由2(2)(シ)において、乙第12及び同第13号証はコピーであり証拠方法能力を欠く等の理由により、商取引の実際を立証するに足るものとはいえない、と主張している。
被請求人は、乙第12及び第13号証が本件商品に係る商取引の実際を十分立証するものであることを裏付けるため、この度、ジュピターショップチャンネル株式会社より乙第12号証の原紙を預かり(乙第25号証の2)、また、同号証にサインをした同社マーチャンダイジングジュエリースーパーバイザーの担当者(小西智子)の確認書を入手したので(乙第25号証の1)、提出する。
なお、乙第25号証の2は、ジュピターショップチャンネル株式会社の保管資料であり、本件審理の終了後には原本を返却する必要があるため、原本については物件提出書により提出する。
乙第25号証の1及び同号証の2により明らかなとおり、乙第12及び第13号証は、本件商品(LOT NO.:4000295430/SC2−7−036、DESCRIPTION:K18 Moe ROPE NEC.)の取引が2006年1月26日に存在したことを示す具体的且つ客観的な資料といえ、このため、当該取引に関連する乙第14号証(2006年2月28日付けINVOICE(納品書兼請求書))も商取引の実際を証するものといえる。
また、乙第25号証の1により、乙第12号証及び同第25号証の2における本件商品の品番(LOT NO.)「400295430」は、正しくは「4000295430」であり、品名(DESCRIPTION)中の「POPE」は、正しくは「ROPE(ロープ)」であることが確認される。
以上のとおり、被請求人から許諾を受けたラパール社は、本件審判請求の予告登録日より3月以前で且つ3年以内に、本件商標の指定商品に属する商品の販売を行っており、当該商品の取引書類及び広告に本件商標「萌」を明瞭に表示することにより、また、本件商標をその指定商品に関する取引書類及び広告に付して頒布することにより、使用している。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消されるべきものではない。
(1)被請求人の提出に係る証拠及びその主張の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(ア)乙第1及び第4号証は、被請求人又はラパール社の登記簿の履歴事項全部証明書の写しと認められるところ、その記載によれば、両者の住所及び代表取締役は同一であり、その目的たる「真珠の加工並びに販売」も同じである。
また、ラパール社のインターネットホームページの写しと認められる乙第5号証には、被請求人がラパール社の関連会社である旨及び「被請求人の成功がラパール社の設立につながった。ラパール社は、独自のショールームや高価な商品を取り扱う他の小売業者を通じた販売活動を通じて、良質な真珠の長年の伝統に貢献し、デザイナー真珠・宝石の創作に取り組んでいる。」旨の記述がされている。
(イ)乙第2号証は、被請求人及び(有)ラパールドリエントの会社案内と認められるところ、その記載内容によれば、両者の住所及び代表取締役は同一である。
(ウ)乙第6号証は、ラパール社の商品カタログと認められるところ、その4頁目に商品の写真の右隣に、「Moe」の表題の下に「ラ・パールのオリジナルブランドに新しく『モエ』が誕生しました。ツインパールの様なとてもキュートなデザインは・・・・」との説明がされ、さらにその下方右隅に四角形中に「萌」の文字を表した標章(以下「使用標章」という。)が付されている。この使用標章は、朱色であり、回りが滲んでいることや反対頁の左下隅に転写されていることなどからすると、上記カタログの印刷作成時とは別に後で印章を押印したものと見るのが自然である。
なお、上記カタログの印刷・発行日を示す記載はなく、その時期は不明である。
(エ)乙第8号証は、ラパール社のショーウィンドー及びその内部の商品展示状態を、本件審判請求の登録後である平成19年9月28日に撮影した写真と認められるところ、商品を展示した脇に「萌」及び「Moe」の文字を二段書きしたカードが置かれている。
(オ)乙第9号証は、ジュピター社のインターネットホームページの写しと認められるところ、その記載内容によれば、同社は、テレビを通じて各種商品を通信販売する業者である。
(カ)乙第10号証は、乙第8号証同様、平成19年9月28日に撮影されたラパール社の商品の包装状態を示す写真と認められるところ、商品保証カードが添えられ、該カードの裏面右下には乙第6号証の商品カタログに示されたものと同様の使用標章が付されているが、この使用標章は、やはり上記カードの印刷時とは別に後で押印されたものとみるのが自然である。
(キ)乙第11号証は、ジュピター社が作成した「Jewelry商品カード」と認められるところ、これには、商品写真と共に、商品基本コード欄に「4000295430」、メーカー品番欄に「SC2−7−036」、メーカー欄に「LA PERALE D’ORIENT CO.LTD.」、原産国欄に「JAPAN」、追記商品情報欄に「萌brand−TAHITIAN PEARL ROPE NECKLACE」との各記載があり、さらに商品の石名、素材、重量、留め具等を記載した下方に「メーカー責任者および印」の欄が設けられ、ローマ字による署名と押印がされ、「ここに記載した商品情報と納入商品(サンプル/本ロット)に相違がないことを証明し保証します。」との記述がある。
なお、上記商品カードの作成・発行日を示す記載はない。
(ク)乙第12号証、乙第15、第17及び第18号証は、ラパール社からジュピター社に宛てられた2007年4月26日、2007年5月18日又は同年7月2日付けの委託伝票の写しと認められる。
なお、乙第12号証中の商品の品番及び商品名は誤記であると第2答弁書で述べ、ジュピター社小西智子による書面(乙第25号証の1)を提出しているが、これらが誤記であることを証するものは提出されていない。
(ケ)乙第13号証は、ジュピター社からラパール社に宛てられた2007年10月9日付けFAX書信の写しと認められところ、その内容は上記乙第15、第17及び第18号証の委託伝票をジュピター社が受領しサインして返送するものである。
(コ)乙第14及び第16号証は、ラパール社からジュピター社に宛てられた2006年2月28日又は2007年5月31付けの納品書兼請求書の写しと認められるところ、乙第14号証の「LOT No.」欄に「4000295430、SC2−7−036」、「DESCRIPTION」欄に「K18 MOE ROPE NEC」の各記載があり、それに重ねるように乙第6号証に示されたものと同様の使用標章が朱色で記されている。
(2)以上の認定事実によれば、商標登録原簿に登録されていないとしても、ラパール社は被請求人の通常使用権者とみて差し支えない。
そして、乙第6号証の商品カタログ及びラパール社から委託販売されたジュピター社の乙第11号証の商品カードは、いずれも印刷・発行日が不明であるとしても、その中に記載された「Moe」及び「モエ」の文字又は「萌(brand)」の文字は、本件商標と社会通念上同一といい得るものである。また、上記商品カタログ及び商品カードには本件商標の指定商品に属する商品と認められるネックレスの写真が掲載されているほか、上記商品カードには「TAHITIAN PEARL ROPE NECKLACE」の名称が記載されており、これらは上記文字が使用されている商品を特定したものといえる。
さらに、上記商品カードに記載された商品番号・記号と乙第14号証の納品書兼請求書に記載された商品番号・記号とが一致していること、乙第13号証のFAX信からして該委託伝票がジュピター社によって受理されたといえることから、少なくとも、2006年2月28日に、上記商品カードで特定された商品「ネックレス」がラパール社からジュピター社に納品されたものというべきである。
同様に、乙第15、第17及び第18号証の委託伝票並びに乙第14及び第16号証の納品書兼請求書中に記載された「SINGLE NEC」、「ROPE NEC」の文字は、本件商標の使用に係る商品を表示したものというべきである。
そして、上記「委託伝票」、「納品書兼請求書」は、取引書類に相当するものであり、これらに表示された「Moe」又は「MOE」の文字は、本件商標と社会通念上同一といい得るものである。
しかしながら、乙第6、第10、第14ないし第18号証において示された使用標章は、本件商標と社会通念上同一といい得るとしても、「萌」の印章を事後に押印したものというべきであり、それ自体は本件商標の使用とはいい難いものである。
(3)以上を総合勘案すると、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者によって、その指定商品中の身飾品について使用されていたものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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