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Trademark Appeal Case

著名商標の略称による混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2006−89179(T2006−89179/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4881500号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1.本件商標

本件登録第4881500号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成16年6月1日に登録出願、第7類「半導体製造装置並びにその部品及び附属品,半導体製造用イオン注入装置及びその部品,半導体製造用洗浄装置,半導体製造用熱処理装置,半導体製造用エッチング装置及びその部品,半導体製造用フォトレジスト処理装置,半導体製造用洗浄・乾燥処理装置,半導体製造用プラズマスパッタリング装置」を指定商品として、同17年7月22日に設定登録されたものである。

第2.請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出している。

1.請求の理由

本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号、同第15号及び同第19号に違反してなされたものであるから、無効とされるべきである

(1)商標法第4条第1項第8号について

請求人は、1837年にフランスにて創業され、バッグ、高級婦人服、アクセサリー等で知られる高級かつ著名なブランドである。そして、請求人の「Hermes」(後半のeは、正確にはeの上には記号「`」が付されている。)及び「エルメス」の各標章は、皮革製品、衣料品、時計、宝飾品その他の主にファッション関連商品の商標であるだけでなく、請求人の名称の略称として永年使用され、日本のみならず世界的に極めて著名である。

他方、本件商標は、明確に2つに区切られた長方形の左半分に「Hermes」を白地に黒で示し、右半分に「Epitek」を黒地に白で示してなるものであるから、本件商標が視覚上「Hermes」の文字部分と「Epitek」の文字部分に分離して看取されることは明らかである。

また、「Epitek」は英和辞典等に見られない綴り字からなり、特段の意味はなく、また、「HermesEpitek」が一体として何らかの意味を有するものでないから、一般の取引者・需要者は、「Hermes」と「Epitek」を分離して把握し、認識し、称呼する可能性が極めて高い。このため、本件商標は、「Hermes」の文字部分のみが独立して想起され、これに相応する「エルメス」の称呼が生じるものである。

さらに、被請求人のウェブサイトのURLは、http://www.hermes.com.twであり、かつ、ウェブサイトの中で被請求人自身が本件商標を社名として使用した上、自己を「Hermes」、自己のグループ会社を「Hermes Group」と略称している(甲第3号証)。したがって、被請求人が取引する指定商品に接した需要者・取引者が、本件商標を「Hermes」と略称することは大いにあり得るところである。

また、「Hermes」及び「エルメス」は、商品を示す商標であるだけでなく、極めて著名なハウスマークであるから、本件商標の指定商品である半導体製造装置等との関係を過度に要求すべきではない。「Hermes」は、ファッション関連商品の需要者のみならず、本件商標の指定商品である半導体製造装置等の需要者の間においても等しく著名であるといい得るものである。

以上のとおり、本件商標は、需要者・取引者に「Hermes」の文字部分のみを想起させ、請求人の著名な略称である「Hermes」をそのまま含むものであるから、商標法第4条第1項第8号に違反する。

(2)商標法第4条第1項第15号について

前記(1)及び平成18年11月24日付異議決定(異議2005−90420)が認めたとおり、本件商標は、需要者・取引者に「Hermes」の文字部分を想起させるものである。

そして、本号の「混同のおそれ」は、商品が非類似で、かつ、商品の生産者、販売者、取扱系統、材料、用途等の関連性を有しない場合であっても認められる場合があるのは、特許庁商標審査基準のとおりである。すなわち、本件商標を指定商品に使用することにより、著名商標の使用者の業務に係る商品であると認識しなくても、当該著名商標の使用者との間に、親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係または同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係が存在すると誤信されるおそれがある場合も本号に該当するものである。

そして、前記(1)で述べたとおり、「Hermes」は、請求人の商品を示す商標であるだけでなく、請求人の極めて著名なハウスマークである。また、請求人は、ファッション分野だけでなく1980年代にはテーブルウエアの分野に進出するなど、業務の多角化を進めているところである。

しかも、前記のとおり、本件商標のうち「Hermes」の文字部分のみが看者の注意を惹くことがあるのは明らかである上、実際、被請求人は自らを「Hermes」と称しており、取引上もこのような略称を使用するものと考えられることから、本件商標が指定商品に使用された場合、これに接した需要者・取引者が、「Hermes」に着目し、請求人の「Hermes」を想起、連想し、請求人と何らかの営業上または資本上の関係がある者の業務に係る商品ではないかと混同するおそれは極めて高い。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反する。

(3)商標法4条1項19号について

「Hermes」及び「エルメス」は、日本だけでなく世界的に著名な請求人の商標であって、本件商標に接した需要者が「Hermes」を想起する可能性が極めて高いことは、前記(1)で述べたとおりである。

さらに、前記(1)のとおり、被請求人自身が自己のウェブサイトのURLに「Hermes」を用い、自己を「Hermes」、自己のグループ会社を「Hermes Group」と略称しているのである。これは、被請求人が請求人にかかる「Hermes」の著名性を認識した上で、その名声や信用性を不当に利用する意図を明白に伺わせるものである。

また、被請求人は、現在台湾だけでなくシンガポール、マレーシアにもグループ会社を有する上、2007年より中国に進出する模様であり(甲第3号証)、今後日本に進出する可能性は否定できない。この際に、被請求人が自己の略称として「Hermes」を名乗るおそれは極めて高く、この場合に、被請求人が「Hermes」と称することにより請求人が被る出所表示機能の希釈化による被害は計り知れないものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反する。

2.弁駁

被請求人は、答弁書において、「エルメス」又は「Hermes」は、本件商標の指定商品の分野では無名であると主張するが、商標法第4条第1項第8号の趣旨は、人格権の保護にあるから、著名性の判断においては、特定の商品の取引者、需要者に広く知られているかではなく、その名称が特定人を表示するものとして世間一般に知られているかを問題とすべきである(平成14年6月26日東京高裁判決)。

また、「エルメス」がファッション関連の商品に永年使用され、当該分野で著名であることは被請求人も認めるところであるが、ここで重要なのは、「エルメス」は、ファッション関連の商品のみに使用される商品商標ではなく、請求人の社名でありハウスマークであることである。そして、請求人は、高級ブランドとして全世界的に著名であり、特に近年の売上高の増加はめざましく、2004年における売上高は約10年間前に比して倍増しているほどである。とりわけ、日本の市場は請求人にとって最重要市場のひとつであり、日本における売上高は請求人の本国であるフランスをも凌駕し、世界の売上高の30%を占める程である(甲第4号証)。このように、請求人は、日本において極めて高い売上をあげているだけでなく、直営店及び系列店をあわせて42店舗を有しており、この標章を知らない者がいることは、どの分野の商品の需要者においても考えられず、半導体製造装置等の需要者においても「Hermes」が広く知られているというべきである。

さらに、被請求人は、本件商標が本件商標の指定商品である半導体製造装置等の出所表示としてその取引者・需要者間で広く知られていると主張するが、被請求人は、台湾で設立され、台湾で半導体製造装置等を製造、販売する会社であって、現在、日本において一切業務を行っていない。したがって、国内において本件商標が被請求人の出所表示として周知であるとはいえない。また、乙第6号証は、一般的とはいえない「特別調査レポート」であるだけでなく、「台湾の半導体・FPD産業」のみをテーマとする極めて特殊な書籍である。このような書籍に掲載されている企業がすべて、日本における半導体製造装置等の取引者・需要者間で周知であることはありえない。

第3.被請求人の答弁

被請求人は、本件商標の登録を無効とすることはできない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証を提出している。

(1)商標法第4条第1項第8号について

特許庁商標審査基準によれば、商標法第4条第1項第8号の審査において、「著名の程度の判断については商品又は役務との関係を考慮するものとする。」旨が記載されている(特許庁商標審査基準第3.六、第4条第1項第8号)。本件商標の指定商品は、「半導体製造装置並びにその部品及び附属品,半導体製造用イオン注入装置及びその部品,半導体製造用洗浄装置,半導体製造用熱処理装置,半導体製造用エッチング装置及びその部品,半導体製造用フォトレジスト処理装置,半導体製造用洗浄・乾燥処理装置,半導体製造用プラズマスパッタリング装置(以下、「半導体製造装置等」という。)」である。

確かに、請求人商標は、請求人の業務分野「皮革製品・衣料品・時計・宝飾品その他の主にファッション関連商品(以下、ファッション関連商品という。)」においては世界的に著名な商標であるかも知れないが、半導体製造装置等の分野では無名である。ファッション関連商品と半導体製造装置等とは、生産者・販売店をはじめ需要者等も全く異にする商品であり製品の製造過程においても全く共通するところが無く、請求人商標は、半導体製造装置等についての著名商標といえるだけの出所表示機能及び品質保証機能を発揮し得ない。

一方、被請求人は1977年に設立(乙第2号証)以来、今日まで継続して本件商標の構成文字「Hermes Epitek」を商号商標として使用し半導体製造装置等を製造・販売している。その結果、本件商標は、被請求人の半導体製造装置等の出所表示・品質保証表示として取引者・需要者間で広く知られており、その名声は被請求人の会長兼CEOのアーチー・ファン(Archie Hwang)氏が半導体製造装置等に係る企業の国際的な工業会であるSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)の会長として選出されるほど高く評価されるに至っている(乙第3号証)。また、本件商標は、半導体製造機械器具等に係る被請求人の商号商標として認識され、我が国の出版物において掲載されるに至っている(乙第6号証)。

以上の半導体製造装置等分野の取引の実情を斟酌すれば、請求人商標が半導体製造機械器具等の出所表示として著名ではないことは明らかである。

前記のとおり、本件商標は、被請求人の商号商標として理解・認識され、構成文字全体で半導体製造装置等に係る出所表示・品質保証表示として取引者・需要者間で広く知られるに至っている。本件商標は、長方形内の左半分を白地にして、該部分に「Hermes」の語を黒の文字で表し、右半分を黒字にして、該部分に「Epitek」の語を白抜きの文字で表してなるものである。そして、各構成文字は同書・同大の文字で外観上まとまりよく一体的に表現されており、「Hermes」と「Epitek」の文字との間に特に軽重の差はなく、これより生ずる「ヘルメスエピテク」の称呼もよどみなく一気一連に称呼しうるものであるから、本件商標は構成文字全体に相応して「ヘルメスエピテク」の称呼を生じるものというべきである。

以上の点を総合的に判断すると、半導体製造装置等の取引者・需要者間においては、本件商標の構成文字は、被請求人の商号商標として揮然一体に結合した商標としてのみ認識され、本件商標が著名な他人の略称を含む商標であると認識されるものではないことは明らかである。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当しない。

(2)商標法第4条第1項第15号について

本件商標は、被請求人の商号商標として半導体製造装置等の取引者・需要者間で広く知られるに至っている点、また、本件商標から生ずる称呼は「ヘルメスエピテク」のみであると認定されるべき取引の実情が存在する点は、それぞれ前記(1)に述べたとおりである。

一方、請求人商標は、その構成文字に相応して「エルメス」の称呼が生ずるものである。

そこで、本件商標と請求人商標の称呼を対比すると、その音構成において明らかな差異を有するものであるから、称呼において非類似である。

また、外観においても明らかな差異があり、観念においても本件商標は「半導体製造機械器具等」分野において広く知られた被請求人商号であるとの意味が認められるべきものである。

したがって、本件商標と請求人商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標である。

さらに、本件商標の指定商品「半導体製造機械器具等」と申立人の業務に係る「ファッション関連商品」とは、生産者、販売店をはじめ需要者等を全く異にする別異の商品である点は平成18年9月4日付異議決定(異議2005−90545)(乙第7号証)のとおりである。

また、請求人の業務であるファッション関連商品業務は、半導体製造機械器具等と全く共通・関連するところがなく、請求人のウェブサイトにおいても半導体製造機械器具等と関連するような商品は広告されておらず(乙第9号証)、更には請求人の日本法人に係る法人登記簿の目的欄においても半導体製造機械器具等に関連する業務は記載されていない(乙第10号証)。請求人は半導体製造機械器具等と出所の混同を生じうる業務について全く行った経験もなく具体的な予定もしていないものと考えられる。

前記において述べた点を考慮すると、本件商標を指定商品「半導体製造機械器具等」に使用しても、これに接する取引者・需要者をして請求人商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有するものの業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(3)商標法第4条第1項第19号について

本件商標は、1977年の設立以来、指定商品「半導体製造機械器具等」について被請求人の商号商標として、今日まで継続して使用された結果、半導体製造機械器具等の出所表示・品質保証表示として高い信用を得て、独自の顧客吸引力を獲得している点は前記(1)及び(2)において述べたとおりである。

また、本件商標と請求人商標は、別個独立に、かつ、相互不可侵にそれぞれの商品に対しての顧客吸引力を発揮しており、現実の取引において本件商標を指定商品「半導体製造機械器具等」に使用しても請求人商標との出所の混同は生じておらず健全な取引秩序が形成されている。

さらに、請求人には、半導体製造機械器具等について我が国に進出する具体的計画を有している事実は見受けられない。

したがって、本件商標は請求人商標と非類似の商標であり、かつ、不正の目的をもって使用するものではないことは明らかである。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当しない。

以上のとおり、請求人が主張する理由によって、本件商標の登録を無効とすることはできない。

第4.当審の判断

請求人の主張及びその提出に係る証拠によれば、請求人(「エルメス アンテルナショナル」)は、1837年にフランスにて創業され、バッグ、高級婦人服、アクセサリー等を取り扱う事業者であって、請求人の使用する「Hermes」(後半のeには、仏語のアクサン記号「`」が付されている。)及び「エルメス」の標章(以下、これらをまとめて「引用標章」という。)は、その取扱いに係るバッグ、ベルト等の皮革製品を始め、衣料品、香水、時計、宝飾品等のいわゆるファッション関連商品について永年使用され、本件商標の登録出願時には、請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の取引者・需要者間において広く認識されていたものと認められる。さらに、引用標章は、商品を示す商標であるだけでなく、著名なハウスマークでもあり、本件商標の登録出願時には、請求人を指称する著名な略称として、ファッション関連商品の需要者のみならず、一般に認識され受け入れられているものと認められる。そして、これらの状態は、本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。

しかして、本件商標は、別掲のとおり、明確に2つに区切られた長方形の左半分に「Hermes」を白地に黒で示し、右半分に「Epitek」を黒地に白で示してなるものであるから、視覚上、「Hermes」の文字部分と「Epitek」の文字部分に分離して看取されるものである。

さらに、構成中の「Epitek」の文字は、既成の親しまれた観念を有する語とはいえず、これと「Hermes」の文字とを結合して熟語的意味合いが生ずるものでもないことから、両文字部分は、常に一体不可分のものとしてのみ認識し把握されるとはいえない。

これに対し、被請求人は、本件商標は、被請求人の商号商標として半導体製造装置等の取引者・需要者間で広く知られていることから、本件商標は一体のものと捉えるべきである旨主張するが、被請求人の提出した証拠からは、被請求人が日本国内において半導体製造装置等の商品について本件商標を使用している事実を確認することができないから、本件商標が日本国内において被請求人の商標として著名であると認めることはできない。

そうすると、本件商標は、「Hermes」の文字部分が独立して看者の注意を強く惹くものというべきである。また、この「Hermes」の文字部分は、欧文字からなる引用標章と仏語のアクサン記号を除き、同一の綴りからなるものである。

してみると、本件の指定商品がファッション関連商品とは関係の少ない半導体製造装置等であることを考慮するとしても、引用標章が極めて高い著名性を有していること、昨今の企業の多くが多角経営化の傾向にあること、本件商標と欧文字からなる引用標章とは仏語のアクサン記号を除き、同一の綴りからなり、そのアクサン記号も余り目立つものではなく、アクサン記号が無くても引用標章の著名性から「エルメス」と称呼される場合があり得ること等を総合勘案すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する需要者は、その構成中の「Hermes」の文字部分に注目し、周知著名となっている引用標章を連想・想起し、該商品が請求人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがあるものといわなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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