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Trademark Appeal Case

称呼類似と先使用

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2007−890066(T2007−890066/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4570427号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおり「PRO」と「TEC」の各欧文字を上下二段に横書きし、該「C」の欧文字の右間隙部にやや重なるように3個の交差した楕円軌道様の図形を配した構成からなり、平成11年11月1日に登録出願され、第1類「エンジンオイル用添加剤,ガソリン燃料用添加剤,ディーゼル燃料用添加剤,ラジエーター冷却液用添加剤,ラジエーターの水漏れ防止剤」を指定商品として、同14年4月19日に登録査定、同年5月24日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第17号証(枝番を含む。)を提出している。

1 請求の理由

(1)商標の類似について

請求人の所有する商標(以下「引用商標」という。)は、甲第9、第10、第12ないし第15号証に示されているように、「Pro.」と「Tec」の欧文字を横二段に併記し、これを内包するように二つの肉太半円形矢印で環状枠にした図形とを組み合わせた構成(別掲(2))よりなるものであり、「潤滑剤用添加剤」(製品名称:「PROTEC XL−17」、「PROTEC XL−240(同スプレー剤)」、「PROTEC XEP−17(車両用)」、「PROTEC XEP−17R(車両用改良)」、「PROTEC Lithium EP Grease #1(グリース)」、「PROTEC Lithium EP Grease #2(グリース))に使用され、本件商標の登録出願時において既に周知であり、一方、本件商標は、「PRO」と「TEC」の欧文字と図形から構成されており(甲第1号証)、両者とも「プロテック」の称呼を生じ、また、その使用する商品は本件商標の指定商品「エンジンオイル用添加剤,ガソリン燃料用添加剤,ティーゼル燃料用添加剤」とは類似であるから、両商標は称呼類似の関係にある。

(2)引用商標の使用について

請求人は、履歴事項全部証明書(甲第2号証)及び閉鎖事項全部証明書(甲第3号証)から明らかなように、平成18年5月1日にJBSインターナショナル有限会社(以下「JBS社」という。)を吸収合併したものであり、合併前の1987年より製造元の米国「Pro Tec International.,inc(元Professional Tecnolby of America.,inc」より、製造元管理及び輸出委託の「Laxon Corporation.,inc(米国)」(以下「Laxon社」という。)を介して「潤滑油添加剤」を輸入し、上記した製品として詰め替え出荷していた。JBS社がLaxon社からプロテク製品を購入していたことは、一群の浜松信用金庫外国送金依頼書(1999年5月27日、1998年11月26日、1997年1月21日、1996年11月26日、1995年1月26日、1994年11月29日、1994年9月13日、1994年7月22日:甲第17号証)から明らかである。

出荷された製品は、日本総代理店である「有限会社サンセイカンパニー」(以下「サンセイ社」という。)、さらに、全国各地の代理店(三井物産株式会社、豊田通商株式会社、杉本商事、藤川電動機等多数)を介して最終ユーザー(住友金属工業株式会社、トヨタ自動車株式会社他各自動社メーカー、及び二輪車メーカー、東レ、赤坂鉄鋼、積水、デンソー、ジャトコ、TDK、日立製作所、アイシン他多数あり)に販売されている。

請求人による輸入、詰め替え、出荷の各作業は現在も継続して行われており、当然、本件商標の登録出願時には行われていた。なお、出荷前の製品は、遠州トラック株式会社(以下「遠州トラック社」という。)の倉庫に保管されていた(1999年1月30日付け、1998年1月31日付け、1997年1月31日付けの各在庫証明書:甲第4ないし第6号証、及び1997年7月16日付けの送り状:甲第7号証)。

JBS社は、上記したように「PRO./TEC」の文字の付された上記製品を、国内において製造し、国内全域、韓国及び中国において販売し、少なくとも1987年から本件商標の登録出願時(平成11年11月1日)までに、毎年、製品名称「PROTEC XL−17(5000cc)」を950本、「PROTEC XL−240(420cc)」を7,100本、「PROTEC XEP−17(250cc)」と「PROTEC XEP−17R(250cc)」を併せて5,000本、「PROTEC Lithium EP Grease #1(16kg)」と「PROTEC Lithium EP Grease #2(400kg)」を併せて10,000本位を製造販売している。

請求人は、年2ないし3回これらの製品のダンボールケースの製造を有限会社サンワパッケージ(以下「サンワ社」という。)に依頼している(1999年1月31日付け依頼先の請求書:甲第8号証)。これを参照すると、XEP−17ダンボール(24本詰め)を110個、XL−17(4本詰め)を108個製造したことが明確であり、これらのダンボールケースの個数からXEP−17は5,280〜7,920本、XL−17は864〜1,296本製造されたことが明らかである。

他の製品についてもサンワ社の請求書を提出する用意はある。なお、必要とあらば、上記製品の日本総代理店であるサンセイ社からJBS社への注文伝票、サンセイ社への納入伝票、また、JBS社の商業帳簿を提出することも可能である。

1987年2月26日付け日経新聞(甲第9号証)にJBS社の製品「XEP−17」について、品質・効能等がその商標とともに掲載されている。

1998年7月27日発行の月刊誌「PLANT ENGINEER 8月号」(日本プラントメンテナンス協会発行:甲第10号証)に「プロテクXL−17」について商標とともに製品の品質・効能・用途等が明記された宣伝広告が掲載されている。なお、この雑誌の発行部数は約2万部であり、JBS社は、1991年11月1日まで、少なくとも過去5年間にわたり毎月この広告を掲載した。参考までに、この広告代理店である「株式会社イッツ」の請求書(1998年12月31日付け:甲第11号証)を添付する。

その他、同様な宣伝広告を、雑誌、潤滑通信(潤滑通信株式会社発行)、メインテナンス(科学図書出版発行)等に連載しないまでも部分的に多数掲載している。

JBS社の上記製品についてのカタログには広告デザイナー(CSCデザイン株、木村氏)による「H4 3/2 10,000 増刷」のメモ書き(甲第12号証)、別のカタログには同「’91.1.31 10,000部増刷」のメモ書きが見られる(甲第13号証)。これらのメモ書きからすると、少なくとも平成4年3月2日以降、及び1991年1月31日以降に当該カタログがそれぞれ10000万部刷られたことが推測される。

JBS社の上記製品の掲載されたチラシNo.1(甲第14号証)には、1988年2月20日付けで、同月14日に開始された「鈴鹿フレッシュマン・トロフィーレース第1戦」に当該製品が使用されたことが掲載されているとともに当該製品の写真・効能が掲載されており、このチラシは、No.4まで続いた。

JBS社の上記製品の総代理店であるサンセイ社の平成11年3月31日付け請求書(甲第15号証)には、「省エネ機械オイル,ANTI−FRICTION METAL TREATMENT」の文字とともにJBS社の引用商標が記載されている。サンセイ社は、この請求書を少なくとも本件商標の登録出願前7年間使用していたものである。

JBS社の上記製品に係るステッカー(写し:甲第16号証)は、当該製品の製造販売当初より使用しているものであり、本件商標の登録出願前に少なくとも10万部以上は配付されている。

その他、JBS社の上記製品に係る人員全ての名刺には、引用商標が記載され、当該製品の製造・販売当初より使用されているものであり、本件商標の登録出願前にかなりの枚数が配付されていると思われる。

以上説明したように、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。

2 弁駁の理由

(1)利害関係について

請求人は、引用商標を本件商標の登録出願前から継続的に使用し、現在も使用している。また、現在、商標登録出願をし、本件商標が引用されて拒絶理由通知を受けている。

本件商標が無効になるか否かについて請求人は利害関係を有し請求人適格を有することは明確である。

(2)引用商標の使用について

甲第9号証については、画像の鮮明な写真を追加提出する(甲第9号証の2)。これに掲載の写真は、甲第12ないし第14号証に掲載された製品と同じものであり、引用商標が製品「XEP−17」(オイル添加剤)についての品質・効能等とともに使用されていることは明確である。

甲第10号証には、製品「プロテクXL17」との関係において引用商標が記載されており、その使用方法として「圧延機の軸受箱潤滑油(オイルミスト)に7%添加する。」と記載されているから、使用商品は「オイル添加剤」と判断できる。

甲第14号証には、引用商標が製品「XEP−17」(オイル添加剤)との関係について記載されており、その製品についての写真が左下領域に掲載されている。そして、この写真は、甲第9、第12及び第13号証に掲載されたものと同じであり、使用商品が「オイル添加剤」と判断することに無理はない。

甲第15号証はサンセイ社の請求書であるが、この請求書に限り、宛て名がたまたまJBS社宛になっているが、この製品を各代理店に販売する際にはこの請求書が使用されていることに間違いないものである。なお、引用商標との関連で商品名として「省エネ燃焼オイル」とともに「ANTI−FRICTION METALTREATMENT(金属への摩擦防止処理)」と記載されており、この記載事項は甲第9、第12ないし第14号証に掲載されたものと同じものであり、使用商品が「オイル添加剤」と判断することに無理はない。

なお、甲第15号証に記載された商標は、請求人の所有に係るものである。

甲第16号証のステッカーには、引用商標との関係において製品「XEP−17」(オイル添加剤)並びに「ANTI−FRICTION」及び「METALTREATMENT」の文字が記載されている。製品「XEP−17」が「オイル添加剤」の製品名であることは甲第9、第12ないし第14号証から明確であって、また、「ANTI−FRICTION」及び「METALTREATMENT」の文字がその効能を表示していることも明確であるから、使用商品が「オイル添加剤」と判断することに無理はない。

請求人は、「潤滑油添加剤(オイル添加剤)」の標章として、引用商標を使用していたことは、甲第9、第12ないし第14号証から明確であって、その取扱上において当該商品を表示する方法として、引用商標又はその称呼「プロテク」を使用することは社会通念上通常のことである。

よって、商品「潤滑油添加剤(オイル添加剤)」を「プロテク」の用語で表示した甲第17号証と、第9、第12ないし第14号証との関連性は明確である。

また、商品「潤滑油添加剤(オイル添加剤)」を「PROTEC」の用語で表示した甲第4ないし第7号証も同様である。よって、出荷前の製品が、遠州トラック社の倉庫に保管されていたことは明確な事実である。

甲第9ないし第17号証によって、少なくとも、国内全域において、引用商標の付された「潤滑油添加剤(オイル添加剤)」が販売されたことは明確である。

甲第9号証における日付の記載は手書きであるが、追加提出した甲9号証の2(新聞のコピー)によって、発行日を1987年2月26日であることを特定することができる。よって、請求人が本件商標の登録出願時及び査定時に商品「潤滑剤用添加剤」に使用していた事実を裏付ける証拠として適正である。

甲第14号証の第1頁目の右上部にこのチラシの発行日として「88 03」と記載されており、レースの行われた日時を考慮すれば、このチラシの記載日が「1988年2月20日」であることに疑義はない。

第3 被請求人の答弁の要点

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第7号証を提出している。

1 利害関係について

請求人は、本件商標の無効審判を請求する利益に関して、何ら明らかにしていない。そのため、請求人が本件無効審判の請求人適格を有するとは認められない。

したがって、本件無効審判は、請求人適格を有しない者による不適法な請求であって、却下されるべきである。

2 引用商標の使用について

請求人の主張内容を検討しても、本件商標の登録出願時及び査定時において引用商標が需要者間において広く知られていたと認められる事実は存在しない。すなわち、引用商標は、商標法第4条第1項第10号に規定されるいわゆる「周知商標」に該当するものではない。

(1)甲第4ないし第17号証は日付の記載されていないものがあり、たとえ日付が記載されていたとしても、その日付がいずれも本件商標の出願日よりも前であり、少なくとも本件商標の査定時における引用商標の周知性を裏付ける証拠は存在しない。

また、甲各号証のうち、引用商標及び使用商品が記載された証拠は、わずかに甲第12及び第13号証のみであり、これらの配布時期及び配布数量などを裏付けるものはない。

(a)甲第4ないし第7号証には、品名として「PAR OIL 57−61(ドラム)」、「PROTECグリースカートリッジ」などの記載があるが、これらの記載に関連する事項は、甲第12及び第13号証には記載されておらず、甲第4ないし第7号証と甲第12及び第13号証の関連性を裏付けることはできない。

また、甲第4ないし第7号証に記載された荷物は、「出荷元」及び「出荷先」がいずれも不明であり、JBS社から出荷された荷物であるか不明である。さらに、その荷物に引用商標が付されていること、その荷物が潤滑油添加剤であることを特定できる記載は見当たらない。

(b)甲第8号証は、1回の製造依頼の事実しか特定できないため、「年2〜3回これらの製品のダンボールケースの製造を依頼している。」との主張を裏付けるものではなく、そのため、ダンボールケースの数量に基づく製品の製造数量に関する主張には理由がない。また、そのダンボールケースに引用商標が付されているか否か、その内容物が潤滑剤用添加剤であるか否かを特定できる記載も見当たらない。

(c)甲第9号証の写真は、その画像が粗く引用商標を確認をすることはできない。

(d)甲第10号証は、引用商標と思われる標章が、黒で塗りつぶされた四角枠の中に白色で記載されていることが確認できるが、商品名が明記されていないため、広告の対象となる商品が不明である。

また、請求人は、「1991年11月1日まで、少なくとも過去5年間にわたり毎月この広告を掲載した」旨主張するが、これを裏付ける証拠が提出されていないため、請求人の主張には理由がない。

なお、甲第10号証の雑誌「プラントエンジニア」は、一般書店の店頭で購入可能な一般向け雑誌ではなく、これを購読するためには、社団法人日本プラントメンテナンス協会のJIPMソリューション・出版教育開発事業本部に対して年間購読申込みを行う必要があるため、店頭に並べられる雑誌に比べて、広く一般公衆の目に触れる機会が少ないという特徴があり、この雑誌の購読者は、製造プラントのメンテナンスに従事する者に限定されると考えられる。

他方、潤滑剤用添加剤に関する取引者・需要者には、このような分野に従事する者のみならず、例えば、自動車整備に関する分野に従事する者など他の分野に従事する者が含まれることは明らかであるため、潤滑剤用添加剤に関する取引者・需要者における甲第10号証の購読者の専有割合は大きくないと考えられる。

(e)甲第11号証は、「プラントエンジニア12/24発売に広告を掲載した事実」を裏付けるものであるとしても、12月24日発売のプラントエンジニアに掲載された広告において引用商標が記載されているか否かは不明である。

(f)甲第12及び第13号証には、手書きメモが記載されており、請求人は「少なくとも平成4年3月2日以降、及び1991年1月31日以降に当該カタログがそれぞれ10000万部刷られたことが推測される。」と主張するが、この手書きメモは、本件審判請求時において任意に追記可能なものであることから、日付及び部数を裏付ける証拠能力に欠けるものである。

なお、手書きメモによる日付が「平成4年3月2日」、「1991年1月31日」であることが証明されたとしても、本件商標の登録出願の7年以上も前の時期であり、本件商標の登録出願時における引用商標の周知性を裏付ける根拠とはなり得ない。

(g)甲第14号証は、引用商標と思われる標章を確認できるが、商品名が明記されていないため、チラシの対象となる商品が不明である。

また、「2月20日」との記載により月日は確認できるが、年が不明である。

(h)甲第15号証は、サンセイ社がJBS社宛に発行した請求書であり、そこに何らかの商標が付されていたとしても、その使用はJBS社ではなくサンセイ社である。なお、甲第15号証が請求人による引用商標の使用と仮定したとしても、商品名として「省エネ燃焼オイル」の記載しかなく、「潤滑剤用添加剤」については一切記載されていないものであり、使用商品において非類似である。

(i)甲第16号証は、引用商標と思われる標章は確認できるものの、その商品名が明記されていないため、対象となる商品が不明であり、また、配布時期及び配布数量を裏付ける証拠もない。

(j)甲第17号証においては、送金目的として、「プロテクXL−17(ドラム3本)仕入代金」、「プロテク商品仕入代金」、「プロテクXL−17仕入」、「プロテクXL−240仕入れ」、「プロテクXL−17、グリース仕入代金」、「プロテクXL−17仕入代金」、「商品代金(プロテクXL−17)」及び「商品代金(グリースの仕入)」との記載があるが、「潤滑油添加剤」とは記載されていないため、JBS社が潤滑油添加剤を輸入したという事実を裏付ける証拠とはなり得ない。

(2)請求人は、「請求人による輸入、詰め替え、出荷の各作業は現在も継続して行われており、当然、本件商標の登録出願時には行われていたものである。」と主張するが、請求人による製品詰め替え、出荷の事実を裏付ける証拠は一切提出されていないため、請求人による製品詰め替え、出荷が行われたか否かは不明であり、その開始時期や現在も継続されているか否かについても不明であるから、請求人の主張は理由がない。

また、「PRO./TEC」の付された製品を製造した事実、及びこれら製品を国内全域、韓国及び中国で販売した事実を裏付ける証拠も一切提出されてない。

3 被請求人の製品の流通事実

被請求人の製品は、総輸入代理店である中央自動車工業株式会社(以下「中央自動車」という。)により日本に輸入されている。そして、中央自動車の商品カタログ(乙第4号証)には、被請求人の様々な製品が「PROTECの文字を有する商標」とともに掲載されている。

また、この商品カタログに掲載された被請求人の製品のうち「#3 Fuel Injection Cleaner(フューエルライン クリーナ)」は、「PROTECの文字を有する商標」とともに雑誌「RVmagazine平成11年10月号」(乙第5号証)に紹介されている。

さらに、一般の需要者向けに作製された「プロテック・フューエルラインクリーニングシステム」のチラシ(乙第6号証)においても、「PROTECの文字を有する商標」が記載されており、このチラシは、カー用品店などの店頭に設置されて、一般の需要者向けに配布されるものである。

また、中央自動車は、少なくとも1998年11月4日に、被請求人の製品である「FUEL SYSTEM CLEANER(フューエルシステムクリーナー):280缶」、「APPLICATORS(アプリケーター):10個」、「FUNNELS(ファンネル):10個」を輸入していることが輸入手続に関する書類(乙第7号証)より明らかである。このように、同一の文字(「PROTEC」)を含む商標を使用する者が複数存在する状況下においては、その商標が複数のうち特定の1人の商標であると需要者・取引者間において広く知られているためには、大規模な宣伝広告活動の実施や長期間にわたる広告宣伝活動の実施など特別の事情が存在することが必要と考えられるが、請求人は、そのような特別な事情を裏付ける証拠を提出していない。

第4 当審の判断

1 請求の利益について

請求人は、引用商標を商標登録出願し、本件商標が引用されて拒絶理由通知を受けた旨述べるのみで、その根拠とする出願番号、拒絶理由通知等に関する事項をなんら示すところがない。

そこで、当審において職権により調査したところ、請求人は、引用商標と構成を同じくする商標を第1類「エンジンオイル用添加剤(化学品に属するものに限る。),ガソリン燃料用添加剤(化学品に属するものに限る。),ディーゼル燃料用添加剤(化学品に属するものに限る。)」を指定商品とする登録出願(商願2007−51532)をしており、本件商標が引用された平成19年11月1日付け拒絶理由通知書が送付され、現在、該登録出願は審査に係属していることが認められる。

そうすると、請求人の上記登録出願が本件商標の存在をもって拒絶され得る状態にあるから、請求人は、本件審判の請求人適格を有するものである。

2 商標法第4条第1項第10号について

(1)商標法第4条第3項は、出願された商標が同条第1項第10号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に当該10号に該当しないものについては、同10号の規定を適用しない旨を定めている。

これは、商標法第4条第1項各号所定の商標登録を受けることができない商標に当たるかどうかを判断する基準時が、原則として登録査定又は拒絶査定の時(拒絶査定に対する審判が請求された場合には、これに対する審決の時。以下「査定時」という。)であることを前提として、出願時には、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標(以下「周知商標」という。)又はこれに類似する商標に当たらず、同項第10号に該当しなかった商標につき、その後、査定時までの間に、出願された商標と同一又は類似の他人の周知商標が現れたりするなどの出願人の関与し得ない客観的事情の変化が生じたため、その商標が同号に該当することとなった場合に、当該出願人が商標登録を受けられないとするのは相当ではないことから、このような場合には商標登録を認めるものとする趣旨の規定であると解される。

そうすると、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当し、その登録を取り消すためには、本件商標がその登録出願時(平成11年11月1日)及び登録査定時(同14年4月19日)のいずれにおいても同号に該当しなければならないものである。

(2)請求人の提出に係る証拠及び請求並びに弁駁の理由の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(a)請求人は、昭和60年5月に設立され、その後、平成18年5月にJBS社を吸収合併し、現在に至っている(甲第2及び第3号証)。

(b)甲第4ないし第6号証は、平成9年1月31日、同10年1月30日及び同11年1月30日における遠州トラック社によるJBS社宛の在庫証明書の写しであり、品名の欄に「PROTEC グリース カートリッジ」、「PROTEC XL−21」、「PROTEC XL−17(ドラム)」、「PROTEC XL−240(ケース)」及び「PROTEC 2−CYCLE(ケース)」等の記載が認められる。

(c)甲第7号証は、遠州トラック社によるJBS社宛の「送り状(3)」と題する書面の写しであり、「納入日 97年7月16日」、品名・規格の欄に「PROTEC XL−17(ドラム)」の記載が認められる。

(d)甲第8号証は、サンワ社によるJBS社宛の「請求書」と題する書面の写しであり、「99年1月31日締切分」、品名の欄に「XEP−17 ダンボール」及び「XL−17 ダンボール」の記載が認められる。

そして、請求人は、製品のダンボールケースを年2ないし3回製造依頼をしており、甲第8号証を参照するとXEP−17は5,280〜7,920本、XL−17は864〜1,296本製造されたと主張するが、同号証をもって、1年間に2ないし3回ダンボールケースの製造依頼をしたものと認めることができないばかりか、請求人主張の数量とおり上記製品が製造、販売されたことを裏付ける証左ということもできず、ほかに請求人が上記製品を製造、販売したことを裏付ける証左もない。

(e)甲第9号証(同号証の2を含む。)は、昭和62年(1987年)2月26日発行の日本経済新聞の写しであり、「JBS社は米国のプロテク・インターナショナル社から総販売代理権を取得、オイル添加剤『プロテク』の販売に乗り出した。」との記載が認められる。

なお、請求人は、そこに掲載された製品の写真に引用商標が付されていると主張するが、該写真は鮮明ではないため、引用商標を確認することはできない。

(f)甲第10号証は、平成10年(1988年)7月27日発行の雑誌「PLANT ENGINEER」に掲載された広告の写しであり、引用商標、「プロテクXL−17」、「[使用方法]圧延機の軸受箱潤滑油(オイルミスト)に7%添加する。」、「製造元:PROTEC INTERNATIONAL,INC.」及び「総代理店:JBSインターナショナル(有)」等の記載が認められる。

(g)甲第12ないし第14号証は、商品カタログ、チラシの写しであり、いずれにも引用商標、JBS社の商号を欧文字で表記したと認められる「輸入元:JBS INTERNATIONAL,CO.,LTD」が記載され、同第12及び第13号証には、「プロテクXEP−17は、(中略)画期的なモーターオイル添加剤です。」、「製造元:PROTEC INTERNATIONAL,INC.」等、同第14号証には、「88/03」及び「プロテクXEP−17」等の各記載が認められるが、これら商品カタログ等の配布期間及び配布数量等を裏付ける証左はない。

なお、甲第12及び第13号証には、手書きによる「H4 3/2 10,000増刷」、「’91.1.31 10,000増刷」の文字の記載が認められるが、請求人は、これらによって、平成3年(1991年)以降及び同4年(1992年)以降に各10000万部を印刷されたと主張する。

しかし、手書きによる文字を記載した時期が不明であることに加えて、該商品カタログの発注、納品及び配布を裏付ける証左がないことは上記のとおりであり、「10000万部」との主張は、手書きによる「10,000増刷」の文字との関係から「1万部」の誤記とも解されるが、いずれにしても、請求人の主張を裏付ける証左はない。

(h)甲第15号証は、サンセイ社によるJBS社宛の「御請求書」と題する書面の写しであり、「H11年3月31日」、引用商標、「Pro・Tec」の文字及び「省エネ燃焼オイル」の記載が認められる。この引用商標及び「Pro・Tec」は、サンセイ社により使用されたものといい得るところ、請求人は、サンセイ社が甲第14号証のチラシに掲載された商品の総代理店であり、同社はこの請求書を本件商標の登録出願前7年間に使用していたと主張するが、これを裏付ける証左はない。

(i)甲第16号証は、引用商標及び「XEP−17」等が記載されたステッカーの写しである。なお、請求人はこのステッカーを本件商標の登録出願前に10万部以上配布したと主張するがその証左はない。

(j)甲第17号証は、平成6年(1994年)7月22日から同11年(1999年)5月までにJBS社がLaxon社に送金した外国送金依頼書の写しであり、送金目的の欄には、「プロテクXL−17(ドラム3本)仕入代金」、「プロテクXL−17仕入れ」及び「プロテクXL−240仕入れ」等の記載が認められる。

以上の事実を総合すれば、請求人が吸収合併したJBS社は、昭和62年から平成11年の間に米国在のPROTEC INTERNATIONAL,INC.から「PROTEC XL−17」等のオイル添加剤を輸入、販売し、その商品に引用商標、「PROTEC」の欧文字又は「プロテク」の片仮名文字(以下、「引用商標等」という。)を使用していたことが認められる。

しかしながら、引用商標等の使用時期についてみると、宣伝、広告に関するものでは、平成10年(1998年)7月に発行された雑誌の広告(甲第10号証)以外のものは、いずれも本件商標の登録出願時(同11年11月1日)より7年以上も前のもの(甲第9、第12ないし第14号証)であり、さらに、本件商標の登録査定時(同14年4月19日)に至る引用商標等の使用状況を裏付ける証左もないものである。

また、JBS社宛の取引書類(甲第4ないし第8及び第15号証)及び外国送金依頼書(同第17号証)によっては、たとえ、平成6年(1994年)から同11年(1999年)の間に引用商標等を付した商品が取引されていたとしても、これを付した商品の販売数量、売上高、市場占有率を具体的に示す証左は提出されておらず、JBS社が該商品の販売に際して使用した引用商標等の具体的な使用態様も明らかではない。しかも、請求人は、同人による輸入、詰め替え、出荷は現在も継続して行われていると主張するが、これを裏付ける証左もないものであるから、この点に関する主張は採用することができないというほかはない。

さらに、ステッカー(甲第16号証)は、「XEP−17」なる製品の宣伝広告用として作成されたものであると認めることができるとしても、その配布場所や配布時期及び数量等についても不明というほかなく、引用商標が需要者の間に広く認識されていたことを裏付ける証拠として採用することができない。

なお、甲第8号証のダンボールケースの数量に基づいた製品の製造数量及び「請求人による輸入、詰め替え、出荷は現在も継続して行われており、当然、本件商標の登録出願時には行われている」等の請求人の主張には理由がないとする被請求人の答弁に対して、請求人は、弁駁の理由において請求の理由で述べたことを繰り返すに止まるものであり、これらの事実を裏付ける証拠の提出がないことは上記のとおりである。

(3)その他の主張について

請求人は、甲第10号証と同様な宣伝広告を、平成3年(1991年)11月までの過去5年間にわたり毎月掲載し、雑誌、潤滑通信(潤滑通信株式会社発行)、メインテナンス(科学図書出版発行)等に連載しないまでも部分的に多数掲載しているとして、証拠を提出する準備中である旨述べるとともに、「XEP−17」及び「XL−17」以外の製品についても依頼先であるサンワ社の請求書を提出する用意はあり、必要とあらば、上記製品の日本総代理店であるサンセイ社からJBS社への注文伝票、JBS社におけるサンセイ社への納入伝票、これらを明記したJBS社の商業帳簿を提出することも可能である旨を述べているが、請求人はこれら証拠を相当な期間を経過するも未だ提出するところがないから、その主張は採用することができない。

(4)まとめ

以上のとおり、甲各号証を総合的に勘案しても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標がオイル添加剤に使用され、JBS社の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものとは認められないから、たとえ、本件商標と引用商標とが類似するものであり、かつ、本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る商品とが同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものとはいえない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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