Trademark Appeal Case
結合商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2006−7865(T2006−7865/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「パワーファン」の文字を標準文字で書してなり、第3類、第5類及び第11類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成16年9月29日に登録出願され、その後、指定商品については、原審における同17年6月15日付け提出にかかる手続補正書、並びに当審における同20年8月26日付け手続補正書において、最終的に、第11類「家庭用電気式または電池式芳香器,家庭用電気式または電池式消臭器,家庭用電気式または電池式芳香消臭器,家庭用電気式または電池式脱臭器,あんか,かいろ,かいろ灰,湯たんぽ,化学物質を充てんした保温保冷具」に補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『パワーファン』の文字を普通に用いられる方法で表示してなるところ、指定商品との関係からすると、『パワーファン』の文字は、『power fan』の文字の読みの片仮名表記と認められ、『パワー』の文字は、『力。動力』の意味を有し(株式会社岩波書店発行『広辞苑 第五版』参照)、『ファン』の文字は、『回転する外輪車あるいはプロペラからなる装置』(株式会社日刊工業新聞社発行『マグローヒル科学技術用語大辞典 改訂第3版』参照)、『扇、扇状のもの、送風機、扇風機、換気扇』(株式会社小学館発行『ランダムハウス英和大辞典』参照)の意味を有するから、全体として、『力(パワー)のある扇状のもの(送風機、扇風機、換気扇)』ほどの意味合いを理解させるものと認められる。以上からすると、本願商標を指定商品中『前記文字に照応する商品(例えば、扇風機,換気扇,冷暖房装置用のファン,ファン(空気調和装置の部品),ファンを組み込んだ家庭用電気式または電池式芳香器,ファンを組み込んだ家庭用電気式または電池式消臭器,ファンを組み込んだ家庭用電気式または電池式芳香消臭器,ファンを組み込んだ家庭用電気式または電池式脱臭器、等)』について使用するときは、単に前記商品が力(パワー)を有する商品であること、すなわち、商品の品質を表示したものと理解されるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たさないものといわざるを得ない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の暖冷房装置,家庭用電熱用品類等に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権により証拠調べをした結果、別掲に記載の事実を発見したので、平成20年7月14日付けの証拠調べ通知書により、請求人に対し、商標法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づく通知を行い、意見を求めた。
4 証拠調べ通知に対する請求人(出願人)の意見
補正後の本願指定商品との関係において、本願商標「パワーファン」の「パワー」の文字は、ファンの強さをアピールするようなものでは全くなく、むしろ芳香器等に組み込まれた極めて小型の「ファン」について、工場用扇風機等を想起させる「パワー」という言葉を使用したものであって、本願商標「パワーファン」は、本件商品との関係においてはいわば言葉遊びのような造語と解されるものであり、何ら実用的な品質表示としての意味はなく、また、本件商品の規模からみても、特定の品質を表示するために表示されていると理解されることはないと解するのが合理的である。
つまり、本願商標に接した需要者は、本願商標を「パワー」と「ファン」に分離し、パワーを「その性能、出力が強力な」、「ファン」を「扇風機(換気扇、送風機)」と分析して理解することはなく、少なくとも本件商品に関しては「パワーファン」全体で一体不可分の造語と認識するとみるのが自然であり、本願商標「パワーファン」は、指定商品との関係において、具体的・実用的な意味をもたない造語であって、全体として十分な自他商品識別力を有するものである。
5 当審の判断
本願商標は、上記1のとおり、「パワーファン」の文字を標準文字で書してなるところ、該構成中「パワー」の文字は、英語「power」に由来し、「力。動力」(株式会社岩波書店発行「広辞苑第6版」)を意味しており、また、「ファン」の文字は、英語「fan」に由来し、「扇、扇状のもの、送風機、扇風機、換気扇」(株式会社小学館発行「小学館ランダムハウス英和大辞典」)を意味する語として、一般に理解され、認識されているものといえることから、本願商標が、「パワー」の文字と「ファン」の文字とを結合してなるものと容易に理解し得るものと認められる。
そうすると、「パワーファン」の文字よりなる本願商標は、全体として「その性能、出力が強力な扇風機(換気扇、送風機、ファン)」程の意味合いを極めて容易に理解、認識させるものである。
そして、補正後の本願指定商品中「家庭用電気式または電池式芳香器,家庭用電気式または電池式消臭器,家庭用電気式または電池式芳香消臭器,家庭用電気式または電池式脱臭器」については、ファンを組み込んだものであることは、請求人も「家庭用のものであって、芳香剤又は消臭・脱臭剤を室内等に拡散させる目的で電動ファンを組み込んだ器具である」旨、認めるところである。
してみれば、これを補正後の本願指定商品中「ファン」を組み込んでなる「家庭用電気式または電池式芳香器,家庭用電気式または電池式消臭器,家庭用電気式または電池式芳香消臭器,家庭用電気式または電池式脱臭器」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「その性能、出力が強力なファンを組み込んだ商品(家庭用電気式または電池式芳香器,家庭用電気式または電池式消臭器,家庭用電気式または電池式芳香消臭器,家庭用電気式または電池式脱臭器)」であること、すなわち、商品の品質を表示したものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識としては認識し得ないものであり、また、これを上記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるものというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものである。
なお、請求人は、補正後の指定商品中「家庭用電気式または電池式芳香器,家庭用電気式または電池式消臭器,家庭用電気式または電池式芳香消臭器,家庭用電気式または電池式脱臭器」について、「ファンを組み込んでいるとしても、商品としてはあくまで『消臭・芳香』が主たる機能であって、ファンはあくまでもその機能を助けるためだけのものである。つまり、このようなファンは芳香剤等を空気中に拡散させるためだけのものにすぎず、本願商標中の『パワー』は、指定商品との関係上具体的・実用的な品質表示として理解されることはないものである」旨主張するものである。
しかしながら、芳香器、消臭器、芳香消臭器の商品についてみると、ファンを組み込むことで、周辺の空気を吸い込んだり、消臭や芳香の成分をファンによって居室等の空間に拡散させる機能を有する商品が一般に製造、販売されていることが、例えば、次の(1)ないし(5)の新聞記事及びインターネットのウェブページの記載からも認められることから、本願商標は、芳香器、消臭器、芳香消臭器に組み込んだファンの性能、出力がより強力な商品であること、すなわち品質を表示したものと認識するにすぎないといわざるを得ない(以下、文字の下線は当合議体が線引きしたものである。)。
(1)2002年10月22日付け日刊工業新聞33ページには、「サトカンパニー、マイナスイオン
空気消臭器
をシリーズ化」と題する記事中、「電源などエネルギーは不要だが、
電動ファンを付ければ空気強制循環作用で遠くまで効果を及ぼす
。」との記載がある。
(2)2004年9月4日付け朝日新聞東京版朝刊13ページには、「活性炭のトイレ用脱臭ファン TOTO(情報ファイル・商品)」と題する記事中、「TOTOは消臭効果が約4カ月もつ
トイレ用消臭器
『脱臭ファン』を10日から発売する。
コンセントに差すと内蔵されたファンが回り
、活性炭フィルターに吸着されたにおいを光触媒が分解する。」との記載がある。
(3)2005年1月23日付け読売新聞東京版朝刊11ページには、「電池2本で室内消臭『電池の消臭プラグ』発売へ/エステー化学」と題する記事中、「エステー化学は、
乾電池2本で小型ファンを回し
、
室内に消臭成分を広げる
芳香消臭器『電池の消臭プラグ』を2月5日に発売する。ファンのサイクルは弱から強までの3段階ある。」との記載がある。
(4)2008年3月12日付け日本経済新聞朝刊33ページには、「今年の花粉症対策は...、コート・お茶・香り、多彩に。」と題する記事中、「エッセンシャルオイルの香りをかぐのも症状を和らげるとされ、オイルの香りを
電動ファンで拡散する手のひら大の芳香器
が売れているという。」との記載がある。
(5)日経BP社の「nikkeiBPnet」のウェブページ中、「ファンで香りを広める芳香消臭剤、小林製薬 2005年3月2日」(http://www.nikkeibp.co.jp/archives/362/362421.html?bzb_pt=0)には、「小林製薬は2005年3月1日、
ファンの風
で香りを送り出す電気式芳香消臭剤『ファンデリッチ』を発売した。従来の置き型芳香消臭剤より、
部屋のすみずみまで素早く消臭効果を行きわたらせる
ことができるという。」との記載が、並びに、「マイコン制御のファンで成分拡散、エステー化学の
電池式消臭器
2005年1月19日」(http://www.nikkeibp.co.jp/archives/354/354590.html)には、「アルカリ乾電池で駆動し、超小型CPUを組み込んだマイコン制御の小型ファンを搭載する。
ファンが回転することで本体上部から不快な匂いを吸い込んで消臭し、中間部から香りを360度に拡
散する仕組み。」との記載がある。
また、請求人は、「本願商標と本願指定商品との関係をみるに、本願商標『パワーファン』の文字は、少なくとも本願指定商品の分野においては、一定の意味を有するものとして使用されている事実はなく、そのように認識されているという事実もない。」旨主張している。
ところで、ある商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて争われた裁判(平成12年(行ケ)第76号 東京高等裁判所 平成12年9月4日判決言渡)の判決では、「商標法3条1項3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべき」と判示しているところである。
してみれば、本願商標が登録されるべきであるかどうかは、需要者等において、これがどのような意味を有するものとして認識され、把握され得るかによって判断されなければならないというべきであり、かつ、本願商標からは、その指定商品を取り扱う需要者等において、指定商品の品質を示すものとして認識されることは、上記認定のとおりであることからしても、かかる請求人の主張は採用することができない。
さらに、請求人は、過去の登録例を挙げて本願商標が識別力を有するものである旨主張する。
しかし、登録出願に係る商標が自他商品の識別力を有するものであるか否
かは、指定商品等の取引の実情に基づき、取引者・需要者の認識を基準として、個別具体的に判断されるべきものであるから、請求人の挙げた登録例があるからといって、本願商標が登録されるものであるということにはならない。
したがって、この点に関する請求人の主張も、採用することができない。
以上のとおりであるから、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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