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Trademark Appeal Case

称呼「志ぐれ」の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2007−25576(T2007−25576/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は,別掲のとおりの構成よりなり,第29類「水産物のしぐれ煮,野菜のしぐれ煮」を指定商品として,平成18年8月18日に登録出願されたものである。

2 引用商標

原査定において,本願商標の拒絶理由に引用した登録第2542356号商標(以下「引用商標」という。)は,「瑞宝」の文字を横書きしてなり,平成2年9月21日登録出願,第32類「加工食料品(他の類に属するものを除く)」を指定商品として,同5年5月31日に設定登録され,その後,指定商品については,同11年9月3日にその指定商品中「加工穀物」についての登録は取り消す旨の商標権一部取消し審判の審決が確定し,同年11月10日にその確定登録がなされ,また,同17年5月25日に,第29類「肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」,第30類「アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす」,第31類「コプラ,麦芽」及び第32類「飲料用野菜ジュース」とする指定商品の書換登録がされたものである。

そして,この商標権は,同15年12月9日に商標権存続期間の更新登録がされ現に存続中である。

3 当審において通知した証拠調べ通知の要点

本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べを行ったところ,以下の事実を発見したので,商標法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき通知した証拠調べ通知の内容は,以下のとおりである。

第1 本願の指定商品「水産物のしぐれ煮,野菜のしぐれ煮」との関係において,本願商標の構成中「志ぐれ」の文字部分が「貝類のむきみにショウガ・サンショウなどの香味を加えて醤油・砂糖などで煮しめた料理[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]」の意味合いで「時雨煮」と同義語で使用されている状況について,新聞記事情報及びインターネット情報によれば以下の事実が認められる。

1 新聞記事情報(下線は審判官によるものである)

(1)「在名百貨店の歳暮商戦がスタート,品質・機能で勝負,手堅く2〜3%増へ」の見出しの下「・・・伝統の京野菜・京の芋詰め合わせ(五〇〇〇円),三重・伊勢いも(四〇〇〇円,八〇〇〇円),青森・長芋・鳥骨鶏卵詰め合わせ(四〇〇〇円)などがそれ。その他,サッポロビール『信長』(三〇〇〇円),八丁味噌・有機赤出し八丁味噌(一・二キログラム三〇〇〇円),新之助貝新・志ぐれ蛤,若炊蛤詰め合わせ(五〇〇〇円)・・・」との記載がある(1994年11月28日付け日本食糧新聞)。

(2)「◇特産品 ご飯のおとも」の項目中に「・・・●三重・桑名『志ぐれ蛤』蛤(はまぐり)のむき身を天然熟成のたまりでふっくらと炊き上げた。お茶漬けやお吸い物にも。志ぐれ蛤と志ぐれあさりの詰め合わせ・・・」との記載がある(1998年11月14日付け朝日新聞東京地方版/秋田)。

(3)「“鈴鹿の味”をセットに 市物産協 伊勢茶や志ぐれ煮など」の見出しの下「・・・これまでは『かぶせ茶』『田舎あられ』『志ぐれ煮』などの海と山の幸を,それぞれ単品で販売していた。・・・」との記載がある(2000年10月7日付け中日新聞朝刊北勢版)。

(4)「元日第6部 ふるさと新聞2001 全国駅弁自慢」の見出しの下「・・・◆三重 関西・紀勢線亀山駅 志ぐれ茶漬 850円 桑名産あさり佃煮お茶漬け・・・」との記載がある(2001年1月1日付け読売新聞東京朝刊6部4頁)。

(5)「桑名の時雨蛤 伝統製法の『浮かし煮』(元気たべる)【名古屋】」の見出しの下「#桑名の殿さん 時雨で 茶々漬......民謡ではこう歌われた。三重県桑名市の街の中心部を歩くと,『時雨蛤(しぐれはまぐり)』『志(し)ぐれ蛤』といった看板がやたら目につく。揖斐・長良・木曽の木曽三川河口部は昔から上質な蛤の産地。焼き蛤と時雨蛤は桑名の代表的な名物なのだ。・・・」との記載がある(2002年5月29日付け朝日新聞名古屋朝刊33頁)。

(6)「[味のプレゼント]貝しぐれ煮詰め合わせ」の見出しの下「・・・総本家新之助貝新(電話0120・049001)が,『志ぐれ煮詰め合わせ(しじみ・あさり・貝ひも)』(2000円相当)を抽選で10人にプレゼントします。・・・」との記載がある(2003年5月24日付け毎日新聞大阪夕刊5頁)。

(7)「GW期間限定 地元食材弁当 イオンが販売」の見出しの下「・・・愛知・岐阜こだわり弁当は『三河産豚ロースカツ』『美濃産鶏の甘酢あんかけ』や『飛騨の赤かぶら漬け』など八種類の総菜入り。三重こだわり弁当は『刻みひのな漬け』や『貝新の志ぐれあさり』などを入れた。六百八十円。イオン直営のジャスコ,マックスバリュやマイカルの約四百店舗で扱う。・・・」との記載がある(2004年5月1日付け中日新聞朝刊11頁地域経済面)。

(8)「グルメ取り寄せ便 あさり志ぐれ煮 伊勢志ぐれ(三重) 桑名市赤須賀開勢町西1821 (電)0594・22・0986」の見出しの下「桑名は,木曽・長良・揖斐という木曽三川の自然の恵みで海産物が豊富で,昔から『その手は桑名の焼きはまぐり』といわれるほど有名。ハマグリと並んで知られるアサリを活用したのが『あさり志ぐれ煮』。その漁風景は,安藤広重作の浮世絵『東海道五十三次 桑名の景』や俳句にも登場する。・・・」との記載がある(2007年4月6日付け中日新聞社朝刊21頁)。

2 インターネットのウェブサイト情報(下線は審判官によるものである)(1)「桑名で生まれ育ち,蛤漁から始まった『伊勢志ぐれ』は創業以来,一貫した伝統製法で志ぐれをつくり続けています。」との記載がある(桑名市物産振興協会の運営するホームページ(http://www.kuwana.ne.jp/bussan/member/iseshigure/index.html))。

(2)「三重・桑名名産『貝増の志ぐれ蛤』」の項目に「20種類よりお好きな志ぐれをどうぞ」「三重の桑名市は,志ぐれ蛤の名産地であり,志ぐれ煮は贈答に使用される程です。」との記載がある(株式会社 三重興農社の運営するホームページ(http://www.foods−shop.com/contents/mie/kaimasu/index.html))。

(3)「志ぐれ煮とは?」の項目に「その昔,桑名は熱田の宮より海上七里を船で渡り,伊勢路への起点として,東海道五十三次の一つに数えられた宿場町であり,又,松平家十一万石の城下町としても繁栄いたしました。『桑名の殿様志ぐれで茶々漬』と民謡にも歌われ,又,『時雨るゝや焼蛤の煮ゆる音』の句で古くより,桑名の志ぐれ蛤は,その趣のある独自の風味をもって広く全国に知られております。・・・『神無月 降りみ降らす 定めなき しぐれぞ冬の 初めなりにける』(御撰集)この古歌により元禄末期に芭蕉十哲の一人,各務支考がその名も風流に”志ぐれ煮”と名づけたと伝えられています。」との記載がある(株式会社 総本家貝新新七商店の運営するホームページ(http://www.kaishin7.co.jp/))。

(4)「【お店拝見】伝統の『志ぐれ煮』桑名市殿町の『貝藤』」の項目に「古くから桑名の銘品として知られる『志ぐれ煮』。蛤,浅蜊,子持ち白魚,昆布などを素材に,その伝統の味を継承しているのが,八間通り沿いにある桑名市殿町の『貝藤』だ。土間がある昔ながらの店構え。店内に入ると,志ぐれ煮の漂う香りで迎えてくれる。・・・生むき浅蜊志ぐれ煮(百グラム,千円),昆布志ぐれ煮(同,千二百円)のほか山椒ふき(同,四百円),田作り(同,六百円),はとう辛子(一袋,千円),かつお角煮(同,千五百円),山椒の実(一瓶,千円)などの志くれ煮がある。」との記載がある(株式会社ローカルみえのホームページ2001年発行分バックナンバー2月22日号3面(http://www.localmie.com/localmie/2001/2.22/3.html))。

(5)「志ぐれ」の項目に「お茶漬志ぐれ・・・かきの志ぐれ煮・・・志ぐれ昆布・・・志ぐれ蛤 小」との記載,また,「店舗案内」の項目に「事業内容 志ぐれ,佃煮,総菜等の製造販売」との記載がある(有限会社喜多八時雨本舗の運営するホームページ(http://www.shigure.co.jp/))。

(6)「阿じろ特製お土産品」の項目中「・・・ひじき志ぐれ(実山椒入り)・・・ひじき志ぐれ(しそ入り)・・・ひじき志ぐれ(花古節入り)・・・」との記載がある(有限会社阿じろの運営するホームページ(http://www.ajiro−s.co.jp/shopping/index.php?p=1))。

(7)「和酒庵」の項目中に「北海道産 愛知県産の『七宝 たまり醤油で,旨味を凝縮させるように炊き上げた北海道産の帆立の貝ひもです。 噛めば噛むほど素材の味が湧き出てきます。商品仕様 商品名:貝ひも志ぐれ」との記載がある(龍屋物産株式会社の運営するホームページ(http://www.tatsuyabussan.co.jp/product/wasyuan/kaihimo.html)。

(8)「2006年4月8日放送『桑名編〜桜とはまぐりと熱愛と〜』」の項目中「『桑名名産のハマグリを計り売りしている直売店!』・・・※ウドちゃんが頂いたのは「志ぐれ蛤」(100g)1300円」との記載がある(名古屋テレビの運営するホームページ,ウドちゃんの旅してゴメン(http://www.nagoyatv.com/tabigome/detail/detail.sms?DATA_SEQ=15))。

(9)「志ぐれ煮とは」の項目には「桑名名産 しぐれ煮とは 既に東海道五十三次の時代には全国的に有名になっていた桑名の志ぐれ煮 志ぐれ(しぐれ)とは,あさり,はまぐり,マグロなど魚介類を使用することが一般的で,たっぷりの醤油で浮かし炊きにしながら佃煮風に調理しているものをいい,志ぐれ煮(しぐれに)ともいいます。」との記載がある(株式会社伊勢志ぐれの運営するホームページ(http://www.sigure.co.jp/shigure.html))。

(10)「オリジナルギフト」の項目中「<志ぐれ蛤・牛肉しぐれ・たらこ・鰹ふりかけ>佃煮セット」「■商品説明 <佃煮製法のこだわり> 三重県(桑名産) 志ぐれ蛤」,「時雨蛤の製法は,まず蛤を生のまま一つ一つ むいて水でよく洗い砂を除き,沸騰した湯に入れて湯煮します。これをあげ湯を切り,生引溜を沸騰させたハソリ(大鍋)にその貝を粗く入れ半時間位煮て出来上がります。この 時に刻んだ生姜を入れて風味をつけます。多めの溜の中で浮かしながら煮るので,これを 『浮かし煮』と呼び『時雨煮』の特徴です。・・・」との記載がある(株式会社京王プラザホテルの運営するホームページのオンラインショップ(http://keioplaza−shop.com/shop/item_detail?category_id=17666&item_id=109675))。

(11)「天然白魚しぐれ」の項目に「当店のしぐれの特徴」「伝統の逸品『志ぐれ蛤』『生むき中浅利』は昔ながらの製法で,新鮮なとれたての貝を一つひとつ丁寧に手でむきながら貝独特の風味をそこなう事なくたっぷりの溜まり醤油に浮くほどの貝を入れ,『浮かし炊き』と呼ばれる製法にて手間ひまかけて丹念に仕上げました。さらっとした仕上がりが特徴です。蛤,浅利やしじみの貝の味と溜まり醤油の味の融合をお楽しみ下さい。」との記載がある(株式会社カウイチの運営するホームページの(http://tenant.depart.livedoor.com/t/syuntoreichiba/feature_content?id=20340))。

(12)「じばさん三重」の項目中に「時雨蛤」「主な商品 志ぐれ煮 始まり 江戸時代 主な生産地 桑名市」との記載がある(財団法人三重北勢地域地場産業振興センターの運営するホームページ(http://jibasanmie.or.jp/home/2005/08/post_6.html))。

(13)「新着情報・2007/6/16 6月29日 佃煮の日です。」の項目中に「蒸し暑く食欲の無い時には,ちょっと辛口の『しじみ志ぐれ』が最適です!」との記載,また「商品一覧」中に「じじみ志ぐれ・・・志ぐれ蛤・・・」との記載がある(山口章次商店の運営するホームページ(http://www.yamaguchi−syoten.com/))。

(14)「貝柱しぐれ煮 100gあの掛布雅之さん出演中!の詳細」中に「・・・お勧め手間ひまかけて丹念に仕上げた伝統の逸品伝統の逸品『志ぐれ蛤』『生むき中浅利』は昔ながらの製法で新鮮なとれたての貝を一つひとつ丁寧に手でむきながら貝独特の風味をそこなう事なく,たっぷりの溜まり醤油に浮くほどの貝を入れ,『浮かし炊き』と呼ばれる製法にて手間ひまかけて丹念に仕上げました。さらっとした仕上がりが特徴です。蛤,浅利やしじみの貝の味と溜まり醤油の味の融合をお楽しみ下さい。・・・蛤時雨自慢の逸品です。昔ながらの製法で蛤を志ぐれ煮に致しました。・・・」との記載がある(株式会社QOOPの運営するホームページ(http://qoopie.net/YS_5109143.html))。

(15)「◆全国水産加工たべもの展 佃煮部門 農林水産大臣賞受賞者一覧◆」の項目中「受賞品名 受賞者名」「昭和53年 第27回 あさり志ぐれ (有)共栄食品 」との記載がある(大阪府調理食品共同組合の運営するホームページ(http://www.daichosyoku.or.jp/tabemonoten.htm))。

4 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要点

(1)「志ぐれ」は「志ぐれ煮」などとして使用される以外は,原材料と組み合わせて「志ぐれ蛤」,「蛤志ぐれ」などのように使用される場合が多く,仮に「瑞宝志ぐれ」部分が「瑞宝志ぐれ煮」あるいは「瑞宝の志ぐれ煮」であれば,「志ぐれ煮」は自他商品の出所識別標識としての機能の乏しいものといえる。

しかしながら,本願標章は中央部に描かれた文字が「瑞宝志ぐれ」であり,さらに,背景図柄を含めた標章全体を考慮すると「桑名の殿様瑞宝志ぐれ」である。

(2)「志ぐれ煮」は三重・桑名地方の結びつきが強いものである。そうすれば,歌川広重「東海道五拾三次」の「桑名七里渡口」を模した背景図柄を含めて,標章全体を考慮することなく,「瑞宝」の文字部分のみが独立して自他商品の識別標識として強く印象付けられることはないと考える。

(3)引用商標との類否について

(ア)称呼

本願商標は「ズイホウシグレ」,または「クワナノトノサマズイホウシグレ」の称呼が生じ,引用商標の「ズイホウ」とは相違する。

(イ)観念

本願商標は,1つの円の内部に,「桑名七里渡口」として知られた三重県の桑名市を観念させる図形と「瑞宝志ぐれ」とが一体となってひとつの図形デザインを形成していることから「桑名のめでたい宝の志ぐれ」の観念が生じる。引用商標は「めでたい宝」の観念は生じるが,上記本願商標の観念は生じない。

(ウ)外観

本願商標の図形内部に引用商標の「瑞宝」部分が記載されているとしても,その「瑞宝」部分は引用商標のゴシック体と本願商標の行書体で異なる。さらに,本願商標は「瑞宝志ぐれ」が行書体でまとまりのある一体として背景図と共に描かれている。外観上,両者は明らかに相違する。

(4)証拠調べで例示された事実からも明らかなように,「志ぐれ煮」,原材料と組み合わせた「○○志ぐれ」および「志ぐれ○○」は,三重・桑名地方の名産品であると取引者・需要者の間で認識されている。

(5)本願商標からは「ズイホウシグレ」または「クワナノトノサマズイホウシグレ」の称呼が生じるように,引用商標の単なる「ズイホウ」とは,指定商品について商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれはない。

5 当審の判断

本願商標は,前記1のとおり,湊の渡り口を描いたところの名所旧跡をしのばすような風景画を背景的に描き,中央部に「瑞宝」と「志ぐれ」の文字を段と行とを違えて大きく書し,左部に「瑞宝」と押印されたような枠で囲まれた「特選」の文字,右部に縦矩形輪郭線内に宝船図形と「ずいほう」の平仮名文字,その直下に「桑名の殿様」の文字及び下段部に横長矩形内に横楕円輪郭線で囲んだ「ホームページ」その直横に「http://www.zuihou−sigure.co.jp」の文字とにより構成されてなるものであるところ,二以上の商標構成部分からなる商標の類否の判断に当たっては,簡易,迅速をたっとぶ取引の実際においては,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は,常に必ずしもその構成部分全体の名称によって称呼,観念されず,しばしば,その一部だけによって簡略に称呼,観念され,一個の商標から二個以上の称呼,観念の生ずることがあるのは,経験則の教えるところである。しかしてこの場合,一つの称呼,観念が他人の商標の称呼,観念と同一または類似であるとはいえないとしても,他の称呼,観念が他人の商標のそれと類似するときは,両商標はなお類似するものと解するのが相当である(最高裁昭和38年3月5日判決 昭和37年(オ)第953号)。

そこで,以上の見地に立って,本願商標と引用商標との類否について判断する。

本願商標は、上記した構成よりなるところ,湊の渡り口を描いたところの風景画が歌川広重作になる版画「東海道五拾三次」の「桑名七里渡口」を模したとしても,少なくとも地域(地名)としての「桑名」との繋がりで「桑名の殿様」及び桑名の名産品を理解させる「志ぐれ」の文字以外の「瑞宝」,「ずいほう」の各文字が常に該風景画と一体となって特定の称呼,観念を生じるというような不可分性を看取させ得ないものであり,他に両者間に相互関連を有するとする密接不可分に把握しなければならない格別の理由を見いだすことはできないから,本願商標は,その構成中の中央部に大きく書された「瑞宝」と「志ぐれ」,左部に書された「瑞宝」,右部の輪郭線内に書された「ずいほう」の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないものである。

そして,本願商標の構成中の中央部に「瑞宝」と「志ぐれ」の文字を段と行とを違えて大きく書した「志ぐれ」の文字については,前記3の証拠調べ通知のとおり「あさり,はまぐりなどの魚介類をたっぷりの醤油で浮かし炊きにしながら佃煮風に調理すること」程の意味合いの商品表示として,取引上普通に使用されている実情から,かかる構成においては,構成中の中央部に大きく書した「瑞宝」の文字部分が,独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得る部分として認識され,簡易迅速を旨とする取引の実際にあっては,取引者,需要者は,自他商品の識別標識としての機能を果たし得る「瑞宝」の文字部分に着目して,該文字から生じる「ズイホウ」の称呼及び「瑞(めでたい)宝」の観念をもって取引に資する場合も少なくないというのが相当である。

そうとすれば、本願商標は、「瑞宝」の文字に相応して「ズイホウ」の称呼を生じ、「瑞(めでたい)宝」の観念を生ずるといわなければならない。

他方,引用商標は,前記2のとおり「瑞宝」の文字を横書きしてなり、該文字に相応して「ズイホウ」の称呼を生じ,「瑞(めでたい)宝」の観念を生ずるものである。

してみれば,本願商標と引用商標とは,外観上の差異を有するとしても「瑞宝」の文字部分についてはその構成文字を同じくし,「ズイホウ」の称呼及び「瑞(めでたい)宝」観念を共通にする相紛らわしい類似の商標というべきであり,かつ,本願商標の指定商品は,引用商標の指定商品に包含されるものである。

したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は,妥当なものであり,取消すことはできない。

なお,請求人は,過去の登録例を挙げて本願商標は登録されるべきであると主張しているが,商標の類否の判断は,他の登録例によって左右されるものではなく個別具体的に判断すべきものであり,本願商標と引用商標とは、上記したとおり類似すると判断するのが相当であるから,この請求人の主張は採用できない。

よって,結論のとおり審決する。

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