Trademark Appeal Case
立体商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年審判第17491号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、商標の構成を別掲に示すものとし、第12類「自動車モール材」を指定商品として、平成9年4月1日に立体商標として登録出願されたものである。
2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、自動車モール材を指定商品とするものであるが、該商品は自動車のフロントウインドやリヤウインドにおいてボディ自体の当該周縁部とそこに装着されるガラスの当該周縁部の間に生ずる隙間にはめ込まれる部品であることに加え、その自動車のフロントウインドやリヤウインドの形状や、ボディとガラスの隙間へのはめ込み方などによっても、大きくその形状が左右されることも勘案するならば、その種の商品のひとつの形状であることを容易に理解し得ることから、これをその指定商品に使用したときは、その商品の形状を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定して本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まるというのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用された結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、特許法等により保護されている形状について重ねて又は権利消滅後商標登録することにより保護することは知的財産制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることとなる。
(2) これを本願についてみれば、本願商標は、自動車の窓ガラスとボディとの隙間を塞ぐことのできる自動車用モール材の一形態を表してなるものと認められるものであるから、これを指定商品「自動車用モール材」に使用しても、取引者、需要者は、単に指定商品の形状の一形態を表示したものと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
請求人は、本願商標の立体形状の斬新性に要部(特徴)が存し、全体形状に斬新性を有する商品は、当該商品が市場において流通した場合には、商品の需要者がこの斬新な全体形状を見ることにより、他のメーカーの同一商品との識別が可能となる旨主張する。
しかしながら、本願商標は、前記認定のとおり、自動車用モール材の形状の特徴を備えたものであり、同モール材の機能を発揮するための附加がされているとしても、それは専ら機能として作用するものであり、それが直ちに本願商標に関し自他商品の識別性に影響を与えるとは認め難く、需要者もまた、自動車用モール材の形状の範囲のものと認識するにすぎないとみられるものである。
なお、請求人は、本願商標に係る「自動車用モール材(発明の名称は、モールディングの成形方法、及びその装置)」について、特許出願がされている旨主張し、甲第1号証乃至同第3号証を提出しているところ、特許法における保護は、同法の目的に基づいて、保護の対象、要件、権利の範囲、効力等が定められているものであって、これらに従った特許発明の実施と商標の使用とは明らかに異なるものであるから、特許権による独占を理由として自他商品の識別力を有するに至ったとは認めることはできないばかりでなく、特許権消滅後は何人もの実施が予定されているものであるから、請求人の主張は採用できない。
(3) さらに、請求人は、立体商標制度の導入に伴う商標法第29条の改正について縷々主張し、甲第4号証を提出しているが、該規定は調整規定であり、他の知的財産制度で保護されるものを商標登録することは前示のとおり、知的財産制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることとなるから、請求人の主張は採用できない。
加えて、商品又はその包装の形状をもって構成される立体的形状からなる商標は、平面的な商標とは明らかに異なるものであるため、商標法においては、立体商標制度導入に当たって、商標法第4条第1項第18号等が設けられ、また、前掲工業所有権審議会答申でも、「・・・指定商品やその容器の形状そのものの場合には不登録とする運用を厳しくすること・・・」としている(前掲答申P31参照)。
4 結 論
以上のとおり、本願商標は、指定商品の形状を表示するものとし、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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