Trademark Appeal Case
周知商標「メルク」との混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2008−900116(T2008−900116/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録5099342号商標(以下「本件商標」という。)は、「ビタメルク」の片仮名文字を書してなり、平成19年4月19日に登録出願、第5類「ビタミン・ミネラルより成る医療用飼料添加剤,その他の動物用薬剤,その他の薬剤」を指定商品として、同年11月6日に登録査定され、同年12月14日に設定登録されたものである。
なお、本件商標に対する異議番号2008−900116号の申立番号02は、平成20年7月28日付け異議決定により、申立てを却下され、その確定の登録が同年8月22日になされているものである。
第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
1 引用商標
本件異議番号2008−900116号の申立番号01の登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、別記の(1)ないし(22)のとおりであって、いずれも現に有効に存続しているものである。
2 理由の要点
(1)申立人について
申立人会社の歴史は、1668年、フリードリッヒ・ヤコブ・メルクがドイツ・フランクフルトの南に位置するダルムシュタットにあった天使薬局(Engel−Apotheke)を買収したことに始まる。天使薬局は1827年、モルヒネ、その他アルカロイド類の製造を成功させることにより、世界の医療業界に多大な貢献をした。
その後、ヨーロッパ全土にその製品販売網を拡大させるに至った1950年、上記フリードリッヒ・ヤコブ・メルクの子孫であるエマニュエル・メルクが申立人の前身であるE・メルク社を設立し、本格的に化学品及び医薬品の販売に乗り出した。さらにl927年から1934年にかけては、世界に先駆けてビタミンC、B1、EそしてビタミンKの工業生産に成功し、現代においては化粧品から印刷用インキ、塗料まで幅広く利用されるパール顔料を世界に先駆けて1960年代に開発した。
1995年には、拡大するメルクグループの組織再編の一環として、E・メルク社をその資本の過半数を所有するパートナー会社とする、申立人会社メルク・コマンデイトゲゼルシヤフト・アウフ・アクチエン(Merck KGaA)が設立された。
また、l968年、日本における活動拠点としてメルク株式会社を設立しているほか、世界60カ国、192社の関連会社と24カ国、54カ所に自社工場を展開している(2007年12月現在)。2007年上半期におけるメルクグループの総収入は44億ユーロ(約7,400億円)を超え、うち医薬品販売事業の売上高は24億2700万ユーロ(約4,000億円)と全体の売上の6割を占める(甲第24号証)。
メルク株式会社設立当初は、メルクグループ製品の日本の企業や医療機関に対するライセンスのコーディネートや医療用医薬品原料の輸出入を主たる業務としていたが、2001年に医薬品事業部を設置、本格的に我が国の医薬品販売に参入した。中でも、ハチ刺傷、食物アレルギーなどるによるアナフィラキシーに対する緊急補助治療に使用される医薬品である「エピペン」は、輸入承認を取得した2003年の年間売上が997万7000円、2004年は7,055万9000円、2005年は7,816万5000円、2006年には1億365万1000円を売り上げるに至り、メルクグループの名前を我が国で広く知らしめることとなった(甲第25号証)。
また、申立人及びその日本法人であるメルク株式会社は後発医薬品(いわゆるジェネリック医薬品)の重要性にいち早く着目し、1998年には、1950年に設立され我が国のジェネリック業界で長年の実績を誇る保栄薬工を傘下に入れ、メルク・ホエイ株式会社(2007年にメルク製薬株式会社に商号変更)を設立し、多数のジェネリック医薬品を展開した。同社の売上は、我が国でのジェネリック医薬品の需要の高まりに伴い、2006年12月期には168億4300万円に達した(甲第24号証)。
また、医薬品・試薬・化学品等、幅広い分野で最先端の研究や事業展開を行う申立人及びメルク株式会社を含むメルクグループの動向は我が国でも常に注目されており、多くの新聞等に取り上げられてきた(甲第26号証)。
上記のとおり、申立人であるメルク・コマンデイトゲゼルシヤフト・アウフ・アクチエン及びその日本法人であるメルク株式会社を含むグループ会社は、「メルク」「メルクグループ」として我が国の取引者・需要者間においても広く知られるに至っている。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標1ないし引用商標20は、上述したような申立人の活動により広く知られるものとなっている。また、「MERCK/メルク」の語が創業者の固有名詞に由来する語であり、既存の普通名詞でないことからすれば、これは極めて特徴的な識別力の高い語であるといえる。
また、引用商標1は、昭和47年9月5日商標研究会編集・発行の「新版日本有名商標録」にも掲載されており(甲第27号証)、このことからも同商標が申立人の業務に係る商品「薬剤」等を表示するためのものとして、取引者・需要者間において古くより広く認識されていたものであることは明らかというべきである。
事実、特許庁においても、昭和49年商標登録願第133081号の異議申立事件(甲第28号証)及び昭和57年商標登録願第53624号の異議申立事件(甲第29号証)のような決定がなされている。
ここで、本件商標を観察するに、「ビタメルク」の語のうち「ビタ」とは、「ビタミン」を表すものとして医薬品及び医薬部外品等の分野において頻繁に使用されている(甲第30号証)。実際に、本件商標の指定商品に「ビタミン・ミネラルより成る医療用飼料添加剤」が含まれることを勘案すれば、これに接する取引者・需要者は当該商品が「ビタミンを含んだメルク商品」であると理解する可能性は極めて高いといえる。
さらに、引用商標3ないし引用商標6、引用商標8ないし引用商標14、引用商標16及び引用商標22のように、申立人が「メルク」または「Merck」を含む結合商標も多数所有している事実を鑑みれば、本件商標も同様にこれら結合商標の一であるかのように認識することも十分にあり得るものである。
そうとすれば、申立人とは無関係の者が本件商標を使用することにより、需要者が同人及びその提供する商品が申立人と何らかの関係があるものであると誤認・混同する虞があるのは明らかであり、本件商標は、商品の出所につき混同を生ずるおそれがあるというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第8号該当性について
上述したとおり、申立人は、本国ドイツ連邦共和国はもとより、我が国の医薬品業界においても広くその名を知られている。申立人の正式名称である「メルク・コマンデイトゲゼルシヤフト・アウフ・アクチエン」(Merck Kommanditgesel1schaft auf Aktien)は極めて冗長であり、また「コマンデイトゲゼルシヤフト・アウフ・アクチエン」はドイツ語においてはKGaAと略され、「メルク株式会社」における「株式会社」同様、会社形態を示すものであるから、簡易迅速を旨とする取引の実情に鑑みれば、申立人会社はごく自然に「メルク」と略称されるものであるといえる。
また、特許庁においても、昭和43年商標登録願第27030号の異議申立事件(甲第31号証)のような決定がなされている。
上記のとおり、「メルク」が申立人の名称の著名な略称であることは、取引者又は需要者の間で既に十分認識されていることは明らかであるといえる。
したがって、本件商標は、他人の名称の著名な略称を含むものであり、その者の承諾も得ていないものであるから、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。
(4)商標法第4条第1項第11号該当性について
上述のとおり、本件商標中「ビタ」は取引者・需要者間で「ビタミンを含む商品」を示すものとして広く親しまれた語であることから、本件商標の指定商品との関係において商品の品質を表示したものと認識、理解される部分であり、自他商品の識別標識としての機能を有しない、または弱い部分であるといえる。これに対し、「メルク」は申立人の商号を表すものとして広く知られたものでありますから、本件商標に接する取引者・需要者の注意は「メルク」の部分に集中し、同部分を分離して把握、認識、称呼することが充分にあり得るものというべきである。
そうとすれば、本件商標は、引用商標1、引用商標6、引用商標15、引用商標17ないし引用商標20及び引用商標22と「メルク」の称呼を同じくするものであるといえる。また、たとえ本件商標が一連一体としてのみ称呼されるものであるとしても、引用商標11及び引用商標14とは「メルク」部分を共通にするほか、語数、母音を全て同じくし、語感が極めて類似するものであるから、これを称呼した際には互いに聞き誤るおそれがある。
また、本件商標からは「ビタミンを含むメルク社の商品」との観念が生じ、外観においてもカタカナ文字5文字又は6文字のうち3文字を引用商標5及び引用商標9ないし引用商標11と同じくするものであることから、観念及び外観においても互いに相紛らわしい商標であるとするのが相当である。
よって、本件商標は、上記の引用各商標と称呼・観念・外観いずれの点からも類似の商標であり、また引用商標と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
3 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第8号及び同第11号に該当し、その登録は取り消されるべきである。
第3 当審の判断
申立て理由の条文の性質上、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第8号の順にて、以下判断する。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、「ビタメルク」の文字よりなるところ、該構成文字は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔で一連一体に表されていて、その全体の文字数もわずか5文字という文字数の少ないものである。また、その全体より生ずる「ビタメルク」の称呼も一気一連によどみなく称呼し得るものである。
そうとすれば、本件商標は、構成全体をもって不可分一体のものと認識し把握されるとみるのが自然であるから、全体の構成文字に相応して「ビタメルク」の称呼のみを生じ、特定の観念を有しない造語と判断するのが相当である。
(2)引用商標1、引用商標6、引用商標15、引用商標17ないし引用商標20及び引用商標22について
引用商標1、引用商標6、引用商標15、引用商標17ないし引用商標20及び引用商標22は、別記のとおり、「Merck」、「MERCK」と関連性のない図形との組み合わせ、「メルク」、「MERCK」(「M」の文字の左縦線の中央部が欠けている。)の文字と関連性のない図形との組み合わせ、及び「MERCK」(「M」の文字の左縦線の中央部が欠けている。)の文字とからなるものであるから、これらよりは、「メルク」の称呼のみ生ずるものである。
(3)引用商標5及び引用商標9ないし引用商標11について
引用商標5及び引用商標9ないし引用商標11は、別記のとおり、「アクアメルク」、「ロキシメルク」、「ラニメルク」及び「ニザメルク」の文字とからなるものであるから、これらよりは、「アクアメルク」、「ロキシメルク」、「ラニメルク」及び「ニザメルク」の称呼を生ずるものである。
(4)引用商標14について
引用商標14は、別記のとおり、「NIZAMERCK」の文字からなるものであるから、これよりは、「ニザメルク」の称呼のみ生ずるものである。
(5)引用商標16について
引用商標16は、別記のとおり、「MERCK」、「ONCOLOGY」の文字と関連性のない図形との組み合わせからなるものであるから、「メルク」及び「メルクオンコロジー」の称呼をも生ずるものである。
(6)引用商標21について
引用商標21は、別記のとおり、「MERCK」及び「CHIMIE」の文字からなるから、「メルク」及び「メルクチミー」の称呼をも生ずるものである。
(7)本件商標と上記引用各商標との類否について
ア 本件商標と引用商標1、引用商標6、引用商標15ないし引用商標22とは、本件商標が「ビタメルク」の一連一体の称呼が生ずるのに対し、上記の引用各商標は「メルク」の称呼を生ずるものであるから、前者が5音に対し後者が3音という構成音数、音構成に著しい差異を有していて、称呼上明確に聴別し得るものと認められる。
また、本件商標から生ずる称呼「ビタメルク」と引用商標16から生ずる称呼「メルクオンコロジー」とは、構成音数及び音構成に著しい差異を有していて、称呼上明確に聴別し得るものである。
さらに、本件商標から生ずる称呼「ビタメルク」と引用商標21から生ずる称呼「メルクチミー」とは、音構成において著しい差異を有しているから、称呼上明確に聴別し得るものである。
イ 本件商標と引用商標11及び引用商標14とは、本件商標が「ビタメルク」の一連一体の称呼が生ずるのに対し、上記の引用各商標は「ニザメルク」の称呼を生ずるものであるから、両者はわずか5音という短音構成からなる中、語頭音「ビ」対「ニ」、及び第2音の「タ」対「ザ」の差異を有し、しかも濁音対清音ということからすると、たとえこれらが母音を共通にするとしても、明確に聴別し得るものと認められる。
ウ 本件商標と引用商標5及び引用商標9ないし引用商標11とは、本件商標が特定の観念を有しない以上、両者は比較できないものであるし、また、外観上も、本件商標が「ビタメルク」であるのに対し、引用商標5及び引用商標9ないし引用商標11は「アクアメルク」、「ロキシメルク」、「ラニメルク」及び「ニザメルク」よりなるものであるから、互いに相紛れるおそれのないものである。
(8)以上のとおりであるから、本件商標と上記の引用各商標とは、称呼、観念及び外観のいずれにおいても類似しない商標というのが相当である。
2 商標法第4条第1項第15号について
申立人の提出に係る甲第24号証ないし甲第27号証によれば、「Merck」、「MERCK」及び「メルク」、「MERCK」の文字からなる商標が「薬剤」について、使用され、その取引者、需要者の間に広く認識されていたものであるとしても、上記1で述べたとおり、本件商標と上記1の引用各商標とは十分に識別し得る別異の商標であり、また、本件商標と引用商標2、引用商標3、引用商標4、引用商標7、引用商標8、引用商標12及び引用商標13とは、上記第1及び別記のとおりの構成よりなるものであるから、明らかに識別し得る別異の商標であるから、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者、取引者をして引用商標1ないし引用商標22を連想又は想起させるものとは認められない。
したがって、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用しても、その商品が申立人又は申立人と何らかの関係を有する者の商品であるかのごとく混同を生ずるおそれのある商標であるとはいえない。
3 商標法第4条第1項第8号について
申立人会社が「メルク・コマンデイトゲゼルシヤフト・アウフ・アクチエン」(Merck KGaA)であるとしても、上記1のとおり、本件商標「ビタメルク」は、構成全体をもって不可分一体のものであるから、他人の著名な略称を含む商標であるということはできない。
4 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第8号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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