Trademark Appeal Case
称呼の類似性と要部抽出
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 判定2008−600015(T2008−600015/J6) |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | other |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第4841568号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成16年1月6日に登録出願、第29類 「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」及び 第43類 「飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、平成17年2月25日に設定登録されたものである。
第2 イ号標章
被請求人が役務「焼き肉を主とする飲食物の提供」に使用する標章は、別掲(2)のとおりの構成からなるものである。
なお、被請求人は、請求人の提出に係るイ号標章は不鮮明であるとして、乙第1号証として被請求人に係る標章のイメージデータをプリントアウトしたものを提出した。これに対し、請求人は、当該標章をイ号標章として判定がなされることに何ら異議はない旨述べており、また、当審においても、乙第1号証として提出された標章は、請求人の提出に係る標章と実質的に同一のものと判断したので、これをイ号標章として判定するものとする。
第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証(枝番を含む)を提出した。
1 判定請求の必要性
請求人は、本件商標の商標権者であるが、被請求人が役務「焼肉を主とする飲食物の提供」につきイ号標章を使用していることから、平成18年9月、被請求人に対して本件商標に係る商標権を侵害しているので直ちにその使用を中止するよう求める通告書を発した。
被請求人は、イ号標章が本件商標に類似しないと主張し、交渉による円満解決が困難となったため、請求人は平成19年2月、岡山地方裁判所に対して商標権侵害差止等請求を求めて訴訟を提起した(平成19年(ワ)第147号)。同裁判所では審理が進み、口頭弁論の終結も示唆されているが、原告たる請求人としては商標の類否判断をはじめとする商標権の効力の範囲については専門官庁たる特許庁の中立的な見解を求めるのが適当であると主張したところ、当該主張が認められたので、本件判定の請求に及んだ次第である。
2 イ号標章の説明
被請求人は、平成18年5月25日、広島市中区中町8−6フジタビル地下1階において、焼肉料理を主とする飲食店を開店した。
表通りに面した地上部分には、白黒写真を背景として「焼匠」「闇市」「やみいち」「ミート松」の各文字を配したイ号標章が看板に掲げられ、地階へ下った店舗入口には同じ文字を配した布暖簾が下げられているほか、店内外におけるメニュー看板や割引券、レシート等にも前記各文字の全部又は一部が使用されて、飲食物の提供が行われている(甲第3号証)。
一方、請求人は、平成12年11月、岡山市中央町2−26において「韓国家庭料理/闇市中央町店」を開店し、その後、平成18年1月から「闇市」の店舗名称にて、焼肉料理を主とする飲食物の提供につきフランチャイズ事業を開始して、現在までに栃木県真岡市、千葉県松戸市、東京都(池袋西口)の計4店舗において本件商標を使用している。
3 イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
本件商標は、縦書きされた「闇市」の文字の下に欧文字で「YAMIICHI」と左横書きされてなる商標であるところ、「YAMIICHI」の文字部分は、その上段に書された「闇市」の文字部分から自然に生ずる称呼を表記したものであることは容易に看取されるから、本件商標全体として「ヤミイチ」の称呼及び「商品取引市場」の観念を生ずるものである。
他方、イ号標章は、その主たる使用態様にあっては、「雪がうっすら降り積もる夜、人気のない路地裏商店街を、荷物を小脇に抱え、傘をさした中年女性が帰り道を急ぐ後姿を撮影した白黒写真」(前記訴訟における被告側の主張から引用)を背景として「焼匠」「闇市」「やみいち」「ミート松」の各文字を配してなるものである。
ここで、赤字で小さめに横書きされた「焼匠」の文字部分と、白字で大きく横書きされた「闇市」の文字部分、その読み仮名を付するように赤色で小さく併記された「やみいち」の文字部分、そして最も小さく縦長方形の枠内に縦書きされた「ミート松」の各文字部分は、「闇市」と「やみいち」の対応関係を除けば一連一体的な構成とはいい難いものがあり、むしろ、他の文字部分に比して格段に大きく、かつ、唯一その読み仮名となる「やみいち」の文字が付された「闇市」の文字部分が白黒写真を背景にして顕著に目を惹くことからすれば、単に「ヤミイチ」の称呼をも生ずるというべきである。
そして、「焼匠」の文字部分は、提供される料理が焼肉などの焼き物中心であり、その専門店であることを意味する語にすぎないし、「闇市」の文字部分と「ミート松」の文字部分にも格別の関連性が窺われない上、独特ながらもその背景写真からは「闇市」以外の観念は看取されないから、結局のところ、「闇市」の文字部分から生ずる「闇取引市場」といった観念が生ずるにとどまる。
したがって、本件商標とイ号標章とは、各標章の外観が相違するとしても、各標章の構成から自然に生ずる「ヤミイチ」の称呼と、「闇取引市場」の観念を共通にしているから、相互に類似する標章というべきである。
そして、本件商標に係る指定役務である第43類「飲食物の提供」に、イ号標章が使用されている役務「焼肉を主とする飲食物の提供」が含まれることは明らかである。
以上のとおり、イ号標章は本件商標と類似する標章であり、前者の使用役務と後者の指定役務は同一であるから、被請求人が役務「焼肉を主とする飲食物の提供」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。
4 答弁に対する弁駁
被請求人は、仮に、本件商標とイ号標章とは、称呼及び観念の比較において、類似する点があるとしても、外観において著しく相違していることから類似商標と解することはできない旨を主張している。
また、被請求人は乙第2号証として岡山地裁の判決文を提出しているが、原告たる本件請求人は、当該判決における商標の類否判断に誤りがあることを主たる理由として、広島高等裁判所に対して控訴していることを付言する。
(1)確かに、商標の類否判断において、図形の持つ情報伝達力を無視できないことは、被請求人が引用する東京高裁判決の示すとおり首肯されるものであるし、たとえ対比される商標間において外観・称呼又は観念のうち類似する点があるとしても直ちに類似商標と解することができない場合があるとした最高裁判決もまた首肯されるものである。
しかしながら、前記東京高裁判決にいう「図形」とは、文字商標と必ず組み合わされて使用される一体的な図形の意であって、イ号標章の白黒写真のような、いわば看板の背景デザインにすぎないようなものは含まれないと解すべきである。
すなわち、イ号標章における白黒写真は、その使用態様(甲第4号証)では何の写真なのか全く不明であり、乙第1号証のごとくまで大きく拡大し、さらに被請求人のような解説を受けて初めて「雪がうっすら降り積る夜」や「傘をさした中年女性が帰り道を急ぐ後姿」、「うら寂しい路地裏商店街」などが認識できるようになるのであるから、このように通常の使用態様において視覚的に認識・判別することができないような白黒写真は、単なる背景デザインとして意識されるにとどまるはずである。もとより、被請求人自らの使用態様に白黒写真を伴わないものが多いことは、被請求人としても当該白黒写真が商標として必須の構成要素ではないことを認めている証左である(甲第3号証)。
また、前記最高裁判決は、そもそも「その商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり,その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする」 ことを原則としているのであり、かかる原則を前提として外観等の三要素のみによる画一的判断を否定しているのであるから、むしろ取引の実情に照らして、使用者たる被請求人自らの使用態様においても省略される場合が多いような前記白黒写真は、単に付記的な背景デザインにとどまり、他の構成文字に比べると自他役務の識別力は大きく後退していると解するのが相当である。
特にデザイン手法・表現が多様化している現代にあっては、文字商標や図形商標の使用に際して、当該商標のイメージに合わせ、需要者に訴求するような白黒写真やカラー写真を背景に配することも珍しくない。イ号標章に使用されている白黒写真もまた、イ号標章全体から強く印象づけられる「闇市」のイメージを訴求する背景デザインにすぎないのである。
(2)ところで、イ号標章中「焼匠」の文字については、被請求人も述べているとおり、「職人技で焼く人」といった意味を看取するのが自然である。実際のところ、被請求人以外にも飲食店の屋号に「焼匠」の語を冠して使用している店舗は少なからず見当たるのであるし(甲第5号証の1ないし3)、「それぞれの部位にあわせて、「焼匠」が、丁寧に焼き上げます」と記され、明らかに前記意味合いにおいて使用されている例も見られる(甲第6号証)。
そうだとすれば、「焼匠」の語は、もはや「飲食物の提供」なる役務の分野においては、単に「職人技で焼く人」や「職人技で焼く人がいる店」といった修飾的な意味合いを看取させるにすぎず、単独では自他役務の識別力を発揮し得ないと解すべきである。
(3)また、イ号標章中「闇市」の文字は、当該標章の中心にあって、他の構成文字より格段に大きく、黒っぽい背景写真と対照的に白色文字にて浮き出すように書されているうえ、下段に小さくも「闇市」の読み方を強調するような赤色で「やみいち」の振り仮名が併記されている。グルメ情報等としてイ号標章が使用されている店舗を紹介するインターネットウエブサイト(甲第4号証)では、当該「闇市」の文字しか判読できないほど、他の構成文字とは格段に軽重の差がつけられているのである。
(4)そして、イ号標章中「ミート松」の文字については、被請求人も述べているとおり、「ミート松」氏といった特定人物を指すような印象は否定できないものの、イ号標章の構成中にあって唯一、縦書きである点、白枠で囲われている点からすれば、他の構成文字である「焼匠」や「闇市」「やみいち」との一体性は弱く、必ず一体不可分に把握され認識されるとはいい難い。
(5)結局、イ号標章の構成に照らせば、一見して顕著に目を惹く「闇市」の文字部分が単独で独立して認識され、称呼される得ることは否めない。
すなわち、単に「職人技で焼く人」といった程度の意味合いにすぎず、「闇市」の左肩に小さく、赤色文字で書された「焼匠」の文字や、「闇市」と同じ白色文字とはいえ、唯一縦書きされ枠で囲われた「ミート松」の各構成文字は、わずかに白黒写真上に配置されていることで物理的に「闇市」の文字と同じ平面上に存在しているだけであって、「闇市」と分離不可分なほどに強い結合関係があるといえる理由は見出せない。仮に「ミート松」が「闇市」を修飾しているとするならば、それは「闇市」グループの一員である「ミート松」氏といった補足的な意味として看取されるにすぎないから、自他役務の識別力の点からみれば、「闇市」の文字部分が単独で認識されることと大差がないのである。
ましてや、イ号標章に接する需要者として想定されるのは、飲食物の提供なる役務の性質に照らして一般消費者であるとするのが相当であるところ、簡易迅速を尊び、屋号ですら省略・短縮等して称呼されるのが通例な消費者において(例えば、「マクドナルド」を「マクド」、「ミスタードーナツ」を「ミスド」、「牛井の吉野家」を「ヨシギュウ」のように略称するが如し)、イ号標章中「闇市」の文字を単独で認識し、称呼することは蓋し自然であるといわざるを得ない。
なお、被請求人はイ号標章における白黒写真の物語性や独自性を主張するが、仮にそのような物語性が看取され得るとしても、「闇市」の文字部分から看取される「闇取引市場」の観念からかけ離れたものではなく、むしろ「闇取引市場」をモチーフとした写真としての印象にとどまるのである。
(6)他方、縦書きされた「闇市」の漢字の下に、欧文字で「YAMIICHI」と左横書きされてなる本件商標は、「闇市」と「YAMIICHI」が同一称呼・同一観念の対応関係にあることから、『ヤミイチ』の称呼と、「闇取引市場」といった観念が生じることは明白である。
(7)したがって、イ号標章は、独立して看取され認識され得る「闇市」の文字部分から生ずる称呼及び観念が共通する本件商標とは、相互に類似する商標である。
(8)以上、述べたとおり、本件商標とイ号標章とを比較すると、標章全体としての外観にはなるほど相違点も多いものの、指定役務又は使用役務たる「飲食物の提供」との関係で需要者たる一般消費者の視点からみれば、自他役務の識別標識たる部分はともに「闇市」の部分であり、「闇取引市場」なる観念が生ずる点で共通しているから、イ号標章を使用した場合には、外観の差異を超えて役務の提供者や質等の誤認混同を生ずるおそれがある。仮に、「焼匠」や「ミート松」の文字との組み合わせを考慮しても、「ミート松氏が経営し、職人的な技で焼く人がいる闇市なる店」といった程度の印象にとどまり、やはり「闇市」との関連性は拭えないから、本件商標に類似していることは明らかである。むしろ、広告媒体にデザインとしての訴求力が重視される現代取引社会においては登録商標の使用態様も多様化していることに照らせば、イ号標章は、本件商標と社会通念上同一性の範囲内にある使用態様とまでいえるのである。
第4 被請求人の主張
被請求人は、本件判定請求は成り立たない、との判定を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
1 はじめに
(1)請求人は、平成18年9月頃、被請求人の従業員に対し、被請求人は本件商標に係る商標権を侵害しており、被請求人はイ号標章の使用を直ちに取り止めるよう求める通知書を発した。従業員から報告を受けた被請求人は、請求人に対し、交渉による円満解決に向けて努力したが、請求人は、平成19年2月9日、岡山地方裁判所に対し、商標権侵害差止等を求めて提訴するに至った(岡山地方裁判所.平成19年(ワ)第147号商標権差止等請求事件)。
(2)同裁判所では、本件商標とイ号標章との類似性を主要な争点として審理が進み、平成20年1月23日、請求人及び被請求人双方の同意のもと、口頭弁論が終結された。ところが、請求人は、同年2月15日に至るや、突如、本件判定請求の結果を書証として提出したいとして口頭弁論再開を申し立て、同年3月4日、御庁に対し、本判定請求を申し立てた。請求人は、「商標の類否判断をはじめとする商標権の効力の範囲については専門官庁たる特許庁の中立的な見解を求めるのが適当であると主張したところ、(岡山地方裁判所において)当該主張が認められたので、本件判定請求に及んだ次第である。」と主張するが、「(岡山地方裁判所において)当該主張が認められた」との点は、事実ではない。同裁判所は、同年3月18日、本判定請求書を事実上斟酌した上で、判定請求の結果を待って口頭弁論を再開する必要性があるとはいえないと判断し、請求人の口頭弁論再開の申立てを退け、同年4月24日、判決を言い渡すに至ったものである。
(3)同裁判所は、第1回口頭弁論期日である平成19年6月7日から、口頭弁論が終結された平成20年1月23日までの間、請求人及び被請求人双方からの主張・立証を吟味し、慎重に審理を重ねた結果、本件商標とイ号標章とが類似しないことは明らかであると判断し、請求人の被請求人に対するイ号標章の使用差止及び損害賠償のいずれの請求も棄却すると判決した(乙第2号証)。被請求人は、御庁に対し、かかる判決正本を、本判定請求事件答弁書の書証として提出することとする。
(4)以下、本件商標とイ号標章との外観、称呼及び観念の比較を詳述した上、本件商標とイ号標章とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても非類似であることを主張するとともに、本件商標とイ号標章とは、外観において著しく相違していることから、最高裁判所判例に照らし、類似しないことを主張する。
2 本件商標とイ号標章とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、非類似の商標であること
(1)外観の比較
本件商標は、縦書きされた「闇市」という漢字と、横書きされた「YAMIICHI」という欧文字で構成されている。
イ号標章は、「朱色で横書きされた『焼匠』という漢字のオリジナル筆文字」、「白抜きで横書きされた『闇市』という漢字のオリジナル筆文字」、「朱色で横書きされた『やみいち』という平仮名文字のオリジナル筆文字」、「白抜きで縦書きされた『ミート松』という片仮名文字と漢字のオリジナル筆文字」、及び「『雪がうっすら降り積る夜、人気のない路地裏商店街を、荷物を小脇に抱え、傘をさした中年女性が帰り道を急ぐ後姿』を撮影したオリジナルの白黒写真」で構成されており、各構成要素がひとつの図柄として一体化されている。
そこで、本件商標の外観とイ号標章の外観とを比較してみると、一見して、外観において著しく相違していることは明らかである。本件商標とイ号標章とは、並べて対比した場合はもちろんのこと、時と場所とを異にした場合であっても、出所の誤認混同を生じないことは明白である。
なお、念のため、本件商標の外観とイ号標章の外観とを分析的に比較してみたとしても、以下のとおり、本件商標とイ号標章とは、外観において著しく相違している。
まず、本件商標の構成要素である「闇市」という漢字とイ号標章の構成要素である「闇市」という漢字とを比較すると、本件商標では白地に黒字で書かれているがイ号標章では白抜きで書かれているという違いがあること、本件商標では縦書きされているがイ号標章では横書きされているという違いがあること、本件商標では楷書体が使われているがイ号標章ではオリジナル筆文字の字体が使われているという違いがあることからして、共通する「闇市」という漢字を比較しただけでも、飲食店の主たる需要者である成人が通常有する注意力を基準とするならば、外観上、出所の誤認混同を生じないだけの差異がある。
また、「YAMIICHI」という欧文字は本件商標の構成要素であるがイ号標章の構成要素ではないこと、「焼匠」という漢字はイ号標章の構成要素であるが本件商標の構成要素ではないこと、「やみいち」という平仮名文字は、イ号標章の構成要素であるが本件商標の構成要素ではないこと、枠囲いされている「ミート松」という片仮名文字及び漢字はイ号標章の構成要素であるが本件商標の構成要素ではないこと、イ号標章の構成要素である「焼匠」という漢字及び「やみいち」という平仮名文字は朱色で書かれており、色彩はイ号標章の構成要素であるが本件商標の構成要素ではないことからすると、本件商標及びイ号標章の文字に係る構成要素だけを取り出して外観を比較しただけでも、外観において著しく相違している。
さらに、「雪がうっすら降り積る夜、人気のない路地裏商店街を、荷物を小脇に抱え傘をさした中年女性が帰り道を急ぐ後姿」を撮影したオリジナルの「白黒写真」は、イ号標章の構成要素であるが本件商標の構成要素ではない。
「今日のように情報媒体が多様化し、情報量が飛躍的に増大した社会において、世人は多量の情報を識別することに慣れ、個々の情報間の差異に敏感に反応する習慣が培われていることは、当裁判所においても顕著な事実である。特に、限られた時間内に自己商品の特徴を取引者、需要者に訴え、顧客の購買力を喚起しなければならない広告媒体、商品表示等においては、従来から、一見して認識可能な「図形」の持つ情報伝達力が重視されており、現在の取引社会においては、図形の持つ情報伝達力が文字の持つ情報伝達力以上に影響力を有するに至っていることも、経験則上明らかな事実である。このことからすると、商標の類否の判断において、商標の外観、観念、称呼の各要素は、あくまでも、総合的全体的な考察の一要素にすぎず、また、「図形」と「文字」の結合商標にあっては、文字部分のみをいたずらに重視して図形部分の持つ情報伝達力を軽んずることは、特段の理由のない限り許されず、当該商標における図形部分と文字部分の相互関係を慎重に検討しなければならないというべきである。」(東京高等裁判所平成7年3月29日民事13部判決)。
そこで、本件商標とイ号標章を比較してみると、イ号標章の構成要素である「白黒写真」は、外形上、文字に係る構成要素と一体不可分となっており、イ号標章に接した需要者が、「白黒写真」を無視して、文字に係る構成要素だけを認識することは普通考えられないのであって、本件商標とイ号標章とは、外観において著しく相違している。
のみならず、イ号標章の構成要素である「白黒写真」は、物語性があり、外観上及び観念上、上述した東京高等裁判所が指摘する図形以上の情報伝達力を有しているのであって、イ号標章に接した需要者が、文字に係る構成要素よりも、「白黒写真」に係る構成要素から影響力を受ける可能性が充分にある。すなわち、実際の取引現場において、イ号標章に接した需要者は、「雪がうっすら降り積る夜、人気のない路地裏商店街を、荷物を小脇に抱え、傘をさした中年女性が帰り道を急ぐ後姿」を描写した「白黒写真」に目を奪われ、外観を認識し、観念を形成する可能性が充分にある。いずれにせよ、本件商標とイ号標章とは、外観上、まったく異なるものであり、出所の誤認混同を生じないことは明白である。
そうすると、本件商標とイ号標章とは、外観の比較の点からして、著しく相違していることは明白である。
(2)称呼の比較
本件商標は、縦書きされた「闇市」という漢字と、横書きされた「YAMIICHI」という欧文字で構成されている。
ところで、本件商標の構成要素である「YAMIICHI」は、振り仮名として一般的に用いられている平仮名や片仮名文字でないこと、縦書きされた「闇市」の漢字に沿って位置していないことからすると、称呼の比較上、振り仮名であるとして捨象することはできない。むしろ、「闇市」だけでは識別力に極めて乏しいことからすると、本件商標は「YAMIICHI」を伴ってはじめて識別力を有するに至ったのであって、したがって、「闇市」だけからではなく、「YAMIICHI」からも称呼が生じ得る。そうすると、「闇市」からは「ヤミイチ」の称呼が生じ、「YAMIICHI」からは「ヤミイチ」の称呼が生ずるが、本件商標からは、その構成全体に相応して、単なる「ヤミイチ」との称呼が生ずるものと考えられる。
イ号標章は、前記(1)のとおり、各構成要素がひとつの図柄として一体化されている結合商標である。
ところで、商標法第4条第1項第11号に係る商標審査基準では、「結合商標の類否は、その結合の強弱の程度を考慮し、判断するものとする。ただし、著しく異なった外観、称呼又は観念を生ずることが明らかなときは、この限りでない。」とされている。本件商標とイ号標章とは、上述したとおり、著しく異なった外観を生ずることが明らかであるから、イ号標章の各構成要素の結合の強弱の程度を考慮して、結合商標の類否は判断されないこととなる。もっとも、「やみいち」は「闇市」の振り仮名であることから独自の称呼を生じず、「白黒写真」は事柄の性質上称呼を生じない。そうすると、結合商標の類否の判断上、イ号標章からは、「ヤキショウヤミイチミートマツ」の一連の称呼が生ずることとなる。
そこで、本件商標から生ずる「ヤミイチ」の称呼と、イ号標章から生ずる「ヤキショウヤミイチミートマツ」の称呼とを比較すると、両者は、語頭部分においては「ヤキショウ」の音の有無という顕著な差異を有し、語尾部部分においては「ミートマツ」の音の有無という顕著な差異を有し、それらの差異が称呼全体に及ぼす影響が極めて大きいことは明らかであるから、両者をそれぞれ称呼するときは、その語調と語感が異なり、飲食店の主たる需要者である成人が通常有する注意力を基準とするとき、称呼上も、出所の誤認混同を生じないだけの差異があることは明らかである。
なお、イ号標章の各構成要素の結合の強弱の程度が考慮され、イ号標章の構成要素である「焼匠」からは「ヤキショウ」、「闇市」からは「ヤミイチ」、そして、「ミート松」からは「ミートマツ」という複数の称呼が生ずるとしても、イ号標章からは「ヤキショウ」の称呼が生ずるが、本件商標からは生じないこと、イ号標章からは「ミートマツ」の称呼が生ずるが、本件商標からは生じないことからすると、飲食店の主たる需要者である成人が通常有する注意力を基準とするならば、やはり、出所の誤認混同を生じないだけの差異がある。
請求人は、イ号標章からは、単に「ヤミイチ」の称呼をも生ずるというべきであると主張するが、たとえ、イ号標章の各構成要素の結合の強弱の程度が考慮されるとしても、イ号標章の構成要素である「焼匠」から生ずる「ヤキショウ」の称呼及び「ミート松」から生ずる「ミートマツ」の称呼を、いずれも除外して比較する理由がない。
商標法第4条第1項第11号に係る商標審査基準では、結合商標の結合の強弱の程度を考慮する場合、形容詞的文字、慣用される文字及び商号の一部分として通常使用される文字は除外して、結合商法の類否を判断するものとされている。ところで、イ号標章の構成要素である「焼匠」は、商品の品質・原材料等を表示する文字ではないこと、役務の提供の場所・質等を表示する文字でもないことから形容詞的文字ではなく、慣用される文字でも商号の一部分として通常使用される文字でもないことは明らかであって、むしろ、イ号標章の識別力のある部分である。また、イ号標章の構成要素である「ミート松」も、形容詞的文字でも、慣用される文字でも、商号の一部分として通常使用される文字でもないことは明らかであって、やはり、イ号標章の識別力のある部分である。そうすると、イ号標章の構成要素である「焼匠」からは「ヤキショウ」の称呼が生じ、「ミート松」からは「ミートマツ」の称呼が生ずるというべきであって、「焼匠」及び「ミート松」を除外して、本件商標とイ号標章との類否を判断することはできない。したがって、単に「ヤミイチ」の称呼をも生ずるというべきであるという請求人の主張には理由がない。
そうすると、本件商標とイ号標章とは、称呼の比較の点からしても、相違している。
(3)観念の比較
本件商標は、縦書きされた「闇市」という漢字と、横書きされた「YAMIICHI」という欧文字で構成されている。
ところで、本件商標の構成要素である「YAMIICHI」は、前述のとおり、振り仮名として一般的に用いられている平仮名や片仮名文字でないこと、縦書きされた「闇市」の漢字に沿って位置していないことからすると、観念の比較上も、振り仮名であるとして捨象することはできない。むしろ、「闇市」だけでは識別力に極めて乏しいことからすると、本件商標は「闇市」に「YAMIICHI」を伴ってはじめて識別力を有するに至ったのであって、したがって、「闇市」だけからではなく、「YAMIICHI」からも観念が生じ得るはずである。もっとも、本件商標に接した需要者が、「YAMIICHI」から直ちに一定の意義を想起するものとはいい難く、本件商標の構成要素である「闇市」と称呼を同じくすることと呼応して、本件商標からは、その構成全体に相応して、「闇取引の品物を売る店が集まっているところ」(広辞苑第6版.)という観念が生ずるものと考えられる。
イ号標章は、前記(1)のとおり、各構成要素がひとつの図柄として一体化されている結合商標である。
ところで、本件商標とイ号標章とは、上述したとおり、著しく異なった外観を生ずることが明らかであるから、イ号標章の各構成要素の結合の強弱の程度を考慮して、結合商標の類否は判断されないこととなる。
そして、商標の類否判断の要素としての観念とは、多くの取引者や需要者がその商標自体から直ちに一定の意義を想起するものであることを要する。そこで、イ号標章に接した需要者が、イ号標章自体から直ちに想起する一定の意義を検討すると、イ号標章は、「焼匠」、「闇市」、「やみいち」、「ミート松」及び「白黒写真」の各構成要素がひとつの図柄として一体化されていることから、イ号標章に接した需要者は、一体化された図柄から、さまざまな情報を受け、複数の意義を想起することはあっても、その構成全体として、直ちに、一定の意義を想起することは困難であるから、イ号標章からは、その構成全体として、特定の観念が生ずることはないというべきである。
なお、イ号標章の各構成要素の結合の強弱の程度が考慮された場合、イ号標章に接した需要者が、イ号標章自体から直ちに想起する一定の意義を検討する。
まず、イ号標章の「焼匠」は、造語ではあるが、「焼き」は「焼くこと」(広辞苑第6版.)、「匠」は「手先または器械で物を造る仕事を業とする人」(広辞苑第6版.)という意義を有しており、イ号標章に接した需要者は、「焼匠」から、直ちに、「職人技で焼く人」といった意義を想起することは充分に現実的である。したがって、イ号標章の「焼匠」からは、「職人技で焼く人」といった観念が生ずるものと考えられる。
つぎに、イ号標章の「闇市」及びその振り仮名である「やみいち」からは、「闇取引の品物を売る店が集まっているところ」(広辞苑第6版.)という観念が生ずる。
さらに、イ号標章の「ミート松」は、造語ではあるが、イ号標章は全体としてひとつの図柄であること、「ミート松」は、イ号標章の左上から右下へと外観上まとまりよく一体的に表されている文字の最後尾(右下)に位置していること、「ミート松」は、同じ白抜きのオリジナル筆文字で枠囲いされていることからすると、イ号標章に接した需要者は、「ミート松」という「印影」を連想し、「図柄作成者は「ミート松」氏」といった観念を想起することは充分に現実的である。したがって、イ号標章の「ミート松」からは、「図柄作成者は『ミート松』氏」といった観念が生ずるものと考えられる。
そして、たしかに、商標の類否判断の要素としての観念とは、多くの取引者や需要者がその商標自体から直ちに一定の意義を想起するものであることを要することからすると、写真などからは、一定の意義は想起されないとも考え得る。しかしながら、前述したとおり、イ号標章の構成要素である「白黒写真」には、物語性があり、外観上及び観念上、前出の東京高等裁判所が指摘する図形以上の情報伝達力を有しているものであって、イ号標章に接した需要者が、文字に係る構成要素よりも、「白黒写真」から影響力を受ける可能性が充分にある。すなわち、実際の取引現場において、イ号標章に接した需要者は、「雪がうっすら降り積る夜、人気のない路地裏商店街を、荷物を小脇に抱え、傘をさした中年女性が帰り道を急ぐ後姿」の白黒写真に目を奪われ、外観を認識し、観念を形成する可能性が充分にある。そうすると、イ号標章に接した需要者は、「白黒写真」から、直ちに、「うら寂しい路地裏商店街」といった程度の意義を想起することは充分に現実的である。したがって、イ号標章の「白黒写真」からは、「うら寂しい路地裏商店街」といった観念が生ずるものと考えられる。
したがって、イ号標章に接した需要者は、イ号標章の各構成要素からは、「職人技で焼く人」、「闇取引の品物を売る店が集まっているところ」、「図柄作成者は「ミート松」氏」、「うら寂しい路地裏商店街」といった複数の意義を想起することになるが、各要素の相互関係を検討するに、「焼匠」から想起される「職人技」という意義と「闇市」から想起される「闇取引の品物を売る店」という意義は矛盾をはらむこと、「白黒写真」から想起される「うら寂しい路地裏商店街」という意義と「闇市」から想起される「店が集まっているところ」という意義は矛盾をはらむことからして、需要者をして、複数の意義を想起させるイ号標章全体から、直ちに一定の意義を想起することは困難である。そうすると、イ号標章からは、その構成全体として、特定の観念が生ずることはないというべきである。
そこで、本件商標から生ずる観念と、イ号標章から生ずる観念とを比較すると、本件商標からは「闇取引の品物を売る店が集まっているところ」という観念を生ずるが、イ号標章からは、その構成全体として、特定の観念が生ずることはない。そうすると、本件商標とイ号標章は、観念においては比較できないものである。
請求人は、イ号標章からは「闇市」の文字部分から生ずる「闇取引市場」といった観念が生ずるにとどまると主張するが、たとえ、イ号標章の各構成要素の結合の強弱の程度が考慮されるとしても、イ号標章の構成要素である「焼匠」から生ずる「職人技で焼く人」といった観念、「ミート松」から生ずる「図柄作成者は「ミート松」氏」といった観念、及び、「白黒写真」から生ずる「うら寂しい路地裏商店街」といった観念を、いずれも除外して比較する理由がないことは、上述したとおりである。加えて、イ号標章の構成要素である「白黒写真」は、物語性があり、外観上及び観念上、上述した東京高等裁判所が指摘する図形以上の情報伝達力を有しているのであって、イ号標章に接した需要者が、文字に係る構成要素よりも、「白黒写真」に係る構成要素から影響を受ける可能性が充分にあることも、上述したとおりであって、「白黒写真」から生ずる「うら寂しい路地裏商店街」といった観念を除外して比較する理由がない。したがって、イ号標章からは、「闇市」の文字部分から生ずる「闇取引市場」といった観念が生ずるにとどまるという請求人の主張には理由がない。
そうすると、本件商標とイ号標章とは、観念の比較の点からしても、相違している。
3 本件商標とイ号標章とは、外観において著しく相違していることから、最高裁判所判例に照らし、類似しないこと
(1)「商標の類否は、同一又は類似の商品に使用された商標が外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、かつ、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである。右のとおり、商標の外観、観念又は称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所を誤認混同するおそれを推測させる一応の基準にすぎず、したがって、右3点のうち類似する点があるとしても、他の点において著しく相違するか、又は取引の実情等によって、何ら商品の出所を誤認混同するおそれが認められないものについては、これを類似商標と解することはできないというべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同昭和43年2月27日第3小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。」(最高裁判所平成9年3月11日第3小法廷判決)。
(2)請求人は、本件商標とイ号標章とは、各標章の外観が相違するとしても、各標章の構成から自然に生ずる「ヤミイチ」の称呼と、「闇取引市場」の観念を共通にしているから、同一又は類似の役務に使用された場合にはそれら役務の質や提供者について誤認混同を生じさせるおそれがあるので、相互に類似する標章というべきであると主張する。これに対して、被請求人は、上述したとおり、本件商標とイ号標章とは、外観については当然に、称呼及び観念についても類似性が認められないと主張するものである。
もっとも、本件商標とイ号標章とは、上述したとおり、外観において著しく相違していることは明らかである。そうすると、仮に、本件商標とイ号標章とは、称呼・観念の比較において、類似する点があるとしても、上述の最高裁判所判例に照らせば、類似商標と解することはできないというべきである。
4 結語
以上のとおり、本件商標とイ号標章とは非類似であるから、イ号標章は本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものである。
第5 当審の判断
本件商標は、別掲(1)のとおり、「闇市」の文字を縦書きし、その下に「YAMIICHI」の文字を横書きしてなるところ、「YAMIICHI」の文字部分はその上部に書された漢字「闇市」の読みを表記したものとして理解されるものであるから、全体として各構成文字に照応して「ヤミイチ」の称呼及び「闇市(闇取引の品物を売る店が集まっているところ。闇市場。)」(株式会社岩波書店発行 広辞苑第6版)の観念が生ずるものである。
他方、イ号標章は、別掲(2)のとおり、「白黒写真」を背景として、朱色で横書きされた「焼匠」の文字、白色で横書きされた「闇市」の文字、朱色で横書きされた「やみいち」の文字、及び、白色で縦長長方形枠内に縦書きされた「ミート松」の文字が、何れも毛筆書き風に表されてなるものである。
ところで、一般に、看板等において、他の文字よりも大きく顕著に書されている部分がある場合、その部分が役務の質等の自他役務の識別標識として機能し得ない場合を除き、これに接する需要者は、その顕著に表されている部分とそれ以外の表示部分とが一体的に把握されないときは、その顕著に表されている部分に着目し、当該部分より生ずる称呼及び観念をもって取引に当たるものとみるのが自然である。
そこで、イ号標章についてみるに、その構成文字中「焼匠」の文字部分は、提供される役務との関係において、「焼物(料理)の職人」程度の意味を極めて容易に理解させるものであり、さらに、当業界において、「焼匠」の文字が前記の意味合いで使用されている事実も確認できる(甲第5号証及び甲第6号証)ことから、当該文字部分は、その役務との関係においては、「焼物(料理)の職人による料理を提供する」程の意味合いを認識させるにとどまり、役務の質を表示するにすぎないものというのが相当である。
「ミート松」の文字部分は、特定の意味合いを生ずることのない一種の造語と認められ、しかも、他の文字が全て横書きで書されているのに対して、縦長長方形枠で囲まれ縦書きに小さく表されている構成からも、他の文字と必ずしも一体的に把握、認識されなければならないとする特段の理由はないものといえる。
また、各構成文字の背景に表された「白黒写真」については、あらためて仔細に観察すれば、「雪がうっすら降り積る夜道の小さな店の前を荷物を小脇に抱え傘をさした女性が歩いている写真」であることを確認し得るとしても、これに接する需要者は、イ号標章全体としては、一見して「白黒写真」からは「薄暗い夜道」程度のことを把握し、単に各文字部分の背景図形として認識するにとどまるものというのが自然であり、また、「白黒写真」と各文字部分とを常に一体のものとして把握、認識しなければならない特段の理由も見出せないものである。
そして、「闇市」の文字は、中央に大きく顕著に書されていることから需要者の注意を強く惹き、また、その下に朱色で小さく書された「やみいち」の文字は、「闇市」の語の読みに相当する平仮名文字を付記したものと容易に理解されるものであり、かつ、これらの文字は特定の役務の質等を直接的又は具体的に表示したものとはいえないから、「闇市」及び「やみいち」の文字部分も独立して自他役務の識別標識として機能するものというのが相当である。
そうとすれば、「闇市」及び「やみいち」の文字部分に照応して、単に「ヤミイチ」の称呼及び「闇市(闇取引の品物を売る店が集まっているところ。闇市場。)」(株式会社岩波書店発行 広辞苑第6版)の観念をも生ずるものと認められる。
してみれば、イ号標章と本件商標とは、外観において相違するとしても、「ヤミイチ」の称呼及び「闇市(闇取引の品物を売る店が集まっているところ。闇市場。)」の観念を共通にする類似のものといわざるを得ない。
また、イ号標章が使用されている役務「焼き肉を主とする飲食物の提供」は、本件商標の指定役務に含まれるものと認められる。
したがって、役務「焼き肉を主とする飲食物の提供」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。
よって、結論のとおり判定する。
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