結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2007−890059(T2007−890059/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第5023157号商標(以下「本件商標」という。)は、「VENPRA」の欧文字を標準文字で表してなり、平成18年7月10日に登録出願、第5類「動物用薬剤」を指定商品として、同19年1月11日に登録査定、同年2月2日に設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の登録の無効の理由に以下の4件の登録商標を引用しており、いずれも、現に有効に存続しているものである。
(a)登録第5007721号商標(以下「引用商標1」という。)は、「VENPLICA」の欧文字を標準文字で表してなり、2005年9月2日フランス共和国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成18年3月1日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同年12月1日に設定登録されたものである。
(b)登録第4905849号商標(以下「引用商標2」という。)は、「Zemplar」の欧文字を横書きしてなり、平成15年8月14日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同17年11月4日に設定登録されたものである。
(c)登録第4905850号商標(以下「引用商標3」という。)は、「ゼンプラー」の片仮名文字を横書きしてなり、平成15年8月14日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同17年11月4日に設定登録されたものである。
(d)登録第2364596号商標(以下「引用商標4」という。)は、「ベンプー」の片仮名文字を横書きしてなり、平成元年5月8日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、同3年12月25日に設定登録されたものである。その後、指定商品については、平成13年10月24日に指定商品の書換登録がされ、第1類「化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),植物成長調整剤類」、第2類「カナダバルサム,壁紙剥離剤,コパール,サンダラック,シェラック,松根油,ダンマール,媒染剤,マスチック,松脂,木材保存剤」、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用海草のり,洗濯用コンニャクのり,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり」、第4類「固形潤滑剤」、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料」、第8類「ピンセット」、第10類「氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック,避妊用具,人工鼓膜用材料,補綴充てん用材料(歯科用のものを除く。),耳栓」、第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」、第19類「タール類及びピッチ類」、第21類「デンタルフロス」及び第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤」と書き換えられている。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第9号証(商標公報、商標登録原簿の各写し及び辞書類)を提出した。
本件商標は、請求人の所有する引用各商標と類似するから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(1)本件商標と引用商標1との類否について
本件商標は、「VENPRA」の欧文字を標準文字をもって書してなるから、これより「ベンプラ」の称呼を生じる。
他方、引用商標1は、「VENPLICA」の欧文字を標準文字をもって書してなるから、「ベンプリカ」の称呼を生じるが、簡便、迅速を尊ぶ取引においては、「ベンプリ」や「ベンプル」等、語尾を省略して使用することがしばしば行われる。
そうとすれば、本件商標の称呼「ベンプラ」は、語頭から濁音「べ」、撥音「ン」、無声両唇破裂音「プ」、流音「r」の順に並べられて非常に特徴ある構成となっている部分が、引用商標1で簡便に使用される「ベンプリ」や「ベンプル」と同一であり、本件商標と引用商標1の称呼とは類似するといえる。外観に関しても、最も注目される語頭の「VENP」と語尾の「A」が同一であり、相違するのは注目されにくい中間部分であるから類似である。
したがって、本件商標と引用商標1とは類似するといえる。
(2)本件商標と引用商標2との類否について
引用商標2は、「Zemplar」を横書きした文字からなるから、「ゼンプラ」又は「ゼンプラー」の称呼を生じるが、簡便、迅速を尊ぶ取引においては、より短い「ゼンプラ」を使用することがしばしば行われる。
したがって、本件商標の称呼「ベンプラ」と引用商標2の称呼「ゼンプラ」とは、語頭の「べ」が「ゼ」と異なるだけで、残りは同一である。そして、「べ」と「ゼ」は、共に母音「エ」を伴う濁音であり共通する。厳密には「べ」は、両唇を閉じてから開く破裂音であり、「ゼ」は、舌の先を上歯茎に近づけて、隙間から声を摩擦させて通すときに出る有声音(歯茎摩擦音)、又は、いったん舌を上歯茎に付けて、離すときに、狭い隙間を作って摩擦した音を出す有声音(歯茎破擦音)であるが、日常において発音される場合には、通常は唇や舌を上記のように使用せずに動きを省略されて簡便に発音される。したがって、母音「エ」を伴う濁音であることが共通する破裂音「べ」と破擦音「ゼ」を聞き分けることは困難であるから、本件商標の称呼「ベンプラ」と引用商標2の称呼「ゼンプラ」とは類似する。
現実の取引の実情において重視される称呼が上記の通り類似するので、本件商標と引用商標2とは類似するといえる。
(3)本件商標と引用商標3との類否について
引用商標3は、「ゼンプラー」を横書きした文字からなるから、「ゼンプラー」の称呼を生じるが、簡便、迅速を尊ぶ取引においては、より短い「ゼンプラ」を使用することがしばしば行われる。
したがって、上記引用商標2で考察したとおり、本件商標の称呼「ベンプラ」と引用商標3から生じる称呼「ゼンプラ」とは類似し、本件商標と引用商標3とは類似するといえる。
(4)本件商標と引用商標4との類否について
引用商標4は、「ベンプー」を横書きした文字からなるから、「ベンプー」の称呼を生じるが、簡便、迅速を尊ぶ取引においては、より短い「ベンプ」を使用することもしばしば行われる。
したがって、本件商標の称呼「ベンプラ」と引用商標4の称呼「ベンプー」又は「ベンプ」とは、語尾の「ラ」の有無が異なるだけで注目されやすい語頭は同一である。そして、破裂音「プ」の直後の流音「r」は比較的軽く発音されるから、称呼「ベンプラ」と称呼「ベンプー」の違いは意識されにくい。したがって、本件商標の称呼「ベンプラ」と引用商標4の称呼「ベンプー」又は「ベンプ」とは類似する。
現実の取引の実情において重視される称呼が上記の通り類似するので、本件商標と引用商標4とは類似するといえる。
(5)むすび
以上より、本件商標は、引用商標1ないし引用商標4のいずれとも類似し、かつ、本件商標の指定商品である第5類「動物用薬剤」は、引用各商標の指定商品「薬剤」に含まれるから同一である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
本件商標及び引用商標は、いずれも新しい造語であり、それぞれが別個の言葉として親しまれているということはない。即ち、これまで「VENP・・・」のような言葉はなく、引用商標1を初めて見た者は、これを商品の識別標識として強く記憶することとなり、後に、本件商標を見ても、医薬品、獣医薬製品分野でよくある同一の出所に由来する新製品や製品のマイナーチェンジに伴う語尾変化と解し、引用商標1と関連付け、商品出所について混同を生じる可能性が高い。
本件商標及び引用商標が新規な造語であることは、例えば、我が国で一般的に広く用いられている研究社発行「NEW ENGLISH−JAPANESE DICTIONARY」に「VENP」で始まる単語は全く記載されておらず(甲第8号証)、同様に広く用いられている岩波書店発行「広辞苑」にも「ベンプ」で始まる単語は全く記載されていないことから明らかである(甲第9号証)。
本件商標から生じる称呼「ベンプラ」と引用商標1から生じる称呼「ベンプリカ」について対比すると、両商標は、語頭から始めの3音であり比較的強く発音される「ベンプ」を共通にしており、4音目の子音も日本語では「r」であり共通しているため、両称呼は類似するということができる。
一方、本件商標の4音目末尾「ラ」及び引用商標1の「リカ」の差異は、この部分が比較的弱く発音され、称呼全体において余り目立たない語尾にあるため、商標全体に与える影響は小さく、その差異を唯一の根拠として両商標が称呼上非類似であるとするほどの大きな相違点ではない。この差異部分は、商標の主要部である造語「ベンプ」に続くわずかな語尾の部分で、語源を同じくする派生語がとるような小さな変化である。
このように、両商標は、それぞれ造語であり、語頭の3音が完全に一致している4音及び5音により構成されるから、語尾の差異のみで形式的に非類似との判断をすることはできない。
更に、外観に関しても、両商標が薬剤に使用された場合には、その構成中の注目されやすい語頭「VENP」及び語尾「A」の文字部分は、中間に位置する「R」、「LIC」の文字部分に比して自他商品の識別力が強く、商標として重要な要素を占めるものといえる。
本件商標の観念に関しても、本件商標と引用商標1とは、二つの共通する語から創案された一連一体の観念を持つ造語商標として認識され、この点において観念が共通するため、厳密には特定の意味合いを有していなくとも、語尾がわずかな差異しか有しないこととも相まって、看者には全体として類似の印象を与える。
一方、被請求人が、本件商標の称呼と引用商標1から生ずる「ベンプリカ」の称呼との対比として例示している組み合わせは、いずれも一般的に使用される普通名称又は形容詞であり、その基本構造に造語部分は全く含まれていないから、本件商標と引用商標1との類否判断と例示された登録商標の類否判断とを同列に扱うことはできない。
また、本件商標の指定商品の取引の実情を検討すると、一般に、商標の使用によって、商品の出所に混同を生じるおそれがあるかどうかを判断するに当たっては、当該商品の取引者及び需要者を基準として判断すべきであるところ、動物用薬剤を使用する動物飼育者は、自らの意思と支出において動物用薬剤を購入するか処方してもらうものであるから、当該薬剤の需要者に当たる。したがって、動物用薬剤において、類似した商標が使用されることにより商品の出所に混同を生じるおそれがあるかどうかは、取引者、獣医及び獣医薬品取扱者等の獣医療専門家のみならず、当該医薬品を購入し、又は医薬品を処方され投与を受ける患畜を保有する一般人についても、これを参酌すべきものである。本件において、本件商標と引用商標1は、前記のとおり相当程度類似しており、獣医、薬品取扱者等の獣医療専門家についても商品の出所について混同を生じるおそれがあるということができ、患畜保有者については、一層そのおそれが高い。
したがって、被請求人が本件商標をその指定商品である「動物用薬剤」に使用した場合には、前記実情より、これに接する取引者・需要者は、語頭「VENP」及び語尾「A」の文字部分並びに語頭の称呼「ベンプ+r」に着目し、該商品が請求人の取扱に係る商品であるかの如く誤認し、その出所について混同を生じるおそれがある。
以上より、本件商標は、他人の先願先登録商標である引用商標1と類似し、かつ、指定商品も同一であるので、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第71号証(出願・登録情報、審決公報等)を提出した。
(1)本件商標と引用商標1との類否について
(ア)外観について
本件商標は「VENPRA」の欧文字を標準文字で書した構成よりなり、引用商標1は「VENPLICA」の欧文字を標準文字で書した構成よりなるところ、差異を有する文字も「R」と「LIC」と顕著に外形が異なり、全体の文字数も顕著に異なるものであるから、その外観において相紛れるおそれはないものである。
(イ)称呼について
本件商標は、英語風に「ベンプラ」の称呼を生じる。
一方、引用商標1は、「VENPLICA」の文字を同書・同大・同間隔で外観上まとまりよく書してなり、各構成文字において軽重の差も見受けられない構成となっているから、これより、英語風に「ベンプリカ」の称呼を生じるものであり、5音と短く淀みなく一連に称呼し得るものである。
請求人は、「簡便、迅速を尊ぶ取引において『ベンプリ』や『ベンプル』等、語尾を省略して使用することがしばしば行われる。」と主張するのみで、取引の実情につき何ら具体的に立証していない。通常、簡便迅速を尊ぶ取引において、称呼を省略して使用されるのは、称呼が冗長である場合やハウスマークとファミリーネーム、ペットネームが結合するような態様で構成されている場合、識別力が低い語と識別力が強い語とが結合している場合等のように、分離して看取し称呼されやすい態様からなる場合である。
そうとすれば、引用商標1のように、全体としてまとまりのよい構図からなり、各文字に軽重の差をつけなければならない特段の事情もなく、5音と短い称呼からなるものをあえて「ベンプリ」や「ベンプル」と称呼するのはかえって不自然である。また、薬剤を扱う業界で、「ベンプリカ」の称呼をあえて、「ベンプリ」、「ベンプル」と称呼しなければならない特段の理由も見当たらない。
そこで、本件商標から生ずる「ベンプラ」と引用商標1から生ずる「ベンプリカ」の称呼とを比較すると、語頭3音において共通するも、第4音以降において「ラ」と「リカ」の差異を有し、また、構成する音数も4音、5音と相違するものであるから、両称呼をそれぞれ一連に称呼した場合、これらの差異が及ぼす影響は大きく、語調・語感が顕著に異なり、両者は、称呼において互いに相紛れるおそれはないものである。
参考として、「○○ラ」の称呼が生ずる商標と「○○リカ」の称呼が生ずる商標とが互いに同一又は類似する商品を指定して併存して登録されている例を乙第1号証ないし乙第11号証として提出する。
仮に、引用商標1から「ベンプリ」、「ベンプル」の称呼が生じたとしても、これらの称呼と本件商標から生ずる「ベンプラ」の称呼とは明確に聴別し得るものである(参考として、乙第12号証ないし乙第33号証)。
(2)本件商標と引用商標2との類否について
(ア)外観について
本件商標と「Zemplar」の欧文字を横書きした構成からなる引用商標2とは、構成する文字が顕著に異なり、その文字数も顕著に異なるから、本件商標と引用商標2とは、その外観において相紛れるおそれはないものである。
(イ)称呼について
本件商標からは「ベンプラ」の称呼を生じ、引用商標2からは、英語風に「ゼンプラー」の称呼が生じる。
両称呼の差異は、語頭音の「べ」と「ゼ」及び語尾における長音の有無である。
この点につき、請求人は、簡便、迅速を尊ぶ取引においては、引用商標2の称呼においては「ゼンプラ」を使用することが多く、本件商標から生ずる称呼との差異音が語頭音の「べ」と「ゼ」であるから、両者は類似すると主張している。
しかしながら、本件商標から生ずる称呼「ベンプラ」は4音と短く、引用商標2から生ずる称呼「ゼンプラー」は長音を含めても5音と短い。また、これと相俟って、両者の差異音である「べ」と「ゼ」は、称呼上重要な要素を占める語頭に位置し、かつ、「べ」は、両唇を合わせて破裂させる有声子音であるのに対して、「ゼ」は、舌端を前硬口蓋に寄せて発する有声摩擦子音であるので、調音方法を異にする。そのため、両称呼をそれぞれ一連に称呼した場合には、全体の語調・語感が相違し、互いに紛れるおそれはないものである。
参考として、「ゼ○○」と「べ○○」の称呼が生ずる商標が互いに薬剤を指定商品として併存して登録されている例及び審決例を乙第34号証ないし乙第46号証として提出する。
してみれば、引用商標2につき、語尾音の長音の有無を論ずるまでもなく、本件商標と引用商標2とは、称呼において互いに相紛れるおそれはないものである。
(3)本件商標と引用商標3との類否について
(ア)外観について
本件商標と「ゼンプラー」の片仮名文字を横書きした構成よりなる引用商標3とは、構成する文字が顕著に異なるから、本件商標と引用商標3とは、その外観において相紛れるおそれはないものである。
(イ)称呼について
本件商標からは「ベンプラ」の称呼を生じ、引用商標3からは、「ゼンプラー」の称呼が生じる。両商標についての称呼の比較は、上記したところと同様であるから、本件商標と引用商標3とは、称呼において互いに相紛れるおそれはないものである。
(4)本件商標と引用商標4との類否について
(ア)外観について
本件商標と「ベンプー」の片仮名文字を横書きした構成よりなる引用商標4とは、構成する文字が顕著に異なるから、本件商標と引用商標4とは、その外観において相紛れるおそれはないものである。
(イ)称呼について
本件商標からは「ベンプラ」の称呼を生じ、引用商標4からは「ベンプー」の称呼が生じる。
両称呼の差異は、語尾音が「ラ」と長音であることである。
この点につき、請求人は、簡便、迅速を尊ぶ取引においては、引用商標4の称呼においては「ベンプ」を使用することが多く、本件商標から生ずる称呼とは、「語尾の『ラ』の有無が異なるだけで注目されやすい語頭は同一である」とし、両者は類似すると主張している。
しかしながら、本件商標から生ずる称呼「ベンプラ」は、4音と短く、第3音の「プ」の母音が「u」音であり、口を尖らせて発音するのに対して、第4音の「ラ」の母音が「a」音であり、口を大きく開けて発音されるため、全体として、「べ」「ン」「プ」「ラ」と一音一音確認するが如く発音され、語尾音の「ラ」も明確に発音され聴別できる。
これに対し、引用商標4は、第3音の「プ」の後が長音であるため、「ベンプー」と−音−音確認するが如く発音されるのではなく、一気に間延びしたように発音され、音数も長音を含め4音と短いこととも相俟って、両称呼は語調・語感を異にし明確に聴別し得るものである。
よって、本件商標から生ずる「ベンプラ」の称呼と引用商標4から生ずる「ベンプー」の称呼とは、相紛れるおそれはないものである。参考として、「○○ラ」と「○○−(長音)」の称呼が生ずる商標が互いに薬剤を指定商品として併存して登録されている例を乙第47号証ないし乙第54号証として提出する。
仮に、引用商標4を請求人が主張するように「ベンプ」と称呼したとしても、いずれも短い音構成からなり、差異音の「ラ」も明瞭に発音され聴取できるから、この「ラ」の有無の差異が両称呼全体に及ぼす影響は大きく、それぞれを一連に称呼した場合には、全体の語調・語感が相違し、互いに紛れるおそれはないものである。
(5)本件商標と引用各商標の観念について
本件商標及び引用商標1ないし引用商標4は、いずれも特定の語義を有さない造語であるから、観念においても互いに相紛れるおそれはないものである。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標と引用各商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても紛れるおそれはないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではなく、商標法第46条第1項の規定に該当しないものである。
請求人は、引用商標1ないし引用商標4を引用して、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する旨主張しているので、この点について判断する。
(1)本件商標と引用各商標の称呼の特定
本件商標及び引用各商標は、前記したとおり、本件商標は「VENPRA」の欧文字を書してなり、引用商標1は「VENPLICA」の欧文字を書してなり、引用商標2は「Zemplar」の欧文字を書してなるところ、これらの語(文字)は、いずれも特定の読みをもって親しまれている成語とは認められない綴字からなるものであり、そのような語の場合、我が国においては、一般的に最も親しまれている英語風の読みに従って称呼されるものとみるのが自然であるから、英語風の読みに従って、本件商標からは「ベンプラ」の称呼を生じ、引用商標1からは「ベンプリカ」の称呼を生じ、引用商標2からは「ゼンプラー」の称呼を生ずるものということができる。
また、引用商標3は「ゼンプラー」の片仮名文字を書してなり、引用商標4は「ベンプー」の片仮名文字を書してなるものであるから、引用商標3からは「ゼンプラー」の称呼を生じ、引用商標4からは「ベンプー」の称呼を生ずること明らかである。
この点について、請求人は、本件商標及び引用各商標から上記称呼が生ずること自体は否定していないが、引用各商標については、簡便、迅速を尊ぶ取引においては、語尾を省略して使用することがしばしば行われるとして、引用商標1からは「ベンプリ」及び「ベンプル」の称呼を、引用商標2及び3からは「ゼンプラ」の称呼を、そして、引用商標4からは「ベンプ」の称呼をも生ずるものである旨主張している。
しかしながら、称呼を省略して使用されるのは、称呼が冗長である場合や明らかに分離された構成からなるような場合、ハウスマークとペットネームとが結合されているような場合、識別力の強い語と識別力の弱い語とが結合しているような場合等、分離して看取し称呼される合理的な理由が存する場合に限られるものというべきであり、如何に、簡易・迅速を尊ぶ商取引とはいえ、そのような合理的な理由もないのに、むやみに称呼を省略して使用されることはないものといわなければならない。
これを引用各商標についてみれば、引用商標1は、「VENPLICA」の欧文字を同じ書体・同じ大きさ・同間隔に外観上まとまりよく一体的に表現されており、各構成文字の間に特に軽重の差もなく、しかも、これより生ずる「ベンプリカ」の称呼も5音と簡潔なものであって、淀みなく一気一連に称呼し得るものである。
そうとすれば、この称呼を「ベンプリ」あるいは「ベンプル」と称呼しなければならない特段の理由が存するものとは認められない。
また、引用商標2ないし引用商標4についても、上記したとおりの構成からなるものであり、外観上まとまりよく一体的に表現されており、各構成文字間に軽重の差もなく、これらより生ずる「ゼンプラー」、「ベンプー」の各称呼も淀みなく一気一連に称呼し得るものであって、称呼する者により語尾の長音の伸ばし方に長短の差が有り得るとしても、長音部分の余韻さえ捨象して、長音を完全に省略して称呼されるとみなければならない格別の理由は見出し得ない。
そして、薬剤を扱う業界において、引用各商標が「ベンプリ」、「ベンプル」あるいは「ゼンプラ」、「ベンプ」のように、商取引上称呼されているとする事実を示す証拠も提出されていない。
してみれば、この点についての請求人の主張は採用し難く、前記したとおり、引用商標1からは、「ベンプリカ」の称呼を、引用商標2及び引用商標3からは「ゼンプラー」の称呼を、そして、引用商標4からは「ベンプー」の称呼のみを生ずるものといわなければならない。
(2)本件商標と引用各商標との称呼の類否について
(ア)本件商標と引用商標1との類否について
本件商標から生ずる「ベンプラ」の称呼と引用商標1から生ずる「ベンプリカ」の称呼とを比較するに、両者は、前半の「ベンプ」の音部分を共通にするとしても、後半部分において、「ラ」と「リカ」の音の差異を有するものである。しかして、「ラ」と「リ」の音は、同行に属する音ではあるが、「ラ(ra)」の母音(a)も「リ(ri)」の母音(i)も、ともにはっきりと澄んだ音として発音されることから、「ラ」と「リ」の音の差異は明瞭に聴別し得るものということができる。加えて、引用商標1の称呼には、本件商標には存しない「カ」の音を有し、この音も明瞭に響く音(破裂音)であるから、これらの音の差異が全体としても4音対5音という比較的短い音構成からなる両称呼に与える影響は決して小さいものとはいえず、それぞれを一連に称呼するも、語調・語感を異にし、互いに聞き誤るおそれはないものというべきである。
(イ)本件商標と引用商標2及び引用商標3との類否について
本件商標から生ずる「ベンプラ」の称呼と引用商標2及び引用商標3から生ずる「ゼンプラー」の称呼とを比較するに、この両称呼は、称呼における識別上重要な要素を占める語頭音において「ベ」と「ゼ」の音の差異を有するところ、「ベ」の音は両唇を合わせて破裂させる有声子音(b)と母音(e)との結合した音節であるのに対して、「ゼ」の音は、舌端を前硬口蓋に寄せて発する有声摩擦子音(z)と母音(e)との結合した音節であって、調音方法を異にするものである。加えて、引用商標2及び引用商標3の称呼には、語尾部分に長音を伴っており、この長音は、開放音にして明瞭に澄んだ音として響く母音(a)の長音であることから、後半の「ラー」の音部分も伸びやかに明瞭に発音され、聴取されるものということができる。
そうとすれば、これらの音の差異が全体としても4音対5音という比較的短い音構成からなる両称呼に与える影響は決して小さいものとはいえず、それぞれを一連に称呼するも、語調・語感を異にし、互いに聞き誤るおそれはないものというべきである。
(ウ)本件商標と引用商標4との類否について
本件商標から生ずる「ベンプラ」の称呼と引用商標4から生ずる「ベンプー」の称呼とを比較するに、両者は、前半の「ベンプ」の音部分を共通にするとしても、本件商標は、「プ」の音の後に、有声の弾音にして、はっきりと澄んだ音である「ラ」の音が発せられるのに対して、引用商標4は、「プ」の音を伸ばして消え入るように発音される(u)の長音で終わっているものであるから、この音の差異が全体としても4音という比較的短い音構成からなる両称呼に与える影響は決して小さいものとはいえず、それぞれを一連に称呼するも、語調・語感を異にし、互いに聞き誤るおそれはないものというべきである。
(3)本件商標と引用各商標との外観の類否について
前記したとおり、本件商標は「VENPRA」の欧文字よりなるものであり、引用商標1は「VENPLICA」の欧文字よりなるものであるところ、両商標は、前半部分の「VENP」と語尾の「A」の文字を同一にするが、中間部分とはいえ、「R」と「LIC」の文字の差異を有するものであるから、6文字対8文字という全体の文字数の差異とも相俟って、通常の注意力をもってすれば、その外観を見誤ることはないものというべきである。
また、本件商標と「Zemplar」の欧文字よりなる引用商標2とは、語頭及び語尾の文字をはじめ、むしろ共通にする要素の方が少ない文字構成からなるものであるから、その外観を見誤るということは、通常考え難いところである
更に、本件商標と「ゼンプラー」の片仮名文字からなる引用商標3及び「ベンプー」の片仮名文字よりなる引用商標4とは、欧文字と片仮名文字との差異であるから、外観においては全く別異の商標というべきものである。
(4)本件商標と引用各商標との観念の類否について
本件商標と引用各商標は、いずれも特定の観念を有しない造語よりなるものと認められるから、観念については比較すべくもないものである。
(5)請求人の弁駁における主張について
本件商標及び引用商標は、いずれも新しい造語であり、それぞれが別個の言葉として親しまれているものではないため、引用商標1を初めて見た者は、これを商品の識別標識として強く記憶することとなり、後に、本件商標を見ても、医薬品、獣医薬製品分野でよくある同一の出所に由来する新製品や製品のマイナーチェンジに伴う語尾変化と解し、引用商標1と関連付け、商品出所について混同を生じる可能性が高い旨主張している。
しかしながら、上記したとおり、本件商標と引用商標1とは、充分に区別し得る称呼上、外観上の差異を有しており、単なる語尾変化程度の差異とはいい難い。そして、引用商標1が獣医薬を含む薬剤の分野において、取引者・需要者の間において広く知られているというような事情でもあればまだしも、そのような事情についての主張も証拠の提出もない本件にあっては、請求人の上記主張は採用できない。
また、請求人は、本件商標と引用商標1は、相当程度類似しており、獣医、薬品取扱者等の獣医療専門家において商品の出所について混同を生じるおそれがあるばかりでなく、当該医薬品を購入する患畜保有者については、一層そのおそれが高い旨主張している。
しかしながら、本件商標及び引用商標1は、前記したとおり、欧文字の6文字ないしは8文字の構成からなるものであって、一見して把握することが困難な程の文字数でもなく、しかも、その構成文字も、専門家でなければ理解が困難な薬剤の成分に由来しているような文字からなるものともいえないから、本件商標及び引用商標1の把握・認識にあたって、医療専門家と一般需要者との間に格別の差異があるものとはいい難く、患畜を保有している一般の需要者において、混同のおそれが一層高い旨の請求人の主張に合理的な根拠があるものとは認められない。そうとすれば、この点についての請求人の主張も採用できない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標と引用各商標とは、指定商品においては同一又は類似しているものではあるが、その称呼、外観及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのないものであって、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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