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Trademark Appeal Case

KISU SPECIALの識別性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2006−90560(T2006−90560/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4976450号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4976450号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、「KISU SPECIAL」の欧文字を横書きしてなり、平成16年7月21日に登録出願、第28類「キス用の釣竿」を指定商品として、同18年8月4日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由の要点

登録異議申立人(以下、「申立人」という。)は、本件商標は、「KISU SPECIAL」の欧文字を普通に用いられる方法で表示したにすぎないから、指定商品「キス用の釣竿」に使用しても商品の用途・品質を表示するにすぎず、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないことから、商標法第3条第1項第3号又は同法第3条第1項第6号の規定に違反して登録されたものであり、その登録は取り消されるべきものであると申立て、その証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。

第3 本件商標に対する取消理由

当審において、商標権者に対し、意見書を提出する期間を指定して、平成19年7月23日付けで通知した取消理由の要旨は次のとおりである(なお、文字の下線については審判官が線引きしたものである。)。

1 申立人の提出に係る甲第3号証及び当審において職権をもって調査したところによれば、以下の事実を認めることができる。

(1)ダイワ精工株式会社発行「2006 Fishing Tackle Catalog ダイワ釣用品総合カタログ」(2006年2月1日発行、甲第3号証)には、釣竿に関して、84頁には商品名「LEADING−XF KISU」(「KISU」の欧文字の上には、「キス」の片仮名文字が小さく付されている。)について、「誘いと乗りの穂先を使い分けるキス専用。」との記載が、商品名「LEADING−XL Tachiuo195」(「Tachiuo」の欧文字の上には、「タチウオ」の片仮名文字が小さく付されている。)について、「●感知しにくい微妙なタチウオのアタリを表現する感度と、食い込みさせやすいしなやかさとにこだわった高感度設計...」との記載が、85頁には商品名「LEADING−XF Mebaru」(「Mebaru」の欧文字の上には、「メバル」の片仮名文字が小さく付されている。)について、「...向こう合わせというメバル釣りに必要な柔軟でしなやかな調子を生かす、多点ガイド採用。...」との記載が、95頁には商品名「極鋭KISU」(「KISU」の欧文字の上には、「きす」の平仮名文字が小さく付されている。)について、「繊細と張りを併せ持つ、スーパーメタルトップで極鋭調子のキス竿。」との記載が、96頁には商品名「Analystar KISU」(当該欧文字の上には、「アナリスター キス」の片仮名文字が小さく付されている。)について、「操作性はもちろん、集中力を維持しやすい軽さは実釣で圧倒的なアドバンテージを生み出します。...」との記載が、商品名「Analystar KAREI」(当該欧文字の上には、「アナリスター カレイ」の片仮名文字が小さく付されている。)について、「こだわりの

カレイ専用設計

は超軽量素材といえるフレックスカーボンソリッド採用。...カレイがかかってからの粘りにもこだわりました。...」との記載がある。

(2)株式会社がまかつ発行「gamakatsu FISHING GEAR COLLECTION 2003」には、釣竿に関して、12頁には「エキスパートが求めた専用設計。」の見出しの下、商品名「がま磯 グレ競技Special II」、「がま磯 グレ遠征Special II」及び「がま磯 チヌ競技Special II」についての各記載が、18頁には「瞬にして剛、がまかつの

カゴ釣りスペシャルロッド

。」の見出しの下、商品名「がま磯 カゴSPECIAL」についての記載が、20頁には商品名「がま磯 磯投SPECIAL」について、「飛距離もパワーも

専用設計

」及び「がまかつ独自のテーパーデザインによりシャキッとした穂先とトルクフルな胴を持つ

磯投げ専用ロッド

。...」との各記載が、40頁には「

海上釣堀専用ロッド

。」の見出しの下、商品名「海上釣堀 真鯛SPECIAL」及び「海上釣堀 ブリSPECIAL」(各「SPECIAL」の欧文字の上には、「スペシャル」の片仮名文字が小さく付されている。)について、「...このロッドは穂先にグラスソリッドを用いることにより、極小オモリのフカセ釣りから、ウキ釣りまで、食い渋る魚に違和感無く食い込ませる『くわせ』に重点を置き設計。...真鯛とブリの2タイプのパワーバージョンをご用意しました。」との記載が、54頁には「伊勢湾・三陸・北海道、スペシャルをサポート。」の見出しの下、商品名「がま船 真鯛伊勢湾SPECIAL」について、「伊勢湾での真鯛釣りにポイントを絞った

スペシャルロッド

。...」との記載が、商品名「がま船 北海道Special」について、「北海道の大物を釣るためのパワーアップバージョンです。...」との記載が、70頁には「釣技の進化とともに。時代の

スペシャルロッド

。」の見出しの下、商品名「がま鮎 競技SPECIAL VIII」(「SPECIAL」の欧文字の上には、「スペシャル」の片仮名文字が小さく付されている。)について、「エキスパートに贈る

スペシャルロッド

、競技会の顔を担った名竿競技スペシャルが進化しました。高次元テーパーデザインと最先端の設計技術によりオトリの操作性、掛けてからの抜きの性能を極限までつきつめました。...」との記載がある。

(3)ダイワ精工株式会社発行「2002 FISHING TACKLECATALOG ダイワ釣用品総合カタログ」(2002年2月8日発行)には、釣竿に関して、50頁には商品名「VS TOURNAMENT ISO SPECIAL」(「ISO SPECIAL」の欧文字の上には、「イソ スペシャル」の片仮名文字が小さく付されている。)という磯竿について、「F調子の極限追求から生まれた超繊細・軽量仕掛け対応ロッド。穂先、調子に個性を持たせた

スペシャルバージョン

。...」との記載が、108頁には商品名「銀影(GIN−EI)競技SPECIAL」(当該文字の上には、「ぎんえいきょうぎスペシャル」の文字が小さく付されている。)について、「超高密度SVFカーボンとスペシャルV−ジョイント、エアグロスフィニッシュの3ファクターを融合させた

競技専用ロッド

です。...」との記載が、109頁には商品名「銀影(GIN−EI)競技」(当該文字の上には、「ぎんえいきょうぎ」の文字が小さく付されている。)について、「銀影競技スペシャルとともに鮎竿の頂点機種として君臨する銀影競技シリーズ...

トーナメントに特化した

スペシャルに対し、銀影競技はあらゆる状況下で最上の結果を生み出すことを考慮して設計されております。...」との記載が、140頁には商品名「Silver Creek/Fishing Area Special(シルバー・クリーク・フィッシング・エリア・スペシャル)」について、「エリアを征する

管理釣り場専用

モデル。」との記載がある。

(4)株式会社シマノ釣具事業部発行「2001シマノフィッシングタックルカタログ」(2001年2月2日発行)には、釣竿に関して、49頁には商品名「ISO SPECIAL」(イソスペシャル)という磯竿について、「大物の強烈な引きにも余裕でわたりあえるパワーとネバリ、小さなアタリも敏感に感じとる感度、そして実釣にこだわったロッドバランスを徹底追求したベーシックモデルです。...」との記載が、53頁には商品名「RINKAI 鱗海 SPECIAL」について、「前アタリ、居食い、一目瞭然!超鋭敏穂先の

磯チヌスペシャルロッド

。」との記載が、113頁には商品名「AYU SPECIAL 競(きそい) NR」(鮎スペシャル競 NR)について、「鮎竿の求められる機能を徹底的に磨きながら、あくまでも軽さを追求し、さらに実釣で活きる『超高感度』と『抜き』を実現。...」との記載がある。

(5)リョービ株式会社発行「FISHING TACKLE CATALOG 1999(1999年リョービ釣具総合カタログ)」(1999年1月発行)には、釣竿に関して、44頁には商品名「ストリームライン サクラマス スペシャル(STREAMLINE SAKURAMASU SPECIAL)」について、「全国的にブームの

サクラマス専用ロッド

。...」との記載が、58頁には商品名「別誂 夢幻海ヘチスペシャル(BECCHO MUGENKAI HECHI SPECIAL)」について、「八州調子を再現した純和竿調仕上げのヘチ竿。紋竹模様の表面仕上げ、グリップに籐(とう)巻きを採用するなど、和竿の趣にこだわりました。...」との記載が、87頁には商品名「カーボテック 蒼流ハエスペシャル(CARBOTEC SORYU HAE SPECIAL)」について、「コストパフォーマンス優れた

ハエ釣り用ロッド

。...」との記載がある。

(6)2004年9月12日付けのスポーツ報知には、「[フィッシングニュース]京都・浜詰海岸 悪条件でキス25尾」の見出しの下、「...キスの引き釣り7本バリ仕掛け。ハリはがまかつキススペシャル6号、餌は石ゴカイ。...」との記載がある。

(7)2006年2月4日付けのスポーツ報知には、「釣り『フィッシングショー大阪2006』日本一早い春の釣り具展」の見出しの下、「○...磯、アユ、ヘラ、イカダ...。がまかつブースにずらりと並んだ竿を手に取る人が多い。繊細さと腰の強さを兼ね備えた『がま磯 チヌスペシャルマスターモデル』は、掛けた大物を楽々と浮かしてくれる。餌の有無が分かるほどの感度の良さと、ゴムのような弾力でスムーズにバット部へ力を伝える。腰も強く、55センチ級の大型チヌとのやりとりが余裕で楽しめる。」との記載がある。

(8)2006年5月18日付けの神戸新聞(夕刊)には、「<魚信>キス釣り竿(ざお)新発売」の見出しの下、「◆キス釣り竿(ざお)新発売 がまかつは、キスの引き釣りに対応した釣り竿『がま投競技スペシャル(並継)』を6種類新発売した。軽量で振り抜けが良い先調子でありながら、キャスティング時には、自然に胴に入り、竿の反発を最大限に生かした遠投が可能という。...」との記載がある。

(9)「がまかつ:カタログダウンロード」と題するウェブページ(http://www.gamakatsu.co.jp/catalog/index.html)には、「ロッド」の見出しの下に、「がま磯

グレスペシャル

Gチューン」、「がま磯

チヌスペシャル

マスターモデル」、「がま磯

チヌ競技スペシャル

II」、「がま磯

カゴスペシャル

II」、「がま磯 たもの柄G-スペシャル」、「がまメバル 凌波ロングスペシャル」、「がまちぬ かせいかだスペシャルII」、「海上釣堀

真鯛スペシャル

」、「海上釣堀

ブリスペシャル

」、「

カレイ競技スペシャル

」、「がま船

ヤリイカスペシャル

」、「がま船

タチウオスペシャル

」、「がま船 真鯛伊勢湾スペシャル」、「がま船

真鯛フカセスペシャル

」、「がま投

競技スペシャル

」、「がま鮎

競技スペシャル

V-IV」等の各記載があるほか、「鈎・仕掛」の見出しの下にある「鈎 投釣(p184〜p187)」(アンカーテキスト)をクリックしたリンク先(http://www.gamakatsu.co.jp/catalog/pdf/cat2007_h006.pdf)には、商品「THE BOX キススペシャル」について、「KISU SPECIAL」及び「...『

キススペシャル

』は総合評価の高い『投専用キス』とキスの掛かりの良さが人気のキツネ型の『がま投キス』そして波打ち際でも外れないと評判の『都鈎』の三大特徴を併せ持っている。がまかつ技術陣の真骨頂といえるだろう。G杯キスを目指す一流キャスターたちなら『鈎一本』にこだわるはず。そんな人たちのために生まれた鈎です。」との各記載がある。

(10)「フィッシング|株式会社ゴーセン」と題するウェブページ(http://www.gosen.jp/fishing/detail_GS-263.html)には、釣り具の一である「ハリス」について、「GS-263 ホンテロン●キススペシャル」(●印部分には、登録商標である旨の表示である「○にR記号」が記載されている。)の見出しの下、「ベストセラーハリス『ホンテロン』の

キス専用

バージョン。」との記載があるとともに、当該商品を表示した画像(写真)には、中央部付近に、金地に赤色で縁取りされた「KISU」の欧文字がローマン体で大きく横書きされ、当該欧文字中の「I」の文字部分の下部から「U」の文字部分にかけて、赤地に白色で縁取りされた「Special」の欧文字が筆記体で斜め右上がりに重ね合わせられているとともに、「キス スペシャル」の片仮名文字が「KISU」の「K」の文字の真下に小さく横書きされている。

2 上記認定の事実によれば、釣り具を取り扱う業界では、釣竿について、「KISU(キス、きす)」、「Tachiuo(タチウオ)」、「Mebaru(メバル)」、「KAREI(カレイ)」、「SAKURAMASU(サクラマス)」、「AYU(鮎)」、「真鯛」、「ブリ」、「チヌ」、「グレ」、「海上釣堀」、「伊勢湾」、「北海道」、「ISO(磯)」、「HECHI(ヘチ)」、「HAE(ハエ)」、「磯投」、「カゴ」、「競技」などのように、釣る魚、釣る場所又は釣り方などを表す語が商品名の一部に使用され、それぞれの語が表す

内容に応じた専用品が製造・販売されている

こと、また、「真鯛SPECIAL」、「ブリSPECIAL」、「AYU SPECIAL(鮎スペシャル)」、「SAKURAMSU SPECIAL(サクラマス スペシャル)」、「チヌスペシャル」、「HECHI SPECIAL(ヘチスペシャル)」、「HAE SPECIAL(ハエスペシャル)」、「カゴSPECIAL」、「磯投SPECIAL」、「ISO SPECIAL」、「真鯛伊勢湾SPECIAL」、「北海道Special」、「競技SPECIAL」などのように、「SPECIAL」、「Special」又は「スペシャル」の文字が、釣る魚、釣る場所又は釣り方などを表す語の後に付いて、それぞれ前の語が表す内容に特化したスペシャルバージョン(特別設計されたもの)といった意味合いで商品名に使用されていること、さらに、ハリ及びハリスについては、キス釣り専用品として、商品名中に「KISU SPECIAL(キススペシャル)」の文字が使用されていることが認められる。

3 そうすると、釣る魚の名称を表したものと認識される「KISU」の文字と、商品の品質等を誇示する語である「SPECIAL」の文字とを組み合わせたにすぎない本件商標「KISU SPECIAL」を、その指定商品である「キス用の釣竿」に使用しても、これに接する取引者・需要者は、当該商品が「キス釣り用に特別設計された釣竿」(キス釣り用に特別な仕掛けや工夫等が施された釣竿)であるという程度の意味合いで、商品の品質、用途を表示したものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識として認識し得ないものというべきである。

そして、上記1の事実に照らせば、「KISU」及び「SPECIAL」の文字は、「キス釣り用の釣り具」に関連して使用される用語であるといえるのであって、商品の内容を簡潔に表すために何人もその使用を欲するということができるから、本件商標のように「KISU SPECIAL」の文字のみからなる表示については、該表示の使用の機会を、当該商品を製造販売する多くの事業者に開放しておくことが適当であって、その中の特定の事業者のみに当該商標の使用を独占させるのは公益上望ましくないというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものといわざるを得ない。

第4 商標権者の意見の要旨

上記第3の取消理由に対して、商標権者は、次のように意見を述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証(枝番を含む。枝番の全てを引用するときはその枝番を省略する。)を提出している。

1 商標法第3条第1項第3号について

(1)本件商標のような結合商標の場合、自他商品の識別力の有無は、商標を構成する各語の意味を結合して商標全体の意味を考察するのではなく、先ずは商標全体の構成を考察した上で、該構成に外観上一体性があれば、その商標全体として本件商標の指定商品における品質等を具体的に表すものか否か、指定商品を取り扱う業界において、商標全体の文字が商品の品質等を表す語として実際に使用されている事実があるか否かを検討することにより判断するのが一般的であると言える。

(2)本件商標は、「KISU SPECIAL」の欧文字を同書、同大で一体性のある構成としたものであることから、全体としてのみ自他商品の識別力の有無を考察すべきことは明らかである。

(3)本件商標の拒絶査定不服審判事件(乙第1号証)や、「KISU SPECIAL」の文字からなる商標の異議申立て事件(乙第2号証)の判断からも、上記主張が正当であることが裏付けられる。

(4)上記第3の取消理由において示した申立人の提出に係る甲第3号証及び各証拠は、商品「釣竿」について、商品名の一部に「魚の名称」等を欧文字又は片仮名文字で表示し、もしくは「SPECIAL(スペシャル)」の文字を使用していることを立証するに過ぎないものである。

(5)本件商標の構成中、「KISU」の文字が釣る魚の名称を表したもの、「SPECIAL」の文字が商品の品質等を表示する語であるとしても、これらを結合させた「KISU SPECIAL」の文字が「キス用の釣竿」の品質等を表示するものとして普通に使用されている事実は一切ない。

(6)本件商標は、一種の造語よりなるものと認識、把握されるものであり、その指定商品に使用しても自他商品の識別力を十分に発揮するものであって、商標法第3条第1項第3号に該当するものではないことが明らかである。

2 本件商標の使用による自他商品の識別力について

(1)本件商標は、「キス用の釣竿」の分野において昭和61(1986)年に使用が開始され、現在に至るまで20年以上も継続して使用されている。

(2)また、商標権者は、自社の総合カタログ(乙第4号証の1ないし20)において、20年以上にわたって、「KISU SPECIAL」と付された「キス用の釣竿」を掲載し、投げ釣りの愛好家を対象とした釣り雑誌やテレビの釣り番組を通じて継続的な宣伝広告に努めてきた。

(3)当該商品の優れた機能が投げ釣り愛好家に高く評価された結果、高級釣竿であるにもかかわらず、いまや「KISU SPECIAL」といえば商標権者の商品を認識し得るほどに広く知られている。

(4)取消理由通知書で指摘のある他社による商標の使用は、少なくとも商標権者による本件商標の使用開始よりも14年以上経過した後の使用であり、他社の使用時には商標権者の本件商標の使用による業務上の信用が蓄積されていたといえる。

(5)してみれば、本件商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものといえることから、商標登録を受けることができるものであること明らかである。

第5 当審の判断

1 商標法第3条第1項第3号について

本件商標は、上記第1のとおり「KISU SPECIAL」の欧文字を横書きしてなるところ、これは、「KISU」の欧文字と「SPECIAL」の欧文字との間にスペース1文字分を有しており、また、その構成中「KISU」の文字部分は、本件指定商品との関係において、釣竿を含む釣り具を取り扱う業界のみならず、釣りを趣味、娯楽等にする一般需要者の間にあっては、釣る魚の一として広く親しまれている「鱚(キス)」の字音をローマ字表記したものと直ちに理解するものと認められる。

そして、該構成中「SPECIAL」の文字部分は、英語「special」に由来し、「格別。特別。特殊。」(株式会社岩波書店発行「広辞苑第6版」)を意味する語として、一般に理解され、認識されているものといえることから、本件商標が、「KISU」の欧文字と「SPECIAL」の文字の2語を結合したものと、容易に把握し得るものである。

また、上記第3の取消理由の1(1)ないし(10)に示したとおり、本件指定商品である「キス用の釣竿」を含む釣り具を取り扱う業界においては、釣竿について、「KISU(キス、きす)」、「Tachiuo(タチウオ)」、「Mebaru(メバル)」、「KAREI(カレイ)」、「SAKURAMASU(サクラマス)」、「AYU(鮎)」、「真鯛」、「ブリ」、「チヌ」、「グレ」、「海上釣堀」、「伊勢湾」、「北海道」、「HECHI(ヘチ)」、「HAE(ハエ)」、「磯投」、「カゴ」、「競技」などのように、釣りを行うときの対象魚、釣る場所又は釣り方などを表す語が商品名の一部に使用され、それぞれの用途に応じた専用品が製造・販売されていること、また、「真鯛SPECIAL」、「ブリSPECIAL」、「AYU SPECIAL(鮎スペシャル)」、「SAKURAMSU SPECIAL(サクラマス スペシャル)」、「チヌスペシャル」、「HECHI SPECIAL(ヘチスペシャル)」、「HAE SPECIAL(ハエスペシャル)」、「カゴSPECIAL」、「磯投SPECIAL」、「真鯛伊勢湾SPECIAL」、「北海道Special」、「競技SPECIAL」などのように、「SPECIAL」、「Special」又は「スペシャル」の文字が、釣る魚、釣る場所又は釣り方などを表す語の後に付いて、それぞれ用途に特化したスペシャルバージョン(特別設計されたもの)といった意味合いで商品名に使用されていること、さらに、ハリ及びハリスについては、キス釣り専用品として、商品名中に「KISU SPECIAL(キススペシャル)」の文字が使用されていることが認められる。

そうとすれば、本件商標は、上記した実情からしても、「KISU」の文字と「SPECIAL」の文字とを結合してなるものと容易に認識されるものであり、これをその指定商品の「キス用の釣竿」に使用したときには、これに接する取引者・需要者は、当該商品が「キス釣り用に特別設計された釣竿」(キス釣り用に特別な仕掛けや工夫等が施された釣竿)であるという程度の意味合いで、商品の品質、用途を表示したものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識として認識し得ないものというべきである。

なお、商標権者は、「『KISU SPECIAL』の文字が『キス用の釣竿』の品質等を表示するものとして普通に使用されている事実は一切ない」旨主張しているが、ある商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて争われた裁判(平成12年(行ケ)第76号 東京高等裁判所 平成12年9月4日判決言渡)の判決では、「商標法3条1項3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべき」と判示していることからしても、かかる商標権者の主張は採用することができない。

2 本件商標の使用による自他商品の識別力について

(1)ある商標が使用により自他商品識別力を認められることについて、平成18年(行ケ)第10054号判決(知的財産高等裁判所 平成18年6月12日判決言渡)は、「特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として他人に使用されることなく永年独占排他的に継続使用した実績を有する場合には、当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に、当該商品の取引界において当該特定人の独占使用が事実上容認されている以上、他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は薄いということができるから、当該商標の登録を認めようというものであると解される。」と述べ、さらに、「実際に使用している商標(以下「使用商標」という。)及び商品、使用開始時期、使用期間、使用地域、当該商品の生産又は販売の数量、並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用された結果、判断時である審決時において、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否か(いわゆる「自他商品識別力(特別顕著性)」の獲得の有無)によって決すべきものである。」こと、並びに、「使用商標は、出願商標と同一であることを要し、出願商標と類似のもの(例えば、文字商標において書体が異なるもの)を含まないと解すべきである」旨判示している。

(2)そこで、上記観点を踏まえて、商標権者の提出に係る各証拠をみてみると、以下のことが認められる。

(ア)乙第4号証は、商品カタログの抜粋であるところ、乙第4号証の6ないし20については、本件商標と同一と認められる「KISU SPECIAL」の商標が表示されているが、乙第4号証の1ないし5については、奥付部分に「シマノ工業株式会社」の記載があり、かつ、本件商標と態様の異なる「KISU SPECIAL」の文字が表示されている。

(イ)乙第5号証は、雑誌「磯・投げ情報 1997年5月号」の抜粋であるが、右下隅に「36」とあるページ中には、本件商標「KISU SPECIAL」の記載は認められない。なお、該ページ中、上から2つ目の表、並びに最下段の表をみると、釣竿と同じ釣り具の範疇に含まれる「リール」の英語表記である「REEL」の欄に「品名 スーパーエアロ・キススペシャル標準仕様」の記載が認められる。

(ウ)乙第6号証1ないし16は、雑誌等に掲載した広告であるところ、該広告部分には、商品写真とともに「KISU SPECIAL」の文字の記載がある。これらのうち、乙第6号証の1、2、14ないし16は、全日本サーフキャスティング連盟あるいは当該組織の都道府県単位の下位組織と認められる協会の会報であって、いずれも非売品である。

(エ)乙第6号証の17ないし19は、インターネットのウェブページを印刷したものと認められる。そして、それぞれ、左上部には「釣りロマンを求めて」と、左下部にはウェブページを示すURLが記載されているものであるが、これらには、例えば「(ロッド) NEWキススペシャル(並継)405BX+(ST)サーフリーダーSF405CX」、「(ロッド)キススペシャル405EX+(日置・横山)」と記載されているが、本件商標「KISU SPECIAL」の文字は認められない。

(オ)乙第7号証は、全日本サーフキャスティング連盟に加盟する各協会に所属する会員、及び釣具店等取引者、需要者による本件商標に関する証明書である。

(カ)乙第8号証は、インターネットのウェブページを印刷したものと認められる。そして、左上部に「全日本サーフ〜協会傘下クラブ一覧〜」と、左下部にウェブページを示すURLが記載されている。

(キ)乙第9号証の1は、「1999FISHING GEAR COLLECTION gamakatsu」の抜粋であり、同9号証の2は、「FISHING CATALOG 2000」の抜粋であるが、これらには、「KISU SPECIAL」の文字の記載はない。

(3)さらに、以上の証拠に基づき、本件商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものであるか否かを検討する。

(ア)上記(2)(ア)については、乙第4号証の6ないし20によれば、少なくとも1993年からは商標権者のカタログにおいて本件商標の使用がされていたものと認められるが、乙第4号証の1ないし5については、記載されている商標と本件商標とは書体が異なるものと認められる。また、これらのカタログについては、製造された数量・流通方法・流通した地域等については、確認することができない。さらには、これらのカタログに掲載された本件商標を使用した商品について、これが製造・販売された数量・地域等についても確認することができない。

(イ)同(2)(イ)については、「REEL」の文字が釣竿に装着して用いる糸巻き器を意味するところ(例えば、「reel (釣りざおの手元につける)リール、糸巻き装置(小学館「ランダムハウス英和大辞典」)」、「リール【reel】 釣糸・録音テープ・フィルムなどの、巻き枠。巻き軸。巻取器(岩波書店「広辞苑第6版」)」、「リール〔reel〕 道糸の巻き取り器。竿に装着して用いる。(三省堂「コンサイスカタカナ語辞典第3版」)」など。)、当該証拠における記載からすると釣竿に装着して用いる糸巻き器について記載されたものと看取するものである。

(ウ)同(2)(ウ)については、乙第6号証の1、2、14ないし16について、特定の者を対象として配付される非売品の雑誌における広告であって一般の需要者を対象としたものとはいい難いものである。

(エ)同(2)(エ)については、ウェブページ画面の写し中に、「キススペシャル」の片仮名文字は認められるが、本件商標が使用されていることについては認めることができない。

(オ)同(2)(オ)については、これら証明書が、いずれも商標権者が予め用意した「証明書」用紙を用いて、商標権者の求めに応じて証明者が用意された文面に署名捺印したにすぎないものと認められ、証明者が如何なる事実に基づき、書面に記載された内容を証明しているのか、その客観的事実を示す根拠や判断の過程は何ら明らかにされていないものであるから、結局、証拠力に乏しい書面といわざるを得ないものであり、その書面の事実評価を直ちに採用することはできない。

(カ)また、商標権者が提出した全証拠を通じてみても、本件商標を使用した商品の生産又は販売の数量については、確認することができない。

(4)以上のことからすれば、商標権者の提出に係る各証拠を総合しても、商標権者の製造・販売に係る商品「キス用の釣竿」自体に、本件商標が使用されていることは認めることができるとしても、その商品について使用されている標章「KISU SPECIAL」は、商標権者の略名称の欧文字表記と認められる「SHImano」とともに使用されてきたものというべきであって、これらの文字がその商品の出所表示として強く印象付けられるものというべきであるから、本件商標である「KISU SPECIAL」の文字自体が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているとまで認めることはできない。

ましてや、上記2(2)(キ)に記載のとおり、本件指定商品と類似する商品である「鈎」、「釣り具の一であるハリス」について、「キス スペシャル」「KISU SPECIAL」という標章を、商標権者以外の他人も現実に使用している事実が認められることから、該標章を商標権者のみに独占排他的にこれを使用させることはできないものである。

してみれば、本件商標「KISU SPECIAL」は、本件登録査定時において、その指定商品「キス用の釣竿」に使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていたものと認めることはできない。

3 結語

したがって、本件商標の登録は、上記第3の取消理由のとおり、商標法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものであって、かつ、本件商標が、使用された結果、需要者が商標権者の業務に係る商品であることを認識するに至っていたとの商標権者の主張も上記のとおり採用することができないから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものとする。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

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