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Trademark Appeal Case

著名商標と織り方名称の誤認

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2007−900432(T2007−900432/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5052976号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5052976号商標(以下「本件商標」という。)は、「さわやか三越」の文字を書してなり、平成18年10月25日に登録出願、第24類「三越ちりめん」を指定商品として、同19年6月8日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立の理由の要旨

登録異議申立人(以下、「申立人」という。)は、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第11号及び同第15号に該当し、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第15号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第8号について

指定商品「三越ちりめん」の性格上から、本件商標をその指定商品に使用した場合に、需要者、特に「三越ちりめん」の存在を知らない需要者が、本件商標に接すれば、本件商標中「三越」の部分について、日本を代表する百貨店である「株式会社三越」の著名な略称を認識する。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に反して登録されたものである。

2 商標法第4条第1項第15号について

指定商品「三越ちりめん」の性格上から、本件商標をその指定商品に使用した場合に、需要者、特に「三越ちりめん」の存在を知らない需要者が、本件商標に接すれば、本件商標中「三越」の部分について、日本を代表する百貨店である「株式会社三越」の著名な商標であると認識する。してみると、本件商標を使用した商品が、株式会社三越の商品、若しくは株式会社三越と経済的、組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると需要者は認識し、商品の出所について誤認が生じる可能性は極めて高い。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に反して登録されたものである。

3 商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、「三越」の文字を横書きしてなり、第16類「織物、編物、フエルト、その他の布地」を指定商品とする登録第1426995号と類似の商標であり、その指定商品も同一又は類似のものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に反して登録されたものである。

4 商標法第4条第1項第10号について

「三越」が商品「ちりめん」について需要者の間に広く認識されている商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に反して登録されたものである。

第3 当審における取消理由の通知

当審における平成20年4月30日付け取消理由通知書により通知した取消理由は、概ね下記のとおりである。

申立人の提出に係る甲第4号証、及び本件商標の審査の段階で出願人により提出された資料1ないし4によれば、ちりめんには、左に撚った横糸と右に撚った横糸を1本ずつ交互に織りあげたものか、2本ずつ交互に織りあげたものか、あるいは3本ずつ交互に織りあげたものかにより、しぼ立ち(ちぢみしわ)に変化が生ずるものであって、1本ずつ交互に織りあげたものを「一越(ひとこし)ちりめん」と、2本ずつ交互に織りあげたものを「二越(ふたこし)ちりめん」と、3本ずつ交互に織りあげたものを「三越(みこし)ちりめん」と称している事実が認められる。

しかしながら、上記申立人及び出願人の提出した証拠からは、「三越ちりめん」を単に「三越」と略称して普通に使用されている事実は見出せず、また、職権により調査するも、該事実を発見することはできなかった。加えて、ちりめんは、一般的には、和服の布地として取引に資される高級織物であり、ちりめんを原材料とする和服は、今日のわが国においては、儀礼用等と用いられることが多く、日常的に着用するものではない。そして、一般の消費者は、和服(長着)の布地の種類として、例えば、織り方や染め方の名称がそのまま着物の種類として用いられている絣、友禅、小紋などや、あるいは産地名がそのまま着物の種類として用いられる博多織、西陣織などの名称は、ある程度理解し得るとしても、ちりめんの織り方についてまで深く認識していないのが一般的であるとみるのが相当である。

一方、「三越」の文字は、申立人の業務に係る百貨店の略称として、又は該百貨店の取扱いに係る商品及び役務に使用される商標として、わが国の国民の間に広く認識されていること、申立人の業務に係る百貨店が呉服店として創業し、現在においても和服関連の商品を大々的に取り扱っていることは、申立人の提出に係る甲第10号証ないし甲第15号証によっても認め得るところである。

そうすると、前記構成よりなる本件商標に接する需要者は、その構成中の「三越」の文字部分について、ちりめんの織り方の一つを表したものと理解するというより、むしろ申立人の業務に係る百貨店の著名な略称、又はその取扱いに係る商品及び役務に使用される著名商標を直ちに想起、連想するとみるのが相当である。

してみれば、本件商標をその指定商品について使用する場合は、需要者をして、該商品が申立人又はこれと営業上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるといわなければならない。

したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標というべきである。

以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものと認める。

第4 商標権者の意見

商標権者は、上記第3の取消理由に対する意見を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。

本件商標「さわやか三越」は、平仮名4文字の「さわやか」と漢字2文字の「三越」を横一列に構成するものであり、このうち「三越」は、指定商品「三越ちりめん」の略称「三越」を採用したものである。

一般に「三越」を「三越ちりめん」の略称として、例えば、「変わり三越ちりめん」を「変わり三越」(乙第1号証、乙第6号証、乙第7号証)、一般の「三越ちりめん」を「三越」(乙第8号証)として使用しており、又、実際の商取引において「三越ちりめん」を「・・・三越」と略称して商品名を納品書に記載していることもなされており(乙第9号証)、この事実よりしても、「三越ちりめん」を単に「三越」と略称して使用されている事実は見いだせない、とはいえないものである。

次に、指定商品「三越ちりめん」である織物を取扱い、商標を商品に付するのは、三越ちりめんの製造業者であり、これを一次的に購入するのは三越ちりめんなど絹織物の卸売業者、小売業者である。つまり、主たる需要者は、和服などの一般的需要者ではなく、指定商品「三越ちりめん」の関係においては、「三越ちりめん」を良く知る取引者たる需要者である。

その意味で、ちりめんの織り方についてまで深く認識していないのが一般的であるとみるのが相当である、とは本件指定商品及び流通過程よりして、必ずしもいえるものではないのである。

一方、「三越」の文字は、申立人の業務に係る百貨店の略称として、又は該百貨店の取り扱いに係る商品及び役務に使用される商標として、わが国の国民の間に広く認識されていること、申立人の業務に係る百貨店が呉服店として創業し、現在においても和服関連の商品を大々的に取り扱っていることは、本件商標権者も認めているところである。

しかしながら、商標が「三越」で指定商品が「呉服」、「絹織物」などの場合はともかく、本件商標のように、商標が「さわやか三越」であり、指定商品が「三越ちりめん」のような限られたものであり、しかも主たる需要者が、具体的な商品として三越ちりめんを扱う卸売業者、小売業者の場合は、本件商標に接する需要者は、その構成中の「三越」の文字部分について、「みつこし」と称し、呉服店として創業し、和服関連の商品を大々的に取り扱っている百貨店「三越」の取り扱いに係る商品に使用される著名商標を想起、連想するというよりも、指定商品「三越ちりめん」の関係よりして、本件商標「さわやか三越」の「三越」を「みこし」と称する「三越ちりめん」の製造者など、百貨店「三越」とは別異の者の商品に係るものと認識できる。

よって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるとはいえず、したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものではない。

第5 当審の判断

1 平成20年4月30日付け取消理由通知書により通知した前記第3の取消理由は、妥当なものであり、これに対する商標権者の意見は、以下の理由により採用できない。

(1)商標権者は、「三越ちりめん」は、「縮緬の一種として、絹織物製造業者、卸売業者、小売業者等によく知られた普通名称であり、単に「三越」として使用されている事実がある(乙第1号証、乙第6号証ないし乙第9号証)旨主張している。

確かに、浜縮緬工業協同組合暁会発行の「浜ちりめん」(平成19年4月20日付け意見書の資料3)によれば、「三越ちりめん」は、「左撚りと右撚りの強撚りの緯(よこ)糸を3本おきに(三越に)織り込んだ縮緬。」であり、ちりめんには、シボの出し方により、一越ちりめん、二越ちりめん、三越ちりめん、変わり無地ちりめんなどがあって、三越ちりめんは、ちりめんの一種と認められるものである。

しかしながら、三越ちりめんは、シボの出し方の違いにより様々な種類があるちりめんの一つ種類にすぎず、上記「浜ちりめん」には、三越ちりめんについて「長浜と丹後が主産地である。」と記載され、装道出版局発行の「きもの地 素材・工程・製品」(甲第4号証)の「三越縮緬」の項には、「最近は、丹後ではほとんど織られず、長浜で織られています。」と記載されていることからすると、三越ちりめんは、広く各地で製造されているちりめんではなく、限られた地域において生産されているものと推認できるものである。

そして、商標権者が三越ちりめんを「三越」と略称されているとする証拠についてみると、乙第1号証、乙第6号証、乙第7号証に記載されている「変わり三越」は、ちりめんの一種を表すものであって、「三越」のみで使用されているものではない。

また、乙第8号証の「きものの基本一問一答」は、「きもの文化検定」に係る出題問題を扱った書籍であるから、ちりめんの種類に関する問題の選択肢の一つに「三越」があるとしても、これが一般的な需要者の認識を示すものとは認められない。

さらに、乙第9号証は、商標権者作成の納品書と認められるところ、品名欄の「変三越」は、上記「変わり三越」と考えられるし、「さわやか三越」は、本件商標に係る商品と認められるものである。

してみれば、商標権者提出の各乙号証によっても三越ちりめんが「三越」と略称されることが一般的であるとまでは認めることができない。

(2)商標権者は、織物「三越ちりめん」を取り扱い商標を付するのは、三越ちりめんの製造業者であり、これを一次的に購入するのは、絹織物の卸売業者であり、小売業者であるから、主たる需要者は、和服などの一般的需要者ではなく、指定商品「三越ちりめん」の関係において、「三越ちりめん」を良く知る取引者たる需要者であり、その意味で、取消理由にあるように「ちりめんの織り方についてまで深く認識していないのが一般的であるとみるのが相当である」とは必ずしもいえるものではない旨主張している。

しかしながら、「三越ちりめん」もちりめんの一種であって、その需要者は、ちりめんや他の織物の需要者であるといえるところ、ちりめんは、最終的には、小売業者から一般消費者に販売されるから、一般消費者も本件指定商品の需要者というべきである。

そして、ちりめんが小売りされる場合、一般需要者は、織り方に着目するというよりは、むしろ、模様・柄に着目して購入する場合が一般的といえる。

さらに、三越ちりめんが上記のとおり、ちりめんの一種にすぎず、生産も限られた範囲であることからすると、三越ちりめんが普通名称であることは認められるとしても、それが一般需要者の間にまで広く知られているとはいうことができない。

(3)本件商標は、「さわやか三越」の文字を横書きしてなるものであるところ、全体として特定の意味合いを表すものとして知られているものではなく、その構成中の「三越」の部分も上記のとおり、直ちに三越ちりめんの略称として認識されるものではない。

そして、「三越」の文字は、商標権者も認めているとおり、申立人の業務に係る百貨店の略称として、又は該百貨店の取扱いに係る商品及び役務に使用される商標として、わが国の国民の間に広く認識されていること、及び、申立人の業務に係る百貨店が呉服店として創業し、現在においても和服関連の商品を大々的に取り扱っていることからすると、前記構成よりなる本件商標に接する需要者は、その構成中の「三越」の文字部分について、申立人の業務に係る百貨店の著名な略称、又はその取扱いに係る商品及び役務に使用される著名商標を想起、連想する場合も多いものとみるのが相当である。

したがって、本件商標をその指定商品について使用する場合は、需要者をして、該商品が申立人又はこれと営業上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるといわなければならない。

2 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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