結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2008−890004(T2008−890004/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4978341号商標(以下、「本件商標」という。)は、「くつろぎ」の文字を標準文字で表してなり、平成17年10月24日に登録出願、第11類「乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器,牛乳殺菌機,工業用炉,原子炉,飼料乾燥装置,ボイラー,暖冷房装置,冷凍機械器具,業務用衣類乾燥機,美容院用又は理髪店用の機械器具(いすを除く。),業務用加熱調理機械器具,業務用食器乾燥機,業務用食器消毒器,水道用栓,タンク用水位制御弁,パイプライン用栓,汚水浄化槽,し尿処理槽,ごみ焼却炉,太陽熱利用温水器,浄水装置,電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類,水道蛇口用座金,水道蛇口用ワッシャー,ガス湯沸かし器,加熱器,調理台,流し台,アイスボックス,氷冷蔵庫,浴槽類,あんどん,ちょうちん,ガスランプ,石油ランプ,ほや,洗浄機能付き便座,洗面所用消毒剤ディスペンサー,便器,和式便器用いす,家庭用汚水浄化槽,家庭用し尿処理槽」を指定商品として、同18年6月30日に登録査定、同年8月11日に設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の指定商品中、「家庭用電熱用品類,加熱器,流し台,調理台」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第83号証を提出した。
(1)請求の理由
ア 本件審判請求に至った理由
請求人は、昨年8月上旬より商品システムキッチンの販売促進のためのカタログなどに「くつろぎ」の文字列を含む表現を採用することを企図したときに本件商標の存在を知った。当業者として基本的にこの商標の自他商品識別力に疑問を持ったため、その時点で、ウエブ、業界関係雑誌等における使用例を調査した結果、当該分野において多数の使用例を抽出することができた。しかし、商標権者(被請求人)との関係に配慮し、費用と時間の節約を図るために平成19年7月20日付けの書信を被請求人に発信すると共に、同年8月2日被請求人の担当者と面談を持ち使用許諾を申し入れた(甲第4号証)。
これに対して、平成19年12月3日付けで請求人のパンフレットにおける「くつろぎ」の使用は商標としての使用であるとされ、次回発行のパンフレットでは改善するように、すなわち使用を止めてほしい旨の回答を受領するに至った。
請求人のカタログにおける使用を示すために、フロアコンテナシステムキッチンクリンレディ(平成20年1月)のカタログ(甲第5号証)を提出する。
請求人は、「くつろぎ」を単独にて商品に関して使用してはいない。「くつろぎプラン」、「くつろぎ対面」、「くつろぎ対面〜」、「くつろぎテーブル」などである。
請求人は、対面型の厨房家具、すなわち厨房にて作業する者が壁側ではなく、室内側に向いて作業できるように配置するタイプの厨房家具(対面型キッチン)について、これまでにない3タイプの製品を発売することになり、これらにフラット対面プラン(フラット対面)、くつろぎプラン(くつろぎ対面)、わいわいプラン(わいわい対面)と命名した。
これらの名称は、厨房家具のカウンターの形態の違いに由来し、一般的には数字や複数のアルファベットなどで表わされることの多い商品記号に代えて商品の形態やその効能による区別程度の愛称風としたものといえる。
フラット対面は幅広のカウンターを特徴とし、くつろぎ対面は厨房家具のカウンターより低くリビング側にカウンターテーブルを設けたものであり、わいわい対面はカウンターの端に一段上がったサポートデッキを形成したことを特徴とする。
「くつろぎテーブル」は、くつろぎプランの厨房家具で、リビング側に一体に付設したカウンターテーブルのみについて命名したもので部分の名称といえる。
「くつろぎ〜」、「フラット〜」、「わいわい〜」なる名称は、顧客(需要者)がクリナップの提供するシステムキッチンクリンレディR(該「R」の文字は○内に表されている。以下「(R)」という。)の対面型キッチンからキッチンスタイル、タイプを選択する場合の指標としての意味合いを有するものである。
そこで、請求人は、「くつろぎ」のみでなく「フラット」、「わいわい」を含む表示は自他商品を識別する商標とは認識しておらず、商標出願もしていない。
カタログにおける実際の使用態様からしても、取引者、需要者が商標であると認識するともいい難く、しかも、「くつろぎ」単独での命名でもないので、本件商標とは抵触しないとも考えられる。
しかし、上述のように、被請求人より表示の訂正を求められたので、本件審判請求に及んだ。
イ 「くつろぎ」について、日本語辞書によれば次の意義が掲載されている。
(ア)広辞苑第3版 岩波書店(甲第6号証)
くつろぎ【寛】くつろぐこと。
くつろぐ【寛ぐ】1ゆるくなる。ゆるむ。2ゆるやかに起座する。打ちとける。ゆったりする。のびのびする。休息する。3略。4安心する。落ちつく。以下略。
(イ)国語大辞典 小学館 昭和56年12月16日 第一版 第二刷(甲第7号証)
くつろぎ【寛】1のびのびとすること。ゆったりとした気分になること。以下略。
くつろぐ【寛ぐ】1かたくしまっているものや、きっちりはまっているものなどが、ゆるむ。ゆるくなる。くずれる。2略。3ゆったりとした気分になる。心が休まる。安心する。4からだを楽にする。休息する。以下略。
ウ 家庭用厨房機器メーカーが、その商品「システムキッチン」についての広告宣伝のためのカタログにて、「くつろぎ」及び同義語の「くつろぐ」を本願商標の出願日前後に商品の説明で多用している実態(甲第8号証ないし甲第15号証)がある。
また、インターネット(Yahoo!JAPAN)で「くつろぎ キッチン」をキーワードに検索したところでは、ヒット件数は約445,000件(甲第16号証)であり、ヒットしたデータからキッチン分野での使用状況(甲第17号証ないし甲第24号証)を提示する。
エ キッチン、ダイニング、リビングに設置ないし配置される製品のメーカーなどが書籍、雑誌記事、雑誌広告では、本件商標の出願日の前後に渡って説明の中で「くつろぎ」がキーワードのように頻出している(甲第25号証ないし甲第48号証)。
オ 商標「くつろぎ」及び「くつろぎ」を含む商標の特許庁における審査審判例について
「くつろぎ」なる名詞についてこれを含む第11類の商標としては、被請求人以外で登録商標が先願として存在する(甲第49号証及び同第50号証)。
なお、商標「くつろぎの間」を第6類、第19類、第36類、第37類、第39類及び第42類の商品、役務を指定した出願は、平成12年に拒絶査定、同14年8月13日に拒絶審決となった(甲第51号証)。
上記以外に指定商品は異なるものの「くつろぎ」及びそれを含む商標が商標法第3条に該当するとして拒絶された例が存在する(甲第52号証ないし同第54号証)。
カ 本件商標を指定商品中のシステムキッチン構成部材というべき「レンジフード、IH調理器、電気冷蔵庫を含む家庭用電熱用品類,流し台、調理台、加熱器」に使用するときは、提出した多くの甲号証が示すように古くから現在に至るまでキッチン、ダイニング、リビングのレイアウトは、DK,LDKとの表記・呼称が一般的であり、それぞれが画然と分離されず一体となっており、ここにシステムキッチンが配置されることになるので、落ち着いたゆったりした気分を醸し出す空間を構成する商品であることを表わすにすぎず、多岐の商品の区分にわたる複合商品としてのシステムキッチンの訴求する品質を表示ないし誇称する表記であると取引者、需要者が理解するのみで自他商品識別力を備えないというべきである。
特に、近時は請求人のカタログ(甲第5号証)に示すとおり、LDKを大きな空間として開放的にする設計が普及しており、この空間に配置される家具、キッチン用品、家庭用電化製品、建材等の商品説明に「くつろぎ」及びこれを含めた表現をすることがメーカー、設計者、販売店などで一般的になっていることからしても、他人の商品と区別する商標であるとの認識を与えることは出来ないとされて然るべきである。
本件商標の指定商品中の上記商品については、商標法第3条第1項第3号又は同第6号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。
(2)弁駁の理由
ア 被請求人は、広辞苑、日本国語大辞典第2版を挙げ、「システムキッチン」の意義に関して「〜台所。」と記載されていることを根拠に空間としての台所の意味をも有する旨述べているが誤りである。
広辞苑第3版(甲第59号証)では、「システム家具」に関しての語釈として「さまざまな機能を持つ家具・調度類を相互に関連づけ、合理的に系統化した一式の家具。システムキッチンの類」がある。
建築設備実用語辞典(甲第60号証)では、「流し、レンジ、換気扇などの設備と棚などを機能的に体系化し、かつ施工の簡易化のために工場生産されたおもに家庭用の台所設備。」としている。
請求人は、昭和47年に「システムキッチン」の片仮名文字を含む商標を旧第19類の商品を指定して出願したが、拒絶査定となり、審判請求をしたものの同53年10月拒絶審決となった。
審決の理由中には、「住宅設備を取扱う業界においては、天板(仕事台)と流し・ガス台・調理台を固定的に一体化したものとは別に、天板に流し・ガス台・調理台その他の関連機器を自在組み込み式としてなる機能性を中心としたキッチンを構成する商品(台所用品)を表わす用語として『システムキッチン』〜の語をこれらの商品に普通に使用しているのが実情である。」との記述がある(甲第61号証)。
日本工業規格(JIS)にも「システムキッチン」関連の二つの規格がある。すなわち、システムキッチン構成材のモジュール呼び寸法A0017−1980(甲第62号証)及びシステムキッチンA4420−1981(甲第63号証)である。
前者(甲第62号証)の第1頁注(1)には「システムキッチンとは、流し台、調理台、こんろ台、ウオールキャビネット、フロアーキャビネット、トールキャビネットなどのキャビネット類と、これに組み合わせ又は組み込むテーブルこんろ、オーブンレンジ、冷蔵庫などの機器類(以下、構成材という。)とで構成される調理設備で、構成材相互間に互換性をもつものをいう。」と定義している。このように、システムキッチンは台所に配置ないし一部が台所を区画する調理収納設備をさすことはあっても、調理作業をなす空間としての台所をさすことはない。
乙第2号証ないし同第3号証の辞書の語釈は、舌足らずで語尾に設備を付加し「〜台所設備」としないと正確とはいえない。
乙第4号証には、「〜システムキッチン用のアルミニウム箔製汚れ防止用カバー」、「システムキッチン設置工事」と、指定商品、指定役務を示す表現の一部として用いられている。
乙第5号証は、ニース協定に基づく商品・サービスの国際分類の日本語訳で、日本における商品表示とは必ずしも一致しないので参考とはならない。
システムキッチンが商標法上の商品名として不適切であることは認めざるを得ないが、システムキッチンの名を冠して販売される商品が複数の商品の区分に跨るのが実質的な理由と認められる。
ちなみに商標構成態様中に「システムキッチン」、「SYSTEM KITCHEN」を含み第11類の「調理台,流し台」を指定商品に含んでいても別会社の名義で商標登録を受けている(甲第64号証ないし同第66号証)。
システムキッチンを設置したことによる台所空間は、商品としての台所設備に由来するもので、それぞれの構成部材としての商品自体の品質、効能ばかりでなく、台所に設置したことによる全体及び構成部分の一部の訴求する品質、効能等も当然ながら存在する。
その意味では「くつろぎ」が台所設備を設置したことによる雰囲気を表わす被請求人が(B)としたものは無条件に品質といい得る。
従前よりダイニングキッチン(DK)やリビングダイニングキッチン(LDK)が部屋割りの基本となって台所、食堂、居間が画然と仕切られず一体となっていることから、台所に設置される台所設備も機能一辺倒でなくダイニングやリビングから見ても雰囲気を壊さず家具の一部と見紛うようにしたり、ダイニング、リビングに設置される家具と台所設備を統一した形態、色彩、体裁とすることも多いことから、被請求人が(C)としたものも商品の品質を表すものといえる。
昭和55年(1980年)発行の月刊リビングポスト増刊号システムキッチン百科はシステムキッチンの総合書であるが、請求人の製品の説明に「〜お料理すること、食事すること、くつろぐことがもう別々のことではなく〜」と使い勝手のことを述べており、ミカドシステムキッチンについては「ときには手を休めて、ほっと、くつろぐひととき。キッチンを忘れて、憩いに心を遊ばす部屋にしてしまいましょう。」とキッチンでくつろぐことを製品が訴求している様子が見受けられる(甲第67号証)。
イ インターネット検索サイト(google)で「くつろぎ システムキッチン」で「クリナップ」を除いて検索したところでは、ヒット件数は約75,700件(甲第68号証)であり、ヒットしたデータからキッチン分野での使用状況の一部を提示する(甲第69号証ないし同第77号証)。
ウ 被請求人は、過去の登録例を挙げ、人にくつろぎを与えると思われる商品であっても登録例があるとし、一部については使用例を提示している。
乙第7号証及び同第32号証では、登録商標は「くつろ着/くつろぎ」の二段併記であり、商品(エアーマッサージ器)のパンフレットに掲載されているのは「くつろぎ」であって登録商標の使用とはいいえず、この種商品に関して「くつろぎ」なる表示は、商品の用法、効能を表わすものとして識別力に乏しいことが看取される。
乙第15号証によれば、「クッション,座布団,まくら,マットレス」について商標登録されている旨を述べているが、甲第81号証及び同第82号証は、商品の効能を示す表示で、他人の同種商品と区別する商標としては認識されないと思われ、同号証の商標権については、他人が指定商品に使用しても商標法第26条の規定により商標権の効力が及ばないとされる可能性が極めて高いものと認められる。
乙第16号証及び同第35号証では、食器類に「くつろぎ」商標を保有し、使用しているとするが、乙第35号証の表示からは、取引者、需要者はこれをみても商標の使用と認識することはほとんどないと判断される。
乙第18号証及び同第36号証で靴に登録商標を有し使用しているとするが、「くつろぎ」は品質、効能を表わすもので自他商品識別力に寄与していないことを権利者は自認しているかのような使用態様である。
乙第20号証及び同第37号証では、「くつろぎ」商標を乳飲料に使用しているとするが、商品名としては「明治くつろぎ」としている。
乙第25号証及び同第38号証の使用実績は、登録商標の使用とは認められない態様での使用と判断される。
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第39号証を提出した。
(1)本件審判請求は成り立たないとする理由
ア 指定商品の認識の誤り
請求人は、証拠方法(甲第8号証ないし同第48号証)を探すにあたり、「キッチン」、「システムキッチン」をキーワードにして調査、検索等を行なっている。
しかし、本来、商標法第3条第1項第3号又は同第6号を理由とする本件無効審判の対象指定商品は、指定商品中の一部である「家庭用電熱用品類、加熱器、流し台、調理台」であるから、少なくとも、直接的にこれらの指定商品について証拠を収集し、無効理由を論ずべきである。
なお、「キッチン」は、一般的には「台所、調理場」を意味するものであって(広辞苑 第3版 乙第1号証)、商標法の商品ではない。ただ、「流し台、調理台」を示す言葉として使用される場合も無くはないので、甲第8号証ないし同第48号証を検討するにあたり「キッチン」が「流し台、調理台」を示す言葉であれば、それらが証拠となりえるか否か個別に検討した。
イ 「システムキッチン」について
「システムキッチン」は、「レンジフード、IH調理器、電気冷蔵庫を含む家庭用電熱用品類、流し台、調理台、加熱器」等の複数の厨房機器を組み合わせた複合商品の意味に使われることもあるが、他方、「広辞苑」には、「(和製語〜kitchen)ある規格に基づいて作られた流し台・調理台・ガス台・収納部などを自由に組み合わせ、一体化して作り付けた台所。」と記載され(乙第2号証)、日本国語大辞典第二版には「(洋語system kitchen)流し台、調理台、収納戸棚などを必要に応じて選び、組み合わせて取り付けるようになっている台所」と記載されている(乙第3号証)。
したがって、「システムキッチン」は、複数の厨房機器を組み合わせた複合商品の意味と、空間としての「台所」の意味の2面性を有し、時々に応じて使い分けられている。ただ、「システムキッチン」が後者の空間としての「台所」を意味する場合は、「台所」が商標法の商品ではないので、この「台所」に関する雰囲気を表現する言葉として「くつろぎ」が使用されていれば、その証拠は商品の品質、効能等を表すものではない。
これに対して、前者の複数の厨房機器を組み合わせた複合商品としての「システムキッチン」の問題点は、如何なる厨房機器の組み合わせが「システムキッチン」なのか業界内において統一化が図られていないのが現状であり、企業によっては異なる組み合わせを「システムキッチン」と呼ぶ場合がある。
このような現状において「システムキッチン」を商標法上の商品とすることは適性でないものと判断する。すなわち、「システムキッチン」が商標法上の商品と認められるためには、少なくとも組み合わせる厨房機器の構成要素が統一されて明確にされていなければならない。
現在の「類似商品・役務審査基準」にも「システムキッチン」なる商品は記載されていない。また、特許電子図書館の「商品・役務名リスト」(乙第4号証)にも、商品として「システムキッチン」は見受けられない。さらに、ニース協定に基づく商品・サービスの国際分類〔第9版〕(乙第5号証)のアルファベット順一覧表日本語訳にも「system kitchen」は該当箇所に記載されていない。
以上から、本件無効審判の対象となる指定商品はあくまでも「家庭用電熱用品類、加熱器、流し台、調理台」の各個別商品として議論をすべきであって、請求人が主張するように多数の指定商品の中から任意の前記4種類の厨房機器を選び出して、「システムキッチン」という概念で括って無効理由を議論すべきではない。
そこで、甲第8号証ないし同第48号証が「家庭用電熱用品類、加熱器、流し台、調理台」の品質、効能等をあらわす言葉として使用されているか否かを検討する。
ウ 甲第8号証ないし同第48号証の検討
甲第8号証ないし同第48号証(ただし、同第16号証は除く。)の検討は、次のように(A)−(D)について行い、その結果、評価(A)は無かった。
(A)「くつろぎ」が「家庭用電熱用品類、加熱器、流し台、調理台」の品質、効能等を表している。
(B)「くつろぎ」が空間としての「キッチン」ないし「システムキッチン」の雰囲気を表している。
(C)「くつろぎ」が「リビング」、「ダイニング」等を含むDK,LDKの雰囲気を表している。
(D)「くつろぎ」が前記(A)−(C)とも関係がなく、全く無関係な内容を表している。
「くつろぎ」は、本件無効審判の指定商品である「家庭用電熱用品類、加熱器、流し台、調理台」とは関係ない内容を記載ないし説明するものであり、本件商標の無効理由の証拠資料とはなりえないものである。すなわち、前記検討によると、台所としての「キッチン」、「システムキッチン」が「くつろぎ」の空間を演出していることを表現する(B)、ないしは、DK、LDKの内容を表す(C)がほとんどであり、「家庭用電熱用品類、加熱器、流し台、調理台」に関連して直接的に「くつろぎ」が前記指定商品の品質、効能等を表すものとして使用している(A)は見当たらない。
したがって、前記証拠は、本件商標が「家庭用電熱用品類、加熱器、流し台、調理台」に関して、商標法第3条第1項第3号の品質や効能等を証明するものではなく、まして同第6号の何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であることを証明するものでもない。
エ 「くつろぎ」が商標としての識別力を有する理由
「くつろぎ」に、自他商品識別力が有るか否かについて検証する資料として過去の登録状況、及び実際の使用状況を調査した。本件商標を除き、旧類を含めて過去の審査において「くつろぎ」ないし「寛ぎ」が総数26件が登録されていた(乙第6号証ないし同第31号証。使用例として乙第32号証ないし同第39号証)。
例えば、人に「くつろぎ」を与えると思われる商品であっても、「くつろぎ」が登録となった審査例から判断して、同じ「くつろぎ」が「家庭用電熱用品類、加熱器、流し台、調理台」に対して、自他商品識別力が無いと断言することはできない。
オ その他の反論
(ア)過去の審査、審判例に関する反論
不服2000−19533の審決例は、指定役務が「宿泊施設の提供、宿泊施設の提供の契約の媒介叉は取次ぎ」に関するものであって、当該登録商標と役務との関係で本件商標、指定商品に対して、そのままこの無効理由が当てはまるものではない。商願平10−81759号等も同様、本件無効審判の理由に当てはまるものではない。
(イ)請求人の主張の矛盾点
請求人は、「くつろぎ」を採用した時点で、本件商標の存在を知ったということであるから、遅くとも本件商標を調査した時点で、「くつろぎ」が商標としての機能を発揮するおそれがあると認識していたことになる。
すなわち、「くつろぎ」が自他商品識別力を有する商標と認識していなければ、商標調査は行なわなかったであろうし、甲第4号証の信書も発信しなかったものと推測する。さらに、甲第4号証に「貴社登録商標『くつろぎ』使用許諾お願いの件」とあるように、このタイトルからも本件商標を自他商品識別力のある「商標」と認識していたものと解さざるを得ない。したがって、請求人の主張と実際の動きとは矛盾する。
また、審判請求書において「フラット対面プラン(フラット対面)、くつろぎプラン(くつろぎ対面)、わいわいプラン(わいわい対面)と命名した。」との記載があり、これら3タイプの製品に名前を命名したということは、これらの名称は商標であることを自認するものである。
さらに、審判請求書の「『くつろぎ〜』、『フラット〜』、『わいわい〜』なる名称は、顧客(需要者)がクリナップの提供するシステムキッチンクリンレディ(R)の対面型キッチンからキッチンスタイル、タイプを選択する場合の指標としての意味合いを有するものである。」との記載も、「くつろぎ」が商標であることを自認するものである。
(2)まとめ
以上のとおり、本件商標は識別力を有する商標であり、商標法第3条第1項第3号又は同第6号に違反するものではなく、同法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきものではない。
(1)本件無効審判は、商標法第46条第1項第1号該当性をその理由とするところ、同号の無効理由に該当するか否かの判断基準は、本件商標の登録査定時(平成18年6月30日)と解される(工業所有権法逐条解説〔第16版〕 社団法人発明協会発行)。
これを踏まえて請求人の提出に係る証拠を徴すれば、以下の事実が認められる。
ア 家庭用厨房メーカーのカタログ中の記載
(ア)トステム株式会社のシステムキッチンに係るカタログ(甲第8号証)には、「くつろぎと安心を追求したスタイリッシュラウンジ・・・」、「キッチンであることを忘れるくつろぎ空間へ。」、「くつろぎに酔う。」、「今までにないくつろぎに満ちたキッチン空間が広がります。」、「くつろぎを堪能するキッチン。」等の記載があり、システムキッチンの写真が掲載されている。
(イ)株式会社INAXのカタログ(甲第9号証及び同第10号証)には、「・・・ゆったりとくつろげるような場所。」及び「・・・くつろぎのリビング。」の記載があり、リビングキッチンの写真が掲載されている。
(ウ)松下電工株式会社のシステムキッチンに係るカタログ(甲第11号証及び同第12号証)には、「キッチンは家族の思いを育む大切な空間です。・・・くつろぎながら家族が育まれていく。」、「くつろぎ方にも、わが家の個性を。」、「『くつろぎ』や『やすらぎ』の演出にこだわって、デザインを統一したり、照明を巧みに用いたキッチンスタイルをご紹介しましょう。」、「上質のくつろぎ感を味わう大人の食空間。」及び「家事もくつろぎもスタイリッシュに。」等の記載があり、システムキッチンやダイニングの写真が掲載されている。
(エ)東陶機器株式会社のシステムキッチンに係るカタログ(甲第13号証)には、「・・・くつろぎのある空間を創造します。」の記載があり、システムキッチンの写真が掲載されている。
(オ)ミカドのシステムキッチンに係るカタログ(甲第15号証)には、「・・・夜のLDKはくつろぎのムードあふれる空・・・」との記載がある。
(カ)ナスステンレスのシステムキッチンに係るカタログ(甲第14号証)には、「・・・ホッとしたくつろぎの時間をもたらしてくれます。」との記載があり、システムキッチンの写真が掲載されているが、このカタログの配布時期を裏付ける証左はない。
イ インターネツト上のウエブページの掲載
(ア)甲第16号証は、「くつろぎ キッチン」をキーワードにした「Yahoo! JAPAN」での検索結果と認められるところ、その右下に「2007/07/18」と記載されていることから、その出力時期は、本件商標の登録査定以降の2007年7月18日と解されるものである。
(イ)トステムに係るウエブページ(甲第17号証)は、「ニュースリリース」及び「2005/3/10」の記載とともに「〜『くつろぎと安心』をコンセプトに、業界初の『「ロック付きスライドキャビネット』などを開発〜」、「【『くつろぎ』のキッチン】」等の記載があり、システムキッチンの写真が掲載されている。
(ウ)甲第18号証ないし同第24号証のウエブページには、「美しく心地よいキッチンは、くつろぎと安らぎの場所でありたい。」、「対面式でキッチンとダイニングをコンパクトにまとめ、くつろぎの空間をゆったりと。」、「キッチンを中心に集い、料理、食事、くつろぎの時間を・・・」、「キッチンは、家族が一緒に『作る・食べる』だけの場所から、『くつろぎ』のメインルームとして考えられるようになりました。」、「くつろぎ感はもちろん、インテリア性も十分です。」、「くつろぎスタイルやもてなし方から理想の住まいを考えましょう。」及び「水まわり空間を、くつろぎ、だんらんの場へと変える商品をご提案します。」等の記載が認められるところ、その右下に「2007/07/17」と記載されていることから、その出力時期は、本件商標の登録査定以降の2007年7月17日と解されるものであり、ほかに、該証拠が本件商標の登録査定時前のものとする証左はない。
ウ 書籍、雑誌記事、雑誌広告中の記載
(ア)「家具・インテリア事典」(甲第25号証)には、「(リビング・キッチン)居間と食事室、台所をひとつの空間にしたもの。くつろぎと能率をプラスしたもので理想的な食事スペースである。」の記載がある。
(イ)「モダンリビングNo.82キッチンカタログ」(甲第26号証)には、「家族のくつろぎ、友人へのもてなし。」の記載がある。
(ウ)「台所から見た世界の住まい」(甲第28号証)には、「中廊下の幅は広く、家族のくつろぎや子供の遊び場として、部屋の感覚であった。」の記載があるが、この記述は、キッチンに関するものではなく、廊下に関する記述と認められる。
(エ)「ナイスリフォームNo.18」(甲第29号証)には、「玄関を入るとそこは・・・LDKです。ゆとりとくつろぎを満喫できるこの空間では・・・」の記載がある。
(オ)「goodライフ&リフォームVol.1」(甲第30号証)には、「家族で食事の仕方やくつろぎ方を話し合い、わが家流のLDKの使い方を考えてみると良いでしょう」の記載がある。
(カ)「モダンリビングNo.136」(甲第32号証)には、「くつろぎの広間にキッチンがあるというリビングダイニングルーム・・・」の記載がある。
(キ)「マイスタイルキッチン」(甲第34号証)には、「・・・『きちんと腰掛けて』というクレディアのスタイルは、ほんとうの意味で『くつろぎ』を考えている。」、「・・・住まいに新しいくつろぎの場所をつくってくれる。」の記載がある。
(ク)「みんなのキッチン大満足実例150」(甲第35号証)には、「一日中のんびりくつろぎたくなるようなLDKです。」、「・・・椅子に座ってくつろぎながら・・・」の記載がある。
(ケ)上記以外に、「くつろぐ・・」や「くつろげる・・」との表現の記載がある(甲第27号証、同第31号証及び同第33号証)。
(コ)甲第第36号証ないし同第48号証は、本件商標の登録査定以降のものである。
エ システムキッチンの意味について
(ア)広辞苑(乙第2号証)には、「ある規格に基づいて作られた流し台・調理台・ガス台・収納棚などを自由に組み合わせ、一体化して作り上げた台所。」の記載がある。
(イ)「建築設備実用語辞典」(甲第60号証)には、「流し、レンジ、換気扇などの設備と棚などを機能的に体系化し、かつ施工の簡易化のために工場生産されたおもに家庭用の台所設備。」の記載がある。
(ウ)「日本工業規格 システムキッチン構成材のモデュール呼び寸法A0017−1980」(甲第62号証)には、「システムキッチンとは、流し台、調理台、こんろ台、ウォールキャビネット、フロアーキャビネット、トールキャビネットなどのキャビネット類と、これに組み合わせ又は組み込むテーブルこんろ、オーブンレンジ、冷蔵庫などの機器類(以下、構成材という。)とで構成される調理設備で、構成材相互間に互換性をもつものをいう。」、「ウォールキャビネット 壁面に取り付けられる戸だな」、「フロアーキャビネット 床の上に置くキャビネット」及び「トールキャビネット 背の高いキャビネット」の各記載がある。
(2)本件無効審判において、登録無効の対象とされている指定商品は、「家庭用電熱用品類,加熱器,流し台,調理台」(以下「本件商品」という。)であるところ、「家庭用電熱用品類」には、「衣類乾燥器」、「加湿器」、「家庭浴槽用電気式温水浄化器」等をはじめ、「電気がま」、「電気冷蔵庫」、「電子レンジ」、「ホットプレート」、「ルームクーラー」といった多数の商品がこれに属するものと解され、また、「加熱器」には、「ガスレンジ」、「かまど」、「七輪」等の商品が含まれると解されるものである(商標法施行規則第6条別表)。
(3)前記4(1)の認定事実によれば、「システムキッチン」と称されるものが現に商取引の対象とされていることは認められるものである。しかし、その商取引の対象となる「システムキッチン」は、一義的にその内容が特定されるものとはいい難く、複数のいわゆる厨房機器の任意の組み合わせを指すものというのが相当であって、しかも、本件登録無効の対象とされている商品には含まれない収納棚等の商品をも含む概念といい得るものである。
そして、請求人はシステムキッチンに関する事実をもって、本件商標の登録無効を主張するものであるが、システムキッチンが固定的に本件商品をもって構成されるものとすべき的確な証拠はない。
ところで、「くつろぎ(寛ぎ)」の語は、我が国において一般に親しまれ使用されるものであり、「くつろぐこと。余裕」(甲第6号証)、「のびのびとすること。ゆったりとした気分になること。」(甲第7号証)の意味を有するものである。
一方、本件商品のうち、「家庭用電熱用品類」は、加熱用、調理用、冷却用、乾燥用又は換気用等のために家庭で使用される電気式の機器の類と解されるものであり、「加熱器」、「流し台」及び「調理台」は、加熱や調理等をするための機器であって、家庭用電熱用品類の一部(例えば、電気がま、電子レンジ、電気冷蔵庫)と「加熱器、流し台及び調理台」は、いずれも厨房機器としても用いられるものである。
しかして、前記「くつろぎ(寛ぎ)」の語意そのものからは、「加熱」自体又は「調理」自体、あるいは、いわゆる「厨房機器」自体と直ちに結びつけて受け止められるものとはいい難いものであり、その語意と本件商品との関係をみても、各商品について、「くつろぎ」がその商品の品質、効能、用途等に関わる意味合いにおいて看取されるとすべき点は見いだすことができず、また、前記認定事実及び請求人提出の全証拠をみても、「くつろぎ」の文字が、本件商品の個々それぞれに関して、その品質等を直接的、かつ具体的に表示するものとして取引上普通に使用されている事実も見いだせない。
さらに、前記認定事実からは、いずれも、本件商品がくつろぎ(寛ぎ)の雰囲気や気分を醸し出そうとするキッチンやリビングの場所・空間等の構成機器となることがあるのを示すとみることができるとしても、それとても、前記の場所・空間等の構成機器となり得るといった程度の漠然とした間接的な関わりを示すにとどまるといわざるをえない。
以上によれば、本件商品のいずれについても、その需要者が「くつろぎ」の文字を商品の品質等を表すものとして認識するとみるべき理由は見いだせない。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品中、本件商品に使用しても、商品の品質等を表示するものではなく、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。
また、請求人提出の全証拠に徴すれば、「くつろぎ」の文字が前記4(1)のカタログ等に相当の頻度で見いだせるとしても、それは一連の記述の中で「くつろぎ」本来の語意をもって場所の雰囲気や気分を表現するために用いられたものであるから、その記述中の掲載頻度を理由として直ちに自他商品の識別力の有無を決することはできないというべきであり、ほかに本件商標を本件商品について使用した場合に、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識し得ないとすべき何らかの理由を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、これをその指定商品中、本件商品に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標ということはできず、商標法第3条第1項第6号に該当しない。
(4)以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、本件商品について、商標法第3条第1項第3号及び同第6号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定によって、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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