結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2008−300049(T2008−300049/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4825816号商標(以下「本件商標」という。)は、「THEORY OF EVOLUTION」の欧文字を横書きしてなり、平成16年5月13日に登録出願、第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金」を指定商品として、同年12月17日に設定登録され、その後、同20年2月5日に本件審判の予告登録がなされたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べた。
(1)請求の理由
商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが、本件商標をその指定商品について、継続して3年以上日本国内で使用していない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)「正当な理由」
被請求人は、平成17年3月25日付けで請求人から登録異議の申立てがなされたことをもって、本件商標を使用していない「正当な理由」であると主張する。
しかし、「正当な理由」とは、地震、水害等の不可抗力、放火、破壊等の第三者の故意または過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由等商標権者等の責めに帰すことができない事由が発生したために使用をすることができなかった場合がこれにあたり(東京高裁平成8年11月26日判決、判例時報1593号97頁、「商標法」新版 下巻 小野昌延編)、「単なる自己都合に止まらず、医薬品の承認申請をしているのだがまだ許可が下りないとか、構造的な不況で全国的に指定商品の製造、販売がストップしている(この場合は、いずれにせよ他者も指定商品に商標を使用することができない)などの例外的な場合に限られる」(商標法概説 田村善之著)。
ここから明らかなとおり、単なる経営不振、商品開発の遅れ、商品の市場性の欠如等による不使用が「正当な理由」に該当しない(上記「注解 商標法」)ことはもとより、「正当な理由」は、不可抗力に限定されるのである。
(イ)本件における「正当な理由」の有無
上記の「正当な理由」の解釈に従えば、被請求人の主張する「正当な理由」がこれに該当しないことは明らかである。
すなわち、被請求人の主張するすべての事情をもってしても、被請求人が本件商標を付した指定商品を製造・販売することを妨げる事情は全く存しない。登録異議の申立てによって商標権者が商標を使用することは妨げられないし、もちろん、指定商品の製造・販売が不可能となる事情もない。被請求人の主張するような撤退コストの発生、売上の減少などは正に「自己都合」による経営上の判断にすぎないのである。また、異議の決定後の9カ月に及ぶ不使用について、「市場分析に伴う商品企画デザイン素材開発をようやく終え」たとの主張は、上記の「正当な理由」とならない「商品開発の遅れ」に該当する。
(ウ)結論
以上のとおりであって、被請求人の不使用について正当理由は存在しないから、本件審判請求は認められるべきである。
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として異議の決定通知書の写しを提出した。
(1)被請求人は、業務の一部として他企業と業務契約を結び、商品企画・デザイン・市場調査及びその必要に応じて当社が保有する登録商標の貸与を行なっている。
本件商標は、被請求人と10年来業務契約を結んでいる企業の1社である株式会社松崎(本社:東京都江東区木場3−7−11)に提案する商標として取得したものである。
株式会社松崎の主たる得意先である百貨店カバン売場は、数年前から国内外の有名ブランド名を使用した、いわゆるライセンスブランドを採用しない傾向にあって、輸入品または特別有名なライセンスブランド以外は納入が難しくなっており、国内のブランドでも材料や製造方法に特別のこだわりを持ったブランドや企画理念・コンセプトが明確に他と異なったブランドを採用する傾向にある。
(2)本件商標は百貨店を中心に展開する重要なブランドであり、平成16年12月17日に登録されて以来、商品企画・素材の開発などをすすめていたところ、同17年3月25日付けで特許庁より本件商標に対する登録異議の申立ての通知を受けた。
被請求人は、本件商標を付した商品を販売中に万が一、本件商標に係る商標登録が取り消されると販売中止による撤退コストや、販売先に与える不信から受ける売上減少などが考えられることから、商品の企画開発の一時中断も止むを得ないと判断した。
(3)その後、平成19年3月19日付けの本件商標に係る商標登録を維持するとの異議の決定を受領した。
2年間の中断で市場も変化しその市場分析に伴う商品企画デザイン素材開発をようやく終え平成20年6月、株式会社松崎の主催する展示会(百貨店、専門店向け)で新コンセプトの新ブランドとして発表することが決まっている。
(4)以上が商標法第50条第2項にある登録商標の使用をしていないことについての正当な理由である。
また、本件審判請求と本件商標の登録異議の申立てが同一会社であり、特許庁が本件商標の登録維持を決定しているにも関わらずこのような手法で商標の取消しを求める事そのものが無効であると考える。
(1)商標法第50条第2項ただし書にいう登録商標の使用をしていないこと(以下「登録商標の不使用」という。)についての「正当な理由」とは、登録商標の不使用について、地震、水害等の不可抗力、放火、破壊等の第三者の故意又は過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由等、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰することができなかった事情によって、審判請求の登録前3年以内に登録商標を使用することができなかった場合をいうものと解するのが相当である(平成7年(行ケ)第124号同8年11月26日判決言渡、同9年(行ケ)第53号同年10月16日判決言渡、同14年(行ケ)第50号同年9月20日判決言渡、同20年(行ケ)第10160号同年9月29日判決言渡)。
(2)本件商標の使用の有無について
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、被請求人は、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者がその取消請求に係る指定商品のいずれかについて登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしたときには、その指定商品に係る商標登録は取り消されない旨を規定する(同条第2項)。
被請求人は、本件商標の使用の事実について、何ら主張立証するところがなく、本件商標の不使用について正当な理由がある旨を主張している。
(3)そこで、これを本件についてみるに、被請求人が本件商標の不使用についての「正当な理由」として主張する事由は、要するに、登録異議の申立ての結果、商標登録が取り消された場合の販売撤退に係るコストを考え商品開発を中断し、異議決定後は、市場分析に伴う商品開発を行ったというものである。
しかし、たとえ、本件商標に係る登録異議の申立てがされたとしても、これによって、本件商標の使用が法令により規制されるというものではなく、また、登録異議の申立てによる商品開発の中断及び異議決定後に商品開発を行ったという事情も、被請求人の意思に基づく内部事情にすぎないというべきものであり、いずれも被請求人の責めに帰することができない事由に基づくものであるということは到底できない。
したがって、被請求人が本件商標を請求に係る指定商品に使用していないことについて、商標法第50条第2項ただし書きにいう正当な理由があると認めることはできない。
(4)なお、被請求人は、本件審判の請求人と本件商標に係る登録異議申立人が同一であり、本件商標に係る商標登録を維持する旨の異議決定の後に商標登録の取消しを請求することそのものが無効であると主張する。
しかし、商標法は、「商標権は、設定の登録により発生する。」(同法第18条第1項)として、商標権の成立につき登録主義を採用しているが、同法第1条の規定に照らすと、同法は、使用商標の保護を本来の目的としていて、商標権者が登録商標を使用することを保護の前提としているものと解される。しかして、一定期間登録商標を使用しない場合には保護すべき対象がないものと考えられ、他方、そのような不使用の登録商標に対し排他独占的な権利を与えておくのは、第三者の商標選択の範囲を不当に狭めるなどの不合理があることから、商標法第50条の不使用による商標登録の取消審判制度が設けられているものと解される(前掲平成9年(行ケ)第53号)。
上記のとおり、商標法は、登録商標の使用を保護の前提とするものであり、登録異議の申立て(同法第43条の2)及び同法第50条第1項の審判は、いずれも何人も請求することができるとされていることから、単に同一の者によって登録異議の申立て及び取消審判の請求がなされたことをもって、本件審判の請求を無効とすべきとする被請求人の主張は理由がなく、採用することができない。
(5)以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、その指定商品のいずれかについて使用していた事実が認められず、かつ、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があるとも認められない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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