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Trademark Appeal Case

レモン写実図形の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2007−34817(T2007−34817/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第30類及び第32類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成19年2月21日に登録出願され、その後、当審における、同20年2月22日付け手続補正書により、第30類「レモンを加味した食品香料(精油のものを除く。),レモンを加味した氷,レモンを使用した菓子及びパン,レモンを使用した調味料,レモンを加味した香辛料,レモンを加味したアイスクリームのもと,レモンを加味したシャーベットのもと,レモンを加味した即席菓子のもと,レモンを加味した茶,レモンの風味を加味したべんとう」及び第32類「レモン入りの清涼飲料,レモン入りの果実飲料,レモン入りの乳清飲料,レモン入りの飲料用野菜ジュース,レモン入りのビール」に補正されたものである。

2 原査定の拒絶理由

原査定は、「本願商標は、中央にみずみずしい輪切りにされたレモンがあり、その周囲にはいくつかのレモンとレモンの葉が配されている様子を極めて写実的に表示されているものである。ところで、レモンは香り付けや酸味付けの目的で料理には欠かせないものであり、ソース、ドレッシング、キャンディー、洋菓子の調味、香味料として使われ、果汁製品としてレモン果汁、レモン酢に使われるなど、いろいろな食品に極めて広い用途を有していることで知られており、また、食品関係の登録商標には、構成中の一部に、例えば、商品『文旦あめ』について文旦の写実的な図形、商品『レモン果汁を主材料とした清涼飲料』について写実的なレモンの輪切りの図形、商品『焼酎にレモンを加味し炭酸水で割ったアルコール飲料』についてレモンの写実的な図形、商品『焼酎にグレープフルーツを加味し炭酸水で割ったアルコール飲料』についてグレープフルーツの写実的な図形、などが見受けられる。そして、レモンがいろいろな食品に極めて広い用途を有していることなど、こうした事情を考慮すると、レモンなどの柑橘類の写実的な図形は、レモンなどの柑橘類を使用する食品について、原材料の表示として登録商標の構成の一部や商品の包装部分に表示されるものというべきである。そうすると、レモンを原料とする食品について、中央にみずみずしい輪切りにされたレモンがあり、その周囲にはいくつかのレモンとレモンの葉が配されている様子を極めて写実的に表示した図形は、レモンを原材料としているということを容易に理解させる表示であると認められる。そうとすると、本願商標は、レモンやレモンの輪切りなどの写実的な図形のみから構成されるものであるから、レモンを原料にする指定商品について使用したときには、レモンを原材料としているという意味を理解させるにとどまり、商品の品質、原材料を表示したものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、レモンを原材料としない指定商品に使用するときは、その商品があたかもレモンを使用しているかのように商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における証拠調べ通知

当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権により証拠調べをした結果、別掲2に記載の事実を発見したので、平成20年7月31日付けの証拠調べ通知書により、請求人に対し、商標法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づく通知を行い、意見を求めた。

4 証拠調べ通知に対する請求人(出願人)の意見

証拠調べ通知書に記載される写実的な果実図形の登録例及び使用例を考慮しても、本願商標は、単に、商品の品質、原材料を表示したものではなく、自他商品の識別標識として機能するものであって、商標法第3条第1項第3号に規定する商標には該当しない。

本願商標は、その特徴的な図柄について自他商品識別力を認められるべきものであり、自他商品の識別標識として十分に機能するものである。

また、本願商標について商標権を付与し独占権的使用を容認したとしても、正当な競業秩序を乱す虞はない。よって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号には該当しない商標である。

5 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第16号について

本願商標は、その指定商品について上記1のとおり補正された結果、これをその指定商品に使用しても商品の品質について誤認を生ずるおそれはなくなったものと認められる。

(2)商標法第3条第1項第3号について

本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、輪切りにされたレモンの写実的図形と、その断面の中央やや下部より上方の周囲の背景部に、やや小さめの数個のレモンの果実及び数枚の緑色のレモンの葉の写実的図形を配した構成からなるものである。

ところで、レモンについては、「ミカン科シトロン類の

常緑

低木。インド原産。高さ約3メートル。

葉は楕円形

。ミカンに似た白色五弁花を年中開く。

果実は紡錘形

、外皮は初めは濃緑、熟すれば

美しい黄色

、芳香が高い。」(株式会社岩波書店発行「広辞苑第6版」)、「かんきつ類の

常緑

高木,およびその実。

実は黄色で,だ円形

。」(株式会社三省堂発行「コンサイスカタカナ語辞典第3版」。なお、文字の下線は当合議体が線引きしたものである。)として、一般に知られているものであるから、本願商標は、これを構成する写実的図形が、レモンの果実及びその葉からなるものと容易に把握され、理解させるものであることは明らかである。

そして、別掲2の(1)に記載の登録商標及び同(2)に記載のインターネット上のウェブサイト情報によれば、レモンの写実的な図形(果実全体及び一部を輪切り等切られているものを含む。)は、レモンを原材料として使用する食品について、登録商標の構成の一部や商品の包装部分に表示して使用されることが、ごく普通に行われているものと認められる。

してみれば、本願商標は、これをその指定商品について使用したときには、これに接する取引者・需要者は、その商品がレモンを原材料として使用している商品であること、すなわち、単に商品の品質、原材料を表示するにすぎないものと理解、認識するにとどまるというべきであるから、自他商品の識別標識としては認識し得ないといわざるを得ない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(3)請求人の主張について

請求人は、「本願商標を構成する写実的図形が指定商品の原材料を示すものとして認識されるとしても、本願商標の果実及び葉の形状、色彩の付け方並びに果実及び葉の配置を巧みに表現し造り出された特徴的な構成は、指定商品の属する分野において『普通に用いられている』表示ではなく、畢竟、本願商標における特徴的な図形要素は、モチーフとしたレモンの上に、自他商品識別力を発揮する装飾的な要素を付加したものであり、むしろ商標の『装飾的な図柄』を配したものとして認識されるものである。」旨主張している。

しかし、本願商標を構成するレモンの果実や葉の色彩や形状については、上記のとおり、レモンの果実は外皮が黄色の紡錘形であり、葉についても緑色のだ円形であることが一般に知られていることからしても、取引者、需要者をして、単にレモンの果実及びその葉を写実的に表示したものであることを理解、認識させるにとどまるものであり、その構成中、輪切りにされたレモンの切断面の下部には、果汁らしき水滴が描かれているが、これとて特段自他商品識別標識としての機能を発揮するものということはできず、さらには、レモンの果実及び葉の配置でさえも、何ら特徴もなく、単にレモンの果実や葉を写実的に表示したもので、独創的なものであるということはできない。

したがって、この点につき請求人の主張は認めることができない。

また、請求人は、果実、車をモチーフとする登録商標を引用して、「モチーフの上に付加された特徴的な装飾的要素について自他商品識別力を認められ、枚挙に暇がなく登録」されていることから本願商標が登録要件を具有するものである旨主張している。

しかしながら、これらの登録商標は、いずれも、商標中に使用されている果実や車の図形が抽象化、擬態化されたり、変形されるなどして自他商品識別力を有するとしたものであり、本願商標とは、その構成態様を異にするものであるから、本願商標について、これらの登録例と同様の判断をすべき理由は見当たらない。

ましてや、そもそも、商標の識別性の判断は、各商標につき、それぞれの構成態様や取引の実情等をも勘案し、個別具体的に判断されるべき性質のものであるばかりでなく、請求人の主張している登録例をもって本件の判断が拘束されるものでもないから、この点についても、請求人の主張は、採用することができない。

さらには、請求人は、「果実飲料等の表示に関する公正競争規約」の規程を挙げるとともに、「昭和32年の創業以来、レモン関連商品の製造・販売を継続して行っており、平成19年2月19日より本願商標及び本願商標に文字的要素を加えた商標を実際に使用しているが、このような規約に基づく制約の存在からも、本願商標のような写実的な図形商標を実際に使用できる商品は限られており、審判請求人のこれまでの50年以上に渡るレモン関連商品の製造・販売事業の中で、審判請求人以外に本願商標の特徴的な図柄が用いられている例は不知である。」及び「審判請求人が実際に使用する特徴的な本願商標について商標登録を認めないことは、特徴的な本願商標の自由な使用を是認することとなり、その結果、第三者による本願商標と同一又は類似する商標の自由な使用を招き、商品の出所について混同を生じるおそれがあることは火を見るより明らかである。」旨を主張している。

ところで、ある商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて争われた裁判(平成12年(行ケ)第76号 東京高等裁判所 平成12年9月4日判決言渡)の判決では、「商標法3条1項3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべき」と判示しているところである。

そうとすれば、たとえ、上記公正競争規約が、その第6条で「果実飲料等の商品名、商標、意匠その他の事項について、自己と競争関係にある他の事業者の製造又は販売に係るものと同一又は著しく類似した表示」の使用を禁止しているとしても、本願商標が登録されるべきであるかどうかは、需要者等において、これがどのような意味を有するものとして認識され、把握され得るかによって判断されなければならないというべきであり、かつ、本願商標からは、その指定商品を取り扱う需要者等において、指定商品の品質を示すものとして認識されることは、上記認定のとおりであることからしても、かかる請求人の主張は採用することができない。

(4)むすび

したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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