結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2007−890150(T2007−890150/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4942781号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示したとおりの構成よりなり、平成17年8月2日に登録出願、第32類「清涼飲料,果実飲料,乳清飲料,飲料用野菜ジュース」を指定商品として、平成18年4月7日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第23号証を提出(甲第20号証は、平成19年10月22日提出の補正書をもって提出済み。)した。
(1)無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して設定登録がされているから、同法第46条第1項の規定により、無効にすべきものである。
(2)無効原因
ア 周知性について
請求人は、本件商標と同一の商標(以下「引用商標」という。)を、請求人の業務に係る商品を表示するものとして使っていた。その結果、引用商標は、本件商標の出願時である平成17年8月2日及び査定時である平成18年2月23日までに、米国における需要者の間に広く認識されていた。
(a)すなわち、請求人は、平成15年10月10日より米国においてヒマラヤン・ゴジ・ジュースと称する飲料商品(以下「本件商品」という。)の販売を開始したが(甲第7号証ないし甲第9号証)、引用商標は、販売当初より、本件商品のラベルとして用いられてきた(甲第9号証)。
(b)請求人は、引用商標をラベルとする本件商品の写真を本件商品のパンフレットやカタログの表紙に掲載するなどして、引用商標を含む本件商品の周知に努めていた(甲第3号証ないし甲第6号証)。
(c)引用商標をラベルとする本件商品の写真を表紙に飾る本件商品のカタログは、本件商品の販売が開始された平成15年10月から本件商標の登録出願がされた平成17年8月の前月である同年7月までの間、1万1846部が全米各地で配付された(甲20号証)。
(d)また、請求人は、本件商品の販売開始当時より、宣伝広告の一環として、「Living The FreeLife」というパンフレットを作成し、頒布することにより、引用商標を含む本件商品の周知に努めていた(甲第9号証ないし甲第11号証)。
(e)平成16年8月には、ネットワーク・マーケティング・ビジネス・ジャーナル誌が本件商品を取り上げ、引用商標をラベルとする本件商品の写真を表紙に掲載した(甲第12号証)。
(f)請求人は、本件商品の販売が開始された当初から、自社のホームページにおいて、常に引用商標をラベルとする本件商品の写真を掲載しており、同ホームページにアクセスした人は、誰でも引用商標を認知する状況であった(甲第13号証)。
(g)当該ホームページへのリンクは、上記商品カタログやパンフレットに記載されていたほか、米国の雑誌である「in Touch」誌の平成16年9月号においても掲載されていた(甲第14号証)。
したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時である平成17年8月2日及び査定時である平成18年2月23日までに、請求人の業務に係る本件商品を表示するものとして、米国における需要者の間に広く認識されている商標であったといえる。
イ 不正の目的をもって使用するものであることについて
(a)請求人は、今日までに米国のほか、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランドなどに進出しているが(甲第15号証)、平成17年ころ、日本進出を検討し、第三者を通じて被請求人と連絡をとり、日本進出の際の協力の可能性について協議を開始した。
(b)請求人と被請求人とは、今日に至るまで、代理店契約等の契約を締結した事実は、一切ないばかりか、請求人が引用商標を日本で商標登録することについて被請求人に依頼した事実は、一切ない。しかしながら、被請求人は、何ら請求人に連絡することも、また、請求人の了解を得ることもなく、平成17年8月2日に引用商標の商標登録出願を行った(甲1号証)。
(c)本件商標の登録後である平成18年7月に至り、請求人は、初めて被請求人が自己の名義で引用(「本件」の間違いか。)商標について商標登録をした事実について知るに至ったため、被請求人に対し、本件商標の移転を求めた。
(d)これに対し、被請求人は、本件商標の移転を拒絶する一方、代理店関係などビジネス上の関係を樹立することを求めてきた。
(e)こうして次第に両当事者間の信頼関係が悪化していったところ、平成18年10月29日において、被請求人は、請求人に対し、交渉が決裂したことによる費用として金20億5950万円という法外な金額を請求してきた(甲第16号証)。
(f)被請求人は、平成19年5月24日に請求額を減額させたものの、なお、金1億9250万円という法外な金額を請求しており、しかも、請求人が当該金額を支払うことを受諾しないならば、当初の請求金額である金20億5950万円を請求するものとされていた(甲第17号証)。
(g)その後も、請求人と被請求人とは、本件商標の移転について協議を続けてきたが、被請求人は、請求人が本件商品の配送などを被請求人に委託することを確約しない限り、本件商標を金1億9250万円以下では、移転することを検討すらしない旨を述べている(甲第18号証)。
ウ 本件審判の請求の利益について
請求人は、本件商標と類似の商標について国際商標登録出願しており、本件商標を引用されて拒絶通知をされている者であるから(甲第19号証)、本件審判請求について請求の利益を有する者である。
エ まとめ
以上のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一の商標であり、被請求人が不正の目的をもって使用をするものといえるから、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたといえる。
(1)周知性について
ア 請求人は、平成15年10月10日より米国において本件商品の販売を開始したが(甲第7号証ないし甲第9号証)、引用商標は、発売当初より、本件商品のラベルとして用いられてきた(甲第9号証、甲第21号証の第3段落目)。
その全米における販売本数は、平成15年10月から同17年7月までの期間で、合計107万1860本に達していた(甲第21号証の第3段落目、甲第22号証)。なお、本件商品は、毎回少しずつ消費する(飲む)ものであり、1度に1本全てを消費するものではない。
イ 請求人は、本件商品の発売当初より、米国を含む様々な国において、本件商品を自ら直接販売していたほか、マーケティング・エグゼクティブと呼ばれる販売員を通じて販売していた。
マーケティング・エグゼクティブは、それぞれのコミュニティーで定期的に販売促進用のミーティングを開催したり、毎年流通ショーに参加したりして、本件商品の販売促進に努めていた。全米におけるマーケティング・エグゼクティブの数は、平成17年7月時点で2万8606人に達していた(甲第21号証の第4段落目)。
ウ 請求人は、本件商品の販売促進の一環として、商品カタログやパンフレットを米国を含む様々な国において配布していた。それらの商品カタログやパンフレットの全てに、引用商標をラベルとして使用した本件商品の写真が掲載されていた。
エ 請求人は、本件商品の販売促進の一環として、「Living The FreeLife」という月刊誌を米国を含む様々な国において配布していた。その全米における配布数は、以下のとおりであった(甲第21号証の第2段落目)。
平成15年10月号 6,648部
平成16年7月号 8,983部
平成17年3月号 12,548部
合計 27,999部
オ 以上により、引用商標は、本件商標の登録出願時及び査定時までに、請求人の業務に係る本件商品を表示するものとして、米国における需要者の間に広く認識されていたことは、明らかである。被請求人の答弁は、請求人による周知性の立証を何ら妨げるものではない。
(2)不正の目的について
ア 「請求人との最初の接触の経緯」に対する反論
(a)被請求人は、その新事業として本件商品の日本での輸入販売ビジネスを行うべく、請求人に連絡をとり、その要望を伝えたと主張する。被請求人が社内で同ビジネスを検討した経緯については、請求人の関知するところではないが、被請求人と請求人とが、同ビジネスの可能性に関して連絡を取り合ったことは、請求人も認めるところである。
請求人としても、米国その他の国々での本件商品の成功を受けて、事業規模の拡大を計画し、その計画の一つとして、日本への進出を検討し始めていたところであった。
(b)次に、被請求人は、平成17年1月27日付のロン氏からシメオン氏宛のメール(乙第3号証)によって、請求人が「基本的に被請求人の企画要望を認める旨の回答」をしたなどと主張する。しかし、請求人は、そのような「企画要望を認める旨の回答」は、まったくしていない。そもそも、被請求人は、乙第3号証のうち、どの部分をもって「被請求人の企画要望を認める旨の回答」としているのか明らかではないが、乙第3号証には、被請求人によって、以下の部分に赤線が引かれている。
「It was a pleasure to talk with you on the telephone yesterday about Sierra Products and the possibilities of Cooperating With Freelife for Japan operations related to Himalayan GojiJuice.」
(訳:シエラ・プロダクツ社及び日本におけるヒマラヤン・ゴジ・ジュース事業に関するフリーライフ社との協力可能性について、あなたと昨日電話でお話することができてよかったです。)
もし当該部分がその回答であるというのであれば、当該部分は、メールの冒頭での挨拶にすぎず、到底そのような回答たり得ないことは、一見して明らかである。
(c)また、被請求人は、「併せて、具体的な業務内容や法律問題などの指示を受けた」とも主張する。しかし、そのような事実もあり得ない。すなわち、当該メールでは、以下のように書かれている。
「The Japanese company we work with would need to do the following:」
(訳:私たちと仕事をする日本の会社には、以下の事項を行っていただく必要があります。)
「The company in Japan should have a customer service support center to take orders and warehouse distribution facilities.」
(訳:日本の会社は、注文を受け付けるサービス・サポート・センター及び商品を保管・配送する施設を備えていなければなりません。)
このように、ロン氏は、請求人のビジネスパートナーとしての日本の会社が行うべき業務等について一般的に述べたにすぎないのであり、決して被請求人に対して何か具体的な行動を要求したり指示したりしていない。
(d)さらに、被請求人は、ロン氏が請求人の正当な代理人であることを確認して、直ちに具体的なビジネスに入る準備をしたとする。確かに、ルーク氏は、シメオン氏に対するメール(乙第4号証)の中で、請求人のコンサルタントであるロン氏について、請求人のために職務を行っている旨述べている。しかし、ロン氏は、被請求人との間で何らの契約等を締結したことも、また、被請求人に対し本件商標の登録を依頼したこともない。
(e)「被請求人は、請求人との間で、請求人商標を附した商品ジュースの輸入販売の可能性を、事前に確認できた」との部分は、認める。しかし、あくまで可能性の話であり、請求人と被請求人の交渉は、結局そのレベルにまでしか至らなかつた。
イ 「輸入販売取引のための具体的ビジネスの準備」に対する反論
(a)被請求人は、「ロン・スミス氏から寄せられた」ビジネス開始に必要な準備について、早速作業を開始したとする。しかし、前述のように、ロン氏がシメオン氏とのメール(乙第3号証)の中で列挙した種々の行為は、あくまで一般論として請求人が手を組む日本の会社に求める行為を列挙したものであり、決して請求人の被請求人に対する具体的な要求を列挙したものではない。
(b)また、被請求人は、平成17年3月9日付のロン氏のシメオン氏に対するメール(乙第6号証)によって、被請求人が「原材料、成分、又は製造工程などに関する説明書や衛生証明書、試験成績書の必要書類は提供することを約された」又は、請求人が「日本でのビジネス展開に必要な事項について極力、早急に輸入可能な対策について協力する旨を約した」と主張する。しかし、当該メールには、以下のように書かれている。
「As soon as the importer has been selected FreeLife will prepare and provide documents for registration as required.」
(訳:インポーターが選定されたら、フリーライフ社は直ちに登録のために必要な文書を用意して提供します。)
このように、被請求人の主張する約束は、あくまで一般論として輸入者(インポーター)が選定された場合のことであって、請求人が被請求人を輸入者として選定した訳でも、何かの約束をした訳でもない。
(c)さらに、請求人は、「日本展開を積極的に行うための準備を、請求人と協調を保ちながら行っていた」と主張する。しかし、上記のように、請求人は、被請求人に対して何らの指示をしておらず、被請求人が行ったと主張する「準備」は、何ら請求人の関知するものではない。
(d)むしろ、ロン氏は、平成17年3月30日、被請求人に対して、向こう最低6ヶ月間、日本進出の計画を中断する旨通知したが(乙第7号証)、被請求人の主張によれば、それにもかかわらず、被請求人は、それまでどおり輸入販売を前提としたビジネス展開を続けたという。いまだ被請求人が請求人との間で何らの契約すら締結していない段階で、請求人から保留の通知を受けながら、なおもビジネスを続ける被請求人の行動は、理解し難いが、その理由が何であれ、そのような被請求人の行為は、何ら請求人の意思に基づかないものである。
(e)さらに、被請求人は、ウェイド氏のアーメド氏に対する平成18年4月29日付のメール(乙第8号証)において、被請求人が日本での棚卸しや顧客への出荷やジュース生産について潜在的な供給者である旨のメールを受信した」とする。しかし、当該メールには、以下のように書かれている。
「From your proposal and our previous discussions I think we may be able to consider Sierra Products as a potential supplier for logistics (inventory and shipping to customers)and juice manufacturing (we are considering filling in japan).」
(訳:あなたからの提案及び私たちが前に行った議論により、私たちは、シエラ・プロダクツ社をロジスティック〔棚卸しや顧客への出荷〕及びジュース製造〔私たちは、日本でビン詰めすることを検討しています。〕の供給者の候補と考えることができるかもしれないと思います。)
このように、請求人は、被請求人とのビジネスの可能性について「供給者の候補と」 「考えることができるかもしれない」「と思います」と極めて弱い表現で認めているにすぎない。なお、仮に被請求人が確定的に供給者となったとしても、被請求人が請求人に無断で請求人の商標を登録できることにはならないことは、いうまでもない。
(f)被請求人は、「近日中には、両者が契約できることを確信することができた」と主張する。その主張の意図は、明らかでないが、被請求人は、日本進出の計画の中断を通知されていたのであるから(乙第7号証)、そのような「確信」を得られるはずはない。被請求人は、「確信」の根拠として、請求人からのメールの写しが請求人の役員であるルーク氏に対して送られていることを挙げているが、かかるメールの写しの役員への送信は、日本でのビジネス展開といった重要事項について、他の役員にもその進捗状況を知らしめるために行われるものであって、何ら、近日中の両者の契約の成立を「確信」させる根拠となり得るものではない。
ウ 「本件商標の登録出願の経緯」に対する反論
(a)被請求人によれば、被請求人は、「輸入販売のための手続準備を指示」されたことから、請求人の了解なく本件商標の登録出願を行ったという。しかし、繰り返しになるが、請求人が被請求人に対して、そのような指示をしたことなど一度もない。
(b)また、被請求人は、請求人の了解なく本件商標の登録出願をした理由として、「先願主義を採用する日本の手続に対応して行ったもの」であるとする。しかし、仮に本当にそうであれば、被請求人は、請求人に対してその旨説明し、請求人の了承を得れば足りるのであって、被請求人の主張は、全く理由となっていない。
(c)さらに、被請求人は、「具体的なビジネスが締結された際、請求人に譲渡するつもりであった」と主張する。かかる主張は、まさにビジネスのための契約締結と本件商標の譲渡を交換条件とするものであり、本件商標の無断登録の目的が、いわば本件商標を人質とすることにより、代理店契約等の締結の強制にあったことを如実に示すものである。
なお、被請求人は、他方において、「貴殿(請求人)と満足のできる合意に至ることを条件として」、金1億9250万円もの大金を請求している(甲第17号証)。したがって、ここでは、純粋に本件商標の譲渡の対価として金1億9250万円もの請求を行っているのであり、本件商標の無断登録の目的が、代理店契約等の締結の強制あるいは高額の譲渡料を目的としたものであったといえるのである。
(d)これに対して、被請求人は、ウエード氏のアームド氏に対するメールをもって、請求人が「好意を表明し」たなどと主張している。しかし、当該メールは、被請求人が請求人に無断で本件商標を登録したことにつき驚いた請求人が、本件商標を請求人に譲渡するよう依頼する内容のものであり、到底「被請求人の対応に対して好意を表明し」たものではない。
エ 「その後の請求人と被請求人との関係」に対する反論
被請求人は、平成17年11月18 日付のロン氏から佐藤氏に対するメール(乙第13号証)について、「親切な返事」だと主張する。その主張の意味は明らかではないが、本メールの主題は、請求人の日本進出の時期について何らコンサルタントであるロン氏として回答できないことを伝えることと、請求人の日本進出を待つ間被請求人がロン氏より請求人以外の会社の紹介を受けることを希望するか否かを問い合わせることであって、およそ被請求人による本件商標の無断登録について容認するものではない。
オ 「請求人商標を付した商品ヒマラヤンゴジジュースの含有成分についての問題点」に対する反論
「覚悟を決め」たからといって、不正の目的が否定されることにはならない。
カ 「本件商標の譲渡移転問題と輸入業務」に対する反論
(a)被請求人は、請求人が、本件商標の無断登録について「感謝」をしておきながら、「進行中の輸入業務」の進展を無視して、「一方的に譲渡移転を要求」してきたと主張する。しかし、請求人は、およそ被請求人による本件商標の無断登録について「感謝」したことなどない。また、請求人は、被請求人に対して、日本進出の計画を中断する旨の通知をしたのであり(乙第7号証)、請求人にとって「進行中の輸入業務」など存在しない。
被請求人が請求人に無断で本件商標の登録をしたからこそ、請求人は、被請求人に対して譲渡を要求せざるを得なかったのである。これに対して、被請求人は、金20億5950万円もの譲渡料を請求してきた(甲第16号証)。しかも、その内訳は、非常に不明確であり、およそ信憑性に欠けるものである。かかる費用につき、被請求人は、「法律問題、活動費用、更には、輸入業務不成立に伴う利益の損失など被請求人にとって予想を上回る費用が嵩」んだとする。
しかし、請求人は、被請求人に対して、それらの行為を一度も依頼したことはなく、被請求人が勝手に行った行為につき「被請求人にとって予想を上回る費用が嵩」んだとしても、それは、およそ請求人の関知するところではない。
(b)さらに、被請求人は、甲第16号証に示された金20億5950万円もの譲渡料の請求について、「両者間の契約が成立した場合については、示していない。」などと主張する。被請求人が、本件商標の譲渡の対価として、請求人との契約が不成立の場合には、金20億円5950万円を、また、請求人との契約成立の場合でも金1億9250万円を請求していることは事実であり(甲第16号証及び甲第17号証)、被請求人の本件商標の出願目的が代理店契約締結の強制あるいは高額の譲渡料を目的としたものであることは、明らかである。
キ 「本件商標についての請求人代理人アシャースト東京法律事務所と被請求人との接渉」に対する反論
本記載の趣旨も不明である。被請求人の主張は、いずれも不正の目的と関係がない。なお、被請求人は、「本件商標の移転に伴う費用の額についても争わない方向で話し合いすべきとの立場で最善の策が得られるものと確信していた。」などとする。
しかし、金20億5950万円又は金1億9250万円もの法外な譲渡料にかんがみれば、被請求人のかかる主張は、到底信用できない。
ク 「無効審判の提起」に対する反論
ここに記載された被請求人の主張も、不正の目的とどのような関係があるのか明らかではない。その内容は、被請求人が請求人から突然無効審判を提起され、非常に驚き、かつ失望したとのことである。
しかし、そもそも、請求人が「突然」無効審判を提起したのは、被請求人が交渉の前提となる信頼関係を一方的に破壊したからである。すなわち、請求人代理人弁護士は、被請求人に対し、法外な譲渡料の請求に応じることはできない旨回答したところ、被請求人は、「商標のみの無条件譲渡はシエラプロダクツとしてもリスクがあります。」とした上で、「シエラとしては、以前より申し入れのありました会社に商標を譲渡することを検討したいと思います」と通知してきたのである(甲第23号証)。「非常に驚きかつ失望した」のは、請求人の方であって、請求人は、話し合いでの解決を諦める一方、何としても被請求人による第三者への本件商標の譲渡による事態の複雑化を免れるべく、翌12日、やむなく本件無効審判の請求に至ったものである。
ケ 「本件商標登録の正当性」に対する反論
被請求人は、引用商標を日本で登録するに際し、請求人に対し、事前に日本でのビジネスを前提としたことを伝え、確認して暗黙の了解の下に本件商標の登録を出願したとする。
しかし、そのような事前の確認がないことは、既に答弁書において、被請求人自ら「請求人の了解なく被請求人は登録出願を行った。」と認めるところであり、被請求人の主張は、答弁書の中においてさえ矛盾している。また、請求人の重要な財産の一つである商標について、その登録につき、請求人が「暗黙の了解」をすることなどあり得ない。
コ 「本件審判の請求の利益について」に対する反論
被請求人は、今になってもなお本件商標の譲渡の可能性を云々し、本件審判の請求の利益を否定する。
しかし、自ら法外な譲渡料を要求しておきながら、また、第三者への本件商標の譲渡を示唆しておきながら「争うことなく話し合いにより請求人の意向が達成されることが明らかである」との主張は、およそ受け入れられるものではない。すでに「両当事者間の信頼関係」は、完全に破壊されており、本件商標登録の有効性は、まさに審判によって解決されるべきものである。
サ まとめ
以上のように、被請求人の答弁は、いずれも事実と異なるか、又は要件事実を無視したおよそ的を射ないものである。本件商標の登録出願は、被請求人が請求人の日本進出の可能性を知りながら、請求人との間に何ら代理店契約等の契約関係がないにもかかわらず、一方的に契約関係の成立を前提とした準備に突き進む一方、希望どおりに契約関係が成立しない場合に備え、代理店契約等の締結を強制し、あるいは、商標の高額での買取を迫れるよう、請求人に無断で行ったものである。したがって、被請求人が不正の目的を有していたことは、明らかである。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第17号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)引用商標の周知性についての有無
ア 請求人は、引用商標について、平成15年(2003)10月10日以降、米国において請求人の業務に係る商品を表示するものとして使用してきたと主張し、その結果、本件商標の登録出願時の平成17年8月2日及び査定時である平成18年2月23日までに米国における需要者の間に広く認識されていたと主張している。そして、立証証拠として甲第3号証ないし甲第20号証を提示している。
イ しかしながら、引用商標について具体的に使用されていると認められる証拠は、甲第3号証ないし第19号証のうち、甲第3号証、第4号証、第5号証、第6号証、第9号証、第11号証、第12号証及び第13号証の8件のみであり、しかも商品カタログや、請求人のホームページや請求人の冊子、そして特殊なマネーメイクの雑誌の広告にしか示されておらず、これらの証拠をもって、米国内で周知性を認められるものとは到底考えられない。したがって、引用商標自体が米国内で広く知られた商標でないことは、明らかである。
(2)請求人との最初の接触の経緯
ア 被請求人は、被請求人の代表者佐藤誠の旧友と新事業を検討する上の一つとして、平成16年(2004)夏に、引用商標を附した商品ヒマラヤンゴジジュースの日本への輸入、販売のビジネスの打ち合わせを行った。そして、被請求人は、具体的に企画書(乙第1号証)を作成し、さらに追加資料(乙第2号証の)と含めて同年末二回にわたり、請求人の了解を得るべく製造業者である米国の請求人の役員の一人ルーク・タフリ(Luke Taffuri)氏に対して連絡をとった。併せて被請求人の職員シメオン・マクニール(Simeon McNeill)より直接ルーク氏に電話をとり、当方の要望を伝えた。
イ これに対し、翌平成17年(2005)1月27日ロン・スミス(Ron Smith)氏よりシメオン宛のメール(乙第3号証)の連絡を受け、基本的に被請求人の企画要望を認める旨の回答を得た。併せて、具体的な業務内容や法律問題などの指示を受けたものである。
しかしながら、回答は、請求人より直接ではないこともあり、この事実をシメオン・マクニールが請求人のルーク氏に同年2月11日にメール(乙第4号証)問合せを行ったところ、間違いのないことを知り、直ちに具体的なビジネスに入る準備に入った。
ウ このようにして、被請求人は、請求人との間で、引用商標を附した商品ジュースの輸入販売の可能性を事前に確認できたのである。
(3)輸入販売取引のための具体的ビジネスの準備
ア 請求人のフリーライフ社の正式な代理人であることを確認したロン・スミス氏より、被請求人に寄せられたビジネス開始に必要な準備について、被請求人は、早速作業を開始した。そして被請求人は、シメオン・マクニールが窓口になって、請求人代理人のロン・スミス氏に対して指示内容の詳細を問い合わせた(乙第5号証)。
これに対し、平成17年(2005)3月9日付で請求人代理人のロン・スミス氏より回答を得、特に法的事項について、被請求人名義で輸入する請求人のヒマラヤンゴジジュースを食品として厚生労働省へ登録申請に必要な書類についての提供を求めたところ、インポーターとして選定されたら直ちに提供することを約された。即ち、原材料、成分、又は製造工程などに関する説明書や衛生証明書、試験成績書の必要書類は提供することを約された。その他、営業事項や製品の輸入やカストマーサービスなど、日本でのビジネス展開に必要な事項について極力、早急に輸入可能な対策について協力する旨を約した(乙第6号証)。
イ 被請求人は、上述のとおり日本展開を積極的に行うための準備を請求人と協調を保ちながら行っていたところ、同年(2005)3月30日、請求人のロン・スミス氏より被請求人の事業展開に感謝を示しながらも、6ヶ月間完全に保留する旨の突然のメールを被請求人のシメオンが受領した(乙第7号証)。
しかしながら、被請求人の積極的な準備活動が損なわれないよう、被請求人は、今までとおり輸入販売を前提としたビジネス展開を続けた。
ウ そして、約1年後の平成18年(2006)4月29日、請求人の国際マーケット開発担当者のウエード・マチソン氏より、被請求人のアームド宛に、請求人が日本での棚卸しや顧客への出荷やジュース生産について潜在的な供給者である旨のメールを受信した(乙第8号証)。
なお、その当時、被請求人の窓口はシメオンに代わり、新たに島野とアームドになっていた。
エ なお、いずれにしろ、これら請求人からのメールは、全て請求人役員ルーク氏に対し写しが送られていることからも、被請求人としては、請求人とのジュースビジネスについて、近日中には、両者が契約できることを確信することができた.
(4)本件商標の登録出願の経緯
被請求人が請求人の輸入販売業務を行う上で、輸入販売のための手続準備を指示されたこともあり、知的財産、特に請求人商標が日本で取得されているか否か、もし登録されていなかった場合は、早急に権利化のための手続の必要性を考慮し、一応、請求人の了解なく、被請求人は、平成17年(2005)8月2日特許庁に対し登録出願を行った。
この出願手続は、あくまで先願主義を採用する日本の手続に対応して行ったもので、当然のこととして権利化後、具体的なビジネスが締結された際、請求人に譲渡するつもりであった。幸いにも、平成18年(2006)4月7日、被請求人は本件商標を登録第4942781号商標として権利化できた(乙第9号証)。そして、この商標登録の事実について被請求人のアームドは、請求人のウエード氏宛に平成18年(2006)7月7日付のメールで知らせた(乙第10号証)。
これに対し、同年同月11日に請求人のウエード氏より、被請求人のアームド宛に返事がメールで送られ、被請求人の対応に対して好意を表明している(乙第11号証)。このメールも請求人役員ルーク氏に写しが送られており、請求人フリーライフ社としても好意を表明しているものと認識できる。
(5)その後の請求人と被請求人との関係
ア 請求人のロン・スミス氏からのメールによる6ヶ月間の保留期間後の平成17年(2005)の10月項になるも請求人からの連絡がないこともあり、被請求人側の準備活動の実情を知らせるべく、被請求人の代表者佐藤誠は、平成17年(2005)11月17日付で請求人の代理人のロン・スミス氏にメールを送った(乙第12号証)。そして、財団法人日本情報処理開発協会によるプライバシーマーク(Pマーク)の取得の手続を進めていることを伝えた(乙第17号証)。
これに対し、請求人のロン・スミス氏より、早速、同年同月18日にメールの返信を受け、被請求人の長期にわたる休止保留に対する忍耐と、請求人側からプラン待機の事情について、親切な返事を受領している(乙第13号証)。
イ 翌平成18年(2006)5月5日のメールで、被請求人は、請求人が日本訪問を予定していることに対し、話し合いができることを喜ぶ旨の返事をしたが、結局のところ、来日はなかった(乙第14号証)。
(6)請求人商標を付した商品ヒマラヤンゴジジュースの含有成分についての問題点
ア 被請求人は、本来、輸入する商品については、製造メーカーである請求人より内容成分のデータを入手するのが常識であるが、輸入業者に選定されなければデータの提供を受けられないため、別途個人輸入の形で商品ヒマラヤンゴジジュースと成分表(乙第15号証)を入手できた。
イ 日本では、食品の含有成分は厳しく管理されており、防腐剤としてのソルビン酸カリウムは、ジュースヘの配合を禁止されているので、そのままの成分では、輸入販売は不可能であることを知った。
ウ そのため、被請求人は、禁止されているソルビン酸カリウムを除いた状態の原液を日本に輸入し、これをボトルに詰め込む作業を行うことを前提に事業準備を進めなければならないと覚悟を決めていた。
(7)本件商標の譲渡移転問題と輸入業務
ア 前述したとおり、本件商標を被請求人が特許庁での登録取得したことにつき、請求人は、感謝の意向を示しながら、進行中の輸入業務の進展を無視して、一方的に譲渡移転を要求して来た。
イ 確かに請求人は、本件商標の権利取得に要した費用は、被請求人に支払うことを約したが、単に商標登録出願のための費用のみならず、日本での事業化のための準備には、法律問題、活動費用、更には、輸入業務不成立に伴う利益の損失など、被請求人にとって予想を上回る費用がかさみ、総合計の額を被請求人のアームドから請求人のウエード氏に平成18年(2006)10月29日付にメールで連絡したものである(甲第16号証)。
ウ 要するに、商標移転のための単なる費用を示したものでなく、輸入ビジネス全般にわたって、掛かったと思われる額を提示したものである。
エ したがって、輸入販売ビジネスそのものが成立しない場合を予測した場合の損失を含めた総合計であるので、輸入業務が両者間で合意した場合については、考慮していないものである。
オ したがって、本件商標に係る輸入販売ビジネスについて、両者間の契約が成立した場合については示していない。
(8)本件商標についての請求人代理人アシャースト東京法律事務所と被請求人との接渉
ア 請求人は、本件商標の問題に関し、被請求人との交渉の窓口を平成19年(2007)1月以降アシャースト東京法律事務所の宮本弁護士とし、同氏より請求人の意向を被請求人に伝えたこともあり、今後の輸入販売ビジネスについても宮本弁護士との間で検討相談することになったと被請求人は考えている(乙第16号証)。この日を契機に双方で話し合いを持ち、少なくとも宮本弁護士は、双方をまとめるべく尽力されていたものと被請求人は思っている。
イ したがって、被請求人としては、この宮本弁護士との交渉の過程で何らかの前向きの結論が得られるものと楽観していた。
ウ もちろん、本件商標の移転に伴う費用の額についても争わない方向で話し合いすべきとの立場で最善の策が得られるものと確信していた。
(9)無効審判の提起
ア 被請求人としては、請求人の代理人であるアシャースト東京法律事務所の宮本弁護士と交渉の最中に、突然、無効審判が提起されたので、非常におどろきかつ失望した。
イ そこで、この無謀な無効審判提起に対して、被請求人は、誠心誠意を持って請求人商標の日本での権利化に貢献した事実に基づき、請求人商標の使用者である請求人の審判に対しても有効な使用を前提にして、本件商標の権利の保全のため努力せざるを得ない。
(10)本件商標登録の正当性
ア 被請求人は、前述したとおり、請求人商標を日本で登録するに際し、請求人に対し、事前に日本でのビジネスを前提としたことを伝え、確認して暗黙の了解の下に先願主義を採用する日本国での商標登録出願したことは、明らかであり、しかも、被請求人を潜在的な供給者として認知しているものであるから、善意の権利取得であり、不正の意思が毛頭ないことは、明らかである。
イ また、請求人は、本件商標の譲渡移転に対し、被請求人は、拒絶したと主張しているが、かかる事実はなく、あくまで譲渡する意志は現在も変わりはない。
ウ 要するに、請求人との輸入ビジネスについて、最初から数年経過しても、何ら、被請求人の輸入販売ビジネスについて契約締結がない点については、被請求人は、既に、調査費、人件費、市場調査など多額が支出しているので、もし万一輸入ビジネスが成立しなかった場合の損害について、当然、請求人側からの配慮を求めざるを得ない。
エ したがって、請求人が主張する無効原因は、明らかに事実と異なり、いわんや、被請求人が本件商標の登録出願の際、代理店契約などの締結を強制するため、あるいは譲渡料目当てであったことは、明白であったとの主張は、事実を著しく歪曲し、かつ被請求人の名誉を傷付けるものであって、全く容認できない。
(11)本件審判の請求の利益について
請求人は、無効原因において、本件無効審判の請求の利益を主張しているが、本来、被請求人は、請求人に対して本件商標を譲渡することを明言し、当事者間で折衝、交渉中であったものであるから、争うことなく話し合いにより請求人の意向が達成されることが明らかであるので、本件審判の提起は、請求人の利益になるとは到底考えられない。しかも、本件審判の無効原因が商標法第4条第1項第19号の規定に違反された事実がないものであるので、いたずらに両当事者間の信頼関係を喪失することとなり、何ら請求人にとって利益にならないことは明白である。
(12)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項の第19号の「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用するもの(前各号に掲げるものを除く。)」の規定に該当せず、何ら無効理由もない。
(1)本件商標の米国での周知性について
ア 請求人は、甲第21号及び第22号証並びにその訳文を提出し、「本件商品」の販売開始時期並びに本件商標の使用開始時期の立証を含めて、平成15年(2003)より平成17年7月までの間に合計107万1860本に達した旨を主張している。
しかしながら、これらの証拠には「本件商品」及び「本件商標」は認められても、請求人が主張する合計107万1860本に対応する資料は全く提示されておらず、何を証拠に数量を確定できるのか全く論拠に乏しい。
さらに、甲第21号証も請求人会社と同族と思われるフリーライフ インターナショナル エル・エル・シーのゼネラル・カウンセルのクリストファーリード氏の報告書であって、客観性がなく証拠として到底認められない。
その上、甲第22号証も、請求人会社が選定した独立監査法人の単なる報告書であり、同様に客観性に欠け、真正な数量を示した証拠としては到底認められない。
イ 請求人は、「マーケティング・エグゼクティブ」と呼ばれる販売員を採用し、平成17年(2005)7月時点で2万8606人に達していたと主張すると共に、商品カタログやパンフレットは、平成15年(2003)10月から平成17年(2005)7月までの間、全米各地に合計1万1836部が配布されたと主張している。
しかし、これらの人員の数及び配布した商品カタログやパンフレットの数も甲各号証には、単に「数」を示しただけであり、客観的資料に基づく値ではなく、主張の城を出ないものと認められる。
ウ 上述の理由により、請求人サイドの一方的資料を証拠とする甲各号証によって、本件商標が米国における需要者の間に広く認識されたという事実はなく、現時点においても周知性を全く認めることはできない。
(2)本件商標の使用に際しての正当性について
被請求人は、答弁書において請求人役員ルーク氏および請求人の代理人ロン氏を含め、被請求人の代表者佐藤誠並びに社員等と実施化について面談ないしはメールを介して詳細に交渉し、請求人が被請求人の実施化について合意を得た上で実施化の準備を行ったものである。
したがって、本件商標の登録出願手続について「不正の目的」をもって使用するものでないことは明らかである。
(3)本件商標登録の正当性
被請求人は、請求人が米国で使用する商標と同一商標を、将来の使用権者であることを確信した上で、請求人に代わって登録出願をし、登録商標を取得したものである。
したがって、本件商標は実施化に際し、被請求人と請求人との間で合意契約が締結される時点で、必要に応じて請求人に譲渡するという意向を常に被請求人は持っている。
以上のとおり、被請求人は悪意ないしは不正に本件商標を取得したものではなく、正当な立場で権利取得行為を行ったまでである。
(4)まとめ
請求人は、本件商標について、周知性と不正目的の下に被請求人が勝手に権利取得した旨を主張するが、残念ながら本件商標の周知性は欠如し、かつ不正目的についても全く該当しないことは明白であるので、答弁書記載のとおり、商標法第4条第1項第19号の規定には該当せず、なんら無効理由もない。
(1)請求人の提出に係る証拠及びその主張の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人は、平成15年10月より、米国において「ヒマラヤン・ゴジ・ジュース」と称する本件商品の販売を開始したが、発売以来、引用商標をラベルとする本件商品の写真を、本件商品のパンフレットやカタログの表紙に掲載してきた。その本件商品の全米における販売本数は、平成15年10月から平成17年7月までの期間で、合計107万1860本に達していた(甲第21号の第3段落目及び第22号証)。
イ 引用商標をラベルとする本件商品の写真を表紙に飾る本件商品のカタログは、本件商品の販売が開始された平成15年10月から本件商標の登録出願がされた平成17年8月の前月である同年7月までの間、1万1846部が全米各地で配付された(甲第20号証)。
ウ 請求人は、今日までに米国のほか、カナダ、香港、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなどにおいて、本件商品を自ら直接販売している(甲第15号証)。
エ 請求人は、宣伝広告の一環として「Living The FreeLife」という名称のパンフレットを作成し、頒布することにより、引用商標を含む本件商品の周知に努めてきた(甲第9号ないし第11号証)。
オ 平成16年8月には、ネットワーク・マーケティング・ビジネス・ジャーナル誌が本件商品を取り上げ、引用商標をラベルとする本件商品の写真を表紙に掲載した(甲第12号証)。
カ 請求人は、自社のホームページにおいて、引用商標をラベルとする本件商品の写真を掲載しており、同ホームページにアクセスした人は、誰でも引用商標を認知する状況であった(甲第13号証)。そして、該ホームページのリンク先は、上記商品カタログやパンフレットに記載されていた。
(2)以上の認定事実によれば、引用商標は、請求人が本件商品について使用する商標として、本件商標の登録出願時には既に取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は本件商標の登録時においても継続していたものというのが相当である。
請求人は、本件商標と類似の商標について国際商標登録出願をしており、本件商標を引用されて拒絶理由通知を受けている者であるから(甲第19号証)、本件審判請求の利益を有する者であると認められる。
(1)被請求人は、被請求人の新事業を検討する上の一つとして、平成16年(2004年)夏に、請求人商標を附した本件商品の日本への輸入、販売のビジネスを検討し、企画書(乙第1号証)を作成し、追加資料(乙第2号証の)と含めて平成16年末に2回にわたり、請求人の了解を得るべく製造業者である請求人の役員の一人ルーク・タフリ(Luke Taffuri)に対して連絡をとり、被請求人の社員シメオン・マクニール(Simeon McNeill)より、直接、ルーク・タフリに日本への輸入、販売のビジネスの要望を伝えた。
(2)翌平成17年1月27日、請求人代理人ロン・スミス(Ron Smith)より、ビジネスに関する一般的な内容が記載された被請求人(シメオン)宛のメール(乙第3号証)を受けた。
(3)その後、被請求人(シメオン)が、請求人代理人ロン・スミスに対してメールの内容の詳細を問い合わせた(乙第5号証)ところ、平成17年3月9日付で請求人代理人ロン・スミスより、特に法的事項(食品として厚生労働省へ登録申請に必要な書類等)については、インポーターが選定され次第、提供するとの解答を得た。
(4)平成17年3月30日、請求人代理人ロン・スミスより、「日本での全ての準備作業を少なくとも6ヶ月間は完全に保留するという決定がなされた」旨のメール(乙第7号証)が、被請求人(シメオン)宛に届いた。
(5)被請求人は、請求人の了解を得ることなく、本件商標を平成17年8月2日に商標登録出願し、特許庁より平成18年3月6日発送の登録査定を受け登録料を納付し、平成18年4月7日に商標権の設定登録を受けた。
(6)請求人は、平成18年7月に至り、本件商標の登録を知り、被請求人に本件商標の移転を求め、これに対し、被請求人は「一応、請求人の了解なく、被請求人は、平成17年(2005年)8月2日、特許庁に対し登録出願を行った。この出願手続は、あくまで先願主義を採用する日本の手続に対応して行ったもので、当然のこととして権利化後、具体的なビジネスが締結された際、請求人に譲渡するつもりであった。」と述べた。
(7)その後、被請求人は、本件商標の移転を認める条件として、代理店契約を求め、これが入れられない場合の補償費用を請求人に要求した(甲第16号証ないし甲第18号証)。
本件商標は、請求人が、その出願日前に使用商品を表すものとして使用し、外国(米国)において、一定の周知性を得ていたものと認められる引用商標と、実質的に同一の商標であることは明らかである。
商標法第4条第1項第19号で「周知性」を要件としているのは、「使用に基づく業務上の信用を獲得していないような商標であって、未登録のものについて他人が出願した場合、『不正の目的』があるからという理由だけでこの出願を排除することとするのは、商標の使用をする者の業務上の信用を維持することを目的とし(商標法第1条)、かつ先願登録主義を建前とする(法第8条第1項)我が国法制化の下では適切でないからである。」(工業所有権法逐条解説 発明協会)ことからすれば、その周知性は、前記1の「引用商標の周知性について」の事実で足りるばかりでなく、被請求人が、新事業として平成16年(2004年)夏に、本件商品の日本への輸入、販売のビジネスを検討し、企画書(乙第1号及び第2号証)を作成し、請求人の了解を得るべく働きかけていたことからしても、その周知性は十分に推認できるものである。
前記3の「請求人との接触の経緯」によれば、本件商標の出願は、請求人と被請求人が、本件商品の輸入・販売に係る我が国における代理店としての交渉がなされたものの、その交渉が暗礁に乗り上げた後(被請求人のいう、請求人よりの「交渉の6ヶ月間完全に保留」の申し入れがあった後)に、請求人の了解もなくなされたものである。
その後、本件商標が登録されたことを知った請求人より、本件商標権の移転の申し入れに対し、被請求人は、本件商標権の移転を認める条件として、代理店契約を求め、これが入れられない場合の補償費用を請求人に要求(甲第16号ないし第18号証)したものであり、本号にいう「不正の目的」とは、「信義則に反するような不正の目的による出願」(同工業所有権法逐条解説)の例として「(1)外国において周知な他人の商標と同一又は類似の商標について・・・高額で買い取らせたり、・・・国内代理店契約を強制したりする等の目的で、先取り的に出願した場合。」(同工業所有権法逐条解説)とされているように、被請求人にるる述べるところがあるとしても、結局、本件商標の出願は、本号にいう「不正の目的」で出願されたものであるといわざるを得ない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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