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Trademark Appeal Case

個人名商標と著名ブランドの混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2008−900324(T2008−900324/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5136045号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5136045号商標(以下「本件商標」という。)は、「Paul sunich」の欧文字を標準文字で表してなり、平成19年11月7日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同20年5月23日に設定登録されたものである。

2 本件登録異議の申立ての理由

本件登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第12号証を提出した。

(1)申立人及び Paul Frank Sunich の経歴について

ア 申立人会社ポールフランク インダストリーズ インコーポレーテッドは、ハウスマーク「Paul Frank」とユニークな猿の図形商標「Julius」等のもと、被服、アクセサリー、日用品等のデザイン、制作、販売を業務として行う米国法人であるが、同社は、ポールフランクスニシュ氏とともに、1997年12月に設立された。

ポールフランクスニシュ氏は、1967年8月29日生まれのファッションデザイナーで、1990年代をカリフォルニア州オレンジコーストカレッジで学び、課題制作のかたわら彼自身の作品を制作していた。その作品中、オレンジ色のビニールで仕上げた財布が友人達の目にとまり、これを契機にギターのストラップやバックパック等の制作にも着手し、友人達とともにその作品の幅を広げていった。

1997年12月、彼は友人達とともに主力商品をプラスチック製の財布に据え、申立人会社であるポール フランクインダストリーズ インコーポレーテッドを設立したが、その鮮やかな着色とポップなキャラクターに表された彼の独創性は、たちまちのうちにあらゆる年代層に熱狂的なファンを生み出した。ノーガハイドと呼ばれる中世の自動車用座席に使用されるビニールを材料に使用する点は、申立人作品の原点であるビニール性の財布に通じるものであり、その天賦の独創性を表す好例である。

この一風変わった独特のセンスは、同社の並はずれた成長を実現し、現在では、申立人のハウスマークである「Paul Frank」とユニークな猿の図形商標を始めとする数々のキャラクター商標は、アメリカ国内において広く浸透したブランドであり、その商品分野は、衣服、寝具、子供用家具、眼鏡、時計にまで広がっている。

また、申立人は、さらに世界に販売網を拡大し、その卓越した独特なセンスは、世界の多くの顧客を魅了し、急成長を遂げている。

現在、申立人は、ポールフランクストアの名でリテール部を立ち上げており、南カリフォルニア、ロサンゼルス、サンフンシスコ、ダラス、シカゴ、ニューヨーク、ロンドン、アステルダム、ベルリン、ドバイ、カタール、バンコク、アテネ、台北、日本等世界各国にポールフランクストア18店舗を有している。

以上を示す資料として甲第3号証及び同第4号証を提出する。

また、申立人の経営方針は、キャラクターマーチャンダイジグのもと、商標保護を重視する考えであり、日本においても、多数の商標が登録されている(甲第5号証)。

イ 2005年11月、申立人は、ポールフランクスニシュ氏とパートナー関係を解消したが、その業務に係る「Paul Frank」及び「Julius」等一切の商標を譲り受け、そのブランド展開を継続して行っている(甲第3号証及び同第4号証)。なお、申立人は、ポールフランクスニシュ氏から「Paul Frank」の名称につき、商標、サービスマーク、商号として使用する権限を許諾され、かかる同意書が発行されている(甲第6号証)。

ウ 他方、ポールフランクスニシュ氏は、2006年に、自身の新ブランド「Treestitch」を設立し(甲第7号証)、このブランド名のもと「Paul Frank」を付した商品を制作販売していたが、かかる行為は、申立人の商標と出所混同を生じるものであったため、申立人と訴訟で争う関係となり(甲第8号証)、2007年8月米国オレンジ州地方裁判所により、同氏は、「Paul Frank」の商標を使用することを認められない旨判決が出された。このニュースは、インターネット上でも判決日翌日大々的に紹介され、当該業界において申立人会社と元パートナーとの争いとして、取引者、需要者に知られるものとなった(甲第9号証)。

エ なお、商標権者である株式会社ナルミヤ・インターナショナルは、2007年2月に、申立人とライセンス契約を締結し、日本における申立人の総販売代理店の立場にある(甲第10号証)。同契約書では、ライセンシーが日本において、ライセンサーの「Paul Frank」及び「Julius」等の商標を、被服、アクセサリー等ライセンス商品について独占的に使用することが許諾され、それに基づき、ライセンシーは、申立人商標の商品販売を行っている(甲第11号証)。

(2)商標法第4条第1項第8号について

ア 本件商標「Paul sunich」 は、申立人会社の創立者であるポールフランクスニシュ「Paul Frank sunich」の氏名の著名な略称「Paul sunich」を含む商標であり、かつ、その承諾を得ずに出願、登録されたものである。

イ 著名な略称「Paul sunich」 について

上述のとおり、ポールフランクスニシュは、申立人の創立者であり、前共同経営者である。ただし、現在は、申立人とパートナー関係を解消し、別ブランドにおいて被服、アクセサリーの製作、販売業務を行っている。

本件商標は、申立人の前共同経営者であるポールフランクスニシュの氏名のうち、ファーストネームと姓からなり、他人の氏名の略称にあたるため、それが著名な略称であるかが問題となる。

この点、商標法第4条第1項第8号の趣旨は、当該他人の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにある。すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名・名称等を他人に使われることがない利益を保護されており、略称についても一般に氏名、名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には、本人の氏名、名称と同様に保護に値すると考えられる〔平成17年7月22日最高裁判決平成15年(行ヒ)第343号〕。

とすれば、たとえ略称であっても一般に本人との同一性を示す表示として受け入れられている場合には、氏名、名称と同様に保護されるべき人格的利益が存在する。よって、本号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するについても、その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準に判断するべきである。

これを本件について検討すると、2007年5月25日、申立人は、ポールフランクスニシュ氏を被告としてカリフォルニア州中部地区地方裁判所に民事訴訟を提起しているところ、当該訴訟に関する記録・文書等には、被告の氏名として「Paul Sunich」の略称が記載されている(甲第8号証)。これは、米国においてミドルネームが法的に本名の本質部分を構成しないとされていることから、本人との同一性をファーストネーム及び姓のみの略称によって識別していることに基づく(甲第12号証)。そして、当該訴訟において裁判官は「商標『Paul Frank』 が著名になった」と明言し、かかる状況の下では、既に申立人との一切のパートナー関係を解消しているポールフランクスニシュが自己の氏名を被服に使用することは、出所混同防止の観点から認められないと認定し、申立人の請求を認容した。この判決は、判決日である2007年8月21日の翌日に報道され、かかる報道においても、ポールフランクスニシュは、「Paul sunich」又は単に「sunich」 として表されている(甲第9号証)。このような事実から見ても、当該業界において、「Paul sunich」の略称がポールフランクスニシュ本人を指し示すものとして一般に受け入れられるほどに著名であったことは、明らかである。

確かに米国の権威ある法律辞典Black’s Law Dictionaryにおいても、「フルネームは、人のファーストネーム、ミドルネーム及び姓、或いはファーストネーム、ミドルネームのイニシャル及び姓から成る。」と記載されているが、さらに「その人が社会においてその名で知られている名を指すこともある。」とも記載されている(甲第12号証)。本件では、申立人の前パートナーの氏名は、特に上記米国での訴訟において当該業界に広く知られわたることとなったが、そこでは、訴訟記録に基づき「Paul sunich」と表されており、「Paul Sunich」は、社会においてその人の名として知られる名であり、フルネームにも匹敵するものであるというべきである。

なお本件において、ポールフランクスニシュは、申立人本人ではない。しかしながら、申立人は、その前パートナーであるポールフランクスニシュとともに申立人会社を設立し、商標「Paul Frank」「Julius」等のもと、創作、営業活動を行い、そのブランド価値を高めてきたものであり、ポールフランクスニシュとのパートナー関係を解消した後も、上述のとおり、同氏より「Paul Frank」を含む申立人商標を継続的に使用する権限を有している。同氏は、申立人とのパートナー関係解消後、別ブランドのもと、新たな会社を設立し、業務を行っているが、そこでは、上述の判決のとおり、「Paul Frank」の商標としての使用が禁止されることとなった。他方、商標権者は申立人のライセンシーであり、万一本件商標が登録され、商標権者により使用された時には、本件商標が申立人の前パートナーであるポールフランクスニシュの氏名から派生したもので申立人の新たなブランドであるかのごとく受け止められることは、必至である。したがって、「本号の適用においては、当該他人の人格的利益を侵害するおそれのある具体的事情が存在することは、著名性を要する氏名等の略称に関して、著名性の有無を判断する際の一要素となるもので、人格的利益の侵害のおそれ自体が、独立した要件とされるものではない」〔平成20年9月17日知的財産高等裁判所第4部判決平成20年(行ケ)第10142号〕のであり、他人の氏名の著名な略称を含む本件商標はそのこと自体によって、上記事情より人格的利益の侵害のおそれが認められるべきである。

すなわち、1)「Paul Sunich」がポールフランクスニシュ本人の略称であることが、本件出願日直前の米国の公的文書、報道において明確に認識でき、当該業界においては、そのように受け止められていること、2)また、ポールフランクスニシュが、商標権者のライセンサーである申立人の創立者であり、元パートナーであることより、申立人のライセンシーである商標権者により本件商標が登録使用されたときには、それに接する需要者、取引者は、容易に、「Paul Sunich」が商標権者のライセンサーと関係を有するポールフランクスニシュを指し示すその略称であると認識するものであり、これらの理由に基づき、「Paul Sunich」は、ポールフランクスニシュの著名な略称であると確信する。

ウ もっとも、本号は、本件商標が、登録査定時のみならず出願時にも該当しなければならない(商標法第4条第3項)。この点、申立人と商標権者がライセンス契約を締結したのは2007年2月であり(甲第10号証)、また、申立人とポールフランクスニシュ間の米国における商標権侵害訴訟の判決は、2007年8月21日に出され、その事実を取り上げた上記記事は、2007年8月22日に報道されている(甲第9号証)。

したがって、本件商標が、これら事実の後、遅くともその出願日である平成19年(2007年)11月7日において、ポールフランクスニシュの著名な略称として認識されていたことに疑いはなく、本件商標は、その登録査定日である平成20年4月22日のみならず、出願日にも、ポールフランクスニシュの著名な略称に該当するものである。

エ そして、ポールフランクスニシュが商標権者に対し本件商標出願及び登録を承諾した事実はない。

オ 以上より、本件商標「Paul sunich」は、商標法第4条第1項第8号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第7号について

ア 商標権者と申立人の関係

商標権者は、2007年2月より、日本における申立人の総販売代理店であり、かつ申立人のソールライセンシーである(甲第10号証)。

イ 商標法第4条第1項第7号該当性

商標権者と申立人は、ライセンス契約の両当事者であって、信義則の支配する緊密な関係にある。すなわち、ライセンス契約においては、ライセンシーが、ライセンス商品につき、ライセンスされた商標を含む財産権を、ライセンサーと共通の目的のために使用することが許諾されており、ライセンシーは、ライセンスされた商標以外の商標を無断でライセンス商品に使用することはできない(甲第10号証)。それにもかかわらず、商標権者は、申立人の前共同経営者の著名な略称の登録に及んだものであり、かかる行為は、申立人とその前パートナー間の米国訴訟の判決が出された後、申立人とその前パートナーとの微妙な関係に付け込み、出願時、本件商標が日本において登録されていないことを奇貨としてこれを先取り的に出願した剽窃的なものである。かかる商標権者の行為は、申立人の利益を害するものであり、それをライセンス商品に使用したときには、ライセンス契約違反であることが明らかであるが、また、ライセンス商品以外のものに使用したときには、申立人の創立者の名称に係る業務上の信用にフリーライドするもので、ライセンサーの利益と相反するものであり、両者の信頼関係の根幹を揺るがす忌々しい行為である。したがって、本件商標を登録することは、商取引の秩序を乱し、国際契約そのものの締結を委縮させることになりかねず、国際信義に反するものであると確信する。

したがって、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」であり、商標法第4条第1項第7号に該当する。

(4)結論

以上詳述したとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第7号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、商標法第43条の2第1号の規定により、取消されるべきものである。

3 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第8号について

申立人は、本件商標が、「Paul Frank Sunich(1967年8月29日生まれのファッションデザイナー。)1990年代をカリフォルニア州オレンジコーストカレッジで学び、課題制作のかたわら作品を制作していた。申立人の前共同経営者の著名な略称又はフルネーム(氏名)である。」旨述べている。

しかしながら、本号の「著名な略称」とは、その略称が「著名」でなければならない。

提出された証拠によれば、本件商標を「Paul Frank Sunich」の略称として使用された事実は、甲第8号証及び同第9号証により認められるとしても、このほかに証拠は示されておらず、本件商標を「Paul Frank Sunich」の「著名な略称」であるとするには、あまりにも足りないところである。

また、当該「Paul Sunich」のフルネーム(氏名)は、「Paul Frank Sunich 」であるから、本件商標は、そのフルネーム(氏名)ではなく、本号でいうところの「氏名、名称」には該当しない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。

(2)商標法第4条第1項第7号について

申立人は、「ライセンシーである商標権者が、2007年2月に、ライセンサーである申立人とライセンス契約を締結し(甲第10号証)、同契約書では、ライセンシーが日本において、ライセンサーの『Paul Frank』及び『Julius』等の商標を、被服、アクセサリー等ライセンス商品について独占的に使用することが許諾され、それに基づき、ライセンシーは、申立人商標の商品販売を行っており(甲第11号証)、ライセンシーは、ライセンスされた商標以外の商標を無断でライセンス商品に使用することはできない。」旨述べている。

しかしながら、申立人と商標権者がライセンス契約している6件の標章の構成は、別掲(1)ないし(6)に示したとおりである。

そして、本件商標は、これら6件の標章と外観、称呼、観念のいずれよりみても類似しない別異の商標と認めることができる。

したがって、商標権者が本件商標を出願する行為は、該ライセンス契約にかかわるようなところはなく、信義則又は国際信義に反するものということはできないものである。

そうとすれば、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」ということはできないから、商標法第4条第1項第7号にも該当しない。

(3)結び

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第7号の規定に違反して登録されたものということができないから、同法第43条の2第4項の規定により、その登録を維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

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