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Trademark Appeal Case

商品形状の立体商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2008−11343(T2008−11343/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第9類「船舶用レーダー機械器具並びにその部品及び附属品,船舶用通信機械器具並びにその部品及び附属品,船舶用GPS航法装置並びにその部品及び附属品,船舶用航跡表示装置並びにその部品及び附属品」を指定商品として、平成18年12月6日に立体商標として登録出願されたものであるが、その後、指定商品については、当審における同20年7月7日付け手続補正書により、第9類「レドーム型の船舶用レーダー機械器具」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、その指定商品を『船舶用レーダー機械器具並びにその部品及び附属品』ほかとするものであるが、この種商品には送受信機能をもつアンテナ部とディスプレイ表示機能をもつ操作指示部があり、このうちアンテナ部は送受信機能を低下させない限り形状の自由度が高く、様々な形のものが市場に存することで一般によく知られるところであり、本願商標を構成する立体的形状(上下に扁平な球体で上の蓋部と下の底面(取付部)で色分けし、細部に細線や凹凸、ねじ取付部を有するもの)からは、一見して商品の形状そのものの範囲をでないと認識され、他に商標の要部と認め得る文字、図形等の存在が認められないものであるから、これをその指定商品に使用しても、単に商品の形状を表示するものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断

(1)本願商標は、別掲のとおり、全体が上下二層からなる丸みを帯びた扁平な略円柱状からなり、その約三分の二を占める上層部分は白色で着色され、表面に細線が施されているものであり、下層部分は青色で着色され、その低部に凹凸やねじ取付部と思しき円形の穴を有するものである。

そして、本願の指定商品は、前記第1のとおり、「レドーム型の船舶用レーダー機械器具」であるところ、本願商標の上記形状は、「船舶用レーダー機械器具のうちレドームタイプのアンテナ部を収容するカバー」の一形態、すなわち、本願の指定商品に含まれる一部の商品の形状の一形態を表したものと容易に認識し得るものである。

そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に「船舶用レーダー機械器具のうちレドームタイプのアンテナ部を収容するカバー」であると認識するにすぎないものと判断するのが相当である。

(2)請求人は、「本願商標のレドームに見られる、丸みのある扁平な略円柱状の形状に、上方が白、下方が鮮やかな青という色分けが施された形態は、船舶用レーダー機械器具のメーカーが実質3社であること、また、他社がそれと同様の形態を採用していないことから、独自性があり特異である。また、『上方が白色、下方が鮮やかな青色に塗り分けられた扁平な略円柱状』のレドームの形態が従来より需要者・取引者に広く認知されてきたことを考えれば、需要者・取引者は本願商標のレドームの形態によって出願人の船舶用レーダー機械器具とその他のメーカーの船舶用レーダー機械器具の出所を充分区別することができることは明らかである。」旨主張する。

しかしながら、立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品及び役務の出所を表示し、自他商品及び自他役務を識別する標識として採択されるものではない。

そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品及び自他役務を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するにとどまり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。

また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。

そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。

そして、これを本願商標についてみると、請求人の提出に係る以下の各資料によれば、「船舶用レーダー機械器具のうちレドームタイプのアンテナ部を収容するカバー」は、いずれも、上下二層からなる丸みを帯びた扁平な略円柱状からなり、全体が白色で着色され、その表面に鮮やかな色彩の青色又は赤色の文字が大きく表示されていることが確認できる。

ア 請求人の提出に係る資料2(「Raymarine」のWebページ)には、「Products」の「Radome Antennas」の項に、白色で着色された上下二層からなる丸みを帯びた扁平な略円柱状に、赤字で「Raymarine」の文字が記載されたものが複数表示されている。

イ 請求人の提出に係る資料3(「West Marine」のWebページ)には、「LOWRANCE」の項に、「Lowrance Radome LRA−1500」及び「Lowrance Radome LRA−1000」として、それぞれ、白色で着色された上下二層からなる丸みを帯びた扁平な略円柱状に、青字で図形と「LOWRANCE」の文字が記載されたものが表示されている。

ウ 請求人の提出に係る資料14(ヤンマー舶用システム株式会社発行の「ヤンマー舶用関連機器総合カタログ VOL.12」2008年3月発行)の155頁には、「レーダー装置・魚群探知機」及び「日本無線(株)」の見出しのもと、「10.4型カラー液晶レーダー」の「JMA−5104(2フィートレドーム)」及び「10型モノクロCRTレーダー」の「JMA−2343(2フィートレドーム)」として、それぞれ、白色で着色された上下二層からなる丸みを帯びた扁平な略円柱状に、赤字で「JRC」の文字が記載されたものが表示されている。

エ 請求人の提出に係る資料15(三菱重工エンジンシステム株式会社発行「舶用関連商品カタログ08」)の98頁には、「株式会社 光電製作所」の「レーダ」の見出しのもと、「アンテナ」の項に、「45cmレドームアンテナ」及び「64cmレドームアンテナ」として、それぞれ、白色で着色された上下二層からなる丸みを帯びた扁平な略円柱状に、青字で「KODEN」の文字が記載されたものが表示されている。

そうすると、請求人の主張する本願商標の特徴である「丸みのある扁平な略円柱状の形状」と「上層部分の白色での着色」については、何れも他メーカーが「船舶用レーダー機械器具のうちレドームタイプのアンテナ部を収容するカバー」の基本的な形状及び色彩として採用しているところであり、また、「下層部分の青色での着色」にしても、その青色は、同様に他メーカーが文字色として採択しているものであり、一般的に採用し得る色彩であって、さらに、その白色と青色による色分けについても、殊更、特異なものでもなく、単に商品等の美感をより発揮させるために施されたものと認識されるものといわざるを得ず、未だその商品の形状の範囲内のものと認識するにとどまるものである。

また、請求人は、他社がそれと同様の形態を採用していないことから、独自性があり特異である旨主張する。

しかしながら、商標法第3条第1項第3号の商品の品質、形状等を表示する標章とは、商品の品質、形状等を表示する標章として認識され得るものであれば足り、その標章が現実に使用されていることは、必ずしも要求されないものと解すべきである(東京高裁平成12年(行ケ)第76号判決参照)から、たとえ、本願商標と同一の形状からなる商品が存在しないとしても、本願商標をその指定商品に使用するときは、商品の形状を表したものと理解させるにすぎないこと前記認定のとおりである。

よって、請求人のいずれの主張も採用することができない。

したがって、本願商標は、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(3)請求人は、「本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、本願商標に係る立体的形状は、その形状(外形)に若干の変遷はあるが、『上方が白色、下方が鮮やかな青色に塗り分けられた扁平な略円柱状』であるという点において一貫しており、この形態は、出願人による長年の使用により、需要者等において出願人の製造販売に係る商品の目印として全国的に広く認知されるようになっており、本願商標は長年の使用によって識別性を獲得しており、商標法第3条第2項の規定により、その登録を認められるべきである。」旨主張し、証拠方法として、原審において資料1ないし11を、当審において資料12ないし70を、それぞれ提出しているので、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて検討する。

ところで、出願に係る商標が、指定商品に係る商品の形状を表示するものとして商標法第3条第1項第3号に該当する場合に、それが同条第2項に該当し、登録が認められるかどうかは、使用に係る商標及び商品、使用開始時期及び使用期間、使用地域、当該商品の販売数量等並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否かによって決定すべきものであり、その場合に、使用に係る商標及び商品は、出願に係る商標及びその指定商品と同一の場合に限られるものである。

したがって、出願に係る商標が、立体的形状のみからなるものであるのに対し、使用に係る商標が立体的形状と文字、図形等の平面標章との組み合わせにより構成されている場合には、両商標の全体的構成は同一でないことから、出願に係る商標については、使用により識別力を有するに至った商標と認めることができない。また、使用に係る商品が、出願に係る指定商品の一部である場合には、使用に係る商品に指定商品が限定されない限り、出願に係る商標については、使用により識別力を有するに至った商標と認めることができない。

(4)そこで、上記の観点から、本願商標が使用により自他商品識別力を有するに至っているか否かを検討する。

まず、使用に係る商標について、請求人の提出に係る資料9、14ないし16、18ないし27、61及び70によれば、1980年以来、製造販売してきた使用に係る商標の形状は、2008年2月から販売活動が開始された商品(資料70)のものを除き、「上下二層からなり、上層は白色で、下層は青色で、それぞれ着色されている略円柱状」の基本的形状部分は共通にしているものの、上層及び下層のそれぞれの形状には、様々な変更が加えられてきており、丸みを帯びていない形状や扁平ではない形状などもあり、これらの形状の相違については、もはや、ごく僅かな相違の範囲には当てはまらないものといえ、立体的形状部分のみを比較しても、同一性を有しないというべきである。

さらに、そのいずれの形状の場合にも、白色で着色された上層部に青字で「FURUNO」の欧文字が顕著に記載されているものであることから、立体的形状のみからなる本願商標と使用に係る商標とは、その全体的構成において同一とは認められない。

また、使用に係る商品については、前記第3(1)のとおり、「船舶用レーダー機械器具のうちレドームタイプのアンテナ部を収容するカバー」であり、出願に係る補正後の指定商品「レドーム型の船舶用レーダー機械器具」が、この使用に係る商品の他に、ディスプレイ表示機能をもつ操作指示部等の商品をも含んでいるため、使用に係る商品は、その出願に係る指定商品の一部であって、かつ、使用に係る商品に指定商品が限定されていないことから、使用に係る商品と出願に係る指定商品とは、同一とは認められない。

これに対して、請求人は、「出願人のレドームには『FURUNO』の文字が付されているが、このことのみをもって、取引界の実情や商標の実際の用いられ方などを全く検討することなく、本願商標の立体商標単独が使用による自他商品の識別力を獲得したことを単純に否定すべきではなく、このことは一連の知財高等裁判所判決(平成19年6月27日言渡・平成18年(行ケ)第10555号審決取消訴訟事件、平成20年5月29日判決言渡・平成19年(行ケ)第10215号審決取消訴訟事件、平成20年6月24日判決言渡・平成19年(行ケ)第10405号審決取消訴訟事件)においても判示されている。」旨主張する。

そこで次に、使用に係る商標に企業等の名称が存在しても、なお、立体的形状部分が独立して自他商品識別力を獲得しているか否かについて検討する。

使用に係る商標には、先に述べたとおり、白色に着色されたその上層部に、青字で「FURUNO」の欧文字が記載されているものであり、該文字部分は、看者の注意を惹くように顕著に書されているものである。そして、この使用に係る商標に接する取引者、需要者が、使用に係る商標のどの部分に注目をしているかについては、以下の事実がある。

ア 2006年9月14日付け「毎日新聞 地方版 兵庫」の20頁には、「MADE・IN・HYOGO:/第20話 船舶用レーダー /兵庫」の見出しのもと、「・・・約500艇のヨットやプレジャーボートが停泊する西宮市の新西宮ヨットハーバー。多くの船尾には『FURUNO』と書かれたレーダーアンテナが立てられている。日本だけではなく、世界の港で見られる光景だ。・・・」の記載がある。

イ 2005年12月1日付け「日本経済新聞夕刊」の7頁には、「いつも今が始まり(4)古野電気名誉会長古野清孝氏(人間発見)」の見出しのもと、「・・・船舶用機器の最大の市場は米国。そこで認められるかどうかの一つの目安は毎年の全米舶用電子機器協会(NMEA)の総会で、ディーラーの投票によって選ばれる最優秀メーカー賞だ。(中略)その後、毎年、いくつもの部門で受賞を続け、今年も十月にフロリダで開かれた総会でレーダー、魚探など八部門中四部門で受賞しています。次第に評判が高まり、レーダーは今では世界の台数シェアで六割くらいあります。米国のマリーナへ行くと大半のボートやヨットに『FURUNO』と書いたレーダーが付いていますよ。・・・」の記載がある。

ウ 2002年11月19日付け「産経新聞 大阪夕刊」の9頁には、「【新・関西人国記】古野電気社長 古野清之さん(63)−<2>」の見出しのもと、「・・・欧米のマリーナに行くと、ヨットや船のレーダーは古野電気製しかない、と言われています。数年前、ロサンゼルスの『マリーナ デル レイ』を訪ねましたが、それは事実ですね。『FURUNO』の青い文字をつけたレーダーのアンテナが並んでいます。米国のゴージャスなヨットというと、ベッドルームがいくつかあり、マンションなどより豪華ですよ。そんな船のキャビンにもFURUNOの機器が並んでいます。・・・」の記載がある。

エ 請求人の提出に係る資料52(「Perfect BOAT MAY 2004」)には、「“レーダー=フルノ”を実現した男たち」の見出しのもと、「マリーナに浮かぶプレジャーボートのアーチにはマリーンブルーのFURUNOのロゴが浮き出たレーダーアンテナが何処までも続いて見える。そんな光景が定着してアメリカ市場でレーダーのことをフルノと言う人も多い。」の記載がある。

これらの事実によれば、使用に係る商標に接する取引者、需要者は、その構成中、看者の注意を惹くように顕著に書された「FURUNO」の文字部分(平面標章部分)を自他商品の識別標識として捉えられているのに対し、立体的形状部分は、前記のとおり、商品の形状を表すものと認識するにとどまり、それ自体、自他商品識別標識として捉えることはないというべきである。

そうすると、本願商標と使用に係る商標とは、その立体的形状部分よりも、看者の注意を惹く程度が著しく、自他商品の識別力が強い「FURUNO」の文字部分(平面標章部分)の有無において異なっているから、全体的な構成を比較対照すると同一性を有しないというべきである。

したがって、本願商標と使用に係る商標とは、立体的形状部分及び平面標章部分の有無の2点において、それぞれ顕著な差異があり、同一のものということはできないから、本願商標は、使用により自他商品識別力を有するに至った商標と認めることはできない。

(5)また、本願商標と使用に係る商標とは同一ではないことから、使用に係る商標の販売実績(請求人の提出に係る資料29)は、本願商標の使用実績ということはできず、雑誌、新聞等の広告宣伝(請求人の提出に係る資料31ないし62)についても、同様である。

さらに、請求人は、関連する業者による陳述書(請求人の提出に係る資料63、65及び68)を提出しているが、これらの陳述者が請求人と取引関係にある者等、請求人と何らかの関係を有する者であると推測され、利害の対立する同業他者や公的機関の証明もないことから、これら陳述書の客観性は直ちに認め難く、証拠力に乏しいものであるといわざるを得ない。

以上のとおり、請求人が提出した証拠をもってしては、本願商標が、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めることはできないから、本願商標は、商標法第3条第2項に該当するものとはいえない。

(6)まとめ

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、同法第3条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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