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Trademark Appeal Case

著名商標の称呼類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2007−890004(T2007−890004/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4987127号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4987127号商標(以下「本件商標」という。)は、「カポッキー」の片仮名文字を横書きしてなり、平成17年9月16日に登録出願され、第30類「カポック繊維を混入した菓子及びパン,カポック繊維を混入した皮を使用したモナカ」を指定商品として、同18年9月15日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第51号証を提出した。

1 無効理由の根拠条文

本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に該当するにもかかわらず登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により無効にすべきものである。

2 審判請求の利益

請求人は、約40年間にわたり、商品「チョコレート菓子」について商標「POCKY」(ポッキー)(以下「使用商標」という。)を使用しており、その結果、請求人の商標は、取引者、需要者において極めて著名なものとなっている。

かかる状況下において、本件商標がその指定商品について使用された場合には、本件商標は、使用商標に類似するから、その商品の出所につき混同を生じるおそれがあり、かつ、請求人の著名商標の指標力を稀釈化させるおそれもある。

したがって、請求人は、本件審判を請求することにつき利害関係を有する。

3 無効理由

(1)請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標は、以下の(ア)ないし(ウ)のとおりである。

(ア)登録第1327836号商標(以下「引用A商標」という。)は、「POCKY」の欧文字を横書きしてなり、昭和46年5月14日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同53年3月16日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、指定商品については、第30類「菓子,パン」を指定商品とする書換登録が平成19年10月24日にされているものである。

(イ)登録第3103630号商標(以下「引用B商標」という。)は、「ポッキー」の片仮名文字を横書きしてなり、平成5年4月1日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同7年12月26日に設定登録され、その後、同17年9月27日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

(ウ)登録第4354762号商標(以下「引用C商標」という。)は、「コポッキー」の片仮名文字を標準文字で表してなり、平成11年1月7日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同12年1月28日に設定登録されているものである。

(2)商標法第4条第1項第11号について

(ア)指定商品の同一性

引用AないしC商標の指定商品は、第30類「菓子、パン」であるところ、本件商標の指定商品は、これを含有物によって限定した「カポック繊維を混入した菓子及びパン,カポック繊維を混入した皮を使用したモナカ」である。

したがって、本件商標の指定商品は、引用AないしC商標の指定商品「菓子、パン」のうち少なくとも一部と同一である。

(イ)商標の類似性

商標の類否は、対比される両商標がその商品の出所につき誤認、混同を生ずるおそれがあるかどうかによって決定されるべきものであり、かかる判断に際しては、当該商品の取引の実情が考慮されるべきである。

そして、引用A及びB商標(以下「引用商標」という。)が極めて高い著名性を獲得しているという事実は、商品の出所の混同のおそれを増幅させる可能性のある事情といえるから、かかる事実についても、商標の類否判断において参酌されるべき取引の実情にあたるというべきである。

なお、商標の周知・著名性が商標の類否判断において参酌されるべき取引の実情にあたることは、判決例(甲第46号証)においても説示されている。

引用商標が、請求人の商品「菓子」を指標するものとして極めて著名な商標となっているのに対して、本件商標は、引用商標の称呼「ポッキー」の語頭に、「カ」の文字を結合したものにすぎないため、本件商標と引用商標とは、その商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれが高く、互いに類似する商標ということができる。

この点、本件商標と引用商標が称呼上類似であることは、商標審査基準の第4条第1項第11号4.(6)に該当することからも明らかである。

(a)称呼上の類似性

本件商標より生ずる称呼「カポッキー」と引用商標より生ずる称呼「ポッキー」を対比すると、両者は、互いに共通する称呼である「ポッキー」の語頭に「カ」の音があるか否かについてのみ相違する。

そして、「カポッキー」の語頭音「カ」に続く第2音「ポ」は両唇破裂音であり、かつ、50音中最も調音が容易な音の一つであるため、「カポッキー」を一連に称呼するときは、第2音「ポ」にアクセントが置かれ、第1音「カ」は相対的に弱く発音されるのが通常である。

したがって、これらの商標をそれぞれ一連に称呼するときは、語韻、語調が近似したものとなり、互いに聞き誤られるおそれが高く、この点から見ても、本件商標と引用商標とは互いに類似する商標ということができる。

次に、本件商標より生ずる称呼「カポッキー」と引用C商標より生ずる称呼「コポッキー」とを対比するに、両者は、いずれも4音より構成されるものであり、それらのうち、第2音以降が「ポッキー」である点において共通するものであり、両者が相違する点は、それぞれの第1音が「カ」であるか「コ」であるかという点のみである。

この差異音である「カ」と「コ」は、子音を共通にするとともに、口の開き方と舌の位置が互いに近似する母音である「ア」と「オ」を用いて発音され、さらに、これらの差異音に続く第2音「ポ」は両唇破裂音であり、かつ、50音中最も調音が容易な音の一つであるため、「カポッキー」及び「コポッキー」をそれぞれ一連に称呼するときは、第2音「ポ」にアクセントが置かれ、第1音「カ」及び「コ」のそれぞれは相対的に弱く発音されるのが通常である。

そうすると、「カ」と「コ」の差異がその称呼全体に与える影響は極めて少なく、両称呼は、その称呼全体として明瞭に聴別されることは困難というべきである。

そして、本件商標と引用C商標が称呼上類似であることは、商標審査基準の第4条第1項第11号6.(II)(2)「ともに同数音の称呼からなり、相違する1音が50音図の同行に属するとき」に該当することも明らかである。

したがって、本件商標と引用C商標とは、称呼上、相紛れるおそれのある類似する商標である。

(b)外観上の類似性

本件商標の「カポッキー」と引用C商標を構成する「コポッキー」とは、語頭に位置する文字が「カ」と「コ」である点においてのみ相違するものであり、その他の文字においては共通するものである。

すなわち、両者は、いずれも片仮名5文字より構成されるものであり、その構成文字中、語頭を除く4文字が「ポッキー」である点において共通するものである。

したがって、本件商標と引用C商標とは、その外観において類似するものである。

(ウ)引用商標の著名性

(a)引用商標の取引実績、すなわち著名性は、次のとおりであり、互いに補完し合いながら使用されており、その著名性も一体として獲得されている。

使用商標は、以下に示すとおり、商品「チョコレート菓子」の商品の包装箱、宣伝広告等に常に表示されているものである。

そして、このように請求人が永年にわたって継続使用した結果、使用商標は、我が国において、チョコレート菓子のトップブランドとなっており、請求人の商品「菓子」を指標するものとして極めて著名な商標となっているものであり、この事実は、引用A商標を原登録商標とする防護標章登録(登録第1327836防護第1号;甲第8号証)を受けていることからも明白である。

(b)引用商標の使用経緯

我が国で有数の菓子メーカーである請求人は、昭和41年に新しいタイプのチョコレート、スナック菓子を開発し、これを「POCKY」(ポッキー)と命名し、商標として採択したものであり、このチョコレート、スナック菓子の「POCKY」(ポッキー)は、それまでにないスティックタイプのチョコレート、スナック菓子として一躍注目を集め、昭和43年に全国販売を開始し、ヒット商品となっている。

それ以来、請求人は、約40年間にわたり継続して商品「チョコレート菓子」について使用商標を使用しており、その分野における圧倒的なシェアを維持し続けている。

この間の経緯については、添付の「江崎グリコ70年史」(甲第9号証)、「会社案内」(甲第10号証)において紹介されている。

(c)宣伝、広告

請求人は、この「POCKY」(ポッキー)をシリーズ化して、多様な商品展開を図ることにより幅広い需要を喚起している(甲第11号証;「グリコ商品ガイド」、甲第12号証;「ホームページ」)。

1970年代には、タレントの「岡田奈々」を起用した「ポッキー・オン・ザ・ロック」というキャンペーンを展開し、「チョコレート菓子」を洋酒のつまみにするという「POCKY」(ポッキー)の新しい食べ方を提案するなど、年齢や性別を超えた需要を生み出し、世代を超えて愛好される商品になっている(甲第9号証)。

さらに、1980年代には、歌手の松田聖子をはじめとする有名タレントを起用したコマーシャルを全国的に大々的に展開することによって、「POCKY」(ポッキー)を有名ブランドに育てている(甲第9号証)。

そして、少し前では、「つんく♂」プロデュースとして話題となり、爆発的なブームを巻き起こしたタレントの「モーニング娘。」を起用した宣伝広告を行っており(甲第13及び第14号証)、また最近では、「ALL NEW ポッキー」をキャッチフレーズとして、10代、20代に幅広い人気の「仲間由紀恵」、若い女性の憧れ「なりたい顔」No.1の「柴崎コウ」、圧倒的な知名度で個性がキラリと光るトップアイドルの「松浦亜弥」及び昨年度の新人賞を総ナメの「石原さとみ」といった話題性の高い4人のタレントをコマーシャルに起用するなど常に注目度の高い宣伝、広告活動を実施している(甲第15及び第16号証)。

(d)売上高

チョコレート菓子の「POCKY」(ポッキー)は、約40年の永年にわたってわが国の市場に浸透しているヒット商品であり、その売上高は、次のとおりであり莫大な額に達している。

2000年 340億円

2001年 320億円

2002年 285億円

2003年 260億円

2004年 220億円

2005年 130億円

2006年 140億円

(e)新聞、雑誌記事

「POCKY」(ポッキー)の商品及び商標(ブランド)は、菓子のブランドの成功事例として、また圧倒的なシェアを有する有名ブランドとして評価されている。

そのような評価を示す事例として、新聞、雑誌などにおける紹介記事(甲第17ないし第43号証)が存在する。

(f)阪神甲子園球場の看板広告

野球中継の放送において、阪神甲子園球場のバックネット下の回転式看板に「glicoポッキー」の広告が写し出されている。

この回転式看板は、野球中継の放送中、常時放映されているものであり、宣伝、広告効果の高いものである(甲第44号証)。

(g)引用商標と防護標章登録

請求人は、引用A商標を原登録商標とした防護標章登録(登録第1327836号防護第1号;甲第8号証)を所有している。

したがって、本件商標の著名性は、特許庁の審査においても認められている。

(h)引用商標の著名性を認めた審決

請求人が請求した他の無効審判(無効審判2005−89080号)の審決においても、商標「POCKY」の著名性が認められている(甲第45号証)。

以上の事実よりすれば、引用商標は、商品菓子について永年にわたり、かつ大々的に使用された結果、本件商標の出願時以前から今日に至るまで、極めて著名な商標となっていることは明白である。

(エ)まとめ

以上のとおり、本件商標は、著名商標と他の1文字とを結合した商標であるから、本件商標と引用商標とは、その商標において類似するものであり、かつ、本件商標と引用C商標とは、その商標において類似するものであって、その指定商品「カポック繊維を混入した菓子及びパン,カポック繊維を混入した皮を使用したモナカ」において同一のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

(3)商標法第4条第1項第15号について

(ア)請求人の商標の著名性

前記(2)(ウ)において述べたとおり、使用商標は、請求人が商品「チョコレート菓子」について永年にわたって使用してきた結果、我が国におけるブランド構築の成功例としてブランド論を語るうえでモデルケースとして頻繁に引用される(甲第21及び第22号証、第36号証、第40号証)など、チョコレート菓子のトップブランドとしての確固たる地位を築いているものであり、請求人の商標として極めて著名なものとなっている。

(イ)請求人の商標と本件商標との類似性

前記(2)において述べたとおり、本件商標と使用商標とは類似性を有するものであり、取引者、需要者は両者から共通した印象ないしはイメージを感受するものである。

加えて、使用商標は、特定の観念を生じさせない造語であり、独創性の高い商標である。

このように、造語より構成される創造商標については、一般に強い識別力が認められ、他人がその商標と類似するような商標を使用した場合には、既成語から構成される商標よりも、出所の混同が生ずる幅は広いというべきである。

また、使用商標は、請求人の商品「菓子」を指標するものとして極めて著名な商標となっているのに対し、本件商標は、極めて著名である使用商標の称呼「ポッキー」の語頭に「カ」の文字を結合したものであるため、両商標がその商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれが高いということができ、この点、商標審査基準との記載に照らしても明らかである(甲第47号証)。

(ウ)指定商品の同一性

本件商標の指定商品は、第30類「カポック繊維を混入した菓子及びパン,カポック繊維を混入した皮を使用したモナカ」であるところ、これら商品と請求人が使用商標を使用する商品「チョコレート菓子」とは、いずれも食品(特に菓子類)であり、その生産部門、販売部門、原材料、用途及び需要者層などが一致する関連性の高い商品である。

そして、食品(特に菓子類)の分野における需要者層は、子供から老人に至るまでの幅広い一般消費者であり、その注意力が必ずしも高くない者を含んでいるため、商品の出所につき混同する可能性が高い。

(エ)使用商標を使用する商品のシリーズ化

請求人は、使用商標について多様なシリーズ商品を展開しているため(甲第11号証)、本件商標がその指定商品に使用された場合には、それがあたかも請求人の使用商標に係るシリーズ商品であるか、または、これと何らかの関連性を有する商品であるかのごとく誤認され、或いは、その商品の出所について、組織的又は経済的に何らかの関係がある者の商品であるかのごとく混同されるおそれもある。

(オ)使用商標の信用力の希釈化

被請求人が本件商標をその指定商品について使用する行為は、請求人が永年にわたる莫大な宣伝、広告費用と営業努力によって培ってきた著名な使用商標の信用力(ブランド価値)にただ乗りするものであり、かかる信用力(ブランド価値)を希釈化させるものであるから、競業秩序の維持の観点からも容認されるべきでない。

(カ)まとめ

以上のとおり、使用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして極めて著名なものであるから、本件商標がその指定商品について使用されると、これに接する取引者、需要者をして、請求人の業務に係る商品であると誤認されるおそれがあり、商品の出所につき混同が生ずるおそれがある。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

4 結論

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録は無効とすべきものである。

よって、請求人は、請求の趣旨のとおりの審決を求めるものである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、何ら答弁していない。

第4 当審の判断

1 請求人の提出に係る甲第9ないし第44号証によれば、請求人(江崎グリコ株式会社)は、昭和41年に新しいタイプのチョコレート・スナック菓子を開発し、この新商品に引用商標を採択したことが認められる。

そして、このチョコレート・スナック菓子「POCKY」(ポッキー)は、それまでにないスティックタイプのチョコレート・スナック菓子として一躍注目を集め、昭和43年に全国販売を開始し、ヒット商品となり、以来、その時々の有名タレントを起用するなどして宣伝、広告にも力を入れ、各種の新聞、雑誌にも紹介記事が掲載されるなどして、この間40年以上にわたり「チョコレート菓子」に引用商標を継続して使用してきた結果、この菓子分野における圧倒的なシェアを維持し続けていることが認められる。

そうとすれば、引用商標は、昭和41年に使用が開始され、その後、ヒット商品として現在に至るまで、請求人の取り扱いに係る商品「チョコレート菓子」に使用する商標として、取引者、需要者の間に広く認識され著名性を獲得するに至ったことが認められる。

2 しかして、本件商標は、「カポッキー」の文字よりなるものであるところ、該文字は、請求人の著名な引用商標「ポッキー」の語頭部に片仮名一文字「カ」を結合することによって、全体が特定の意味合いを表し常に不可分一体のものとして把握・認識されるものとなっているとは認められないものである。また、前記した著名な引用商標である「ポッキー」の文字をその構成中に含むものであるから、これに接する者は、当該「ポッキー」の文字に着目し引用商標を連想し、本件商標を使用する者が恰も請求人又は請求人と何らかの関係を有する者であるかの如く、認識する場合が少なからずあるものと推認し得るものである。

そして、引用商標は、「菓子」について著名な商標と認められ、さらに、本件商標の指定商品は、請求人の使用する商品「菓子」と同ー又は類似の商品を含む密接な関連を有する商品に使用するものである。

してみれば、本件商標をその指定商品に使用した場合は、取引者、需要者をして、引用商標を容易に連想、想起し、その商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の取り扱いに係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといわなければならない。

3 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その余の点につき判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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