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Trademark Appeal Case

称呼の類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2008−890109(T2008−890109/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5026123号の指定商品中、第5類「薬剤」についての登録を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5026123号商標(以下「本件商標」という。)は、「クラレス」の文字を標準文字で表してなり、平成18年4月17日に登録出願され、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯 ,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工受精用精液」、第29類「生薬を主原料とするタブレット状・ソフトカプセル状・粉末状・粒状・ 顆粒状・錠剤状・液状・ペースト状・ゼリー状・ゲル状の加工食品,ビタミン類を主原料とするタブレット状・ソフトカプセル状・粉末状・粒状・顆粒状・錠剤状・液状・ペースト状・ゼリー状・ゲル状の加工食品,食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」及び第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料,飲料用野菜ジュース」を指定商品として、同19年2月16日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論と同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 請求の利益について

請求人は、後掲する登録商標を所有しているところ、本件商標は同登録商標と類似する後願商標であり、また、同登録商標をその指定商品「抗生物質製剤」について使用を継続して周知となっているところ、その出願時及び登録査定時において、本件商標に係る指定商品「薬剤」とは出所の混同のおそれがあったもので、その状態は査定時においても継続していたから、請求人は本件商標の登録を無効とすることについて法律上の利益を有するものである。

2 無効理由・その1

本件商標は、その先願に係る登録第2310216号商標(以下「引用商標」という。)と商標及び指定商品において同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

(1)引用商標

引用商標は、「クラリス」の片仮名文字及び「CLARITH」の欧文字を、上下二段にそれぞれ左横書きしてなり、昭和62年10月12日に登録出願され、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として、平成3年5月31日に設定の登録がなされ、その後、同13年5月29日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、同14年4月17日に指定商品を第1類「化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),植物成長調整剤類」、第2類「カナダバルサム,壁紙剥離剤,コパール,サンダラック,シェラック,松根油,ダンマール,媒染剤,マスチック,松脂,木材保存剤」、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用海草のり,洗濯用コンニャクのり,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり」、第4類「固形潤滑剤」、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料」、第8類「ピンセット」、第10類「氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック,避妊用具,人工鼓膜用材料,補綴充てん用材料(歯科用のものを除く。),耳栓」、第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」、第19類「タール類及びピッチ類」、第21類「デンタルフロス」及び第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤」とする指定商品の書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

(2)本願商標と引用商標は称呼上類似の商標

本件商標は、「クラレス」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、これよりは「クラレス」の称呼を生ずるものである。他方、引用商標は、「クラリス」の片仮名文字と「CLARITH」の欧文字とを上下二段に表してなるものであるところ、これよりは「クラリス」の自然な称呼を生ずるものである。しかして、両者は4音構成中、前半の「クラ」と語尾の「ス」の音を同じくして、僅かに第三音において、「レ」と「リ」の音に差異があるものにすぎず、しかもその両音は共に五十音図ラ行に属して子音を共通にする近似音である。すなわち、「リ」(ri)と「レ」(re)の音は、舌面を硬口蓋に近づけ、舌の先で上歯茎を弾くようにして発する有声子音(r)を共通にするものであって、母音(i)と(e)においても、その音質が近似するものであるから、「リ」と「レ」音とは、近似した音として発音、聴取されるものである。

そうとすれば、本願商標と引用商標をそれぞれ全体的に一連に称呼したときは、該差異音の差が全体の称呼に及ぼす影響は小さく、その語調、語感が近似したものとなり、時と処を異にして称呼した場合、これに接する取引者、需要者は、互いに相紛れるおそれがあるものである。そして、両商標は造語の文字商標であって、称呼をもって識別機能を発揮するもので、外観上や観念上の特徴をもって識別されるものではない。

したがって、本願商標と引用商標は、称呼上の類似をもって類似の商標というべきである。そして、両商標は第5類の指定商品「薬剤」において、同一又は類似のものである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

(3)商標審査基準の該当例

本件商標と引用商標とが、称呼上類似のものであることは、「商標審査基準」からも明らかである。同基準の第4条第1項第11号に関して定めた称呼類似の例として挙げられた、「ともに同数音の称呼からなり、相違する1音が五十音図の同行に属するとき」(特許庁商標課編「商標審査基準」商標法第4条第1項第11号7.(II)(2)甲第3号証)に直接該当するものである。

本件商標と引用商標は、前掲基準において例示された「アトミン」「アタミン」や「VULKENE(バルケンの称呼)」と「VALCAN(バルカンの称呼)」と同じ例である。

したがって、本件商標と引用商標が称呼上類似のものであることは明らかというべきである。

(4)審決例にも違反

商標の類似判断においては、先の審決例も重要なところ、称呼上において本件商標と引用商標と同様の相違を有する商標についての審決は、いずれも類似の商標と判断している。指定商品は本件事案と同じく、「薬剤」に係るものである(甲第4号証ないし同8号証)。

・「VARION(バリオン)」=「バレオン」(平成6年審判第13750号)

・「FLOWLINE(フローリン)」=「FLOREN/フローレン」(昭和62年審判第592号)

・「RESTOGEN(レストゲン)」=「リストゲン」(昭和60年審判第13011号)

・「セリナ」=「セレナ」(昭和58年審判第15342号)

・「PERIVITA(ペリビタ)」=「PELLEVITA(ペレビタ)」(昭和46年審判第7649号)

これら審決例は、いずれも、審査基準に従ったもので、正当な判断であり、本件商標と引用商標とにおいても、先審決例に倣い、称呼上類似の商標と判断されるべきである。

(5)取引の実情も考慮されるべき

本件商標と引用商標は共に、第5類「薬剤」を指定商品とし、これには「医薬品」も含まれているところ、医薬品の分野では、医薬品の投与ミスによる事故、いわゆるヒヤリハット事件が相次ぐ中で、商標の類似性に起因するものも多いとして、直接的に国民の安全や健康に関係するため、様々な改善策が採られている。類似性に起因する例として、「タキソール」と「タキソテール」や「アマリール」と「アルマール」、「アレロック」と「アレリックス」等の例が報告されている(甲第9号証の1,2)。いずれも、語頭部の音が共通して中間音以下に差異がある例である。これら医薬品の取引の実情やその中の商標の混同・誤認の具体例をも考慮すれば、本件商標と引用商標のような例は、当然に、医薬品の中では、並行して使用されるべきではなく、重複登録は避けなければならいことになる。

また、後述するとおり引用商標は指定商品中「抗生物質製剤」に使用されて周知であるところ、この取引の実情をも考慮すれば本件商標と引用商標に係る混同の虞は増幅して、類似の商標というべきことになる。

(6)異議2007−900235異議決定の妥当性

本件商標と引用商標の類似については異議事件として審理されて、その決定においては、『差異音である「レ」と「リ」の音は、五十音中の同行音に属するものの、両音は、語頭にあって強く発音される「ク」の音に吸収されるように弱く発音される第2音目「ラ」の後に位置するために、弾音である上にアクセントが置かれて強く明確に称呼されるから、該差異音が4音という短い音構成からなる両称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず、本件商標と引用商標をそれぞれ一連に称呼しても、語調・語感を異にし、互いに聴別し得るものというのが相当である。』と判断して、類似しないとした(甲第10号証)。

しかしながら、この決定では、差異音の違いのみを強調しかつ過大評価したものであり、称呼の類似においてはそれぞれ生ずる全体の称呼をもって判断すべきことを軽視し、また相紛れる虞で足りることや離隔観察を看過したものである。

加えて、前述したとおり商標審査基準や先審決例に反するものであり、妥当な決定ではない。異議決定のような類似判断では、商標法が商標権に保証する禁止権(37条1号)や後願排除権(第4条第1項第11号)はないに等しいものとなってしまう。

3 無効理由・その2

本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

(1)引用商標は、請求人の業務に係る商品「抗生物質製剤」に平成3年の発売以来使用され、その売上高は2002年度が259億円、2003年度が271億円、2004年年度が276億円、2005年度が274億円、そして2006年度が275億円(甲第11号証)であり、マクロライド系抗生物質における市場占有率37.7パーセン(2004年)と第一位(甲第12号証)であり、少なくとも本件商標の登録出願時である2006年4月には我が国を代表する抗生物質製剤として取引者、需要者の間に広く知られているところとなっていたもので、この状態は本件商標の査定時においても継続していたものである。

したがって、本件商標がその指定商品である第5類の「薬剤」に使用された場合には、これに接する取引者及び需要者をして、その商品が請求人の取扱いに係る商品と誤認し、その商品の出所につき混同を生じさせるおそれの充分ある商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

(2)前掲異議決定においては、『申立人の提出した甲第8号証(本審では甲第11号証)「薬事工業生産動態統計年報(平成16年度・概要)」には、「市場全体」として「346,141百万円」の記載及び「クラリス売上高(億円)」として2002年3月期から2006年3月期の各期の売上高の記載、その下に「シェア(2004年)」「10.0%」の記載がある。

また、甲第9号証(本審では甲第12号証)「2006.7.10」の日付が記載された「国際医薬品情報」の45頁の写しには、「〈マクロライド系抗生物質主要製品売上げランキング〉」の表があり「順位1(1)」の「製品名」の欄に「クラリス」と記載がある。以上、申立人の提出した甲第8号証及び甲第9号証から、申立人が引用商標を商品「抗生物質製剤」に相当程度使用していることは認められる』と具体的に認定しながら、『引用商標を使用した商品の生産又は販売数、使用期間、使用地域及び宣伝広告の方法・回数・内容等を記載した証拠は提出されていないから、これらの証拠をもって、引用商標が、本件商標の登録出願時に需要者の間で広く知られるに至っていたと認めることができない。』との一般的な認定事項を挙げて否定するのは矛盾であって妥当ではない。

(3)しかも、本件商標と引用商標とは、指定商品、取引者及び需要者を共通にする例で、加えて、商標の類似性においては本件事案のように極めて近似な商標間であれば、異議決定が認定した周知の程度であっても、商標審査基準や最高裁判例が示す基準に従って、出所の混同のおそれがあるとの結論は導けるというべきである(「商標審査基準」第4条第1項第15号2.甲第13号証、「レール・デュタン事件」平成12年7月11日 最高裁平成10年(行ヒ)第85号 判例時報1721号141号 甲第14号証)。

4 まとめ

以上のとおり、本件商標は、引用商標とは類似するもので、かつ、その指定商品中「薬剤」の登録については引用商標と同一又は類似のものであるから商標法第4条第1項第11号に違反した登録であり、また引用商標を使用する商品「抗生物質製剤」と本件商標の指定商品中「薬剤」とは出所の混同の虞があるものであり同第15号に違反したものであるからその登録中、少なくとも、「薬剤」については、無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。」と答弁し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。

1 無効理由・その1について

請求人は、本件商標「クラレス」と引用商標「クラリス/CLARITH」は、称呼上類似するものであって、第5類の指定商品「薬剤」を共通にするものであるから、本件商標「クラレス」は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものであると主張しているが、本件商標「クラレス」と、引用商標「クラリス/CLARITH」は、称呼上類似しないから、前記主張は成り立たない。

本件商標「クラレス」と引用商標「クラリス/CLARITH」の称呼については、異議2007−900235の異議の決定において、“本件商標から生ずる「クラレス」の称呼と引用商標から生ずる「クラリス」の称呼を比較すると、両者は、共に4音により構成され、第3音目において「レ」と「リ」の音を異にし、他の3音を同じくするものである。そして、差異音である「レ」と「リ」の音は、五十音中の同行音に属するものの、両音は、語頭にあって強く発音される「ク」の音に吸収されるように弱く発音される第2音目「ラ」の後に位置するために、弾音である上にアクセントが置かれて強く明確に称呼されるから、該差異音が4音という短い音構成からなる両称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず、本件商標と引用商標をそれぞれ一連に称呼しても、語調・語感を異にし、互いに聴別し得るものであるというのが相当である。”と判断されている(乙第3号証)。

上述の異議の決定に対し、請求人は、「商標審査基準」で例示されている「アトミン」と「アタミン」、「VULKENE(バルケンの称呼)」と「VALCAN(バルカンの称呼)」や、「VARION(バリオン)」=「バレオン」(平成6年審判第13750号)、「FLOWLINE(フローリン)」=「FLOREN/フローレン」(昭和62年審判第592号)、「RESTOGEN(レストゲン)」=「リストゲン」(昭和60年審判第13011号)、「セリナ」=「セレナ」(昭和58年審判第15342号)、「PERIVITA(ペリビタ)」=「PELLEVITA(ペレビタ)」(昭和46年審判第7649号)を事例に挙げ、これらの事例と同様に、本件商標「クラレス」と引用商標「クラリス/CLARITH」は、称呼上類似されるとするべきであると主張しているが、これらいずれの事例についても、「クラレス」と「クラリス」の称呼の比較、すなわち、“語頭にあって強く発音される「ク」の音に吸収されるように弱く発音される第2音目「ラ」の後に位置するために、弾音である上にアクセントが置かれて強く明確に称呼されるから、該差異音が4音という短い音構成からなる両称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず、本件商標と引用商標をそれぞれ一連に称呼しても、語調・語感を異にし、互いに聴別し得るものである。”に合致した事例は見当たらない。

また、請求人は、医薬品の投与ミスによる事故、いわゆるヒヤリハット事件について、「タキソール」と「タキソテール」、「アマリール」と「アルマール」、「アレロック」と「アレリックス」等の事例を挙げ、医薬品の取引の実情やその中の商標の混同・誤認の具体例を考慮すれば、本件商標「クラレス」と引用商標「クラリス/CLARITH」は、医薬品の中では並行して使用されるべきでなく、重複登録は避けなければならないと主張しているが、請求人の引用商標「クラリス/CLARITH」は、医療用医薬品を取り扱うことができる医療機関や病院における使用であって、被請求人の商標「クラレス」は、一般用医薬品、化粧品、食品、飲料、衛生用品、洗剤、雑貨などを販売する薬局や薬店、ホームセンターやスーパーマーケット等における使用であるから、請求人、被請求人が製造・販売する医薬品は、取引の実情を異にするものであり、これら商標の間に出所の混同・誤認は有り得ないものといわなければならない(乙第4号証)。

更に、請求人は、異議2007−900235の異議の決定の妥当性について、「商標審査基準」に記載された事例や過去の審決事例に反するものであるから、妥当な決定でないと主張しているが、そもそもこれらの事例は、本件商標「クラレス」と引用商標「クラリス/CLARITH」の類否判断に関わる事情と異なるものであるから、これらの事例があるからといって、異議2007−900235の異議の決定が妥当でないということはできない。

本件商標「クラレス」と引用商標「クラリス/CLARITH」は、音構成の違いにより称呼上類似しないものであり、観念については、これらはいずれも造語であるため、比較することはできず、外観については、構成文字の違いにより十分に区別し得る。

よって、本件商標「クラレス」と引用商標「クラリス/CLARITH」は、称呼、観念、外観のいずれについても類似しない商標であり、本件商標が商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録され、その登録を無効にしなければならないとする主張は成り立たない。

2 無効理由・その2について

請求人は、本件商標「クラレス」は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであると主張しているところ、本審判請求書において、引用商標「クラリス/CLARITH」の著名性を立証する証拠資料として、甲第11号証“薬事工業生産動態統計年報(平成16年度・概要)、並びに、甲第12号証“マーケティングシェア・シリーズ第32弾(2004年)第17回”を提出しているが、これらの証拠資料は、異議2007−900235の異議申立理由に係る証拠資料として提出されたものと同一であり、これら2つの証拠資料の他に引用商標が著名であることを証明する新たな証拠資料は提出されておらず、本件商標「クラレス」が、商標法第4条第1項第15号の規定に該当して然るべきであるとする新たな主張もなされていない。

してみれば、異議2007−900235の異議の決定において、“請求人が引用商標を商品「抗生物質製剤」に相当程度使用されていることは認められるが、それ以外に引用商標を使用した商品の生産又は販売数、使用期間、使用地域及び宣伝の方法・回数・内容等を記載した証拠は提出されていないから、これらの証拠をもって、引用商標が、本件商標の登録出願時に需要者の間で広く知られるに至っていたと認めることができない。”と判断された引用商標の著名性の認定を覆すに足りる証拠や主張は、本審判請求において何ら提出されていないものといわなければなならない。

そもそも請求人が販売する「抗生物質製剤」は「医療用医薬品」であり、被請求人が製造・販売する医薬品は、「一般用医薬品」であるから、同じ「医薬品」であっても、「医療用医薬品」と「一般用医薬品」の取引の実情は著しく相違する。

したがって、請求人が、本件商標と引用商標は、出所の混同のおそれがあると結論付けることのできる証拠資料として提出した甲第13号証「商標審査基準」第4条第1項第15号2.や、甲第14号証「レール・デュタン事件」平成12年 最高裁平成10年(行ヒ)第85号(判例時報)は、取引の実情において、本審判請求事件と事例を異にするものといわなければなならない。

しかるに、「医療用医薬品」は、医師若しくは歯科医師によって使用され又はこれらの者の処方せん若しくは指示によって使用されることを目的として供給される医薬品をいい、「一般用医薬品」は、「医療用医薬品」として取扱われる医薬品以外の医薬品をいう、すなわち、一般の人が薬局等で購入し、自らの判断で使用する医薬品であって、通常、安全性が確保できる成分の配合のものが多いと定義されている(乙第5号証)。

他方、「医療用医薬品」は、医師若しくは歯科医師を介さなければ使用の安全性が確保できないため、一般の人が、直接手に取って自らの判断で選択し、購入し、使用することはなく、医師若しくは歯科医師を介さなければ使用できないものであり、「医薬品」について相当高い専門知識を有する者のみがこれを取り扱うことができる事情よりすれば、これら医療関係者が、「医療用医薬品」と「一般用医薬品」を取り違えるおそれはないとするのが相当である。

また、「医療用医薬品」は、「医薬品」について相当高い専門知識を有する医薬関係者以外の一般人を対象とする宣伝広告は禁止されており、テレビや新聞、雑誌、その他のメディアを利用して大量に宣伝広告できる「一般用医薬品」とは、その取引の実情を大きく異にするものであるから、「医療用医薬品」と「一般用医薬品」を取り違えるおそれはないとするのが相当である(乙第6号証)。

「医療用医薬品」と「一般用医薬品」の取引の実情が異なることは、過去の審決事例においても認められている(乙第7号証)。

そして、「レール・デュタン事件」は、著名な「香水」と、「化粧用具」、「身飾品」、「頭飾品」、「かばん類」、「袋物」等を比較した場合、用途において極めて密接な関連性を有しており、また、需要者の共通性やその他の取引の実情が考慮され、商標法第4条第1項第15号の規定が適用された事案であるが、本件商標「クラレス」と引用商標「クラリス/CLARITH」は、その指定商品中「薬剤」を共通にするも、「一般用医薬品」と「医療用医薬品」の大きな違いがあり、これらは、同じ場所、同じ棚に並べられて販売されることはない。

なぜなら、「一般用医薬品」は、一般の人が、自己の症状に合った「一般用医薬品」を複数あるブランドの中から自己の判断で選択し、服用することができるが、「医療用医薬品」は、医師や歯科医師、薬剤師などの医療関係者に厳重に保管され、管理されて使用され、一般の人は、医師や歯科医師の処方せんなく、これを服用することばできず、自己の症状に合った「医療用医薬品」を複数あるブランドの中から自己の判断で選択し、服用することはできない。

他方、「レール・デュタン事件」は、著名な「香水」と、「化粧用具」、「身飾品」、「頭飾品」、「かばん類」、「袋物」等は、同じ場所、同じ棚に並べられて販売されている。

このことは、例えば、有名ブランドの直営店や、Duty Free Shopなどの店頭を見ても明らかであると思料する。

著名な「香水」と、「化粧用具」、「身飾品」、「頭飾品」、「かばん類」、「袋物」等は、主として「女性」が好むものであって、また、これら商品は、店頭での陳列や雑誌、テレビやインターネットなどの様々なメディアを通じて自由に情報を得ることができ、自己の好みに応じて自由に商品を入手することができるものである。

したがって、上記のような事情よりすれば、「レール・デュタン事件」と本審判請求に係る、商品間の密接な関連性、取引者、需要者の共通性、その他の取引の実情等は、互いに相異なるものであるから、本審判請求が、「レール・デュタン事件」の判事の基準に従って判断されなければならないとする主張は失当である。

してみれば、被請求人が本件商標「クラレス」を「一般用医薬品」に使用しても、請求人が引用商標「クラリス/CLARITH」を使用する「医療用医薬品」を連想させ、想起させるおそれはなく、被請求人が製造・販売する商品が、請求人若しくは請求人と何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかのごとく誤認し、商品の出所の混同を生じさせるおそれはないとするのが相当である。

よって、本件商標「クラレス」は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録され、その登録を無効にしなければならないとする主張は成り立たないものである。

3 まとめ

以上の理由のとおり、本件商標「クラレス」は、引用商標「クラリス/CLARITH」と称呼、観念、外観の何れについても類似しない商標であるから、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録が認められたものではなく、また、引用商標「クラリス/CLARITH」を使用する商品「抗生物質製剤」と被請求人が製造・販売する「一般用医薬品」は、流通経路を異にするため、出所の混同のおそれはなく、同第15号の規定に違反して登録されたものではないから、その登録を無効とすることはできず、本件指定商品中「薬剤」についてこれを無効にしなければならない特段の理由は存在しないものと思料する。

第5 当審の判断

1 請求の利益について

本件審判請求に関し、当事者間に利害関係について争いがないので、本案に入って判断する。

2 商標法第4条第1項第11号について

本件商標と引用商標との類否について判断するに、本件商標は、「クラレス」の文字を書してなるから、「クラレス」の称呼を生じ、特定の観念を生じない造語とみるのが相当である。

一方、引用商標は、「クラリス」の片仮名文字及び「CLARITH」の欧文字を、上下二段に書してなるところ、片仮名文字は、欧文字の称呼を特定したものと認められるから、該文字に相応して「クラリス」の称呼を生ずるものとみるのが自然である。

また、引用商標は、特定の観念を生じない造語と認められる。

しかして、本件商標から生ずる「クラレス」の称呼と引用商標から生ずる「クラリス」の称呼を比較するに、ともに同数音の称呼からなり、「ク」の音、「ラ」の音及び「ス」の音を同じくし、異なるところは、第3音における「レ」と「リ」の音の差異にすぎないものである。

しかも、差異音の「レ」と「リ」の音は、前者が、舌面を硬口蓋に近づけ、舌の先で上歯茎を弾くようにして発する有声子音[r]と、母音[e]との結合した音節[re]であるのに対して、後者は、同じ子音[r]と母音[i]との結合した音節[ri]であって、ともに五十音図の「ラ」行に属し、その母音[e]と母音[i]とは近似する母音であるから、「レ」と「リ」の音も近似する音ということができる。

そして、「クラレス」及び「クラリス」の称呼は、いずれも「ク」の音にアクセントを有することから、「ク」の音が最も強く発音されやすいのに対し、差異音の「レ」と「リ」の音は、明瞭に聴取されにくい中間に位置し、アクセントを有することなく、弱く発音されやすいものであるから、これらの差異音が、称呼全体に及ぼす影響はわずかなものであって、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の音感、音調が近似し、相紛らわしいものとみるのが相当である。

してみれば、本件商標と引用商標とは、外観において相違し、観念において比較できない点を考慮しても、称呼において類似する商標といわなければならない。

また、本件商標の指定商品中、第5類「薬剤」と引用商標の書換後の指定商品中、第5類「薬剤」とは同一又は類似のものである。

したがって、本件商標の指定商品中、第5類「薬剤」についての登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものである。

3 商標法第4条第1項第15号について

商標法第4条第1項第15号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に同号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない(商標法第4条第3項)。

請求人は、「引用商標は、請求人の業務に係る商品『抗生物質製剤』に平成3年の発売以来使用され、その売上高は2002年度が259億円、2003年度が271億円、2004年度が276億円、2005年度が274億円、そして2006年度が275億円(甲第11号証)であり、マクロライド系抗生物質における市場占有率37.7パーセン(2004年)と第一位(甲第12号証)であり、少なくとも本件商標の登録出願時である2006年4月には我が国を代表する抗生物質製剤として取引者、需要者の間に広く知られているところとなっていたもので、この状態は本件商標の査定時においても継続していたものである。」旨述べている。

請求人が提出した甲第11号証には、2006年3月期のクラリスの売上高が275億円であること及び2004年3月期のクラリスの売上高が276億円であることが記載されているものと認めることができる。

しかし、「シェア(2004年)」の文字が、「クラリス売上高(億円)」の文字の下に記載されているのに対し、「シェア(2004年)」の右に表された「10%」の文字は、2006年3月期の下に記載されている。したがって、10%が何年の10%なのか明らかではない。

また、2004年3月期の276億円を10倍した金額(2,760億円)と構成割合100%とする総数の欄に記載されている2004年の生産金額362,813(百万円)とは、一致しない。

そして、同号証は、何の根拠に基づいて作成されたものか定かではないものである。

同第12号証の44頁の右下及び同号証の45頁の左下には、「2006.7.10 国際医薬品情報」と記載されていることから、同号証は、本件商標の登録出願日である平成18年(2006年)4月17日以前に作成したものとは認められない。

また、本件商標を付した商品の販売数量、広告、宣伝等の程度又は普及度が、証明されていないことから、提出された証拠によっては、本件商標の指定商品中、第5類「薬剤」についての登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものとは認められない。

4 まとめ

したがって、本件商標の指定商品中、第5類「薬剤」についての登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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