Trademark Appeal Case
結合商標の要部抽出
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2008−900022(T2008−900022/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5084504号商標(以下「本件商標」という。)は、「IMPACTag」の欧文字を標準文字で表してなり、平成19年3月23日に登録出願、第1類「化学品」、第5類「薬剤」、第9類「理化学機械器具」、第10類「医療用機械器具」、第42類「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」及び第44類「臨床検査,血液検査及びその分析,その他の医業」を指定商品及び指定役務として、同年10月19日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人の引用する登録商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、以下の3件の商標を引用している。
(ア)登録第4647603号商標は(以下「引用商標1」という。)は、「IMPACT」の欧文字を標準文字で表してなり、平成13年11月29日登録出願、第5類「医療用栄養添加剤,臨床用の食餌療法用栄養補助剤,その他の薬剤,経管又は経口摂取するための液状の医療用食餌療法用食品,臨床用食餌療法用食品,その他の医療用食餌療法用食品,乳児の離乳用加工食品」及び、第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,豆,加工野菜及び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,卵,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」を指定商品として、同15年2月21日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(イ)登録第4647595号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成13年9月18日登録出願、第5類「医療用栄養添加剤,臨床用の食餌療法用栄養補助剤,その他の薬剤,経管又は経口摂取するための液状の医療用食餌療法用食品,臨床用食餌療法用食品,その他の医療用食餌療法用飲料・食品,乳児の離乳用加工食品」を指定商品として、同15年2月21日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(ウ)国際登録第541558号商標(以下「引用商標3」という。)は、「IMPACT」の欧文字を書してなり、2001年11月28日に日本国を事後指定の日とし、第5類「Liquid food for dietotherapy for medical purposes for tube feeding or for oral consumption, dietetic food for use as part of a hospital diet.」を指定商品として、平成15年1月31日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標の指定商品及び指定役務中、第5類「全指定商品」、第10類「全指定商品」及び第42類「全指定商品」についての登録を取り消す旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第57号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)商品の抵触について
本件商標は、その指定商品に「薬剤」を含むものであり、引用商標1及び引用商標2は、その指定商品に「医療用栄養添加剤,臨床用の食餌療法用栄養補助剤,その他の薬剤」を含むものであるから、本件商標と引用商標1及び引用商標2の指定商品は、抵触する。
(イ)商標の抵触について
本件商標は、語頭から六文字は全て大文字で「IMPACT」、続く二文字は小文字で「ag」である。こうした文字種の相違に加え、「IMPACT」は、各文字が直線により構成される文字群であり、堅い印象を与えるのに対し、「ag」は曲線により構成される柔らかい印象を与える。
このような「IMPACT」部分と「ag」部分の文字種の違いと印象の違いは、取引者・需要者をして、本件商標を「IMPACT」部分と「ag」部分に分離して認識させる十分な外観的要因となる。
そして、医薬業界においては、欧文字二文字「AG」は、アレルギーを抑えるための成分が配合されている抗アレルギー商品であることを示す記号として極めて一般的に用いられており、「薬剤」の取引の実情と需要者の通常有する注意力を勘案すれば、本件商標はごく自然に「IMPACT」部分と「ag」部分に分離して認識・理解されるのである。
よって、本件商標よりは「インパクト」の称呼、及び「影響、反響、効果」の観念を生じる。
引用各商標は、いずれも欧文字で「IMPACT」と書してなり、その称呼は「インパクト」である。また、「影響、反響、効果」の観念を生じる。
したがって、本件商標と引用各商標とは、称呼及び観念において同一である。また、本件商標は、取引者・需要者には「IMPACT」部分のみが分離抽出されて印象に残るので、本件商標は、外観的にも引用商標1と類似する。
(ウ)取引の実情
引用各商標は、本件商標の出願時には、商品「濃厚流動食」について、その取引者、需要者の間で周知・著名性を獲得したもので、本件商標の登録査定時においてもその周知性・著名性は継続しているものである。
本件商標の指定商品は「薬剤」であって、申立人が「濃厚流動食」について使用する周知・著名な引用各商標とその取引者・需要者が重複するものであるから、商品の出所の混同のおそれを増幅する可能性は十分ある。
(エ)以上のとおり、本件商標と引用商標1は、外観・称呼・観念において類似する商標であり、引用商標2とは、称呼・観念において類似する。指定商品においてもそれぞれ上記のとおり相互に同一ないし類似の商品を含むものである。加えて、引用各商標の周知著名性を考慮すれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(ア)引用各商標の周知・著名性
引用各商標(以下まとめて「インパクト商標」という。)は、ノバルティス社が開発・製造した「濃厚流動食」 について使用されている。我が国においては、味の素ファルマ社(以下「販売者」という。)が国内の独占製造販売権を有し、2002年より販売を行っている。
インパクト商標が使用される商品(以下「インパクト商標商品」という。)は一般には「濃厚流動食」と呼ばれるが、具体的には、アルギニン等の特許化された3成分により、免疫賦活力を強化した完全経腸栄養剤であり、ごく簡単に言えば、飲んで免疫力を高める新しい流動食である。病院のICU(集中治療室)などで重症患者向けの食事として使用されている。
「濃厚流動食」の中でインパクト商標商品は2,500を超える臨床試験に裏打ちされた実績と信用力を誇り、その高品質故に、販売者がその輸入・販売を決定するや、業界紙のみでなく日本経済新聞や日経産業新聞といった全国規模粉一般紙でも取り上げる程の注目度の高い商品であり、業界紙・専門誌を超え、一般紙においても特集記事が組まれるほどの人気を博するに至っている。
インパクト商標商品の販売額は、2002年度で1.7億円、2003年度で3億円、2004年度で4億円と順調に増加している。一般に濃厚流動食の国内市場は150億円とされているので、インパクト商標商品のシェアの大きさをうかがい知ることができる。
以上から明らかなように、インパクト商標商品は市場において高い評価を受けており、インパクト商標は、申立人の販売する「濃厚流動食」の商標として取引者・需要者に認識されており、少なくとも本件商標の出願時点においては、取引者及び需要者間で周知・著名となっていたものである。
(イ)本件商標と引用商標の類似性
前記のとおり、本件商標と引用各商標の類似性は極めて高い。
(ウ)本件商標の指定商品・指定役務と「濃厚流動食」の関連性
本件商標の指定商品である第10類「医療用機械器具」は、主に病院等で使用されるものであり、患者の病状を改善するために用いられる器具類である。
一方、著名商標「インパクト」が使用される商品「濃厚流動食」は主として病院のICU等で用いられるものであり、術後の患者の様態を安定させるために用いられる。
したがって、何れの商品も、医療機関において患者の病状を改善するために用いるという共通の目的のために使用されるものである。
また、本件商標の指定役務には第42類「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」が含まれるが、「濃厚流動食」そのものも当然にこの試験・検査・研究の対象となるものであり、その関連性は極めて深い。
(エ)取引者・需要者の関連性
本件商標の指定商品である第10類「医療用機械器具」は、患者の病状を改善するために用いられる器具類であって、主として病院等の医療機関で使用される。こうした人体・生命に直接的な影響を与え得る機械器具であるから、その製造・販売・使用には高度な専門知識が求められるので、自ずと取引者・需要者は医療従事者に限定される。
また、本件商標の指定役務には第42類「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」が含まれるが、医薬品等の試験・研究をする者も当然医療従事者である。
一方、著名商標「インパクト」が使用される商品「濃厚流動食」は主として病院のICU等で用いられるものであり、その取引者・需要者には医療従事者が含まれる。
したがって、本件商標の指定商品(役務)中、第10類「医療用機械器具」 及び第42類「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」と、著名商標「インパクト」が使用される商品「濃厚流動食」 の取引者・需要者は完全に一致するものであり、その関連性は極めて密である。
(オ)混同のおそれ
上に検討したように、「濃厚流動食」における引用商標「IMPACT」の著名性、「濃厚流動食」と「医療用機械器具」や「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」との取引者・需要者の共通性等を総合的に考察すれば、本件商標がその指定商品に使用された場合には、それがあたかも著名ブランドである「IMPACT」に係る申立人・販売者の提供する商品であるかの如く誤認され、そうでなくとも、何らかの密接な営業上の関連性を想起させ、あたかも申立人のグループ会社か、あるいは許諾を受けた者に係る商品であるかの如く誤認させ、商品又は営業上の出所混同を生じるおそれが極めて高いといわねばならない。
(カ)小括
以上のとおり、本件商標がその指定商品の第10類「医療用機械器具」ならびに指定役務の第42類「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」について使用された場合は、申立人の著名商標に係る商品と出所の混同を生ずるおそれが高いものであり、本件商標は法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「IMPACTag」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、大文字と小文字からなるとしても全体を同間隔でまとまりよく一体的に構成されているものであり、これより生ずる「インパクタグ」の称呼も冗長でなく、一気に称呼し得るものである。そして、かかる構成態様の本件商標にあっては、構成中の「IMPACT」の部分のみを分離抽出したうえ、当該部分に相応する称呼や観念をもって取引に資されるとすべき格別の理由はみいだせないから、本件商標は、全体として不可分一体の商標として看取されるというのが相当である。
申立人は、「IMPACT」部分が「影響、反響、効果」を意味するものであり、指定商品「薬剤」との関係において「AG」は、抗アレルギー商品を表示するものであることから、「INPACT」部分が要部である旨主張しているが、本件商標は、上記のとおり、まとまりよく一体的に表されてなるものであり、また、抗アレルギー商品を表す場合は、大文字「AG」が用いられることから、本件商標にあっては、「INPACT」の部分と「ag」の部分とに分離して認識されるということはできない。
また、申立人は、引用各商標は、本件商標の出願時及び登録査定時には、商品「濃厚流動食」について、その取引者、需要者の間で周知・著名性を獲得したとして、取引の実情について主張しているが、後述するとおり、その取引者・需要者に広く認識されているとまではいうことができない。
してみれば、本件商標は、構成全体をして不可分一体の商標というべきであり、特定の観念を生じさせない造語であって、「インパクタグ」の一連の称呼を生じるものというのが相当である。
一方、引用商標1及び引用商標2は、いずれも、その構成文字から「インパクト」の称呼を生じ、「衝撃。強い影響や印象。」(広辞苑第5版)の観念を生じるものである。
そして、「インパクタグ」と「インパクト」の両称呼を対比するに、両者は、構成音数及び相違する各音の音質の差によって、相紛れることなく判然と区別し得るものである。また、両商標は、観念について比較することができず、さらに、外観構成において明らかに相違するものであるから、外観上及び観念上で相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれからみても、引用商標1及び引用商標2に類似する商標と判断することはできないから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当について
申立人提出の証拠(甲第23号証ないし同第56号証)によれば、「IMPACT」、「インパクト」及び別掲に示す構成の商標(以下これらを「引用商標」という。)が、「濃厚流動食(免疫賦活性のある成分を含有する栄養調整食)」について使用され、その取引者、需要者に相当程度知られていると認めることができるが、前記証拠をもって、本件商標の出願前に需要者の間で広く認識されている、あるいは一般に知れ渡って著名であるとまで認めることはできない。
しかして、本件商標が引用各商標に類似するものでないことは前記(1)のとおりであり、また、本件商標の構成中に「IMPACT」及び「インパクト」の文字が含まれているとしても、前記引用商標の周知性の程度と、「IMPACT」「インパクト」が我が国において親しまれた英語、あるいは外来語であり、唯一申立人に係る造語でないことをも併せみれば、本件商標の構成中の「IMPACT」及び「インパクト」をもって、非類似商標である本件商標と引用商標とが、更に関連づけて把握されるとも認め難いものである。結局、本件商標と引用商標とは、別異の出所を表すものとして看取されるというのが相当である。
したがって、本件商標をその出願時において指定商品に使用した場合、需要者が引用商標を想起し連想して、申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く誤信するとは認め難く、商品の出所について混同するおそれがあったと判断することはできない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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