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Trademark Appeal Case

周知商標の類否判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2008−900179(T2008−900179/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5107498号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5107498号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成19年4月10日に登録出願、第37類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同20年1月25日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人の引用する商標

登録異議申立人東宝株式会社(以下「申立人」という。)は、以下の10件の商標を引用しており、いずれも現に有効に存続しているものである。

(1)登録第4094440号商標(以下「引用商標1」という。)は、「東宝」の文字を書してなり、平成7年9月29日に登録出願、第37類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同9年12月19日に設定登録され、その後、平成19年10月23日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

(2)登録第4836138号商標(以下「引用商標2」という。)は、「東宝」の文字を標準文字で表してなり、平成15年9月26日に登録出願、第9類、第16類、第25類、第28類、第30類及び第35類ないし第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同17年1月28日に設定登録されたものである。

(3)登録第3305878号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成4年9月25日に登録出願、第37類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同9年5月16日に設定登録され、その後、同20年4月2日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

(4)登録第4572992号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、平成13年2月20日に登録出願、第38類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同14年5月31日に設定登録されたものである。

(5)登録第3159087号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(4)のとおりの構成からなり、平成4年9月25日に登録出願、第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同8年5月31日に設定登録され、その後、同17年12月20日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

(6)登録第3281495号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲(5)のとおりの構成からなり、平成4年10月9日に登録出願、第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同9年4月18日に設定登録され、その後、同18年11月7日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

(7)登録第3281496号商標(以下「引用商標7」という。)は、「東宝」の文字を書してなり、平成4年10月9日に登録出願、第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、平成9年4月18日に設定登録され、その後、同18年11月7日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

(8)登録第3151922号商標(以下「引用商標8」という。)は、別掲(5)のとおりの構成からなり、平成4年9月25日に登録出願、第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同8年5月31日に設定登録され、その後、同17年12月20日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

(9)登録第3250973号商標(以下「引用商標9」という。)は、「東宝」の文字を書してなり、平成4年10月9日に登録出願、第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同9年1月31日に設定登録され、その後、同18年10月10日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

(10)登録第3017068号商標(以下「引用商標10」という。)は、別掲(5)のとおりの構成からなり、平成4年9月25日に登録出願、第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同6年12月22日に設定登録され、その後、同16年12月21日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

(以下、(1)ないし(10)をまとめていうときは、「引用各商標」という。)

3 登録異議の申立ての理由(要点)

(1)第4条第1項第8号について

ア 申立人の名称の著名な略称について

申立人である「東宝株式会社」は、周知のとおり、映画の上映・制作又は配給、映画・演劇の興行の企画又は運営、演劇の上演、放送番組の制作等を主たる業務とする同業界における我が国の代表的な企業である。

申立人は、「東京宝塚劇場」での宝塚歌劇の興行を行う一方、「日比谷映画劇場」や「有楽座」等の新劇場の設立及び「日本映画劇場株式会社」や「帝国劇場株式会社」との合併等を通じて、直営の劇場や映画館を増やし、映画・演劇の興行を主に行っていたが、昭和18年(1943年)12月に、「東宝映画株式会社(昭和7年設立の株式会社写真化学研究所が前身)」と合併すると同時に、映画の制作・配給・興行も行う映画・演劇の総合一貫経営を目指すこととして、社名を現在の「東宝株式会社」に改称した。

申立人は、戦後も引き続き、主な業務である映画の上映・制作又は配給業務においては、我が国映画史上に残る名作である「七人の侍(昭和29年:黒澤明監督)」、「ゴジラ(第1作公開:昭和29年)」シリーズを初めとする数々のヒット作を現在に至るまで多数配給し、その都度、映画の冒頭シ

ーンにおいて、丸の図形の中に「東宝」の文字が縦書きされた標章等を上映すると共に、これらの映画の各種のパンフレット、ポスター、チケット等において、また、これらのTV等を通じたCM等において、例えば、「丸の図形の中に「東宝」の文字が縦書きされた標章」は勿論、配給、制作等の後に「東宝」の文字、更には、「全国東宝(邦画/洋画)系公開」、「全国東宝(邦画/洋画)系ロードショー」等のように、その名称の略称である「東宝」の文字を使用し、この「東」の文字と「宝」の文字とからなる「東宝」は、本件商標の出願時は勿論、現在においても申立人の、更には、同社の関連企業を含めた東宝グループ企業全体を表彰する略称として著名なものとなっている(甲第12号証ないし甲第32号証)。

イ 本件商標について

本件商標は、図案化された「airContro1」の文字の下に、「東宝ホーム」、「エア・コントロール住宅」の文字を上下に並べて横書きしてなり、第37類「建築工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」、第42類「建築物の設計,測量」を指定役務として設定登録されたものである。

商標法第4条第1項第8号の略称等の「著名」の程度の判断については、商品又は役務との関係も考慮すべき、との考えもあるが、同号が人格権の保護に趣旨があることに鑑みれば、常に拘泥されるべき基準とは必ずしもいえず(甲第32号証)、また、「程度の」判断において考慮すべき、との意であるから、申立人の略称が、主に映画の上映・制作又は配給について著名であることだけをもって、本件商標の第37類「建築工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」や第42類「建築物の設計,測量」とは無関係と断ずることはできない。申立人の略称のように、全国的なレベルで需要者の間に広く認識されているものについては、程度の判断において、商品又は役務との関係が影響する度合いは、多分に小さいものとなり、幅広い分野の商品又は役務について、使用された場合には、需要者に、申立人を連想させ、その人格権を害するものということができる。

してみれば、本件商標は、「東宝ホーム」の部分に、上記のとおり申立人の著名な略称を含む商標であり、かつ、申立人の承諾を得ることなく、出願、登録されたものであるから、商標法第4条第1項第8号の規定に違反して登録されたものである。

(2)第4条第1項第11号について

本件商標の「東宝ホーム」の文字部分は、他の部分と分離して観察できる状態で表記されている。

また、この「東宝ホーム」の文字のうち「ホーム」の部分は、「住宅、家」等を意味し、識別力がなく、これに接する消費者及び取引者は、「東宝」の文字部分のみをもって、他の役務と識別する。

してみると、本件商標からは、「トーホー」あるいは「トウホウ」の称呼が生ずる。

これに対し、引用商標1ないし引用商標7は、「東宝」あるいは「東宝」の各文字部分から「トーホー」あるいは、「トウホウ」の称呼が生ずる。

よって、本件商標と引用商標1ないし引用商標7は、共に「トーホー」あるいは「トウホウ」の称呼を共通にする類似のものである。

また、本件商標の指定役務と引用商標1ないし引用商標7の指定役務とは互いに抵触する。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。

(3)第4条第1項第15号について

ア 申立人の商標の著名性について

申立人である「東宝株式会社」の歴史については、上述したとおりである。 そして、申立人は、その映画の上映・制作又は配給,映画・演劇の興行の企画又は運営,演劇の上演,放送番組の制作等の役務の提供にあたり、引用商標4、引用商標8及び引用商標9の商標を、本件商標の出願前から現在に至るまで使用し、これらの商標は、もはや説明を要しない程、需要者の間に広く認識されており、そのレベルはいわゆる著名の程度にまで達している(甲第12号証ないし甲第21号証、甲第31号証)。

また、申立人は、上記設立の経緯、これらの映画の上映や演劇の上演等の興行の実施に伴う映画館や劇場の建設や運営等の役務の提供にあたり、これに付随する商業施設として、例えば、旧くは、日劇(日本劇場)を初めとして、その跡地に建設された有楽町マリオン(有楽町センタービル)、日比谷シャンテ(東宝日比谷ビル)、帝劇(帝国劇場)等の不動産の管理や運営,賃借等の役務の提供にあたり、引用商標10の商標を、本件商標の出願前から現在に至るまで使用し、この商標は、これらの役務を表示する商標としても、需要者の間に広く認識されており、そのレベルは著名の程度にまで達している(甲第12号証ないし甲第30号証)。

イ 出所の混同が生ずるおそれについて

全国的な著名度を獲得するに至っている本件商標を、その指定役務に使用するときは、これに接する需要者をして、申立人である「東宝株式会社」と何等かの経済的又は組織的な関係がある者の業務に係る役務と誤認するものであるということができる。

したがって、本件商標は、他人である申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものである。

(4)以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号、同第15号の規定に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の2第1項第1号の規定により、取り消されるべきものである。

4 当審の判断

(1)本件商標と引用各商標の類否について

本件商標は、別掲(1)のとおり、全体が水色に着色され、円形に重なるように図案化された「aircontro1」の文字と「東宝ホームエア・コントロール住宅」の文字からなるところ、「aircontro1」の文字と「東宝ホームエア・コントロール住宅」の文字は、各々「欧文字」と「漢字・片仮名」の差異があること、及び前者が図案化されたものであるのに対し、後者はゴシック体で表されていることから、両文字部分は視覚上分離して看取されるものである。さらに「東宝ホーム」及び「エア・コントロール住宅」の文字は上下2段書され、両文字全体より生ずる「トウホウホームエアコントロールジュウタク」又は「トーホーホームエアコントロールジュウタク」の称呼が極めて冗長であり、全体を一体不可分のものとして認識しなければならない特段の事情もないことから、「東宝ホーム」の文字部分も独立して自他役務の識別標識として機能を果たすものと認められる。

そして、「東宝ホーム」の文字部分は、同書、同大、同間隔に外観上もまとまりよく一体的に表現されており、かつ、これより生ずる「トウホウホーム」又は「トーホーホーム」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。

そうとすれば、本件商標は、その構成中「東宝ホーム」の文字部分については、「東宝」の文字部分のみが分離抽出されて認識されるとみるよりも、「東宝ホーム」全体として一体不可分ものとみるのが自然であって、その構成文字全体に照応して、「トウホウホーム」又は「トーホーホーム」の一連の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当である。

してみれば、本件商標から「トウホウ」又は「トーホー」の称呼をも生ずるとし、その上で、本件商標と引用各商標とが称呼において類似するものとすることはできない。

また、本件商標と引用各商標の外観については、著しく相違するものであり、その他、本件商標と引用各商標とを類似するものとすべき特段の理由は見出せないものである。

よって、本件商標と引用各商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

(2)引用商標4、引用商標8及び引用商標9の周知・著名性について

申立人の提出に係る甲第12号証ないし甲第30号によれば、引用商標4、引用商標8及び引用商標9が申立人の業務に係る役務「映画の上映・制作」等について使用する商標(以下、「使用商標」という。)として取引者、需要者の間に広く認識されていたと認められるものである。

(3)商標法第4条第1項第11号について

前記(1)のとおり、本件商標と引用商標1ないし引用商標7とは、互いに類似しない別異の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとはいえない。

申立人は、「東宝ホーム」の文字のうち「ホーム」の部分は、「住宅、家」等を意味し、その指定役務である第37類「建築工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」、第42類「建築物の設計,測量」との関係においては、単に役務の質、提供の用に供する物を示すにすぎないため、識別力がなく、これに接する最終消費者及び取引者は、専ら「東宝」の文字部分のみをもって、他の役務と識別する旨主張している。

しかしながら、本件商標の構成中「東宝ホーム」の文字部分が一体不可分のものとして看取されることは、前記認定のとおりである。また、「ホーム」の部分が「住宅、家」等を意味する語であるとしても、例えば、建築業界において「パナホーム」「タマホーム」「ミサワホーム」「トヨタホーム」「三井ホーム」等の商標が「ホーム」の文字部分を捨象することなく、全体の文字から生ずる称呼をもって取引に資されていることが通例であることから、「東宝ホーム」の文字部分から「東宝」の文字を分離し抽出し、「トーホー」又は「トウホウ」の称呼をもって取引に資することはないものというのが相当である。

したがって、申立人のこの主張は理由がない。

(4)商標法第4条第1項第15号について

前記(2)のとおり、使用商標が申立人の業務に係る役務「映画の上映・制作」等について、取引者、需要者の間に広く認識されていたと認められる。

そこで、本件商標の指定役務「建設工事」等と使用商標の役務「映画の上映・制作」等とを比較するに、両役務は、業種又は事業者、需要者の範囲、取引場所等、著しく異なるものである。

してみると、たとえ、申立人の使用商標が映画関連役務分野において広く認識されたものであるとしても、その周知、著名性が直ちに本件商標の指定役務の分野にまで及ぶとみるのは困難である。

また、本件商標と使用商標とは、上記(1)で述べたとおり、十分に区別し得る別異の商標と認められるものであるから、商標権者が本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する需要者、取引者をして使用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その役務が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものとはいえない。

申立人は、本件商標の全国的な著名度を考慮すれば、本件商標を、その指定役務に使用するときは、これに接する需要者をして、申立人である「東宝株式会社」と何等かの経済的又は組織的な関係がある者の業務に係る役務と誤認するものであるということができる旨主張している。

しかしながら、申立人の使用商標が取引者、需要者の間に広く認識されていたと認められるのは、映画関連役務分野に限られるというべきであって、本件商標が、役務の出所について混同を生じさせるおそれはないことは、上記認定のとおりであるから、申立人のこの主張は理由がない。

(5)商標法第4条第1項第8号について

本件商標は、前記(1)のとおり、その構成中「東宝ホーム」の文字部分について一体不可分のものと認識されるものであり、本件商標の指定役務と使用商標の役務とは、大きく異なるものであるから、本件商標は、他人の名称の著名な略称を含む商標と認識させることはないものというのが相当である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものとはいえない。

申立人は、申立人の略称のように、全国的なレベルで需要者の間に広く認識されているものについては、程度の判断において、商品又は役務との関係が影響する度合いは、多分に小さいものとなり、幅広い分野の商品又は役務について、使用された場合には、需要者に、申立人を連想させ、その人格権を害するものということができる旨主張している。

しかしながら、本件商標の構成中「東宝ホーム」の文字部分が一体不可分のものとして看取され、本件商標と使用商標の役務は、著しく異なるものであり、また、両商標の外観が著しく相違することも考慮すると、他人の名称の著名な略称を含む商標と認識させることはないものある。

したがって、申立人のこの主張は理由がない。

(6)まとめ

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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