Trademark Appeal Case
称呼類似性と要部抽出
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 判定2009−600002(T2009−600002/J6) |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | other |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5182044号商標(以下「本件商標」という。)は、「バイシクルナビ」の片仮名文字を標準文字で横書きしてなり、第35類「広告,インターネットにおける広告用スペースの提供,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の売買契約の仲介・代理・取次ぎ・媒介,商品の販売に関する情報の提供,商品の販売促進の企画または運営,文書又は磁気テープのファイリング,一般事務の代行,商品の売買に関する事務代行,コンピュータデータベースの検索の代行,コンピュータデータベースの検索の代行に関する情報の提供,コンピュータデータベースへの情報構築及び情報編集,自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,インターネットを利用した自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 」を指定役務として、平成19年9月20日登録出願、同20年11月21日設定登録されたものである。
第2 イ号標章
イ号標章は、別掲の構成よりなるものである。
第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第2号証(枝番を含む。)を提出している。
1 判定請求の必要性
被請求人は、イ号標章を「広告」及び「インターネットにおける広告用スペースの提供」に使用している。
請求人は、被請求人によるイ号標章の当該使用は、本件商標の商標権の禁止権の範囲の使用であるとの疑義をもった。
そこで、請求人は、本件商標の商標権の効力の範囲について専門的知識をもって中立的立場から判断される判定を特許庁に求め、その判定に基づいてこの問題を解決することが適当であると判断した。
2 イ号標章の説明
被請求人は、遅くとも、平成21年12月8日以降、イ号標章を、インターネット上のサイト名として、各頁の右上または、左下に表示している(甲第1号証の1ないし5)。
これらの頁の右上には、ブリジストンサイクル株式会社が運営するサイト「emeters」へのバナーがあり、リンクが張られている。
被請求人は、当該バナーを設置することによって広告料を得ている。
したがって、被請求人は、イ号標章を「広告」及び「インターネットにおける広告用スペースの提供」に使用している。
また、被請求人は、全国サイクルショップのガイドブック(甲第2号証の1)では、サイクルショップを紹介している。
そして、被請求人は、紹介されたサイクルショップから、広告料を得る予定である。
したがって、被請求人は、イ号標章を「広告」及び「インターネットにおける広告用スペースの提供」に使用している。
なお、サイクルショップ掲載店の募集は、甲第2号証の2で行っている。
3 イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
(1)標章について
本件商標は、「バイシクルナビ」の標準文字からなるものであるから、これより、「バイシクルナビ」の称呼を生ずる。
一方、イ号標章は、別掲のとおり「BICYCLE」の文字と「NAVI.net」の文字を二段に書してなるものであるから「バイシクルナビドットネット」の称呼を生ずるものである。
しかしながら、イ号標章をサイト名に使用した場合には、イ号標章構成中の「.net」の文字部分は、付記的な部分となるため、本件商標とイ号標章は称呼が類似する。
また、本件商標とイ号標章は、片仮名表記と欧文字表記の差にすぎないことから、観念も類似する。
したがって、本件商標とイ号標章とは、外観が相違するとしても、称呼が類似し、観念を共通にする。
よって、本件商標とイ号標章とは、役務の出所の混同を生じさせるおそれのある類似の標章というべきである。
(2)役務について
本件商標に係る指定役務中、「広告」及び「インターネットにおける広告用スペースの提供」とイ号標章が使用されている「広告」及び「インターネットにおける広告用スペースの提供」とは、同一または類似の役務である。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標とイ号標章とは、標章が類似し、本件商標の指定役務とイ号標章が使用されている役務も同一又は類似するものである。
したがって、役務について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲内に属する。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、役務について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しない。との判定を求めると答弁し、その理由を要旨以下のとおり述べ、その証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証を提出している。1 イ号標章が表示されているサイトの説明
(1)サイト運営の経緯について
イ号標章が表示されている「BICYCLE NAVI.net」サイト(乙第1号証、以下「本件サイト」という。)は、被請求人が発行する雑誌「BICYCLE NAVI」(以下「本件雑誌」という。)の公式ウェブサイトである。
本件雑誌は、平成12年7月に創刊され(乙第2号証)、その後、同14年春号(4号)から季刊化されて定期刊行が開始された。
その後、平成19年5月号(24号)から隔月化され、現在も刊行中である(最新号は35号(乙第3号証))。
被請求人は、本件雑誌の公式ウェブサイトを開設するために、平成17年9月にドメイン名「bicycle‐navi.net」を取得し(乙第4号証)、レンタルサーバにより本件サイトの運営を開始した。
本件サイトは、運営開始当初において、本件雑誌に掲載されたショップガイド「BICYCLE NAVI yellow pages」(乙第5号証)と連動する情報の公開等を目的としていた。
その後、本件サイトは、サイト内の「BICYCLE NAVI.netについて」(乙第6号証)にも記載されているとおり、本件雑誌と連動しながら、雑誌で取り上げきれないニュースや話題などをタイムリーに取り上げ、自転車ライフを充実させるための情報を提供し、また、過去の人気企画アーカイブ、編集部スタッフによるブログなど、本件雑誌の読者と雑誌のコミュニケーションスペースとしての役割を担うものとなった。
(2)サイト内のリンクについて
本件サイトのトップページには、ブリヂストンサイクル株式会社が運営している「e*meters」サイト(乙第7号証)へのリンクが設置されている。
当該リンクは、被請求人と協力関係にある同社のサイトの紹介を目的とするものである。
現時点において、このリンクに関し、請求人が主張するような広告料を、同社から被請求人が受け取っている事実は一切ない。
また、本件サイトのトップページには、「全国サイクルショップガイド」(乙第8号証)として、複数のサイクルショップの情報を掲載している。
当該情報の掲載は、本件サイトの運営開始当初におけるショップガイドの情報掲載を受け継ぐものであるが、現在では、サイクルショップにおける自転車の販売促進により、自転車愛好者を増やし、ひいては本件雑誌の新たな読者を開拓することを主目的とするものである。
現時点において、本件雑誌への広告料とは別に、本件サイトヘの情報掲載に関し、請求人が指摘するような広告料を、サイクルショップから被請求人が受け取っている事実は一切ない。
2 イ号標章が商標権の効力の範囲に属しないとの説明
(1)イ号標章について
請求人は、イ号標章が本件商標に類似する旨を主張している。
しかしながら、イ号標章は、本件雑誌の公式ウェブサイトであることを示すためのものである。
そもそも、イ号標章は、商品・役務を識別する標識として使用されているものではない。
(2)役務について
請求人は、「イ号標章の使用役務が『広告、インターネットにおける広告用スペースの提供』であり、本件商標に係る指定商品中『広告、インターネットにおける広告用スペースの提供』と同一又は類似の役務である」と主張している。
しかしながら、商標法上の「役務」とは、「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の対象となるもの」と解されるところ、上述のとおり、本件サイトは被請求人が発行する本件雑誌のPR活動を主目的としたものであるため、本件サイトの運営は商標法上の「役務」にあたらない。
(3)先使用による商標の使用をする権利について
仮に、イ号標章が本件商標と同一または類似であり、かつ、イ号標章の使用役務が本件商標に係る指定商品と同一または類似であったとしても、被請求人は、先使用による商標の使用をする権利を有する。
被請求人は、本件商標の出願日(平成19年9月20日)以前の平成17年9月から、本件サイトの運営を開始しており、イ号標章の使用に不正競争の目的がないことは明らかである。
また、1万部を超える発行部数(乙第9号証)の本件雑誌において、本件サイトの存在を読者に度々告知している(乙第5号証)ことから、イ号標章は、本件商標の出願の時点において、被請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたと認められる。
さらに、被請求人は、本件サイトの運営開始以来、継続してイ号標章を使用しており、本件雑誌の最新号(35号)においても、本件サイトがリニューアルオープンした旨を告知している(乙第3号証)。
よって、被請求人は、商標法第32条に規定する先使用による商標の使用をする権利を有するものである。
(4)まとめ
以上のとおり、イ号標章が請求人の商標権の効力の範囲に属しないことは明白である。
第5 当審の判断
1 本件商標とイ号標章の類否について
本件商標は、「バイシクルナビ」の片仮名文字を標準文字で書してなるものであるから、その構成文字に相応して「バイシクルナビ」の称呼を生ずる。
そして、本件商標は、特定の意味合いを有さない造語と認められる。
一方、イ号標章は、別掲のとおり、「BICYCLE」の欧文字を書し、「BICYCLE」の「LE」の下の部分が一部重なるように、黄色で「NAVI」の文字を書し、「NAVI」の文字の横に、「.net」の文字を配してなるところ、「.net」の文字部分は、ジェネリックトップレベルドメイン(gTLD)の一つであるから、当該文字部分は自他役務識別標識としての機能を有していないか、仮に、自他役務識別標識としての機能を有しているとしても極めて弱いものといわざるを得ない。
そうとすれば、イ号標章構成中自他役務識別標識としての機能を有する部分は、「BICYCLE」「NAVI」の文字部分にあるというべきであり、その構成文字に相応して、イ号標章からは「バイシクルナビ」の称呼を生ずるというべきである。
そして、イ号標章は、特定の意味合いを有さない造語と認められる。
してみれば、本件商標とイ号標章とは、外観が相違し、観念においては比較することができないとしても、称呼を共通にする類似する標章であるといわざるを得ない。
2 本件商標の指定役務とイ号標章が使用されている役務について
甲第1号証の1ないし5は、2009年1月5日付けの被請求人のウエブサイトのコピーと認められるところ、各頁の左上にイ号標章が表示されている。
そして、同じく各頁の右上には、ブリジストンサイクル株式会社が運営するサイト「e*meters」へのバナーがあり、リンクが張られている。
そうとすれば、被請求人は、イ号標章を表示した自己のウエブサイトにおいて、ブリジストンサイクル株式会社の広告を行い、又は同社に対してインターネットにおける広告用スペースを提供していると推認することができる。
甲第2号証の1ないし2は、2009年1月5日付けの被請求人のウエブサイトのコピーと認められるところ、各頁の左下にイ号標章が表示されている。
そして、甲第2号証の1の右側には、「お薦めサイクルショップ」として「サイクルショップflame」「サイクルショップ ケルビム 今野製作所」「LORD SLOW SPOT」「アヤセサイクル」「CYCLE
YOSHIDA (株)吉田商会」の5軒のサイクルショップが紹介されている。
そうとすれば、被請求人は、イ号標章を表示した自己のウエブサイトにおいて、上記5軒のサイクルショップの広告を行い、又は上記5軒のサイクルショップに対してインターネットにおける広告用スペースを提供していると推認することができる。
したがって、被請求人は、イ号標章を「広告」及び「インターネットにおける広告用スペースの提供」に使用しているというべきである。
そして、「広告」及び「インターネットにおける広告用スペースの提供」は、本件商標の指定役務に含まれている。
3 被請求人の主張について
(1)被請求人は、「本件サイトへの広告の掲載に当たって、広告料は受け取っていない」旨主張する。
一般に、商業用のウエブサイトに他人のために広告を掲載し、又は他人にインターネットにおける広告用スペースを提供した場合には、当該他人から相応の対価が支払われるという商取引の実情がある。
してみれば、被請求人が、上記で述べた商取引の実情にもかかわらず、広告料を受け取ってないと主張するのであれば、それを証する証拠を提出する必要があると考えられる。
しかしながら、被請求人は、広告料を受け取っていないと主張をするのみで、何ら証拠を提出していない。
したがって、この点についての被請求人の主張は採用しない。
(2)被請求人は、「イ号標章は、商品・役務を識別する標識として使用されているものではない。」旨主張する。
しかしながら、自己のウエブサイトにイ号標章を表示し、さらに、他人のために「広告」及び「インターネットにおける広告用スペースの提供」を行うことは、商標第2条第3項第7号「電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。次号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」に該当するというべきである。
したがって、この点についての被請求の主張は採用しない。
(2)被請求人は、「被請求人は、商標法第32条に規定する先使用による商標の使用をする権利を有する。」旨、主張する。
しかしながら、発行部数が1万部強程度の雑誌において本件サイトの紹介を行った程度では、イ号標章が、被請求人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願の際に、需要者の間に広く認識されていると認めることはできない。
したがって、この点についての被請求の主張は採用しない。
4 結語
以上のとおりであるから、役務について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。
よって、結論のとおり判定する。
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