Trademark Appeal Case
導電性ペーストの区分
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2006−1723(T2006−1723/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「MULTIFINER」の文字を標準文字で書してなり、第1類「導電性ペースト,その他の化学品」、第2類「印刷インキ」及び第17類「電気絶縁材料」を指定商品として、平成16年4月27日に登録出願され、その後、指定商品については、原審における同年12月20日付けの手続補正書により、第1類「導電性ペースト,その他の化学品」及び第2類「印刷インキ」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願は、政令で定める商品及び役務の区分第1類に属さない商品を包含している。本願の指定商品中『導電性ペースト』は、第9類に属する商品である。したがって、本願は、商標法第6条第2項の要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)本願の指定商品「導電性ペースト」について
ア 請求人の提出に係る「株式会社テクノシステムセミナー事業部主催のセミナー『導電性ペーストの最新開発動向と応用技術』のテキスト(抜粋・写)」(甲第1号証)によると、「導電性ペースト」について、以下の各記載が認められる。
(ア)「はじめに
エレクトロニクス業界では種々の機能性ペーストが使用されている。導電性ペーストもその中の一つである。電子部品、電子機器等に広範囲に使用されるとともに、もはや欠くことのできない材料となっている。一般的に導電性ペーストは、使用前は、文字通りペースト状(液体状態)であり、その状態では導電性は有さない。これを乾燥、硬化し固体状態になって初めて導電性を発現する。よってその機能や要求特性により種々の別称でよばれている。通常、用途別に、導電性塗料、導電性インキ、導電性接着剤に大別される。
これらの導電性ペーストの成分はいずれも、金属、カーボンブラックなどの導電性の粉体と、アクリル、エポキシといった合成樹脂の結着剤(バインダー)を主としているが、要求される特性や乾燥、硬化条件などにより各種の材料が選別配合され、用途ごとに細分化されている。」(テキスト1頁)
(イ)「1.導電性ペーストの導電機構
導電性ペーストは、導電性粉末(導電性フィラー)と合成樹脂の結着剤(バインダー)から構成されており、導電性は主として導電性フィラー同士の接触により発現する。この導電性フィラーどうしの接触は樹脂バインダーの乾燥、硬化によってもたらされる。・・・樹脂バインダーが乾燥、硬化前は、導電性フィラーはバインダーの中にそれぞれ独立して存在し、互いに連続した接触がないため導電性は得られない。・・・バインダーが乾燥、硬化後は互いに鎖状に連結し、導電性が発現する。」(テキスト1頁)
(ウ)「2.導電性ペーストの構成材料
導電性ペーストは、主として導電フィラー、樹脂バインダー、溶剤、添加剤などから構成されており、使用される目的や要求特性に応じて適宜配合されている。
2.1 導電性フィラー
導電性ペーストに導電性をもたらす材料で、主として金、銀などの金属の微粉末や無定形カーボン、グラファイト粉末が使用されている。そのほかに、一部ではあるが金属酸化物の粉末も使用されている。このうち、金属微粉末では、信頼性、実績、加工性、価格などの総合面からいって、銀粉がもっとも多く使用されている。」(テキスト2頁)
(エ)「2.2 バインダー
導電性フィラーを被塗物に密着させるとともに、導電性フィラー同士を鎖状に連結させて導電性を付与し、導電性塗膜を物理的、化学的に安定させる物質である。」(テキスト4頁)
イ 以上によれば、「導電性ペースト」とは、a)「導電性をもたらす材料である導電性粉末」(導電性フィラー)と、「当該導電性フィラーを被塗物に密着させるとともに、導電性フィラー同士を鎖状に連結させて導電性を付与し、導電性塗膜を物理的、化学的に安定させる物質である合成樹脂の結着剤」(バインダー)とから主に構成される商品であって、その原材料である「導電性をもたらす材料である導電性粉末」(導電性フィラー)には、主として金、銀などの金属の微粉末や無定形カーボン、グラファイト粉末が使用されていること、b)当該商品の使用前の状態は、文字通りペースト状(液体状態)ではあるものの、そのままの状態では導電性の機能を有さず、ペースト状態で塗布された後、当該ペーストが乾燥、硬化し固体状態になって初めて導電性の機能を発現するという特徴を有するものであること、c)エレクトロニクス業界では電子部品、電子機器等に広範囲に使用される機能性ペーストとして、欠くことのできない材料として認識されていること、などが認められる。
ウ このように、「導電性ペースト」は、その機能の本質が使用により導電すなわち電気を流すことにあり、そのため、その原材料には、金、銀などの金属の微粉末や無定形カーボン、グラファイト粉末などの導電性をもたらすための材料も使用されているものであって、エレクトロニクス業界では電子部品、電子機器等に広範囲に使用される導電性材料として認識されているものといえる。
(2)「導電性ペースト」は、第1類「化学品」に包含される商品であるか否か
ア 商標法施行令(平成18年政令第342号による改正前のもの。以下「政令」という。)別表の各区分に属する商品又は役務を定める商標法施行規則(平成18年経済産業省令第95号による改正前のもの。以下「省令」という。)別表の第1類には「化学品」が例示されており、当該「化学品」の下位例示として、「(一)無機酸類」ないし「(二六)界面活性剤」及び「(二七)化学剤」が定められ、さらにそれらに属する商品が例示されているところ、前記(1)に記載した本願の指定商品「導電性ペースト」が、当該「化学品」中の「(一)無機酸類」ないし「(二六)界面活性剤」のいずれにも属さないものであることは、省令別表の例示内容に照らして明らかである。
イ そこで、「導電性ペースト」が当該「化学品」中の「(二七)化学剤」に属する商品であるか否かについて、さらに以下検討する。
特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説〔国際分類第8版対応〕」によると、「化学品」について、「この概念には、一般に“無機工業薬品”“有機工業薬品”“界面活性剤”と呼ばれる商品及び化学的製品を用途的にとらえた“化学剤”の大部分が含まれる。」との記載があり、また、「(二七)化学剤」については、「<化学剤>この概念には、主として化学的製品を用途的にとらえたものが含まれる。この概念に属するものとしては、1)<無機酸類>乃至<有機金属化合物>に掲げた商品と同じものであっても、それ自体が単独で一定の用途に用いられるものとして取引される場合と、2)<無機酸類>乃至<有機金属化合物>等に属する数種の物質を混合して一定の用途に適するようにしたものとがある。前者は、工業薬品として取引される場合及び未だ用途が限定されていないものとして取引される場合は<無機酸類>乃至<有機金属化合物>に属する。しかしながら、両者とも他の類の用途(例えば、染料、顔料、せっけん類、香料類、薬剤等)に使用される場合又はこの類の他の商品の用途(例えば、陶磁器用釉薬、写真材料等)に使用される場合は、この概念には属さない。」との記載がある。
そうすると、前記(1)ウのとおり、「導電性ペースト」は、その機能の本質が使用により導電すなわち電気を流すことにあり、そのため、その原材料には、金、銀などの金属の微粉末や無定形カーボン、グラファイト粉末などの導電性をもたらすための材料も使用されているものであって、エレクトロニクス業界では電子部品、電子機器等に広範囲に使用される導電性材料であるから、上記記載の考えに沿えば、これは、その用途のみならず、その原材料の点からみても、「化学剤」に属する商品とは認められないものというべきである。
そして、他に、「導電性ペースト」が「化学品」の範ちゅうに属する商品と認めるに足りる証拠はない。
ウ したがって、本願の指定商品「導電性ペースト」は、第1類「化学品」の範ちゅうに属する商品とは認めることができない。
また、「導電性ペースト」は、前記したところの機能、用途からして、「化学品」以外の第1類に属する商品とも認められないものである。
(3)本願の指定商品「導電性ペースト」の属する区分について
次に、本願の指定商品「導電性ペースト」が、政令で定める商品及び役務の区分のいずれの区分に属する商品であるかを以下検討する。
ア 「導電性ペースト」は、前記(1)ウに記載のとおり、導電性材料として電子部品、電子機器等に広範囲に使用されるものであって、その機能の本質が使用により導電すなわち電気を流すことにあり、また、それ自体が一つの完成品として独立して取引されるものである。
イ ところで、省令別表の「備考」欄には、「一 別表に掲げられていない商品又は役務の分類に際しては、・・・商品及びサービスの国際分類に関する・・・ニース協定第一条に規定する国際分類の一般的注釈に即するものとし、次のいずれかに従うこととする。
(一)完成品である商品は、その機能又は用途に従って、別表に掲げられている比較の可能な他の完成品から類推して分類する。」との記載がある。
そして、政令別表の第9類には、「科学用、航海用、測量用、写真用、音響用、映像用、計量用、信号用、検査用、救命用、教育用、計算用又は情報処理用の機械器具、光学式の機械器具及び電気の伝導用、電気回路の開閉用、変圧用、蓄電用、電圧調整用又は電気制御用の機械器具」との記載があることから、「電気の伝導用の機械器具」に関しては、他の類に属するような特別の要因がない限り、一義的には第9類に属するものと認めるのが相当である。
ウ そうすると、導電すなわち電気を流すことをその機能の本質とし、他の類に属するような特別の要因も見当たらない「導電性ペースト」は、政令で定める商品及び役務の区分第9類に属する商品であると解するのが相当である。
なお、このように解するのが妥当であることは、次の例からも裏付けられる。すなわち、「商品・サービス国際分類表〔第8版〕アルファベット順一覧表 日本語訳(類似群コード付)」(以下、「国際分類表」という。)(http://www1.ipdl.inpit.go.jp/nice/index.html)の第2類の類見出しには「ペイント,ワニス,・・・」との記載及び同注釈には「第2類には, 主として, ペイント, 着色剤及び腐蝕防止剤を含む。」との記載がある一方、同注釈には「この類には, 特に, 次の商品を含まない。」として「絶縁用のペイント及びワニス(第17類)」がその一つに記載されている。このように、当該「絶縁用のペイント及びワニス」が、第2類ではなく、第17類に属する商品とされているのは、第17類の注釈に「第17類には,主として,電気絶縁用,断熱用及び防音用の材料並びに製造用プラスチックであって,シート状,ブロック状及び棒状のものを含む。」との記載があるように、「電気絶縁用の材料」が第17類に属するものとされているからであり、その機能又は用途に着目して分類されたものと解されるのである。
以上のことからも、本願の指定商品「導電性ペースト」は、政令で定める商品及び役務の区分第9類に属する商品と判断するのが妥当である。
(4)請求人の主張に対する判断
ア 請求人は、国際分類表の第9類の類見出し及び注釈から、第9類に属するのは、科学用等の機器、伝導用、開閉用等の電気機器であり、第9類に例示された商品も機器、装置、部品として成り立っている商品であって、「導電性ペースト」すなわち導電性フィラー、結着剤(バインダー)、溶剤、添加剤等を配合した化学剤ともいうべきペースト状の如き化学的な材料というような商品は一切例示されていない旨主張する。
しかしながら、当該国際分類表に掲載されている商品及びサービスは、その各類に属する商品及びサービスをすべて掲載しているわけではなく、あくまでも例示にすぎないのであるから、「導電性ペースト」やそれに類似する商品が国際分類表の第9類に例示されていないからといって、当該「導電性ペースト」が直ちに第9類に属さないものであるということはできない。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
イ また、請求人は、国際分類表の第1類に、「蓄電池充電用酸性液」、「電池用塩類」、「はんだ付け用融剤」、「はんだ付け用化学品」だけでなく、これらの工業用に用いられる化学品を包括的に例示する「工業用化学品」が例示されていることを挙げ、これらと比較して類推解釈すれば、「導電性ペースト」も第1類に属するものである旨主張する。
しかしながら、請求人が例として挙げる「蓄電池充電用酸性液」、「電池用塩類」、「はんだ付け用融剤」、「はんだ付け用化学品」及び「工業用化学品」は、いずれもその用途が工業用であることは請求人自身も認めているし、また、その原材料も、金、銀などの金属の微粉末や無定形カーボン、グラファイト粉末などの化学品以外の材料が用いられている「導電性ペースト」とは異なり、それらの用途表示部分を除いた「酸性液」(塩酸、硫酸などの酸の性質をもつ液体)、「塩類」(「酸の水素原子を金属または他の金属性基で置きかえた化合物の総称。・・・塩化ナトリウム・硫酸アンモニウムの類。」(広辞苑第5版))、「融剤」(「ある物質の融解をその物質の融点より低い温度で促進させるような作用のある物質をいう.」(「化学大辞典9 縮刷版」共立出版株式会社、2001年9月20日縮刷版第37刷発行))及び「化学品」が、いずれも第1類の「化学品」に属するものであることは明らかであるから、それらが第1類に属する商品として国際分類表に例示されていたとしても、本願の指定商品「導電性ペースト」を第9類に属する商品と判断することの妨げにはならない。
したがって、請求人の上記主張も採用することはできない。
(5)むすび
以上のとおり、本願の指定商品「導電性ペースト」は、政令で定める商品及び役務の区分第9類に属する商品と認められるものであるから、これを第1類に属する商品として記載する本願は、商標法第6条第2項の要件を具備しないものといわざるを得ない。
したがって、本願は商標法第6条第2項の要件を具備しないとして、これを拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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