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Trademark Appeal Case

地名商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2007−30197(T2007−30197/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、「WALLSTREET」の欧文字を標準文字で表してなり、第9類「電子計算機用プログラム,金融取引に関して使用される電子計算機用プログラム,電気通信回線若しくはインターネットを通じてダウンロード可能な金融取引・金融に関する分析並びに金融に関する危機管理のための電子計算機用プログラム,経理・金融に関する危機管理のための電子計算機用プログラム,金融情報の提供に用いられる電子計算機用プログラム」、第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定着物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,割賦購入のあっせん,電気通信回線若しくはインターネットを利用した預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,電気通信回線若しくはインターネットを利用した資金の貸付け及び手形の割引,電気通信回線若しくはインターネットを利用した内国為替取引,電気通信回線若しくはインターネットを利用した債務の保証及び手形の引受け,電気通信回線若しくはインターネットを利用した有価証券の貸付け,電気通信回線若しくはインターネットを利用した金銭債権の取得及び譲渡,電気通信回線若しくはインターネットを利用した金融先物取引の受託,電気通信回線若しくはインターネットを利用した金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定着物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,電気通信回線若しくはインターネットを利用した債券の募集の受託,電気通信回線若しくはインターネットを利用した外国為替取引,金融に関する情報の提供,金融市場の分析及び調査,金融資産の管理,金融資産の形成・運用に関する助言及び指導,金融又は財務に関する助言及び評価,電気通信回線若しくはインターネットを利用した金融に関する情報の提供,電気通信回線若しくはインターネットを利用した金融市場の分析及び調査,電気通信回線若しくはインターネットを利用した金融資産の管理,電気通信回線若しくはインターネットを利用した金融資産の形成・運用に関する助言及び指導,電気通信回線若しくはインターネットを利用した金融又は財務に関する助言及び評価」及び第42類「金融関連業務・財務関連業務に関する電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電気通信回線若しくはコンピュータネットワークを介した金融関連業務・財務関連業務に関する電子計算機用プログラム(電気通信回線若しくはコンピュータネットワークを介して提供されるダウンロード可能な電子計算機用プログラムを除く。)の提供,金融関連業務・財務関連業務に関する電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守に関する情報の提供,電気通信回線若しくはコンピュータネットワークを介した金融関連業務・財務関連業務に関する電子計算機用プログラム(電気通信回線若しくはコンピュータネットワークを介して提供されるダウンロード可能な電子計算機用プログラムを除く。)の提供に関する情報の提供」を指定商品及び指定役務として、2006年9月7日欧州共同体商標意匠庁においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成18年10月2日に登録出願されたものであるが、その後、指定商品及び指定役務については、平成19年7月11日付けの手続補正書により、第36類の全指定役務について削除する補正がなされたものである。

2 原査定の拒絶理由の要旨

原査定は、「本願商標は、『WALLSTREET』の文字を標準文字で表してなるところ、『WALLSTREET』の語は、『アメリカ北東部、ニューヨーク州南東部、ニューヨーク市マンハッタン区北端の通りで、世界的な金融の中心地』を指称する『Wall Street』(ウォール街)を認識させるものであるから、これをその指定商品・役務に使用しても、単に商品の販売地又は役務の提供場所を表したにすぎず、自他商品・役務を区別する標識としての識別力を具有しないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

本願商標は、前記のとおり「WALLSTREET」の文字よりなるところ、「Wall Street」の語は、株式会社三省堂発行「コンサイス外国地名辞典 第3版 2005年10月20日発行」によれば、「アメリカ北東部、ニューヨーク州南東部、ニューヨークのマンハッタン南端の通り。世界的な金融の中心地。狭い通りに数多くの銀行・証券会社・商社などが並ぶ。最大の株式・証券取引所のニューヨーク株式取引所を中心に、アメリカ株式取引所、ニューヨーク連邦準備銀行,ニューヨーク植民地時代や初期の連邦時代の博物館を有する国定記念館・連邦ホールなどがある。1650年頃インディアンの襲撃を防ぐために造られた城壁(Wall)の跡で、通りの名称となった。」との記載があることが認められる。

さらに、「Wall Street」の語が、我が国において、「ウォールストリート」または「ウォール街」として、アメリカの地域名を指称するものとして周知であり、このことは、例えば、以下の辞典類及び新聞記事からも十分に裏付けられるところである。

(1)「ウォール・がい【―街】(Wall Street)」(広辞苑 第6版、株式会社岩波書店発行)

「ニューヨークの街路の名。また、そこにある金融市場の通称。同街を中心に数多くの銀行・証券会社・株式取引所・手形交換所・連邦準備銀行などがある。」との記載がある。

(2)「ウォール・がい【ウォール街】」(新明解国語辞典 第六版 株式会社三省堂発行)

「〔Wall=ニューヨーク市の町の名〕ニューヨークの株式取引所のある街区(を中心とする米国の金融界)。」との記載がある。

(3)「ウォール・ストリート〔Wall Street〕」(2008 現代用語の基礎知識 自由国民社発行)

「ニューヨーク市で証券取引所のあるところ、東京の兜町に当たる。米国の金融市場の通称で米国資本主義のシンボル。」との記載がある。

(4)「ウォール・ストリート〔Wall Street(壁の街)〕」(コンサイスカタカナ語辞典 第三版 株式会社三省堂発行)

「ニューヨーク市南部の証券所。株式取引所はじめ金融機関が集中する米国経済中心地。転じて、米国資本主義のシンボル。★オランダの植民地時代,住民保護のため築かれた壁からついた名」との記載がある。

(5)「ウォールがい【―街】(Wall Street)」(大辞林 第二版 新装版 株式会社三省堂発行)

「ニューヨーク市のマンハッタン地区にある街区。株式取引所のほか銀行・証券会社・商社が集まる世界金融の中心地。」との記載がある。

(6)2008年10月21日「毎日新聞」朝刊8頁

「経済観測:寛大な納税者=三連星」の見出しの下、「高給取りで鳴るウォール街は税金で救済するのに、中小企業、失業で苦しむ低所得者層を放置するのか。政権与党でウォール街寄りと目されていた共和党でもこの分かりよい論法には抗しがたく、下院の過半数が金融安定化法案にいったんは反対票を投じた。」との記事。

(7)2008年10月20日「共同通信」朝刊7頁

「失業者2千万人増加へ 金融危機でILO試算」の見出しの下、「事務局長は『この試算でもまだ過小評価しているかもしれない。これはウォール街だけの問題でなく、世界中の問題だ』と強調。」との記事

(8)2008年10月18日「毎日新聞」朝刊7頁

「米政府が大手銀行などに公的資金2500億ドル(約25兆円)の資本注入を決めたことを受け、国民の一部から激しい不満の声が上がっている。16日にはニューヨーク・ウォール街の証券取引所近くでデモがあり、参加者は『税金を使って億万長者を救うのか』と怒りをあらわにした。」との記事。

(9)2008年10月16日「電気新聞」1頁

「〔焦点〕」の見出しの下、「つい1ヶ月ほど前までは、健康のことや老人介護のことや年金のことを話題にしていたが、『ウォールストリート』発の金融危機が世界中を直撃するや、『被害はなかったか』と、ささやかな老後資産を心配し合うようになった・・・▼ウォールストリートやシティーに居ながらにして国境を越え、世界中の至る所にIT技術を駆使して、グローバルマネーのネットワークを張り巡らし、膨大な利潤を貪ってきた『マネーの冒険者』たち。過食の果てに、機能不全に陥ってしまった。」との記事。

(10)2008年10月12日「朝日新聞」朝刊6頁

「G7行動計画、資産査定は玉虫色『時価』会計に裁量余地」の見出しの下、「米国を代表する自動車メーカーの危機がメディアで公然と論じられるなど、「ウォールストリート」(金融界)との対比で『メーンストリート』と呼ばれる産業や生活にも危機は押し寄せつつある。」との記事。

(11)2008年10月8日「共同通信」

「かなり刺激的な結論だが、今のウォールストリートを見ていると、一つの時代が終わったのだという感を深くせざるを得ない。一世を風靡(ふうび)した投資銀行も五大銀行のうち三つは消滅し、あと一つも風前のともしびである。」との記事。

(12)2008年10月3日「読売新聞」朝刊9頁

「金融法案の米上院可決『市民を救済』強調 下院可決の動向焦点」の見出しの下、「元の法案の4倍の400ページ以上の分厚い修正法案について、民主党のリード上院院内総務は『ウォールストリート(金融街)の危機がメーンストリート(の一般市民)に広がるのを食い止めるもの』と強調した。」との記事。

これらの実情よりすれば、本願商標の「WALLSTREET」の文字は、アメリカの有名な地域名である「Wall Street」の文字と綴りを同じくすることから、「ウォールストリート」及び「ウォール街」を直ちに想起させるものであり、かつ、上記のとおり一般的に広く親しまれている語であることが認められる。

そうとすれば、本願商標は、これをその指定商品及び指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その商品の産地、販売地及びその役務の提供場所を表したものと理解するに止まり、自他商品及び役務の識別標識としての機能を果たし得ないというのが相当である。

したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。

なお、請求人は、本願商標が「ウォール街」を認識することがあるとしても、指定商品及び指定役務との関係においては、商品の販売地又は役務の提供場所を表示するものということはできず、自他商品・役務の識別標識としての機能を十分果たし得るものである旨主張する。

また、請求人は、過去の登録例をあげて、本願商標も登録が認められるべきものである旨主張する。

ところで、商標法第3条第1項第3号の該当性の判断については、「商標法第3条第1項第3号として掲げる商標が、登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として、なんびともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである。」(最高裁判所昭和53年(行ツ)第129号)と判示されている。

そうすると、本願商標は、上記のとおり、世界的にも有名な地名の「ウォールストリート」または「ウォール街」を認識し、取引に際し必要適切な表示として、何人もその使用を欲するものであるから、これを特定人によるその独占使用を認めることは適切としないものであるとともに、一般的に使用される標章であるから、自他商品・役務としての識別標識を有しないものであるというのが相当である。

また、請求人が示す過去の登録例と本願商標は、その構成態様等が相違するものであるばかりでなく、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号に当たるものであるかどうかの判断は、当該商標登録出願の査定時及び審決時において、当該商標の構成態様と指定商品とを考慮し、個別具体的に判断されるものであって、請求人が例示する過去の登録例が存在することのみによって、本願商標が同号に該当することを否定することはできず、また、本願商標についての同号該当性の判断が、かかる過去の登録例に拘束されるものでもない。(平成12年(行ケ)第76号事件 東京高裁平成12年9月4日判決言渡参照)

したがって、請求人のこの主張をもって前記判断を覆すこともできない。

よって、結論のとおり審決する。

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