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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2008−890020(T2008−890020/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4789010号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4789010号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成15年12月16日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同16年7月23日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用商標

請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録商標は、以下の(1)ないし(6)のとおりであり、これらの商標権は現に有効に存続しているものである。なお、これらを一括していうときは、以下「引用各商標」という。

(1)登録第2667318号商標(以下「引用商標1」という。)は、「BeaR」の欧文字を横書きしてなり、平成3年10月16日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同6年5月31日に設定登録されたものであり、同16年5月12日に指定商品を第5類「失禁用おしめ」、第9類「事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服」、第10類「医療用手袋」、第16類「紙製幼児用おしめ」、第17類「絶縁手袋」、第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」、第21類「家事用手袋」、第22類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿」、第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」とする指定商品の書換登録がなされたものである。

(2)登録第4345512号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成7年5月2日に登録出願、第25類「パーカ,絶縁材からなるジャケット,レザージャケット,防寒用帽子,履物」を指定商品として、同11年12月17日に設定登録されたものである。

(3)登録第4376738号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、平成7年7月24日に登録出願(優先権主張、アメリカ合衆国、1995.1.24)、第25類「パーカ,絶縁材からなるジャケット,レザージャケット,防寒用帽子,ヘッドバンド」を指定商品として、同12年4月14日に設定登録されたものである。

(4)登録第4419411号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(4)のとおりの構成よりなり、平成8年3月6日に登録出願、第25類「アメリカ製のパーカ,アメリカ製のジャケット,アメリカ製のティーシャツ,アメリカ製のパンツ,その他のアメリカ製の下着,アメリカ製のジャージー生地からなる長袖シャツ,アメリカ製のデニム生地からなるズボン,アメリカ製のデニム生地からなるその他の被服,アメリカ製の防寒用帽子,アメリカ製の履物」を指定商品として、同12年9月22日に設定登録されたものである。

(5)登録第4419412号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(5)のとおりの構成よりなり、平成8年3月6日に登録出願、第25類「パーカ,ジャケット,ティーシャツ,パンツ,その他の下着,ジャージー生地からなる長袖シャツ,デニム生地からなるズボン,デニム生地からなるその他の被服,防寒用帽子,履物」を指定商品として、同12年9月22日に設定登録されたものである。

(6)登録第4985520号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲(6)のとおりの構成よりなり、平成12年12月27日に登録出願、第25類「被服,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同18年9月8日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第93号証(枝番号を含む。)を提出した。

本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とされるべきものである。

(1)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなるところ、動物の図形の部分は、その構成態様及び構成中の文字との関係において、「熊」(BEAR)を描いたものと容易に認識し得るものである。

また、その構成中の「PASCBEAR」の文字の部分は、図形との関係において、「PASC」の文字と「BEAR」とを結合したものと容易に認識し得るところである。

しかして、「PASC」の文字は、特定の語義を有しない造語であり、「BEAR」の文字は、「熊」を意味する英語で、広く知られ、親しまれているものであって、両語が結合して特定の意味を有する語となったとはいえないものであることから、これに接する者は、熊の図形と同じ意味合いを持つ、広く知られ、親しまれた「BEAR」の文字の部分を捉えて、これより生じる「ベアー」(熊)の称呼(観念)をもって取引きに当たることも決して少なくないというのが相当である。

そうしてみると、本件商標よりは、「熊の図形」及び「BEAR」の文字より「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じるものである。

これに対して、引用商標1は、「BeaR」の文字よりなるものであるから、これより「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じるものである。

引用商標2は、熊の図形と大きく書した「Bear」の文字とその下に小さく書された「U.S.A.,Inc.」の文字よりなるところ、「U.S.A.,Inc.」の文字の部分は、アメリカの法人であることを表示するにすぎず、熊の図形と大きく書した「Bear」の文字の部分が自他商品識別標識としての機能を果たす部分といえるものであるから、これより「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じるものである。

引用商標3は、熊の図形と大きく書した「Bear」の文字よりなるものであるから、これより「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じること明らかである。

引用商標4は、熊の図と熊の図の輪郭線を延長させた横長の輪郭内に「Bear」の文字を書し、その下に「USA」の文字を書してなるところ、「USA」の文字の部分は、アメリカ合衆国を意味し、指定商品との関係においては、商品の産地等を表示するにすぎないから、熊の図形と「Bear」の文字の部分が自他商品識別標識としての機能を果たす部分といい得るものであり、これより「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じるものである。

引用商標5は、熊の図と熊の図の輪郭線を延長させた横長の輪郭内に「Bear」の文字を書してなるものであるから、これより「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じること明らかである。

引用商標6は、熊の図と熊の図の輪郭線を延長させた横長の輪郭線内に「Bear」の文字を書し、その横に「USA」の文字を横向きにして、下から上に向けて縦に書してなるところ、「USA」の文字の部分は、アメリカ合衆国を意味し、指定商品との関係においては、商品の産地等を表示するにすぎないから、熊の図と「Bear」の文字の部分が自他商品識別標識としての機能を果たす部分といい得るものであり、これより「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じるものである。

そうしてみると、本件商標と引用各商標とは、「ベアー」の称呼、「熊」の観念を共通にする類似の商標というべきである。

また、本件商標と引用商標4ないし引用商標6とは、黒の輪郭線をもって描かれたという特徴のある熊の図形と、熊の図の輪郭線を延長させた横長の輪郭内に「熊」を意味する「BEAR」、「Bear」の文字を有してなる点において、構成の軌を同じくするものであり、一見した構成全体から受けるイメージが相似たものとなっていることから、時と処を異にしてこれに接するときは、彼此相紛らわしい外観、観念上類似の商標というべきものである。

請求人は、引用商標4及び引用商標5を平成8年3月に登録出願して使用を開始したものであり、引用商標6は、平成8年に使用を開始し、平成12年に登録出願をしたもので、その使用の形態は、黒の輪郭線をもって描かれたという特徴のある熊の図形と熊の図の輪郭線を延長させた横長の輪郭内に「熊」を意味する「Bear」の文字を書し、その輪郭の外側横に「USA」の文字を下から上に向けて縦書きして配してなるという特徴を有するもので、これを各種、雑誌において広告するとともに、偽商品対策のために新間紙上の広告において警告をもしていたものである(甲第8号証ないし同第32号証)。

しかるところ、本件商標は、請求人の商標の使用の開始とその広告、警告の新聞、雑誌への掲載後に登録出願されたものであり、被請求人が主として衣料品等のファッションに関連する商品についてのブランドのライセンスを業とし、そのライセンスに係る商標は、著名商標にフリーライドすること目的としたものであるといい得るものであり、かつ、そのライセンス事業も極めて欺瞞的なものであることからみると、明らかに請求人の著名な商標にフリーライドする目的を持って、引用各商標(特に、引用商標4ないし引用商標6)と構成の軌を一にする類似の商標を登録出願したといい得るところである(この点については、後に詳述する。)。

さらに、本件商標と引用商標4ないし引用商標6とは、黒の輪郭線をもって描かれたという特徴のある熊の図と「熊」を意味する英語「BEAR」、「Bear」の文字をその構成中に有するという商標の構成全体から受けるイメージも相似たものとなっているから、外観、観念が相俟って、彼此相紛らわしい類似の商標というべきものである。

本件商標と引用商標6との類否については、岐阜地方裁判所における平成17年(ワ)第85号 商標権侵害差止等請求事件(本訴)、同年(ワ)第280号 不正競争差止等請求事件(反訴)において、両者が外観、観念及び称呼について類似しており、取引者または需要者が全体的に類似するものと受け取るおそれがあるといえる旨判示されている(甲第93号証)。

そして、本件商標の指定商品と引用各商標の指定商品とは、同一又は類似の商品である。

したがって、本件商標は、引用各商標と外観、称呼、観念上類似の商標であり、かつ引用各商標の指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するにも拘わらず、これに違反して登録されたというべきものである。

被請求人の他の商標登録出願の経緯及びその使用の実情(甲第33号証ないし同第51号証)からみれば、明らかに請求人の著名な商標に化体されたグッドウィル(顧客吸引力)にフリーライドする意図を持って商標を出願し、登録し、使用しているものと断ぜざるを得ないものであり、本件商標も請求人の著名な商標に化体されたグッドウィル(顧客吸引力)にフリーライドする意図のもとに登録出願し、登録を受けた一連の商標出願・登録の一環として出願し登録されたといわざるを得ないものであり、そのことは、先例の審決、判決、拒絶査定(甲第35号証ないし同第48号証)において、明確に認定されているといい得るところである。

商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。」(商標法第1条)ものであり、かつ、商標法における商標は、市場において使用する(される)ことを前提(商標法第3条柱書き)にしているものであるから、その類否を判断するに当たっては、願書に表示された商標とその指定商品(役務)の分野における取引者、需要者層及び取引の実情を考慮し、需要者の通常有する注意力を基準として判断することは当然のこととしつつ、本件商標の商標権者(被請求人)の一連の商標出願・登録の経緯及びその使用の実情からみると、明らかに請求人の著名な商標に化体されたグッドウィル(顧客吸引力)にフリーライドする意図を持って商標を登録出願し、使用しているものと断ぜざるを得ないものであることからすれば、このような事情をも考慮に入れて、市場において取引者、需要者が彼此誤認し、混同を生じさせるおそれがあるか否か、市場において取引者、需要者が彼此誤認し、混同を生じさせる手法をとっているか否か等の要素をも考慮して類否判断がなされるべきものである。

そうしてみると、本件商標は、上述したとおり、請求人の引用各商標と類似するものであり、かつ請求人の著名な商標に化体されたグッドウィル(顧客吸引力)にフリーライドする意図を持って構成の軌を一にする商標を登録出願しているものであって、取引者、需要者が彼此誤認し、相紛れるおそれがあるものであるから類似の商標というべきものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するにもかかわらず、これに違反して登録されたものである。

(2)商標法第4条第1項第15号について

請求人は、「Bear U.S.A.,Inc.」の商号にて、その商号に由来する黒の輪郭線で描いた熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標を使用して、1994年より、アメリカ、日本においてジャケット、パーカ、靴等の製造、販売をしてきたところであり、その品質、デザインが若者を中心したストリートファッションのアイテムとして大いにヒットし、これがアメリカの人気音楽番組「MTV」に取り上げられたことから、爆発的な人気を博したものである(甲第63号証及び同第64号証)。

そして、その人気の余波は日本、イギリスにも及び当業者のみならず需要者間に広く知られるに至っているものである。

請求人の商号に由来する黒の輪郭線で描いたという特徴のある熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標を使用した商品が人気を博すにつれ、その商品そのものが「THE SOURCE MAGAZINE」(ヒップホップミュージック誌)等の各種雑誌でも掲載され、あるいは記事として取り上げられて益々その人気が高まってきたものである(甲第64号証ないし同第74号証)。

請求人は、その商品の普及をするために、商品パンフレットを作成してアメリカ国内はもとより、日本、イギリスの商社、バイヤー等を通じて広く配布すると共に、「VIBE」、「ASAYAN」、「繊研新聞」等の雑誌、新聞に積極的に広告をしてきたことから、請求人の商号に由来する黒の輪郭線で描いたという特徴のある熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標は、本件商標の登録出願前には取引者、需要者間に著名となっていたものである(甲第8号証、同第11号証、同第63号証、同第65号証、同第70号証及び同第75号証ないし同第79号証)。

請求人の黒の輪郭線で描いたという特徴のある熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標を使用した商品があまりに人気を博したことから、我が国において大量の偽物が出回ったため、一時日本への出荷を停止せざるを得ない状況に追い込まれたものである(甲第33号証)。

そして、平成8年4月25日には、偽商品を販売していた業者が摘発されたという新聞記事が掲載されたものである(甲第34号証)。

このような状況を打開するため、請求人は1996年4月以来、新聞、雑誌に偽商品についての「警告広告」あるいは「注意広告」を何度も掲載してきたところである(甲第9号証、同第21号証ないし同第23号証及び同第25号証ないし同第32号証)。

上述したとおり、請求人の黒の輪郭線で描いたという特徴のある熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標は、著名となり、それを取り上げた新聞、雑誌等の記事において「ベアユーエスエー」あるいは単に「ベアー」として紹介されるほどになっているものである。

請求人は、商標をより商品に適した構成とすべく、また偽物対策をも含め、平成8年(1996年)より、黒の輪郭線をもって描かれたという特徴のある熊の図を描き、その輪郭線を延長した横長の輪郭線内に「Bear」の文字を書し、輪郭線の外側に「USA」の文字を書した構成よりなる商標に変更し、以来これを使用してきているものであり、本件商標の登録出願前には、需要者、取引者間に著名となっているものである(甲第8号証、同第10号証ないし同第32号証、同第65号証ないし同第68号証及び同第71号証ないし同第81号証)。

そこで本件商標をみるに、本件商標は、請求人の使用に係る引用各商標と外観、称呼、観念上類似するものであり、引用商標4ないし引用商標6とは、黒の輪郭線をもって描かれたという特徴のある熊の図と熊の図の輪郭線を延長させた横長の輪郭内に「熊」を意味する「Bear」の文字を有してなる点において、構成の軌を同じくするものであるから、時と処を異にしてこれに接するときは、彼此相紛らわしい外観、観念上類似の商標というべきものである。

そして、本件商標の指定商品と引用各商標の指定商品とは、同一又は類似の商品であり、その品質、用途、形状、販売店、需要者等を共通にするものであるから、引用各商標と類似する本件商標をその指定商品について使用するときは、その商品が恰も請求人の業務に係る商品であるかの如く誤認を生じさせるおそれがあるといわざるを得ないものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するにもかかわらず、これに違反して登録されたものである。

本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとする請求人の主張については、被請求人の登録商標で、本件商標と略同じような構成よりなる登録第4507125号商標の登録無効審判事件(2004−35107号)及び同じく登録第4536505号商標の登録無効審判事件(2004−35108号)の審決が、何れも、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであると審決され、その取消を求めた平成17年(行ケ)第10362号審決取消請求事件、平成17年(行ケ)第10361号審決取消請求事件において、原告の請求が棄却され、かつ、上告事件で何れも上告が棄却されている。

(3)商標法第4条第1項第19号について

被請求人である株式会社セント・ローランは、主として被服、靴等のファッションに関する商品のブランドライセンスを業としている会社であることから、日本を含む世界各国の著名ブランドには精通していると推測されるところであり、前述した請求人の著名商標も当然のこととして知っていたといい得るところである。

そして、その業務に係るブランドライセンスリストに掲載されている商標は、著名な商標をその一部に取り込み、著名な商標にフリーライドする目的とみられるような商標が多く掲載されているところである(甲第82号証ないし同第91号証)。

被請求人のライセンス事業の実情及びそのライセンスに係る商標の登録の状況及びそれらの商標についての無効審判、取消審判、異議申立、訴訟事件における判断、判決からみれば、被請求人は日常的に著名な商標にフリーライドするライセンス業をしているというのが相当である。

また、被請求人は、「USABEAR」と「アズエーベー」の文字を2行に横書きしてなる登録第4345622号の商標のライセンスにおいても、極めて欺瞞的なライセンス事業を展開しているものである。(甲第37号証、同第49号証の1ないし3及び同第51号証)。

さらにまた、被請求人は、本件商標と略同一の構成よりなる登録第4507125号の商標のブランドライセンスの広告(甲第92号証)をしていることからみれば、本件商標もこれと同じ意図をもって登録出願し登録したといい得るところである。

以上述べたように、請求人の商標が著名であり、本件商標はこれと類似の商標であること、被請求人の事業の内容からみて、請求人の商標が著名であることを知っていたといわざるを得ないこと、被請求人は著名商標にフリーライドするライセンス事業を展開していたこと、被請求人は、請求人の著名商標と紛らわしい商標となるような欺瞞的な商標をライセンスしていたこと等を総合勘案すれば、本件商標は、他人(請求人)の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需用者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標を不正の目的をもって使用する(使用させる)ために登録出願し、登録したといわざるを得ないものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するにもかかわらず、これに違反して登録されたというべきものである。

(4)まとめ

本件商標は、以上のとおり、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

4 被請求人の主張

被請求人は、何ら答弁していない。

5 当審の判断

(1)請求人使用商標の著名性について

請求人の提出に係る甲第9号証ないし同第34号証及び同第64号証ないし同第82号証によれば、以下の事実が認められる。

ア 新聞

(ア)1996年(平成8年)4月11日発行「繊研新聞」(甲第9号証)には、横長四角形の枠内に「Bear U.S.Aからの警告」を表示してなる大きな表題の下、引用商標2と同一といえる商標を配し、その下に「現在日本市場で売られているBear U.S.A.のロゴが付いている商品は全て偽物です。Bear U.S.A.は日本で偽物が氾濫することが予測されましたので、昨年1995年の暮れから一切出荷を停止し、・・・」等と掲載されている。

(イ)1996年4月8日発行「繊研新聞」(甲第33号証)には、「ベアー・U・S・A社偽物排除へ強硬手段」の見出しの下、「『ベアー・U・S・A』の偽物が日本で大量に出回っている事態に対処するため、真正品の対日輸出を今春夏物の期間中はいったん停止する。・・・ベアー・U・S・Aは一昨年から販売して以来、米国や日本などで人気を集めているカジュアルウエア。・・・昨秋冬商戦では日本でもダウンジャケットやアウターウェアがヒットした。」と掲載されている。

(ウ)1996年4月25日発行「繊研新聞」(甲第34号証)には、「偽ブランド品摘発/奈良県警」の見出しの下、「・・・アメリカの『ベアー』など海外人気ブランドの偽物を販売していた業者が摘発された。」と掲載されている。

(エ)1997年10月17日発行「繊研新聞」(甲第11号証)には、「この冬、Bearで差をつけろ!!」の見出しの下、引用商標4及び引用商標6と同一といえる商標が付されたダウンジャケットの写真並びに引用商標6と同一といえる商標が掲載されている。

(オ)1998年8月31日発行「繊研新聞」(甲第12号証)には、下部全面に「ニセモノにご注意!」の表題の下、引用商標6と同一といえる商標を配し、その下に「今年のBEAR U.S.A.,INC.は、正規品であるという証明を全商品に付けています。」と掲載されている。

(カ)1998年9月8日発行「繊研新聞」(甲第13号証)には、下部全面の左上部に、引用商標6と同一といえる商標を配し、その右側の「ニセモノにご注意!」の表題及びシールと思しき写真の下、「今年のBEAR U.S.A.,INC.は、正規品であるという証明に全ての下げ札に3次元ホログラムシールを付けました。」と掲載されている。

(キ)1998年10月14日発行「繊研新聞」(甲第14号証)には、下部全面の左上部に、引用商標6と同一といえる商標を配し、その右側のシールと思しき写真及び「ニセモノにご注意!」の表題の下、「今年のBEAR U.S.A.,INC.は、正規品であるという証明に全ての下げ札に3次元ホログラムシールを付けました。」と掲載されている。

(ク)1999年8月30日、同9月6日、同9月27日、同10月5日、同10月13日発行「繊研新聞」(甲第19号証ないし同第23号証)には、下部全面の左上部に、引用商標6と同一といえる商標を配し、その右側の「BEAR USA社からのお知らせ」の表題の下、「これらの知的所有権を侵害する類似品、偽物につては断固たる法的処置を取ります。」等の文章とともに、引用商標6と同一といえる商標が表示されたシールと思しき写真が掲載されている。

(ケ)2000年9月25日、同10月23日発行「繊研新聞」(甲第27号証及び同第28号証)には、下部全面の左上部に、引用商標6と同一といえる商標を配し、その下に「BEAR USA社からのお知らせ/偽物にご注意下さい!!」等の掲載がなされている。

(コ)2002年4月2日発行「繊研新聞」(甲第32号証)の6頁には、全面に引用商標6と同一といえる商標が付されたフード付きジャケットを着ている男性の写真が掲載され、同じく7頁には、引用商標6及び引用商標5と同一といえる商標が表示され、その下部に「((謹告))/“Bear USA”ブランドの模倣品にご注意下さい。」と掲載されている。

イ 雑誌

(ア)「THE/SOURCE」1995年11月号(甲第69号証)の5枚目の紙面の全面を使用した広告において、引用商標3と同一といえる商標が付されたフード付きジャケットを着た人物の写真が掲載されている。

(イ)「asayan」1996年1月号ないし3月号(甲第70号証)の2枚目に、「ニューヨークで超話題のストリートブランド『Bear』のダウンジャケット」と記載された商品の広告が掲載され、同じく7枚目には、紙面の全面を使用した引用商標3と同一といえる商標が表示されている広告が掲載されている。

(ウ)「BOON」1996年2月号(甲第64号証)の2枚目に、引用商標3と同一といえる商標が付されたダウンジャケットの写真とともに「昨年、ニューヨークのブラック達の間で大流行したのがブラック・ダウンジャケット。/ノースフェイス、マーモットなどアウトドア系のビッグブランドと肩を並べるほど、広く認知されたのが、この『Bear』だ。/ブラックダウン大流行のきっかけとなったのは、アメリカの人気音楽番組『MTV』でストリートファッションのマストアイテムとして取り上げられたのが大きな要因。」と掲載されている。

(エ)「BOON」1996年10月号(甲第10号証)の2枚目に、引用商標5と同一といえる商標が表示された広告が掲載され、その下に「当社の商品は、正式のルートを通じた販売店でのみ世界中でご購入になれます。」と記載されている。

(オ)「COOL/TRANS」1998年11月号、12月号、1999年1月号、12月号(甲第15号証ないし同第17号証及び同第25号証)に、引用商標6又は引用商標5と同一といえる商標が付されたダウンジャケットの広告が掲載されている。

(カ)「BOYS RUSH」2000年11月号(甲第26号証)の2枚目に、引用商標6と同一といえる商標が付されたダウンジャケットの広告が掲載され、その下に「偽物にご注意下さい。」と記載されている。

ウ 以上の新聞、雑誌における報道記事、紹介記事、広告等には、商標として、引用商標6の構成態様と同一といえる商標(以下「請求人使用商標」という。)が表示されており、請求人が「Bear」ブランドとして我が国において主に使用しているものは請求人使用商標と認められる。

そして、上記した事実によれば、平成8年の初めには、請求人が雑誌に広告を掲載した「Bear」ブランドのダウンジャケットが、米国において人気音楽番組「MTV」で取り上げられて人気を得ていることが我が国の雑誌で紹介されていて、同年4月には、Bear U.S.Aが米国や日本で人気を集めているカジュアルウエアなどと新聞に記載されている。また、時期を同じくして、既に同ブランドの偽物が出回り、同ブランド商品の対日輸出が停止される旨が報じられており、請求人は、同12年10月にかけて、同ブランドの「偽物が売られている」旨を記載した広告を新聞、雑誌を通じて大々的に行っている事実が認められる。そして、請求人使用商標を付したダウンジャケットが広く販売されていることが雑誌における広告の掲載により認められる。

以上によれば、「Bear」ブランドとして主に使用されている請求人使用商標は、本件商標の登録時はもとより、その登録出願の時においても、ダウンジャケットなどのカジュアルウエアの商標として、少なくとも本件の指定商品の分野の取引者、需要者の間に広く認識されていたものということができる。

(2)引用商標4ないし6について

請求人が引用する登録商標について検討するに、引用商標4は、左向きに立った熊の図形と熊の図形の輪郭線を延長させた横長の輪郭内に「Bear」の文字を書し、その下に「USA」の文字を書してなるところ、「USA」の文字の部分は、アメリカ合衆国を意味する略語を表し、商品の産地等を表示するものであるから、熊の図形と「Bear」の文字の部分が着目、認識され得るものであり、これより「ベアー」の称呼及び「熊」の観念を生じるものである。

引用商標5は、左向きに立った熊の図形と熊の図形の輪郭線を延長させた横長の輪郭内に「Bear」の文字を書してなるものであるから、これより「ベアー」の称呼及び「熊」の観念を生じるものである。

引用商標6は、左向きに立った熊の図形と熊の図形の輪郭線を延長させた横長の輪郭線内に「Bear」の文字を書し、その右側の枠外に左に90度回転させた「USA」の文字を配してなるところ、引用商標4と同様に、「USA」の文字の部分は、商品の産地等を表示するものであるから、熊の図形と「Bear」の文字の部分が着目、認識され得るものであり、これより「ベアー」の称呼及び「熊」の観念を生じるものである。

なお、引用商標4及び同6の構成中の「USA」の文字の部分を除いた熊の図形及び「Bear」の文字の部分は、引用商標5とその態様を同じくするものである。以下、引用商標4ないし6におけるそれらの部分をいうときは、まとめて「引用Bear図形」という。

(3)本件商標について

本件商標は、左向きに立ち、頭部のみを右に向けた熊の図形と、その右側に「PASCBEAR」の文字を表し、これらの文字を囲むように熊の図形の輪郭線から延長する線で枠を描いてなるものであり、また、その構成中の「PASCBEAR」の文字の部分は、図形との関係において、「PASC」の文字と「BEAR」の文字とを結合したものと容易に認識し得るところである。

そして、「PASC」の文字は、特定の語義を有しない造語であり、「BEAR」の文字は、「熊」を意味する英語であって、広く知られ、親しまれているものであり、両語が結合して特定の意味を有する語であるともいえないものであることから、本件商標は、その構成中の熊の図形及びそれと同じ意味を持つ「BEAR」の文字の部分が着目されることも決して少なくないというのが相当である。

そうしてみると、本件商標は、「熊の図形」及び「BEAR」の文字に相応して「ベアー」の称呼及び「熊」の観念を生じることもあり得るということができる。

(4)本件商標と引用商標4ないし6との対比

本件商標と引用Bear図形とを比較すると、熊の図形の頭部の向き及び構成文字における「PASC」の文字の有無の相違を有するものではあるが、両者は、熊の図形がほぼ輪郭線のみにより描かれ、白抜きになっているといった熊の図形の描出方法(筆致)、その結果描かれた熊全体の図柄において相似た印象を受け、また、文字においては、文字の全部を囲うように熊の図形の輪郭線を延長する線で枠が描かれているという点において共通しているものである。

してみれば、本件商標と引用商標4ないし6とは、外観において相当程度近似している印象を受けるものというべきである。

また、前記(2)及び(3)のとおり、本件商標と引用商標4ないし6とは、ともに「ベアー」の称呼及び「熊」の観念を生ずるものであるから、称呼及び観念の点においても相当程度似ているということができる。

(5)商標法第4条第1項第11号の該当性について

本件商標と引用商標4ないし6とが、外観、称呼及び観念において、相当程度似ているということは、前記(2)ないし(4)で述べたとおりである。

そして、請求人使用商標は、引用商標4ないし6と同一又は「引用Bear図形」において同一の構成よりなるものである。

また、本件商標の指定商品中「被服,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」は、引用商標4ないし6の指定商品と同一又は類似の商品である。

そうすると、本件商標と引用商標4ないし6とが、外観、称呼及び観念において相当程度似ているということに、請求人使用商標の著名性を考慮し、総合的に考察すれば、本件商標をその指定商品中「被服,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」に使用した場合、商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれは十分にあるということができる。

したがって、本件商標と引用商標4ないし6とは、商標において類似するものであり、かつ、本件商標の指定商品中には該引用商標の指定商品と同一又は類似する商品である「被服,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を含むものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

(6)商標法第4条第1項第15号の該当性について

請求人使用商標が、引用商標4ないし6と同一又は「引用Bear図形」において同一の構成よりなるものであり、本件商標と引用商標4ないし6とが類似する商標であることよりすれば、本件商標は、請求人使用商標と類似する商標であるといえるものである。

そして、前記(1)のとおり、請求人使用商標は、請求人の業務にかかる商品「ダウンジャケットなどのカジュアルウエア」の商標として、本件商標の登録出願の前より、取引者、需要者の間に広く認識されていたものということができるものである。

また、本件商標の指定商品中、上記において商標法第4条第1項第11号に該当するとした指定商品以外の商品「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」は、いずれもファッション(装身に関する流行)に関連する商品であり、請求人使用商標と密接に関連性を有しているといえるものである。

そうすると、本件商標は、これを上記の指定商品について使用するとき、これに接した取引者、需要者をして、これより直ちに請求人使用商標を連想、想起し、該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ないから、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

(7)むすび

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、その余の無効理由について論及するまでもなく、同法第46条第1項により、その登録を無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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